side比企谷八幡
伏見稲荷の四ツ辻から見下ろす京都は快晴だった。この三日間、天気に恵まれている。初日が荒天だったらマンティコアなんてヤバかったよな。
結衣「おー、すごい!ねっ?ヨッシー」
材木座「うむっ!この絶景を結衣と見られて我は至福の極みなり!」
その眺望に由比ヶ浜と材木座が感嘆の吐息を漏らす。…が、いちいちイチャ付くのはどうかと思うぞ?
小町「人の事は言えないけどねー。普段ならお兄ちゃんとお姉ちゃん、静かに二人の世界に入ってるじゃんか。今はウルフスを警戒して神経を研ぎ澄ましてるけどさ」
小町の冷たいツッコミ。うん、流石に今日は警戒を優先しているから、イチャイチャしていないよ?今日は出来るだけ俺が皆を楽にさせたい。この二日間は碌に働いていないからな。
一方で最近は運動不足なのか、エンポリオが疲労困憊の体で深いため息を吐いており、雪ノ下が支えていた。
まぁわからんでもない。この伏見稲荷大社、鳥居をくぐり続けていくとどんどん上へ上へと行くようになっている。足元は石段とはいえ、その高低差や運動量は正直、ちょっとした登山である。波紋を修得する前の雪ノ下ならばエンポリオと一緒にへばっていただろう。
昔のエンポリオならば余裕だったかも知れないが、研究職に邁進している今のエンポリオでは少しキツいようだ。
今俺達がいる場所はまだ序盤。ここからさらに上に幾つもの鳥居が控えている。だが、軽い気持ちで観光に来た人間が更に上まで行くのは稀だろう。多くの人間はここまで来てそれなりの達成感を得て降りていく。
俺達もこの後にまだ予定がある。てっぺんまで行く時間は無さそうだ。
何よりそれだけの体力がなさそうなのが約1名。
雪乃「ちょっと休憩しませんか?」
ジョセフ「そうじゃのう。机にかじりついてばかりじゃと体に悪いぞ?ジョギングなどして体力を取り戻した方がええ。なまっちょるぞ?エンポリオ」
エンポリオ「アハハハ……確かに最近はなまっていたかも……雪乃に追い抜かれちゃったな」
雪乃「波紋のお陰ね。だからあまり誉められたものでは無いわ。少し前ならエンポリオ君以上に体力が無かったのだもの」
縁台に腰をかけて雪ノ下は持ってきたお茶をエンポリオに渡す。少しばかり火照った体に涼しい風は心地良いだろう。
え?何で他人のような言い方か……だって?
なりたての波紋の戦士の雪ノ下がケロッとしているのだから、俺らにしてみれば普通の登山程度なんて平地を歩いているのと大して変わらない。
波紋の戦士ではない人間でも普段から鍛えているので、この程度ではへばらないだろう。少々ばかりエンポリオが運動不足だったのだ。
一服している内に参拝客がだんだんと増えてきた。
それを見たエンポリオがゆっくりと口を開く。
エンポリオ「そろそろ降りようよ」
ジョセフ「大丈夫か?お前さん」
エンポリオ「大丈夫だよ。おじいちゃん」
そう言って降りていったわけだが、下りは下りで大変だった。昼近くになってくると、観光客も活発化してきたのか、ちょうど上がってくる人達とかち合ってしまう。
ようやくの思いで下まで降りてきた。
いろは「流石は観光地ですね。結構な人混みです」
満足げな様子で言ういろは。こういった人混み等はあまり気にしないタイプだ。むしろ人混みの多さに当てられているのは……。
エンポリオ「大丈夫?雪乃」
雪乃「この人混みは花火大会以来ね……。ありがとうエンポリオ君。さっきとは逆になったわね」
うんざり気味の雪ノ下にエンポリオが付き添う。
八幡「…………なぁ」
いろは「どうしました?」
八幡「修学旅行が始まって以来、気のせいかエンポリオと雪ノ下の距離が近いような気がするんだが……」
ギクッ!Σ(・∀・)
元々エンポリオと雪ノ下は仲良かったとは思うが、何て言うか修学旅行が始まってからは双方とも互いを大事にしすぎている感じがあるような……気のせいか?
