side比企谷八幡
うーん………
不意に目が覚めた。
目の前には幸せそうに眠るいろはの寝顔。
俺だけが見ることが出来る特権……
承太郎「……………」
康穂「……………」
微笑ましいという表情の承太郎と、「ブスッとした表情の康穂が俺を見ていた」
康穂「ブスじゃあないもん!それなりに告白とかされてるもん!」
康穂がポカポカと胸を叩いて来た。
八幡「承太郎はともかく、康穂まで何で?」
康穂「ハッチ達を守ってたんだよ!」
承太郎「よく見ろ。部屋が違うだろ?康穂のペイズリーパークの指示が出る度に移動をしていたんだ」
つまり、その度に承太郎はスター・プラチナを使いながら俺といろはを運んでくれたことになる。
それに、俺は康穂の気持ちを知っている。その上で康穂は………。
八幡「康穂。俺は………」
康穂「言わないで。ハッチ……。本当はわかっていたもん……ハッチはどこまでもジョースターの男だって。生涯一人の女性しか愛せないジョースターだって…」
康穂はうっすらと涙を浮かべながら答えた。
すまん………なんて、言葉は康穂に失礼だ。
八幡「……………」
康穂「いつかは心に整理を付けるけど、ハッチ。一つだけ言っておくよ?」
八幡「ん?」
康穂「あたしをフッたこと、必ず後悔するくらい、いい女になってやるからね!」
充分いい女じゃあないかよ。いろはがいなかったら、俺は多分康穂に惚れていたかもな。
俺にはいろはがいる。危険な戦いや旅に何度も付き合ってくれる嫁が……。
八幡「俺達が悔しがるくらい、いい旦那を見つけてラブラブ夫婦になれよ」
康穂「言ったなぁ?」
康穂が笑顔を向けてサムズダウンをする。
いろは「ううん………あれ?ハチくん?ヤッチャン?」
いろはが目を覚ます。
寝惚け眼で辺りを見回すと、康穂がいることを認める。
康穂「イーハ。ハッチといい家庭を築いてよ?あたしもハッチに負けない相手を選ぶから」
いろは「ヤッチャン………」
康穂「で・も!愛が足りないとあたしが判断したら、ただじゃあおかないから!ママにお仕置きしてもらうからね?」
いろは「……絶対にそうはならないよ?ヤッチャン。わたしの愛は、前世からの筋金入りなんだから。エリナ・ジョースターは、生涯ジョナサンへの愛を貫いたんですからね?」
面と向かって言われると照れるな。
愛してるぞ……いろは。
さて……
体の調子を確かめてみる。完全にとはいかないまでも、心身共にある程度は治っているようだ。
ギュッ!
俺はいろはを抱きしめる。
八幡「ありがとう……いろは」
いろは「まったくです!ホント、わたしがいないとハチくんはダメダメです!ジョースターの気質、一人の女性しか愛さない……というのは安心ですけど、旅行好きで短命な所まで引き継いでいそうで心配です!」
そこを言われるとキツイ……。何度も死にかけているから反論できんしな。
いろは「だから、どこまでも付いて行きます……ハチくんが死にかけたら、何度でもわたしが治してあげるんですよ……」
ギュッ!
いろはも抱き返してくる。100年の時を越えて再会できた俺の本物……。いろはがいるからこそ俺は…。
康穂「ちょっと……ふったばかりの女の子の前でイチャイチャ始まるのは止めてくれる?二人して……」
う。確かにデリカシー無さすぎた……。
俺達がバツが悪く、頬を掻いていると……。
ピリリリリリリリリ!
