やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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ケルベロス戦のエピローグです。


家族

side雪ノ下雪乃

 

徐倫「エンポリオ!」

 

戦いが終わった直後に、空条先生が飛び込んで来たわ。

 

エンポリオ「徐倫お姉ちゃん……」

 

エンポリオ君は丁度ウェザー・リポートのディスクを頭から取り出していたところだった。

空条先生はすぐさまエンポリオ君を抱きしめる。

 

徐倫「無事!?エンポリオ!何であたしを呼ばなかったんだ!ウェザーのスタンドまで使って………」

 

エンポリオ「すぐに分かったんだ……」

 

徐倫「ウェザーのスタンドをあたしがわからない訳が無いだろ!無理をして!」

 

空条先生はなおもエンポリオ君を抱きしめる力を強める。

 

エンポリオ「僕も………僕も真にジョースターになりたかったんだ。空条エンポリオという名前だけじゃあなくて、本当の意味で空条承太郎の息子として…何かやりたかったんだ」

 

エンポリオ君がそう言うと、空条先生はエンポリオ君の頬にキスをする。

 

徐倫「バカな弟……あんたは、とっくにあたしの本当の家族よ。空条承太郎の息子で、空条徐倫のカワイイ弟…それに、ジョースターの精神だって、5年前からとっくに持っていたじゃあない……ホントに、バカな子よ」

 

空条先生はエンポリオ君を抱きしめながらうっすらと涙を見せる。

そして……ウェザー・リポートのディスクをエンポリオ君の手から取る。

 

徐倫「ウェザー……ありがとう。あたしの弟や兄さん達を守ってくれて……あなたのスタンドが降らせた雨からあなたの声が聞こえた気がする……」

 

ウェザーさん……空条先生の亡くなった仲間…。

会ったことは無かったけれど、私はあなたに無量の感謝の意を向けるわ。あなたのお陰で、私達は助かったのだから……。

 

エンポリオ「それに、僕たちには新しい家族ができたよ?もう前から知っていた人だけれど、ジョースターの精神を持った新しい仲間…」

 

エンポリオ君は私と姉さんに視線を向ける。

 

ジョルノ「雪ノ下姉妹は汐華の血縁。つまり、ジョバァーナの血縁だ。必然的にジョースターと縁続きになる。二人は僕達の妹だ」

 

徐倫「陽乃……雪ノ下…いえ、雪乃……」

 

空条先生は私を抱きしめた。

 

徐倫「雪乃。あんたは最初は険悪な関係だったけど、今は雪乃も私達の大切な仲間よ。ようこそ、ジョースター家へ」

 

雪乃「空条……先生……」

 

コン。

空条先生は全く痛くない拳骨を私に落としてきた。

 

徐倫「違うでしょ?雪乃」

 

仗助「そうだぜ?俺の事は仗助兄さんだろ?だったら、徐倫はどう呼ぶんだ?」

 

雪乃「徐倫……姉さん?」

 

徐倫「よろしい。まぁ、いつかはそう呼ぶつもりだったんだろ?雪乃」

 

雪乃「う…………」

 

顔が赤くなるのがわかったわ。

こんな形で空条先生を徐倫姉さんと呼ぶことになるなんて思わなかったのだけれど。

もうバレているしね。

 

陽乃「将来の予行演習になるわよ?雪乃ちゃん♪」

 

姉さん……それは気が早すぎるわ。

そっちの意味で空条先生を『姉さん』と呼ぶのは…。

 

陽乃「そうね。それに、八幡くんがそっちの意味で徐倫ちゃんを『徐倫義姉さん』と呼ぶのは…確実に邪魔してくるね」

 

何故そこで比企谷君が出てくるのかしら?

 

雪乃「まさか……あの男は私まで……」

 

陽乃「違う違う。八幡くんはジョースター気質が結構強いから、雪乃ちゃんをどうこうという考えは無いはずよ?」

 

ではどういう事かしら?

