side比企谷八幡
いやぁ、あれから大変だった。
遥とゆっこを筆頭に現場班と俺達首脳部との溝が発生した。まぁ、理由は俺達への反発と首脳部へ混じっている相模への反発だ。
色々苦労した。大会が近い部活への配慮とか各部活への折衝。相模を巻き込むのもあれだったので、後は俺やジョジョがやると言った時には相模が怒った。せっかくここまできてそれはないと…。
それからも色々とあった。
特に俺の下駄箱にゴミが詰められていたときは首を捻った。
なにこれ、いじめ?かとも思った。無視とか陰口くらいなら良い。俺もジジイとかジジイとかジジイの陰口は叩くし理解も出来る。
ただ、子供じみた真似をされると訳がわからない。この行動に何の意味があるのやら。誰が得をしてどんな利益があるのやら。
進学校だからバカは少ないと思っていたが、何事にも例外があるものだ。暴力行為に及ばなかっただけましか。ギャングならいきなりチュドーン♪だしなぁ。いやぁ、鈍ってたなぁ……それに比べたらゴミを入れられるくらいで済んで良かったわ。生ゴミだってマシな部類だわ。キラー・クイーンだったらチュドーンだしなぁ。
この程度のテロで助かったわぁ。
しかし、1つ教訓を得たわぁ。人は落とされるととことんまで落とされるもんだとなぁ。
叩かれてる人間は叩いて良いと……誰もが認識するわけだ。
この学校にはこういうことをしてくる奴はいないと思っていたけれど、比率の違いであってどこにでもあるもんなんだよなぁ。俺もまだまだだなぁ。考えてみればSPW財団でもそういうのがあるんだから、総武高校にだってあるはずなんだよなぁ。
平和ボケしてたのか。ウルフスが出てきてるのに鈍ってるんじゃあない。
ま、こんなんなら報復とか考える俺じゃあない。
八幡「ジェムストーン・ザ・ワールド!」
時を止めて下駄箱の並びを見る。総武高校は五十音順で出席番号が割り振られているため、俺のすぐ前が葉山だ。そして、そのすぐ前が戸部。さらにその前が戸塚。
このげた箱も出席番号順に割り当てられている。だから、この四人の位置関係は下駄箱にも適応される。
……許せ戸部。
八幡「コオォォ…」
サンシャイン・ルビーの気持ちになって……
G・S「ゴミゴミゴミゴミムダゴミゴミゴミゴミ!」
何て事はない。時を止められる8秒以内の内に俺の下駄箱から戸部の下駄箱に入れ直しただけだ。
八幡「そして時は動き出す……許せ戸部」
どっかの仄暗い楽しみの為に俺が犠牲になったように、俺の為の犠牲もまた必要なのだ。
まぁ、自衛策としてはこんなものだ。誰にでもどこでも使えるわけじゃあないが、今回はこれが有効打だ。
すると、後方から無駄にはしゃいだ声が聞こえてきた。どうやら朝練を終えた戸部が昇降口に駆け込んで来たらしい。
戸部「え……っかー!マジか!えー!?ちょっ、まっ、えー!」
サッカー部1「戸部、んだよ、それマジウケる」
サッカー部2「ぷっくく、いじめじゃね?」
戸部「ちょっと待ってよ!なんかぁ、俺の下駄箱にゴミ入れられてんだけど、なにこれ、いじめ!?ちょ、俺いじめられちゃってるぅ!?」
葉山「戸部、うるさい」
戸部の四方八方に響く声に辟易した低い葉山のテンション。それを補うかのように戸部のテンションが上がっていき、現状を説明。
葉山「下駄箱、もっと綺麗に使えよ。ゴミ箱に間違われたんじゃあないのか?たまには上履き持ち帰って洗った方がいいぞ」
戸部「ちょっ、隼人くん!ひどいわー」
葉山「冗談だよ。もし続くようならいろいろ考えればいいさ。とりあえず、部室に荷物置きにいこう。ちょっと遅れていくよ」
戸部「っちょー、もう俺ほんとショックだわー。この学校にいじめ存在しないとか文科省嘘つきすぎでしょー。だから政治家って嫌いだわー」
政治家と知り合いだけどね?俺。さて……と。俺も行くか。
葉山「待て、ヒキタニ」
あ、バレてるな。オーラル・シガレッツで肩を捕まれた。
葉山「まさか……お前……」
しらばっくれようと思ったが………。
八幡「ああ。元々俺の下駄箱にやられていたやつだ。戸部には悪いと思ったが、こういう自衛を取らせてもらった」
はて?