いろは「き、気のせいですよーハチ君?」
小町「そうそう!ほら、二人とも頭が良いから互いに尊敬しあってるんだってば!」
陽乃「勘の良い子は好きだけど、勘違いする子は嫌いだよ?八幡くん?」
そうか?それにしても仲が良くなりすぎてね?まぁ、俺なんかよりも恋愛脳レーダーが強い女子連中がそう言うんじゃあ俺の勘違いなんだろうけどさ。
雪ノ下が誰と仲良くなろうと関係ないが、エンポリオは小町を任せる事が出来る数少ない男だ。
エンポリオだけは許さんぞ?雪ノ下……。
いろは「不味いですね……危惧した通り、エンポリオと雪乃先輩の仲を妨害する可能性があります」
陽乃「妨害する理由が酷く的はずれなのがちょっとね」
小町「雪乃さんが美人だから狙ってるとかじゃなくて、エンポリオ君のお嫁さんを小町にしようとしてるとか、完全に余計なお世話なんだよねー」
由花子「これはあまり良くないわね。私は泥棒猫も嫌いだけど、お邪魔虫も嫌いなのよ。東方仗助や虹村億泰のせいで」
仗助「そこで俺を引き合いに出すなよ。あん時は悪かったからよぉ。だからこそ戸部の依頼を断ったんだろ?」
静「ジョースター家って恋愛が絡むと途端にポンコツになるよね?パパ以外は……ね?おじさん♪」
承太郎「……古傷を抉るんじゃあない」
ん?何だか背後の幼なじみーズ達がこそこそとうるさいような……。
それに何で由花子さんが怒りの阿修羅の表情でこっちに来てるの?
由花子「八幡くん?小町ちゃんの恋愛事情に首を突っ込むのは良くないわよ?東方仗助のように引っ掻き回したりしたら、また怒るからね?」
八幡「え?その話って、元々拗らせようとして……」
あ、地雷踏んだ。
由花子「八幡くん?何か言ったかしら?」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!
憤怒の阿修羅に変わりかけてるぅぅぅぅ!
八幡「アイアイマム!な、何でもありません!愛の師匠のお言葉通りであります!マム!」
よく間違われるけど『サー』とは男性の上官に対して言う言葉であって、女性の上官に対しては『マム』と答えるのが正しい。
小町がたまにいろは達に『アイアイサー!』とか言っているけれど、それは盛大な間違い。
俺に対して『アイアイサー!』と言うならば合ってはいるが、いろは達に対しては『アイアイマム!』が正しいのである。
デラックスされたくない俺は、とにかく納得は出来なかったが、従順にしておくことにした。
まぁ、下手に介入したら親父のようにうざかられるしな。その方向性でゴミぃちゃん言われたら多分泣く。
小町「大体お兄ちゃんに失恋したばかりなのに急に気持ちが切り替わるわけ無いじゃんか……。ホントに鈍感」
へいへい。わるうございましたってね。
それにしてもどこかで出店でもあるのか?急に甘い匂いが漂って来たんだが………。
あれ?この匂い……。どこかで……。
まさか!
そこで俺は鼻で息をするのを止める。
この匂いを吸い続けていたら……。
材木座「ぐぅぅぅぅ!この感覚は……」
戸塚「前にやられた事がある……ホール・シンクス!」
戸塚が次々と俺を含めた全員にホール・シンクスの鉄球をぶつけて来た!
俺は咄嗟に反応出来ず、頭に受けてしまう。
戸塚「ごめんね……八幡………空条博士達………男は起きていては行けないんだ………」
そう言って戸塚は自分自身にもホール・シンクスの球を首に当て、自ら気絶する。
八幡「………戸塚……ちょっと判断謝った……な…」
俺の意識はブラックアウトしてしまった。
俺とジジイと承太郎は気が付いて反応したのに……。
比企谷八幡…
ジョセフ・ジョースター…
東方仗助…
ジョルノ・ジョバァーナ…
空条エンポリオ…
材木座義輝…
戸塚彩加…
side一色いろは
いろは「戸塚先輩!どういう事ですか!」
何故戸塚先輩は味方を攻撃し、そして自分自身も気絶してしまったんでしょうか?わたしにはわかりません。
結衣「ちょっと!さいちゃん!何してるし!」
彼氏を気絶させられ、結衣先輩も激怒しています。
当然、わたしもです!せめて説明してから気絶してくださいよ!