すると、姉さんは私の耳に口を近付けて言ってきたわ。

 

陽乃「八幡くん、エンポリオ君を小町ちゃんの嫁ぎ先にと考えているから、エンポリオ君が好きな雪乃ちゃんを邪魔をしてくると思うの。同世代の中では、エンポリオ君は最高の優良物件だもの」

 

…………そういうことね。

ええ。隼人君が気付くくらいだから、気付いている人は気付いていたと思うのだけれど、私が好きなのはエンポリオ君よ。

出会った頃からエンポリオ君の頭の良さや、少し童顔ながらも整った顔付きには好感をもっていたわ。だけど、本格的に意識をするきっかけは由比ヶ浜さんの誕生パーティーの時。

空条先生の祖母のホリィさんが、エンポリオ君のお嫁さんにどう?と言われた時。

母の意向から、昔からそういう許嫁とかの話はあったのだけれど(その中には隼人君の話もあったわ)、それは雪ノ下の家とかが付きまとった話で興味が持てなかった。

けれど、ホリィさんは私という人間個人を見た上で、エンポリオ君のお嫁さんに欲しいと言ってきたわ。

社交辞令だったのかも知れないけれど、少しエンポリオ君を意識するきっかけになった。

そして、千葉村の時やそれから時々エンポリオ君を見ていたら……。いつの間にか本当に好きになっていた。

特に、今日みたいなカッコいいところを見せられてしまったら……もう、本気になってしまっていたわ。

そこで障害になるのが比企谷君とは思わなかったのだけれど。しかも、エンポリオ君を巡って……だなんて。

 

徐倫「まぁ、ハッチはハッチで雪乃を認めているし、雪乃が本気だとわかれば、諦めるかも知れないけど…」

 

ふ………勝負よ、比企谷君。

どちらが先にエンポリオ君を落とせるか……。

私の蘇った負けん気の強さ、甘くみないことね。

 

 

side空条エンポリオ

 

徐倫お姉ちゃんが雪ノ下姉妹を家族と認めてくれて良かった。きっと、おばあちゃんも……ホリィおばあちゃんも喜んでくれるはずだ。

ホリィおばあちゃんは雪乃を凄く気に入っている。

僕も雪乃の事は気になる。頭も良いし、なによりどんどん強くなって、歴代ジョジョの父さんやお兄ちゃん達に迫る勢いで黄金の精神を宿らせていく雪乃は、僕には眩しく見えた。

特に今日、雪乃と並び立った時、隣に立っていたのが徐倫お姉ちゃんでは無いかと思うくらい、頼もしくて美しく見えた。

元々雪乃は美しかったけど、見た目だけではなくてその中身もどんどん美しくなっていく。

比較するのが徐倫お姉ちゃんというのが、大概僕もシスコンだと思うけれども。

僕が初めて気になった女の子……雪ノ下雪乃。

彼女をもっと見ていたい。

僕が雪乃に相応しくなれるくらい、強くなったと自信が持てるようになったら……その時は雪乃に告白してみよう。

僕はウェザー・リポートのディスクを抱きしめる。そのディスクに、何故だか死んだウェザーの……ドメニコ・プッチだった男の意志が宿っているような気がした。

そして、彼女も………。

ウェザー…F・F…見てるかな?これが、僕が気になる女の子だよ?いつか天国で……いや、もしかしたらハッチ達のように転生してきたら……胸を張って、雪乃を紹介するんだ。そして、お礼を言おう。君達がいたから、こんなに素敵な女の子と知り合う事が出来たんだ。ありがとうって………。

僕はウェザーのディスクをもう一度見る。

 

エンポリオ「ありがとう……ウェザー」

 

sideジョセフ・ジョースター

 

ジョセフ「さすがじゃな。流石は自慢の家族達じゃ!」

 

ワシらは徐倫と同じように、竜安寺のみにかかった雨雲を見て、すぐにウルフスの襲撃を悟り、金閣寺に向かっておった足を、元来た道へと向け直して急いだのじゃが、到着したときには既に終わっておった。

そして、その先で雪ノ下姉妹が仗助を兄さんと呼んでいたところを見て、二人がジョースターの家族になったことを悟った。

 

陽乃「え?ジョセフさん。それって……」

 

何を言っておるんじゃ?陽乃よ。確かに前世のお前さんはワシらを殺そうとしたDIOの刺客やも知れん。じゃが、ワシらはあのDIOの転生である八幡をも家族として迎え入れておる一族じゃぞ?