まぁ、たまには素直に喋るのも良いだろう。
葉山「戸部の事が嫌いなのか?」
八幡「いや。意図的に戸部の所に入れたのは確かだが、戸部の事が嫌いだからというわけじゃあない。千葉村の件だって肉の芽と柱の一族の呪いのせいで狂ってしまっていただけであって、本人が俺達に害意があった訳じゃあないしな」
葉山「じゃあ何で戸部の下駄箱に?」
八幡「あれほどオーバーリアクションでショック受ける人間もなかなかいないだろ?そのうえ、ここぞとばかりに注目を集めて情報を拡散してくれる。そうすれば俺を攻撃してきた連中も直接的な攻撃は出来なくなる。そいつが今のことを見ていなくても、戸部がいろんな人間に話していく内に犯人の耳にも入るだろ?拡散されて相手も動き辛くなるはずだ。まぁ、犯人にも痛い目をみてもらうがな」
葉山「……君らしいやり方だね。比企谷。でも、あまりああいうのは止めてくれないか?戸部はあれで結構繊細なんだ。というか、しっかり復讐は考えてるんだな」
八幡「俺が直接動くよりかはましじゃね?これで済むならな。いや、俺が動くよりもジョジョやいろはに知られた方が悲惨だぞ?大抵は俺が見つけた場合はこう処理してきたからな。まぁ、戸部には申し訳ないけど」
葉山「どうしてそういうやり方しか出来ないんだか…次は怒るからな?戸部は俺の友達だし、それでなくとも誉められたやり方じゃあない」
八幡「じゃあ次はお前んとこに入れるわ」
葉山「ハハハ。ホントにやりそうで怖いよ……でも、俺としてもショックだな。こんなことがこの学校で起こるなんて……」
八幡「どこの世界でも、結局は同じなんだろ?今回のでよくわかったわ。これでまた1つ、学校が嫌いになったわ」
俺は立ち去ろうとすると、葉山が声をかけてきた。
葉山「比企谷」
八幡「ん?」
葉山「こういう言い方も失礼かも知れないが、今日は素直なんだな。白々しくとぼけるかと思ったよ」
んー?確かにいつもなら煙に撒くところだけど…。
八幡「まぁ、たまには良いんじゃね?ひねくれものが素直になるのも。由比ヶ浜だって普段素直なのがひねくれていたしな。だからじゃね?」
葉山「由比ヶ浜が?」
八幡「現場の準備で由比ヶ浜と一緒に作業していた男がさ、連絡先だの普段はどこに遊びに行くだの聞いてしつこかったんだけどさ、そしたらアイツは三浦の名前を上手く使ってのらりくらりとかわしていたんだよ」
葉山「なるほど。それで今度はひねくれている君が逆をやったわけだ。嫌がらせ、止むと良いな?」
八幡「そうだな」
葉山「まぁ、次は俺の下駄箱で頼むよ。そういうやり方は好きじゃあないけど、その作戦内容が分かれば上手く立ち回るさ。自分がやっていることが、どれだけ卑劣かを自覚してくれれば一番良いからね。……雪ノ下さんや大和の時みたいに手遅れになるのは……もう見たくない」
八幡「そうなったら頼むかも知れん。悪いな」
葉山「ああ。じゃあ、片付けをやって来るから。あと、また波紋の修行に付き合ってくれないか?」
八幡「俺達の特別競技のクロスカントリーや障害部屋をやるだけでもそれなりに修行になるぞ?」
葉山「隣のスポーツセンターに設置されたあれかい?機会があったら試してみるよ…」
俺達はそう言って別れた。
そのあとに残しておいたゴミの1つを護衛に渡し、ジョルノにミツバチに変えておくように頼んでおいた。
翌日には同学年の誰かが季節外れのミツバチに刺されて大変な目に遭ったようだが、知ったことではない。
その直後に相模と例の二人の小競り合いがあったのだが、三浦が「あーし、そこを通りたいんだけど」と言って雑兵を蹴散らし、何事もなく終わった。
三浦は特に相模に声をかけることもなく、歩き去る。それは相模の援護の為にやったことなのか、それともこの状況が気にくわないだけなのかはわからないが。おそらくは両方だろう。
小競り合いはその場は保留となったが、根本が解決しないと収まりそうもなかった。
