side空条承太郎
承太郎「今度はバスガイドか。上手く化けたものだな。横牛」
俺は舞岡と書かれたプレートを付けた女を見る。
母親と認識させるスラピーの能力。前回の相模の体を乗っ取った時にも思ったが、依り代にするべき女が若すぎるんじゃあ無いかと思う。
横牛「良くわかったじゃあないの?空条承太郎」
承太郎「お前はアホか?ハーメルンとは違い、男だけしか操れないお前のスラピーの能力では、俺達と相対している女が横牛だと当たりをつけるのは当たり前だろう」
少し考えれば解ることだ。こいつが横牛でなければ、この暴徒化した集団から逃げない女がいる訳が無いじゃあないか。
バシュン!
自力でゴールドスリープから目覚めさせたポルナレフがココ・ジャンボから出てくる。
ポルナレフはチャリオッツを出して横牛に剣先を向ける。
ポルナレフ「ボンジュール。ディアブル・横牛」
ディアブル。フランス語で悪魔か……。言い当て妙だな?ポルナレフ。
横牛「ジャン・ピエール・ポルナレフ……相模南の体を乗っ取った時は良くもやってくれたな。聞けばあの小娘も無事だとか……どういう手品を使ったのか教えてくれないかしら?後でサービスしてあげるから。この体、前の小娘の体とは違ってセクシーでしょ?」
横牛は美人バスガイド、舞岡舞のグラマラスな体でしなを作り、表情を妖艶にして笑いかける。
ポルナレフ「ノンノンノンノン」
ポルナレフはおどけて指を横に揺らし、拒絶の姿勢を作る。
ポルナレフ「前にも言ったが、私は既に死人だ。死人である故に私にハニー・トラップは通用しない。性欲はない。もっとも、生きていたとしても私は既に結構な年齢だったんでね。未だにあっちでも現役なジョースターさんと同じにされては困る。もっともだ、南は私にしてみればカワイイ娘みたいなものでね。彼女を苦しませたお前の誘惑なんて、生きて性欲があったとしても御免だ。どんなに美人でグラマラスなマドモアゼルでもね」
あの一週間。横牛が相模を乗っ取っていた期間、ポルナレフと相模はココ・ジャンボの中で奇妙な共同生活をしていた。そして、決戦の時にはポルナレフの体を共有して使った仲だ。たった一週間ではあるが、なるほど。年齢的に考えてもポルナレフは南くらいの年の子供がいてもおかしくはなかった。
情が移ってしまっているのだろう。相模もポルナレフのことは誰よりも尊敬しているように見える。
そんなポルナレフにしてみれば、どんなに美人でグラマーな女が相手でも横牛が乗っ取った舞岡舞に対しては憎しみこそ募れど、欲情を抱く相手では無いのだろう。
陽乃「アヌビス神!」
陽乃がスタンドを展開する。
陽乃「承太郎、ポルナレフ、サキサキちゃん。よろしくぅ♪」
陽乃が俺達三人にウインクする。
そう言うことか。
承太郎「スター・プラチナ!オラァ!」
ポルナレフ「シルバー・チャリオッツ!」
沙希「サキサキ言うなって!
俺達がアヌビス神にスタンド攻撃を叩き込む。
陽乃「くぅぅぅ!クラクラする!でも、この力……覚えたわよ♪」
スター・プラチナのパワー、シルバー・チャリオッツのスピード、沙希の波紋パワーと技術……。
陽乃はそれらをアヌビス神に覚えさせ、そして自らの力に変える。
エルメェス「あたしのキッスで二本にしようか?陽乃」
陽乃「二刀流は慣れて無いんだよね~。前世でやったことはあるけどさ♪それに、剥がして元に戻ったらわたし、死んじゃうって」
エルメェス「違いねぇな!確かにポッキリ折れちまいそうだ!イーハじゃあ直せねえな!」
アヌビス二刀流か……それってポルナレフを乗っ取った時にやったヤツじゃあないか。
ポルナレフ「陽乃。イヤな事を思い出させるな」
陽乃「だよねぇ♪でも、こうして並び立つなんてね?承太郎、ポルナレフ」
結衣「はるのんさん、何かわかり合ってるって感じですね?」
確かに奇妙な縁ではあるな。あのアヌビス神とこうして並び立つなんてな。それも、ポルナレフと一緒に…。
横牛「ふん。ロートルが二人に小娘が四人。この私が舐められたモノよね?私の恐ろしさ。忘れた訳じゃあ無いでしょう?もうあんな搦め手に引っかかる私じゃあ無いのよ?」
沙希「借りは返すよ。横牛。大志の代わりにね」
陽乃「わたしもだよ?優美子ちゃんの代わりにね」
陽乃と沙希、二人が前に出る。
結衣「ちょい待つ待つ!あたしだって!あの時やられたのはサキサキやはるのんさんだけじゃあないんだから!」
エルメェス「あたしを…忘れてもらっちゃ困るぜ?」
由比ヶ浜と沙希、エルメェスも前に出る。
承太郎「ロートルか……確かにそうだが、それを覆すジジイがいるんでな。孫がチンチラしている場合じゃあない」
ポルナレフ「何度でも手玉にとってやるさ。横牛」
ふ……頃合いだな。
承太郎「アーシス!スクランブル!行くぞ!お前ら!」
横牛「舐めるな!ミノタウロス!」
ぬ……いきなりか!
