やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳
<< 前の話 次の話 >>

395 / 409
葉山隼人のオーラル・シガレッツact2

side葉山隼人

 

一同「………すぅ………すぅ………」

 

みんな、朝が早かった為か、新幹線が出ると同時にうつらうつらと居眠りを始めた。俺の周りでは起きているのは数名しかいない。

通路を挟んで反対側を見ると、ヒキタニとジョースターさん、川崎さんも眠そうにアクビをしていたし、戸塚も眠ってしまっていた。波紋の戦士の三人が眠そうなのは不思議だな。

逆に俺はちっとも眠くない。そうなってくると暇をもて余してくる。少しトイレにでも行っておくか。

全員を起こさないように静かに、ゆっくりと廊下に出る。

 

八幡「トイレか?」

 

葉山「ああ」

 

八幡「気を付けろよ。トイレと乗り物は危険だからな」

 

ヒキタニが謎の忠告をする。

 

葉山「どういう意味だい?」

 

八幡「俺達ジョースター家って乗り物とトイレは鬼門なんだよ。例を挙げれば……」

 

ジョナサン・ジョースターとエリナ・ジョースターの新婚旅行の船旅ではDIOに襲われ、沈没した。

ジョセフさんは人生で四度も墜落の経験をしたらしい。

その他でも船旅では通算三回も襲われ、空条博士はその内二回。墜落もジョセフさんに巻き込まれて二回経験。

自動車や列車でも襲われるのは当たり前らしい。

さらにヒキタニ達もフロリダまでの旅では何度も乗り物に移動中に襲われたのだとか。

千葉村での事件の後は異世界にそれぞれが行ったらしいのだが、そこでもそういうことは何度かあったらしい。

トイレもそうだ。以前に南を助けてくれたポルナレフさんは何度かトイレで襲われたのだとか。

そして、異世界の陽乃さんも……。

怖いことを言うなよ……。

フラグってのがあるだろう。

 

八幡「用心に越したことは無いって事だよ……」

 

忠告は受け取ろう。

そう言って俺はトイレまで移動を開始する。新幹線だと京都までは少しかかるからな。今のうちに行っておいた方が良いだろう。

 

雪乃「あら?あなたもトイレかしら?」

 

葉山「ああ。雪ノ下さんも?」

 

雪乃「ええ。空条先生とお話をしていた途中で」

 

徐倫「まぁ、みんな寝ているしね」

 

じゃあさっきまで雪乃ちゃんは同じ車両にいたのか。空条先生は担任だから同じ車両の前の方に座っていたからね。

 

葉山「男性の方は空いているみたいだ。お先に」

 

雪乃「ごゆっくり」

 

わずかな会話だけど、久々に雪乃ちゃんと個人として話をしたな。雪乃ちゃんはもう昔の事は気にしてないけど、俺の方はまだ少し引きずっている。

気にしすぎなのかも知れないけど……やはり過去は変えられないからね。

 

ーキング・クリムゾンー

 

俺は用をたして手を洗い、扉を開くと……。

雪乃ちゃんと空条先生はその場に座り込んで意識を失っていた。

 

葉山「雪乃ちゃん!空条先生!」

 

いくら眠いといってもこんなところで眠るのはおかしい。明らかに異変だ!

兆候はあったはずなのに気が付かなかった!

ヒキタニ達も含めて全員が眠る、もしくは眠そうにしているなんてあり得ない!

つまりは……ウルフスに襲われている!

くそ、ヒキタニめ!やっぱりフラグだったじゃあないか!

これはスタンド使いに襲われていると見て間違いないだろう。

 

葉山「雪乃ちゃん!空条先生!」

 

俺は二人を揺り動かして起こそうと試みるが、起きる気配がまったくない。

いや、そもそもどうして俺だけが無事なんだ?

ヒキタニやジョースターさんですら敵の術中にはまっているというのに!