そんな時だ。承太郎の携帯が鳴り始めた。飾り気のない着信があった場合……それはアーシス用のスマホが鳴ったときの音だ。アメリカ人仕様のゴツいスマホを取り出す承太郎。
承太郎「ジジイからの着信だと?」
流石に寝過ぎたか?あまりに遅いからジジイがしびれを切らしたのかもな。
アーシス特務用の着信である関係から、承太郎はスピーカーモードで電話に出た。
承太郎「ジジイ。どうした?」
ジョセフ『まだ映画村か?』
承太郎「ああ。八幡も目を覚ましてこれからホテルに向かおうと思っていた所だ」
竜安寺や金閣寺はもう今からでは遅いからな。
確かにホテルに直帰するのがベストだろう。
ジョセフ『いろはを竜安寺まで連れて来るのじゃ。竜安寺にもウルフスが現れおった。エメラルド・ヒーリングが必要じゃ!手遅れになる前に急ぐのじゃ!』
また現れたのかよ!ウルフス!
エメラルド・ヒーリングが必要って……仗助やジョルノがいてそれなら病気関連?!
承太郎「何!?状況はどうなっている!?」
ジョセフ『戌のウルフス、ケルベロスは静、エンポリオ、陽乃、雪乃が撃退した。じゃが、奴には狂犬病の能力を持つ能力があったのじゃ。雪乃のフリージングビームで進行を止めておるが、完全に発症したらわからん!仗助、由花子、結衣が感染しておる!』
エンポリオが?すげえな……。ますます小町の旦那に欲しくなってきたぞ!
……にしても狂犬病はまずいな……発症したら致死率が高いじゃあないか!
確かにそれだと仗助やジョルノにはなんともできない。いろはかトニオさんぐらいしか対処法が無いだろう。
承太郎「わかった!すぐに向かう!聞こえたな!八幡、いろは、康穂!竜安寺まで向かうぞ!」
康穂「ママが!?うん!急いだ上での安全なルートで直ぐに行くよ!ペイズリー・パーク!」
ピッ!承太郎がスマホを切り、俺達は映画村を出る。
悠長にバスなんか利用している余裕なんてない。タクシーを拾って急ぐ。出来ればペイズリー・パークを使って安全に行きたい所だが、病魔に蝕まれている三人の容態が心配だ。
ウルフスの能力で病魔に冒された三人。それが普通のウィルスと同じとは限らないからだ。
ーキング・クリムゾンー
いろは「ナイチンゲール・エメラルド!エメラルド・ヒーリング!」
パアアアァァァァ!
ナイチンゲールの回復の弾丸で仗助達の顔色が元に戻り、3人が立ち上がる。
仗助「いろはがいて助かったぜ……杜王町のトニオさんの所まではとてもじゃあないが、間に合わなかったかもな………」
雪乃「由比ヶ浜さん……仗助兄さん……由花子さん…良かったわ………」
雪ノ下が由比ヶ浜の肩を支える。
………ん?今、雪ノ下はなんつった?仗助…兄さん?
八幡「雪ノ下……お前、今………」
雪乃「私もジョースター家に認められたのよ。比企谷君」
雪ノ下が……ねぇ。ん?となると……
陽乃「わたしもだよ?八幡くん♪ジョバァーナの一員として、ジョースター家の一員になったんだよ♪これでわたしも、家族……だよね?八幡くんもわたしの事、お姉ちゃんって呼んでも良いんだよ?それとも、『ハニー』が良いかな?」
マジかぁ………。いや、薄々感じていたけどマジかぁ。
八幡「雪ノ下も俺の事はお兄ちゃん、もしくはお父さんで良いぞ?」
雪乃「冗談はその腐った目だけにしてくれないかしら?勘違いヶ谷君?前世がジョルノ兄さんの父親だったのかも知れないけど、間違ってもあなたにその呼び方をすることは無いわ」
ですよねー。
自分でも言ってて雪ノ下に兄さんとか父さんとか言われるのは違和感があるわ。
アイツに言われるのも違和感があるし。
康穂「じゃあ、ジョースター家の一員になったからには、その気質も知らないとね?」
雪乃「気質?」
康穂「そう。ジョースターの男はね、総じて背が高くて筋肉質」
そう。俺は他の基本世界や平行世界の比企谷八幡とは違い、背が高くて筋肉質な体格をしている。ジョナサンやディオの精神に引っ張られたのか、それとも子供の頃から鍛えていたからかはわからんけど。その両方だろう。
康穂「そして、旅行好きで冒険好きで乗り物運がすこぶる悪い」
雪乃「今回の修学旅行でも新幹線とタクシーで二回も襲われたわね……」
ホントそれ。ジョナサン、ジョセフ、承太郎は勿論のこと、仗助はバイクで噴上さんと戦ったし、ジョルノは電車、ヨット、車、ヘリとかでも襲われた。徐倫も嵌められたとは言え、車のひき逃げが原因だったし基本世界ではヘリに襲われたんだったか?