ヤツの馬鹿げたパワーとスピードの一撃。
沙希と大志が耐えきれなかった攻撃だが、スター・プラチナとそのパワーを覚えたアヌビス神ならば!
S・P「オラオラオラオラオラオラ!」
陽乃「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」
陽乃と二人がかりで横牛の突進を防ぐ。
だが……
承太郎「なんてパワーだ!」
陽乃「スター・プラチナのパワーを覚えたアヌビス神でも……それもスター・プラチナと二人がかりで!」
二人がかりで押し込まれる俺達。
最強のスター・プラチナと言われる俺のスタンドだが、最近はそのアイデンティティーも失われつつあるな。
マジでスター・プラチナの力押しが通用しない敵が多く出てくるようになったじゃあないか。
押され、ダメージを負ってしまう俺と陽乃。
だがな。
ポルナレフ「チャリオッツ!」
沙希「サマーハプノ!」
結衣「リバース!」
エルメェス「キッス!」
本命はこっちだ。
特にチャリオッツはともかく、他の3人は決まればそれだけで一撃必殺。
特に由比ヶ浜のリバース・タウンは不確定要素が高いながらもその運を奪う力はこれまでに何度も強敵を退けている能力だ。
絶対に食らいたくはない。
サマーハプノ・サファイアやリバース・タウンの事を知っているウルフスならば、食らいたくはない攻撃。
承太郎(使ってこい!)
横牛「牛歩!」
やはりそれを使ってきたな。劣化キング・クリムゾンを!
承太郎「スター・プラチナ・ザ・ワールド!」
時飛ばしに対抗して俺は時を止める。
飛ばされた時の中で動けるのは横牛のみ。だが、その中で時を止められれば?
時を止められた中で動けるのは俺と八幡のみ。
俺は奴の牛歩のカウンターとして、ザ・ワールドを発動させると決めていた。そして、その中での行動は仲間達を回収して逃げる事のみを頭で決めている。
危険な賭けではあるが、どういう結果で終わる?
次の瞬間、エルメェスと沙希は吹き飛ばされ、俺の目の前に拳が迫って来ていた。
不味い!
承太郎「スター・プラチナ・ザ・ワールド!」
ブウウウウウン!