その日の三浦の不機嫌さは凄まじく、俺達が集まっているときでもただ椅子に座って爪先をカツカツやっていた。普段は傍若無人の俺達でも、これは三浦に話しかけられない。イライラの原因が俺達にもある以上、話しかける事はしない。薮蛇だし。たまに俺やジョジョにもキツイ視線を向けてくるほどだ。あんたら何してるし。的な意味合いだろう。
そして会議の方も文実に勝るとも劣らない状態になっている。会議の体をなしていないのだ。雑談ばかりで報告に関しても現場責任者が権限委譲している状態で、モチベーションや責任感なんて失われている。
「やらされている」「やってやってる」という意識なのだ。任意のボランティアだってここまで酷くない。
特に目玉競技なんて酷いものだ。
棒倒しはまだいい。進捗は赤組の大将選出と、白組の大将候補である葉山に対しての打診くらいだ。
だが、問題は女子の方だった。
例の二人を始めとして、今更の反対意見が出てきたのだ。危ない、大会近い……等々の理由で。
静「だったらうちらの特別競技はなんだっつーの…」
八幡「クロスカントリー、障害部屋、棒登り玉割り、勝ち抜き格闘…。死人が出るな。直接攻撃可だし」
静「配慮はどこにいったの……」
八幡「拒否権無いしね。あと、クロスカントリーで通過する民家がジジイと承太郎の仮住まいってのも嫌がらせだよな?俺らに死ねと?」
静「確実におじさんにオラオラされるよね?」
その場は救護班の設置(仗助?)、消防との連携、ルールの徹底、厳罰化、監視強化を雪ノ下が意見して提案するも、最終的な決を取る前に時間を理由に逃げられてしまった。
相模「うち……辞めれば良いのかな……」
涙目の相模が言ってくる。
静「そうかも知れないね」
相模「………」
雪乃「でも、それで良いの?」
いろは「『その次』や『いつか』は……もうないかもしれません。それで良いんですか?」
相模「うちは………」
めぐり「相模さんはよくやってくれてると思うよ?確かに手際が良いってわけじゃあないけどさ…。でもわたしもできる方じゃあないからわかるんだよ。頑張ってることは」
確かにアーシスとして見ていてもめぐり先輩は統率力に優れているとかという印象はあまりない。
めぐり「いやー、私の前の代の人達ってすごいできる人が多かったからね。はるさんとか」
まぁ、あの人だからな…。あの年で英才教育を受けたわけでもないのに財団の幹部に上り詰める超エリートだし。しかもただの幹部じゃあなくて、部長クラスの管理職のエリート。うちらのような英才教育を施された人間以外では康一さん以上に出世頭だ。
めぐり先輩は自分がぼけーっとしていると自分で言い、生徒会のみんなのお陰で何とかなっている……と言っていた。生徒会役員達はおいおい泣いている。
めぐり「だからさ、相模さんがよくやっているのはよくわかるんだ。ジョースターさん達に色々言われながらも、歯を食いしばってここまで頑張ったんだし、もう少しやってみない?」
Oh……ここで悪役として使われるか…。
相模はそこで泣き崩れる。文化祭、そして体育祭……変わってきた相模を見てきためぐり先輩は誠実に評価してきた。その上で託そうとしている。杉本鈴美が杜王町の誇りを守ろうとしたように、城廻めぐりは総武高校と…そして相模の誇りを守ろうとしてくれているのだ。
相模はそんなめぐり先輩の言葉を受けて、涙を流しながら頷いた。
ならば……あとは……
雪乃「こちらから折れる理由がない以上、向こうに折れて貰うしかないわね」
雪ノ下がそう言う。対立し、譲歩してもなお上手くいかない以上、叩き潰す。俺達のやり方で。
雪ノ下はそこでニヤリと笑う。毒されて来たな…。
相模「でも、どうやって?」
結衣「説得とか?」
ふ…………
八幡「無理だな。出来るとしたら、文実のように大粛清をちらつかせる手もあるが、文実程に効果はない。それでも構わないけどな」
一度完全に壊してゼロベースからやった方が良い。文実でもそうだったしな。