 

承太郎『葉山。お前の能力は俺やジジイ、八幡をもってしても解らなかった。だが、慌てる事はない。分かりにくい能力でも、何かの形でそれが発揮される事はある。例えば自分だけが敵の能力にかからなかったり、またはかかりにくかったりな…まさか!と思ったときが、それがお前の能力かも知れない。その直感に従うことも、時には重要だ』

 

空条先生のお父さん、空条博士はそう言っていた。

俺だけが敵の能力にかからなかったりかかっていない。もしかしたら、それが俺のスタンド能力の秘密…。

 

ジョセフ『本質じゃ。己の本質と向き合う事じゃ。それがスタンド能力となっておることが多い』

 

ジョセフ・ジョースターさんは俺にそう教えてくれた。

みんなが眠ってしまった中で、俺だけがかからなかった理由とはなんだ………。

俺の本質は何なんだ!

俺の本質は、みんな仲良く……act1はそれが曲解され、好きをアレルギーに、嫌いを中毒にする力だった。

なら、みんな仲良くから別の力を発揮する俺の願いは何なんだ!?

自分の能力なのにわからない!それがもどかしい!

 

シュルシュルシュル………

 

考え込んでいたのが不味かったのだろう。糸のようなものがいつの間にか伸びて来ており、その糸が俺の首にかかる。

 

葉山「ガッ!」

 

気がついたときには首を絞められ、ドアに引っ張られた後だった。

 

葉山「コオォォォォ………」

 

川崎さんに教えられた波紋。それをジョセフさんの監修の元で鍛えていて良かった。波紋で強化した筋力で首に力を入れ、辛うじて呼吸を封じられる事を防ぐ。

 

承太郎『良いか。アーシスのみんなにも教えているが、戦いとはよく見ることが大事だ。観察し、わずかな情報でも得ることが大事だ。どうしようもない少しの情報でも、それが逆転に繋がる事もある。良いか、わずかな情報でも見逃すな。それが『観る』と言うことだ』

 

慌てるな……まだ余裕はある!俺を首絞めているのは…

俺はオーラル・シガレッツを出現させてその紐を見る。

これは羊毛?敵のウルフスは羊の干支!

ならばみんなが眠らされているのは羊の催眠!

とにかくだ、俺はともかく防御が出来ない雪乃ちゃん達が危ない!何としてでも起こさないと!

俺はどう起こすかなんて考えもせず、オーラル・シガレッツで二人を起こそうとする。

しかし、わずかに射程が足りない!俺のオーラル・シガレッツは近距離パワー型だ。射程はわずかに二メートル。何としてでも……。

俺は少しでも近くにいる空条先生の方に足を伸ばし、オーラルシガレッツを横たわらせて腕を伸ばす。

あと少し………もう少しだ!

触れば何とかなる。直感的にそう思った。そして、その指先がチョン………っと空条先生の肩に触れた。

 

徐倫「う………ううん………ハッ!」

 

さっきは強く揺すっても起きなかった空条先生がハッ!と大きな目を更に大きくして目を醒ます。

 

徐倫「こ、これは………敵の攻撃!?あたしは襲われていたの!?」

 

葉山「よ、良かった………空条先生……」

 

徐倫「葉山!ストーン・フリー!」

 

空条先生がスタンドを出し、俺の首に巻き付いていた羊毛を引きちぎる。

繊維質の物を無理矢理引きちぎったからか、ストーン・フリーの手が僅かに傷つき、空条先生の手も傷が付く。

 

葉山「ゲホッ!ゲホッ!」

 

徐倫「大丈夫か!?葉山!」

 

葉山「はい!雪乃ちゃん!」

 

俺は今度は雪乃ちゃんにオーラル・シガレッツで触れて見せる。すると今度は雪乃ちゃんが目を醒ます。

やっぱり、オーラル・シガレッツの能力が眠らされる力を防いでいたんだ。

 

葉山「これは……どういう力なんだ……眠気に強くなるスタンド?」

 

雪乃「ありがとう。助かったわ。レイプ山君…あら?」

 

雪乃ちゃんが思わず…と言った感じで口にした毒舌。確か雪乃ちゃんがそう言うことを言うときは、親しい者や気になる相手に対して冗談を言うときにする癖…。

 

雪乃「そう言えば……体育祭の準備の時にも比企谷君が言っていたわ……思わずひねくれないで本音で物を口にしてしまったって………隼人くん。わかったのかも知れない……あなたのact2の能力が……」

 

俺の能力がわかった?どういう能力が?