奴の能力は絶大だ。あのザ・オーガ並の能力だと聞いている。
与えられた5秒。その中でどう動くか?決まっている。
仲間を回収してもう一度逃げる。
あのパワーに対抗するにはスター・プラチナでは弱い。
いつもならばここでスタンドを叩き込む所だが、今は逃げの一手だ。
俺は仲間達を回収し、再び奴の背後へと回る。
承太郎「そして時は動き出す」
横牛「モォ!っち!また時を止めやがったのか!しつこいロートルね!」
承太郎「しつこいのは家柄でな。特にうちの元当主は折り紙付きだ」
今は戸塚に眠らされているがな。マジでジジイの奴は何度殺しても死なないんじゃあ無いかと言うくらい、昔からしぶとい。
横牛「空条承太郎ぉぉぉぉ!」
奴は憤怒の表情でこちらを睨み付けてくる。
思った通りだな。奴の力は……。
承太郎「どうした?時飛ばしと時止め。勝ったのは時飛ばしの方だ。ならば何度でも使って来れば良いじゃあないか」
リベンジに燃えていた沙希。それにエルメェスは残念ながら再起不能だ。もしあれを何度もやられてしまっていたならば、こちらに打つ手は無いだろう。
だが、これまで何度もウルフスと闘ってきた俺達だ。そろそろ弱点と言うものも見えてくる。
横牛「……………」
承太郎「テメェらウルフスの弱点。それは能力があまりにも多すぎる事だ。それ故に、例えば俺達のような時を止めたりする強力な能力は、何度も連発して使うことが出来ない。さしずめ数分から数時間のクールタイムが必要……又は、使用する時間が制限されたりする。…と言ったところか?」
昨日の反省会でアーシスの皆と話して気が付いたことがあった。
何故横牛はキング・クリムゾンのような能力、牛歩を連発してこなかったのだろうか?と。
あれを何度も使われていたならば、ポルナレフと相模は横牛になすすべなくやられていたはずだ。
そしてたどり着いた仮説。
奴等は能力が多すぎる故に強大な力は何発も連発出来ない。そして……。
承太郎「お前らウルフスの元となる十二支。本来ならば方角を示す筈の存在に、中国の十二支を考えた者は余計な属性を方角に加えた」
それは干支の動物。そして……。
承太郎「時間、季節、日付という概念をな」
今の時間はほぼ正午の時間だ。丑の干支は1時から3時の時間を属性としている。
今日、この時間に仕掛けて来るべきではなかったな?横牛。
この時期、この年、この時間……ありとあらゆる意味で横牛は逆に近しい物を示している。
承太郎「前に使っていた丑の刻参りはどうした?使えないのか?」
横牛「…………」
承太郎「沈黙は肯定だ。横牛」
S・P「オラァ!」
ゲシッ!とDIOにやったような膝へのキックを横牛にくれてやる。
やはり効いてねぇ………。
横牛「大した分析力だわ。空条承太郎。あなたが分析した通りよ。時飛ばしは制限が多くて1日に1回だけしか使えない。更に丑の刻とほぼ真逆な今の時間ではあの呪いも全く使えない。だけどね………」
メキメキメキメキ…
横牛が徐々に筋肉を隆起させる。
横牛「調子に乗るんじゃあないよ!空条承太郎!あんたら人類に、あたしの基本スペックを破れるとでも思っていたのかぁぁぁぁ!」
猛然と襲ってくる横牛。
陽乃「モード!ザ・オーガ!」
陽乃が部分透過で奴を斬りつける。だが……。
横牛「効かねーっつってんだろ!間抜けがぁぁぁ!」
内部まで固いのか、奴には通用していなかった。
陽乃「ちぃっ!中まで脳筋!?」
ポルナレフ「ならばチクチク行かせて貰うまでだ。どこまでこの人数相手に持つかな?横牛」
チクチクチクチクチクチクチクチクッ!
ポルナレフは自慢のフットワークで横牛を翻弄する。
陽乃「薄皮一枚ずつ、チクチクっとね♪」
結衣「その隙に……」
横牛「貴様の攻撃だけは絶対に食らわん!由比ヶ浜結衣!」
一進一退の攻防が続く。奴はとにかくリバース・タウンの攻撃を警戒していた。由比ヶ浜の攻撃は威力よりもその後が怖いからな。
徐々に場所を移しながら、横牛と俺達の攻防は続く。
何とか近郊を保っていた俺達だったが、ここで綻びが出始めた。
ポルナレフ「うぐ………!」
ポルナレフの動きが徐々に鈍くなってきた。
しまった!
ポルナレフ「……………」
バタッ!
結衣「ポルナレフさん!」
倒れるポルナレフ。その体から魂が……。
間に合え!
俺はココ・ジャンボを懐から取りだし、ポルナレフへと投げ付ける。
いつもならジョルノに生命力を与えて貰い、その上で戦っていたポルナレフ。
だが、今日はそれをやる前にジョルノが倒れてしまった為、その肉体に生命力は込められていない。
死んでしまっている体が完全に機能停止してしまったのだ。
幸いポルナレフの魂が飛んで逝ってしまう前にポルナレフをココ・ジャンボの中に納める事が出来た。
しかし、力の均衡が破れたのは大きい。
横牛「まずはお前からよ!由比ヶ浜結衣!」
結衣「あ………あああああ!」
破れた均衡により、隙が生じてしまった俺達。その隙を突かれて横牛の拳が由比ヶ浜に迫る。
??「由比ヶ浜をやらせんよ!ウルフス!」
バッ!