理由や過去などどうでも良いことじゃ。敵じゃった者らが、ワシらの仲間や家族になるなんて事など日常茶飯事過ぎて今さら驚かんわい。

 

結衣「ゆきのん!おめでとう!」

 

結衣が雪乃に思いっきり抱きついて祝福をしておった。

 

雪乃「え、ええ……あ、ありがとう……由比ヶ浜さん。あ、相変わらず暑苦しいわ…。由比ヶ浜さんの方がよほどアメリカ人のような距離感よね……」

 

照れておるのう雪乃よ。

 

結衣「あ、はるのんさん」

 

陽乃「は、はるのん……」

 

結衣ならばいつかは陽乃をそう呼ぶと思っておったのじゃよ。雪乃の言葉じゃあないが、ワシらよりもアメリカ人っぽいものな。

 

結衣「犬を全部ぶっ殺すとか言ってたけど、サブレだけは許して!サブレはあたしの大切な家族なんだから!」

 

静「あ、確かに!イギーは勘弁してあげて!はるのん」

 

物騒な事を言っておるのう。じゃが安心せい。

陽乃は元々イギーを恨んでなぞおらんわい。

 

陽乃「ああ、それなら大丈夫だよ?だって、わたしが犬と川がトラウマになってるのって、結局前世の自業自得だもの。ハッキリ言えば、完全に逆恨み。逆恨みで大切な仲間のサブレに危害を加える訳が無いでしょ?」

 

陽乃は聡明な女じゃ。とっくの昔にその結論には達しておったのじゃよ。

もっとも………。

 

陽乃「まぁ、だからと言って犬が好きになったわけでも、平気になったわけでもないんだけどね?あくまでも犬の敵に対して開き直ったというか……怖がらないように自己暗示をかけることにしたっていうか……」

 

っという事じゃな。

 

結衣「なんだぁ……サブレと仲良くなって欲しかったのに……」

 

それは無理じゃろ。筋金入りの犬恐怖症じゃったんじゃから、そうは簡単に克服など出来んわい。

そんなことよりも……

ワシは承太郎に連絡を入れる。

 

承太郎『ジジイ。どうした?』

 

ジョセフ「まだ映画村か?」

 

承太郎『ああ。八幡も目を覚ましてこれからホテルに向かおうと思っていた所だ』

 

ジョセフ「いろはを竜安寺まで連れて来るのじゃ。竜安寺にもウルフスが現れおった。エメラルド・ヒーリングが必要じゃ!手遅れになる前に急ぐのじゃ!」

 

承太郎『何!?状況はどうなっている!?』

 

ジョセフ「戌のウルフス、ケルベロスは静、エンポリオ、陽乃、雪乃が撃退した。じゃが、奴には狂犬病の能力を持つ能力があったのじゃ。雪乃のフリージングビームで進行を止めておるが、完全に発症したらわからん!仗助、由花子、結衣が感染しておる!」

 

承太郎『わかった!すぐに向かう!聞こえたな!八幡、いろは、康穂!竜安寺まで向かうぞ!』

 

康穂「ママが!?うん!急いだ上での安全なルートで直ぐに行くよ!ペイズリー・パーク!」

 

ケガはどうにでもなるが、狂犬病は仗助でもジョルノでもどうにもならん。じゃが、いろはなら治せる。

いつもの悪ノリでいろはや小町を連れて来ておったのじゃが、いろはの力が本気で必要になるなんて思いもしなかったわい。

 

結衣「あれ……だんだん気分が……」

 

仗助「ぐっ……フリージングビームの効果が切れて来たんだ……」

 

由花子「こんなことであたしが……」

 

三人の体が異変を訴えておる。

やはりフリージングビームでの応急処置だけでは限界があったようじゃな。

 

静「コォォォォ……」

 

沙希「波紋使い達は三人に応急処置を!一色が到着するまで進行を遅らせるよ!」

 

やれやれじゃな。2日目も波乱万丈な一日じゃったわい。明日は何も無ければ良いんじゃがな…。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。
雪乃の好きなのがエンポリオだったことに気が付いていた方はいらっしゃいますか?

邯鄲な今回の相違点。

原作ではこの後に金閣寺へ→狂犬病の処置の為に竜安寺に留まる。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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