とにかくジョースター家は乗り物は鬼門だ。
康穂「奇妙な事件に巻き込まれやすく、短命。もっとも、そのジンクスは外れつつあるけど。でも、何とかみんなで協力しているから何とかなってるけど、何回死にかけてるかわからないよね?特に今回の修学旅行とかは異常」
これも反論が出来ないな。
今回、合計6回も2日間で襲われているし。
康穂「社会的に高い地位にいる場合が多い。SPW財団やパッショーネなんてその象徴だよね。アーシスなんて閣下直轄だし」
言われて見れば。元々はイギリス貴族の家系だし、ジジイの頑張りでSPW財団と一体化してるし、承太郎は海洋冒険家として博士号を持っているし、仗助だって日本支部の業績は高い。ジョルノはパッショーネのボスとしてヨーロッパのギャングを手中におさめつつある。
康穂「そして、これが重要。ジョセフ・ジョースターさんという例外はあるけれど、生涯一人の女性しか愛さない」
小町&陽乃「!!」
由花子「康穂………あなた………」
康穂「うん……寝ているハッチとイーハを見ていて思ったよ……ハッチには……イーハだけなんだって……」
そう言って、康穂は由花子さんに抱きついた。
そして…………
康穂「う……う………ひぃぃぃぃぃん………ママァ!」
由花子「………よく決心したわね……辛かったわよね。康穂………」
小町「ヤッチャン………」
陽乃「康穂ちゃん………」
康穂を見て、小町と陽乃さんは俯き、そして……
小町「ヤッチャンの気持ちの整理が付いちゃったんなら、もう小町も諦めるしかないね。ヤッチャンが一番お姉ちゃんに近かったんだから」
小町……やっと普通の兄妹に戻れるのかな…。
陽乃「あーあ……康穂ちゃんが諦めたかぁ……まぁ、八幡くんの側室とかは諦めるとしても……さ、ねぇいろはちゃん……」
陽乃さんがいろはの耳元でゴニョゴニョと言っている。
それを聞いたいろははジト目で陽乃さんを見る。
いろは「確かにハチくんのそれはありますよ?万が一の事を考えて。ハチくんだけじゃあなくてジョースター家の継承権を持った人間のそれは全員分ありますけど…。ハルさんならそんなものを貰わなくても……」
陽乃「無理無理。目ぼしいのはみんな相手がいるじゃん?だから、ね?お願い」
いろは「まぁ……それならばわたしは構いませんけど、きちんとハチくんの許可を得てからにしてくださいね?あと一人目だけは譲りませんから」
陽乃「交渉成立かな?」
八幡「???」
一体何の話だろうか。
この魔王の事だから碌な事ではないと思うが。
雪乃「比企谷君」
八幡「ん?」
雪乃「私、負けないから」
八幡「何を?」
この新しい家族は何を言っているのだ?
負けないって何を?