めぐり「うーん……それだとまた変に痼を残すし、時間的にも間に合わないよ?」
静「やりたくなかったけど……かけちゃう?あれ」
いろは「わたしたち首脳部の補強にですか?」
結衣「あれ?」
静「そ、総武高校学生組のアーシス・スクランブル。三浦や川崎、戸塚にも手伝って貰うってヤツ」
雪乃「………そうね。手伝ってもらいましょう。信頼できる仲間達に……」
結衣「……そうだね。文実の事でもみんな、怒ってたもんね」
八幡「なら、サボリやストライキで体育祭を人質にしてきている体育祭運営委員現場班のほうは、こちらも逆手に取るか」
彼らが体育祭を
俺達が気に入らないという理由で部活から与えられた責務を全うしない。ならば、こちらも体育祭を人質に取ってやる。
静「具体的には相互破壊確証…だね?ハッチ」
雪乃「また乱暴な手段を……つくづく性格がわるいわね?性悪コンビ…」
八幡「誉めるな…照れるぞ」
雪乃「誉めて無いわ。けれど、悪くはないわ。私もそこに行き着いていたもの」
結衣「行き着いていたんだ!」
雪乃「パッショーネと一緒にあの世界を渡っていたもの。そういう姑息な手を考えなければ生き残れなかったわ。あの世界に飛んでいった比企谷君の聖なる遺体は、きっとそういう部分が凝縮して詰め込まれていたあなたなのね」
そうかも知れないな。あの世界の俺は、特に残酷さが滲み出ていたしな。アイツがドン引きするくらい。
静「よ♪雪ノ下。性悪シスターズを組んで、性悪カルテットでデビューする?」
雪乃「それは魅力的ね。でも、今は体育祭よ。根回しとかも必要になるわ」
結衣「性悪コンビの言葉を一言で理解できるあたり、ゆきのんも大分毒されている…」
いろは「それがそうでも無いんですよね?基本世界の雪乃先輩も、その辺は素質があったようで…」
ポン♪
八幡「ようこそ、性悪カルテットへ」
雪乃「ふざけないでくれるかしら?空条先生や姉さんが言っていたでしょ?あなた達がやろうとすることは誰かが気が付く…今回は私が気が付いただけよ。基本世界の私が気が付いたのだもの…。パッショーネに染まりつつある私が気が付かないわけないでしょ?」
俺達2年生新生性悪トリオがやり取りしていると…
めぐり「ごめん、説明してくれる?」
雪乃「現場班が体育祭を人質に取るならば、私達も体育祭を人質に取るということです」
相模「は?」
静「運動部にとっては体育祭は華のイベント。このままなら体育祭は文化祭の時と同様に開催できない。助ける気も今回はない。台無しにする。それでも良いならかかって来いっつーの」
結衣「つまり?」
八幡「あいつらが俺達や相模を外すことを要求するならば、あいつらにも外れてもらう要求をしてもらう。覚悟をもってもらうぞ…いつも言っているだろ?」
そこでいろはがため息をつく。
いろは「『覚悟があってきているんですよね?人を始末しようとするからには、逆に始末される覚悟を常にもっている…と言うこと』…ですよね?」
結衣「あ………わかった……かも?」
静「散々部活を盾にやってきたんなら、こっちも部活を盾にするつもりでやっても良いしね」
八幡「夏の大会はテニスとサッカー以外は特に目立つ成績もなかったな。その手もあるか。そして………」
…………………
めぐり「はぁ……やっぱりあなた達、最低だね。ホントにそれで良いの?自分達がそうやって悪意に向けるとか……」
めぐり先輩は哀しい瞳を俺達に向けていた。
すいません。でも……これは仕事であり、文化祭でのツケですから……。
⬅️To be continued
はい、今回はここまでです。
一度完全に壊す……は、この時に原作八幡が頭にちらつかせていたことでした。文化祭で実際にやりましたが。
今回は大分飛ばしました。というのも、文化祭以上に書いていても鬱展開になるような部分が多かったのです。
なので、そう言った場面についてはキング・クリムゾンしました。
それでは次回もよろしくお願いいたします。