陽乃「……そう言うことか。八幡くんや材木座くん、東方社長は大丈夫だったかも知れないけど、他は危なかったかもねー」
沙希「リベンジマッチか……待ってたよ。この時を。三浦や相模に恨まれるかな?あの時いたもんね」
三浦先輩に相模先輩?更にはるさん……
雪乃「姉さん……もしかして戸塚君は……」
陽乃「自分が前に嵌まっちゃったからねー。だから気が付いたんだと思うよ?これは……男を操る力……」
ありましたね。ウルフスの一人にその能力が。
確か……
いろは「スラピー……。丑の横牛!」
見ると、そこかしこの男性達が女性に暴力をふるっています!戸塚先輩はすぐに気が付いて対処したんですね。
わたし達に全てを託して……。
男なら誰でも持っているマザコンの本能……。そこを突いて男を操る能力により、戸塚先輩と康一さんは操られ、はるさんと三浦先輩は敗れました。
あの時は大志くんだけは操られませんでしたが、それは沙希先輩が家では忙しい母親に代わって家事全般を担っていた関係でシスコンとマザコンの二つの感情を向けていた沙希先輩が近くにいたからこそです。それもかなりギリギリで。
なるほど……。戸塚先輩の判断は間違っていなかったんですね?愛する人が近くにいれば良いわけでは無いんです。どんなに拒絶しても、どんなに嫌っていたとしても、男性はどうしても親の影響を受けてしまうんです。
知っていますか?
太平洋戦争でアメリカ空母に飛行機で自爆攻撃を仕掛けたという日本の神風特攻隊。
その人達は出撃したり、特効する間際で叫んだ言葉。旧日本軍は自軍の兵達の士気を煽る為に『天○陛下万歳』と叫んだ事になっていますが、実際は違います。
『お母さん、さようなら』
これが、実際の言葉です。
そして、ジョースター家は家族愛の強い一族。
ジョルノだって危なかったと思います。
小町「…………あれ?だったら……」
いろは「ジョセフは大丈夫だったかも知れませんね…」
だって母親と祖母の転生がここにいるんですから。
やってしまったものは仕方がないですが。
承太郎「いてててて……野郎…」
承太郎が立ち上がりました。
ヤバいです!承太郎が操られてしまいます!
承太郎「案ずるないろは。俺の鼻は特別製でな。ハイウェイ・スターの噴上程ではないが、横牛の能力が発現した段階で鼻で息をするのを止めた。ジジイと八幡の奴も気が付いて対処したようだが……こればかりは戸塚を責められんか。戸塚は戸塚なりに最善の方法を取ったのだからな……あのままだったら仗助とジョルノ、材木座が操られていたのだから。八幡とジジイは不運だったとしか言いようがない」
承太郎は丸めたティッシュを鼻血の患者がやるように鼻に詰めていました。
そしてスター・プラチナで気絶したメンバーをココ・ジャンボの中に
承太郎「こういう時こそ、葉山の能力が役に立つんだがな。不運というのは重なるものだ……ヤレヤレだ」
そうですね。葉山先輩は同じ敷地にいるのでしょうけど、それぞれの場所では別行動を取ってます。戸部先輩達をウルフスの戦いから隔離する為に、そうしているんです。三浦先輩、海老名先輩はその護衛も兼ねて今日は葉山先輩グループと行動しています。
向こうの都合に合わせるのも兼ねているみたいですが。
本当に不運ですね。葉山先輩のオーラル・シガレッツならばスラピーの能力は無効化出来ると思えるのに…。
承太郎「沙希、陽乃、結衣、エルメェス、ポルナレフ。俺と一緒に横牛と戦うぞ。いろは、小町、静、雪乃、トリッシュ、由花子。お前達は複数の敵と戦うのに向いている。操られ、暴徒化した奴等を何とかしてくれ。出来るか?」
小町「え?何でそのメンバー?」
承太郎「お前らなら手加減も出来るだろう。それに、沙希と陽乃は横牛では手酷くやられている。リベンジマッチに燃えているようだしな。それに、仗助、ジョルノがやられてしまった今、万が一の時にはお前の力が必要だ。いろは、お前が切り札なんだ……頼んだぞ」
MMOで言うところのヒーラーですね。確かに責任重大です。
承太郎「頼んだぞ……お前達。相手は騙し討ちで何とか倒せた強敵だ……アーシス、スクランブル!」
←To be continued
最近出番の少なかったいろはと承太郎、出陣です!
またしても八幡は再起不能!どうなってしまうのか!?
それでは原作との相違点。
3日目の行動は奉仕部の三人のみ→基本的に葉山グループも含めて全員が同じ敷地にはいる
雪乃のポジション→エンポリオ
八幡ポジション→雪乃
休憩を提案するのは八幡が雪乃に対して→雪乃がジョセフに対して
ヤバいのは横牛だけではありません!いろは達は大丈夫なのか!?
それでは次回もお願いいたします。