 

雪乃「嘘を消す力………。気付いていたとは思うのだけれど、気にしないと言いながらも、私はあなたとの過去に対してやっぱり遠慮があったわ。だから普通に接していたつもりでも、どこかよそよそしさを自分でも感じていた。でも、今は私の態度にその遠慮から来る嘘の行動が無いのよ。隼人くん。とてもクリアな気持ちで私はあなたに接している」

 

確かに雪乃ちゃんは俺に『隼人くん』と昔のような言い方で呼んでくれている。

嘘を消す……そうか。みんな仲良く…嘘偽りなく。それが俺が望んだ新しい道であり、本質……。

円満な人間関係に、つまらない嘘は必要ない。だからこういう能力がオーラル・シガレッツに備わったのか。

 

雪乃「嘘を消す能力。私は夕べ、たっぷり睡眠を取って修学旅行に臨んだ。なのに、まったくあるはずのない眠気に襲われた…嘘の眠気に眠らされていた。それをオーラル・シガレッツが打ち消した…。だから、私と空条先生は目を醒ますことが出来たのね……」

 

雪乃ちゃんがそう思ったのなら、俺もそう思うことにする。現に、空条先生と雪乃ちゃんは目を醒ました。違っていたとしても、今はそれで良い。俺は雪乃ちゃんの分析を信じることにする。少し違っていたとしても、何もわからないよりははるかに良いはずだ!

 

徐倫「それで、葉山。何か敵についてわかったことはある?」

 

空条先生が俺に尋ねてくる。

 

葉山「はい。小さな事ですが、今回の敵は羊の十二支スタンド……南南西を司るスタンドだと思います」

 

多分、間違いない。あってもなくてもどちらでもいい情報だが、もしかしたら空条先生なら打開策を思いついてくれるかも知れない。

 

徐倫「いや、大きな情報よ、葉山。雪ノ下、葉山。思い付く限りの羊の伝説を挙げて!」

 

雪乃「大したものだわ、隼人くん。昔だったら、惚れていたかも知れないわ」

 

ニッコリと微笑む雪乃ちゃん。

ありがとう………そしてさようなら。俺の初恋。

今の言葉は、言外に今は好きな男がいる…と言うことだ。それが誰だかはわからないけど、実れば良いな。その恋が。

そして、空条先生が言うように羊や南南西に関する伝説を挙げる。

 

雪乃「アマルテイア。ゼウスの血と肉になったと言われる不思議な植物から成る羊……」

 

他のウルフスがいたならば、味方を回復させたり、パワーアップさせる能力になるかも知れない。

 

葉山「その前に俺は十二支としての能力を警戒してるな。例えばハーメルンや横牛、アルミラージは五行の力を使ってきたじゃあないか」

 

ハーメルンは水、横牛は土、アルミラージは木。だから五行の力は絶対に使ってくる。

火、水、土、木、金……。そして陰陽の別。

これまでのウルフスはそれらを使ってきた。

 

徐倫「雪ノ下。羊の五行は?」

 

雪乃「土よ。未の五行は土。そして、十二支の羊は山羊も含まれているわ」

 

流石はヒキタニ曰くのユキペディア。すぐに羊の五行を言い当てた。ならば、横牛と同じようにガンズ・アンド・ローゼズ並みの防御力を持っている可能性があるかも知れないな。

 

徐倫「あたしもギリシア神話から悪戯の神、サテュロスを挙げるわ。酒のみを友として、人嫌いで有名でもある伝説の羊ね」

 

雪乃「川崎さんのサマーハプノの糖分をアルコールに変えて酔わせる能力と、サバイバーの能力があると見て良いのかしら」

 

葉山「タングリスニ。ウルフスでは当たり前の自己回復能力。骨さえ無事ならばいくらでも回復する。雷神トールの馬代わりの動物でもあり、主食だった」

 

雪乃「黒魔術の象徴ともされるバフォメット。黒魔術を使ってくる可能性があるわね」

 

徐倫「フォウナス。悪夢の能力。デス13の能力があるかも知れないわね」

 

葉山「黙示録の羊……もしくはヨハネの黙示録…」

 

雪乃「神の力、富、知恵、威力、誉れ、栄光、賛美を司る羊ね…そして眠らせる力は羊の数え歌…。一口に羊と言っても、そこはウルフスね…どれもこれもとても危険な能力ね……」

 

ホントにそう思う。鼠、牛、兎……。現実の動物ならばさほど個としての能力は大したことが無いのに、それが伝説の……となると途端に厄介になる。

コレが蛇や龍、犬、馬、猪のような獰猛な動物となったら俺達は勝てるんだろうか?