うーん………わからん。
雪乃「分からないなら構わないわ」
八幡「???」
まぁ、いっか。
雪ノ下なら悪いことはないだろう。本気の内容みたいだし、もし俺とぶつかり合う事があったとしても、それは互いに納得し会う結果に落ち着くだろう。
八幡「そう言えば葉山達は?」
ジョセフ「優美子や姫菜達と一緒に先に金閣寺に行ってもらっておるよ。スタンド使い以外の者達にワシらの事情に踏み込ませるわけにもいかんでのう。上手く誘導してくれておる」
充分巻き込んでいる気がするけど…。
そうか……戸部達も巻き込む訳にはいかないもんな。修学旅行が始まってからは何度も巻き込んじゃってるし。
告白云々はともかくとして、せっかくの修学旅行がドンパチに巻き込まれて気絶しまくりでした…は、流石に一般人の戸部達が不憫すぎる。
しばらく待っていると、金閣寺の拝観を終えた葉山達が戻ってきた。
時間はギリギリだったらしく、俺達はバスに乗って宿に戻る。途中、徐倫が遅れる旨を学校側に連絡し、結果、宿に着いた頃には男子の入浴時間が終わっていた。
結局内風呂に入るように言われてしまったので、だったらジョースター一行の家族風呂に……。
徐倫「どこに行くの?ハッチ」
八幡「い、いや………ちょっと飲み物でも……」
徐倫「売店や自販はあっち。そっちは一般客の宿泊エリアだから生徒は立ち入り禁止。オーライ?」
八幡「い、いやぁ。まだ本調子じゃあないからいろはに癒してもらおうかなぁ……なんて」
徐倫「そう?もう本調子に近いように見えるけど?何ならあたしが添い寝でもしてあげようか?」
く………意地でも通さないつもりだな……ならば。
八幡「ジェムストーン・ザ・ワールド!時よ止まれ!」
徐倫を振り切るだけならこれで充分だ!
いざ、我が桃源郷!いろはの部屋へ!
side空条徐倫
ふ……やっぱりそう来たね?ハッチ。
ハッチが時を止めてあたしを通り抜ける。そんなのは読めるってね。やり口が幼稚すぎてアクビが出るわ。
ニヤリ。
自分でも自覚できるくらいに今、あたしは悪い顔をしているのが分かる。
あたしのところで引き返しておけば良かったと後悔しろよ?ハッチ。
承太郎「やはりそう来たか。俺がいることを忘れるなんて、とんだうっかりだな?八幡」
八幡「何でまたお前が仁王様をやってるんだよ!」
そう。その手が来ると予想していたあたしと父さんは、二段構えで待っていたんだよ。
あたしを抜けるなら時を止める。時が止まれば父さんが気付く。そしてイーハの部屋で待ち構えていた父さんがバッチを捕まえる。完璧な布陣だ。
承太郎「どうせこんなことだろうと待っていた。待っている間にだいぶ論文が進んだぞ、ヤレヤレだ」
八幡「えーと………承太郎?」
承太郎「何だ?」
八幡「怒っている?」
承太郎「怒っているか怒っていないか。自分に置き換えて見ればわかることじゃあないか。で、質問だ。この後俺はどうすると思う?」
八幡「えっと………いつものパターンでオラオラですか?」
承太郎「物分かりが良くて助かる。では、覚悟は良いな?」
八幡「ジェムストーン・ザ………」
承太郎「俺にそれが通用する訳がねぇだろ!」
だから、あたしの所で引き返しておけば良かったのよ。もしくは、あたしにオラオラされるか。
徐倫「殲滅すべし……ハッチ」
あたしは胸の前で十字を切る。
S・P「オラオラオラオラオラオラオラオラ!オラァ!」
八幡「ギャアアアアアアアアア!」
比企谷八幡(ザ・ジェムストーン)…
承太郎&徐倫「ヤレヤレだ(だわ)」
←To be continued……
はい、今回はここまでです。
取り敢えず八幡の女性関係については決着を付けさせました。
外伝を読んだ方は予測が付いたかも知れませんが。
八幡はあくまでも気質はジョースターです。
まぁ、その内ジョースターのジンクス破りが起こる可能性がありますが。
久々の原作との相違点。
八幡は雪ノ下、由比ヶ浜と戸部の依頼の事で竜安寺で話していた→×八幡。由比ヶ浜と雪ノ下はドンパチに巻き込まれていた。
竜安寺で雪ノ下と別れ、葉山達と合流して金閣寺を参拝した→金閣寺へは葉山グループとドンパチに参加していないメンバーのみ。ドンパチが終了した後に合流
最後に承太郎にしばかれる
それでは次回もよろしくお願いいたします。