絶望的な気分になる。嘆いてばかりもいられないけど。泣いても笑っても、どちらにしてもいずれは戦うんだから。とにかく今は目の前のウルフスに集中するべきだろう。

 

徐倫「出来れば後部に戻ってハッチ達を起こしてから行きたいところだけど……時間がないわ!急がないと危険よ」

 

雪乃「どういうことですか?空条先生」

 

徐倫「行く前に確認したけど、この電車……名古屋で一回回送と待ち合わせるようよ……。そして先行する電車の為に左のレールに入る……このまま運転手も眠っていて、ブレーキをかけなかったら………」

 

葉山「………電車は激突する可能性がある………大惨事だ!」

 

俺は外を確認する。もうじき小田原を通過する。そうなると、残り時間はあと僅か……これから静岡に入っていく事になる。

 

ここはD組とE組の合間のトイレ。さっき攻撃が来たのは前方から……つまりはA組の方向。これはまずい。

敵の妨害をかわしながらF組の方へと戻っている余裕は無さそうだ。

運転席に行くまでの間にC組の車両を通ることが出来るのがせめてもの救い。C組には材木座君がいるからだ。

 

徐倫「行くわよ……たった三人だけど、ウルフスはあたし達が倒す!良いな!?」

 

空条先生が息を吸い込む。そして、くわっと目を見開いて指を上に向ける。

 

徐倫「アーシス、スクランブル!行くぞ!雪ノ下!葉山!」

 

空条先生の口調が変わった。本気になった……ということなんだろう。

俺のはじめての本格的な戦い……。だけど、決して負けられない戦い。

俺は隣に並び立つ雪乃ちゃんを見る。過去に傷をつけてしまった大切な幼なじみ。スタンド使いという非日常が紡いだ奇妙な縁によってやっとわかり会えた彼女との共闘。もう彼女に対しての恋心は振り切った。でも、友愛という愛はまだ消えていない。

……雪乃ちゃんが恋心を抱いている相手は彼だろう。彼は、空条徐倫がこんなことに陥っているならば、必ず守りきろうとするはずだ。そして、仲間である雪乃ちゃんも。

だから、俺は彼の代わりに二人の家族を守り抜こう。

嘘を消すというショボい能力。だけど、この力だって使いようだ。必ず誰かを守れる力になるはずだ。

恐怖を乗りきることが勇気。今度こそ、俺は彼女を、幼なじみを守る。

アルミラージとの戦いで危険を承知でレクイエムを使った静・ジョースターさんのように、何としてでも。

 

現段階での不在者(旅行参加者)

一色いろは

比企谷小町

雪ノ下陽乃

東方仗助

ジョセフ・ジョースター

空条承太郎

ジョルノ・ジョバァーナ

トリッシュ・ジョバァーナ

ジャン・ピエール・ポルナレフ

空条エンポリオ

エルメェス・コステロ

?????

 

眠らされていて現段階での再起不能(リタイア)

比企谷八幡

静・ジョースター

海老名姫菜

三浦優美子

戸塚彩加

由比ヶ浜結衣

川崎沙希

相模南

材木座義輝

 

←To be continued




はい、第5のウルフス、羊のウルフスの登場です。

修学旅行編のウルフスの最初の戦いとなりました。
今回のメインは葉山、雪乃、徐倫です。八幡はまたお休みです。
そして、戸部の依頼を断ったという原作の流れが切ったことにより、修学旅行編はドンパチが多くなるかもしれません。
これまでのウルフス戦との違いはこうです。

人数が少ない。
幼なじみーズが全員不在、または全滅
外部組は事件が起きていることすらまだ知らず、東京を出発してまだ少ししか経っていない
列車は走行中で増援は絶望的
タイムリミットがある

まとめて見ると、かなりまずい状況ですね。
しかも百戦錬磨の使い手は徐倫のみ!
さてどうなるか!?

それでは次回もよろしくお願いいたします!


※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。