颯爽と白衣を靡かせ、あの女が横牛と由比ヶ浜の間に割って入ってくる。
ガシィ!
横牛「あんたは……ブラッディ・スタンド使いの…」
平塚「平塚静だ。ザ・オーガ!」
メキメキメキメキ!
平塚静の体が横牛のそれと同じくらいの大きさまで筋肉が隆起する。この女……。
承太郎「……何故ここに?」
平塚「ふ……偶々だ。そもそも私は平日は昼から夜にかけての仕事なのでな。この時間帯、普通の中学生は授業の時間だろう?午前中からこの時間帯まではやることはあまり無いのだよ。そういう時、大抵はドライブを兼ねた京都観光をやっている」
結衣「あ、そう言えばゆきのんが誰かに今日の予定を送っていたような……それって平塚先生?」
それは偶々では無いだろう。
まぁ、案外カッコ付けたがりの人物だったというからな。偶然を装った方がカッコいいというヒーローものの地を行ったつもりなのだろう。
だが、理由はどうでも良い。助かった事には変わらないからな。
平塚「ゆ、由比ヶ浜!私の事は良いだろう!?早く何とかしろ!こいつのパワー、私のザ・オーガと同等の力だ!」
確かにキツそうだ。
スター・プラチナでは抑えきることが出来なかっただろう。
平塚静の登場は、確実に風を俺達へと向かせてくれた。
結衣「はぁい。じゃあ………リバース!」
R・T「了解しました。マスター」
恭しく一礼したあとに、リバース・タウンは拳を握る。
横牛「やめろ………何が起こるか予測不可能だ……」
結衣「えっと、露伴先生なら……もう悪いことはしない?」
おい。余裕をぶっこくんじゃあない!
横牛「もちろんだ…お前達の前には絶対に「だが断る!」なにぃ!」
R・T「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!
リバース・タウンのラッシュが横牛に決まる。
まるで効いているようには見えないが、リバース・タウンはこれでいい。
由比ヶ浜は危なっかしいが、ここぞという場面で必ず敵を倒している。
結衣「あたしがもっとも好きな言葉の一つは、自分が強いと思っている人に『ネイン』を突きつけてやることだよ!」
露伴の名言をこんなところでカッコ付けてやるんじゃあない。しかも彼氏の材木座の影響か、ノーの部分がドイツ語のネインにアレンジしてやがる。こいつだけは本当に色々と読めない。
ヤレヤレだ。
横牛「ち、ちぃ!今日はここまでにしておいてあげるわよ!」
横牛が慌てて逃げ出そうとする。
しかし………
チュドーン!
逃げ出した奴の足下が、突然爆発した。
………何でこんなところに不発弾が……しかもこんな地表スレスレにある?
確かに北野天満宮のある京都市上京区等では太平洋戦争の時に空襲があった事は記録に残っている。
しかし、それがこんなところに埋まっているのは明らかにおかしいだろう。リバース・タウン……やはり何が起こるか全くわからない。
だが、由比ヶ浜の攻撃は確かに通用し、片足を吹き飛ばしている。横牛の再生能力をもってしても、粉々に吹き飛ばされては意味を成さないだろう。
更に奴の不運は続く。
沙希「はぁ……はぁ……やってくれたね横牛……。死体射ちは趣味じゃあ無いけど、あんたにだけは借りを返すよ……」
S・S「パウ!」
沙希が横牛を殴り、血中糖分を奪うことで奴のパワーを奪う。
三浦「凄い音が聞こえて来てみれば……こいつは横牛。こんなところで復活してたし!」
いろは(英語)『大丈夫ですか?ライフタウンさん。こいつがあなたを利用した犯人ですよ?』
ライフタウン『ありがとう。プリティーガール。こいつだけは許さない!』
ココ・ジャンボにしまわれているリタイア中の者達を除いた全てのスタンド使いがここに集結していた。
陽乃「承太郎。フィニッシュをお願いね♪」
弱った横牛の手足を切り落とした陽乃が良い笑顔で言う。リベンジそのものは果たせなかったが、せめてこのくらいの腹いせくらいはしたかったのだろう。
八幡は陽乃を魔王だと言っているが、案外こういう部分がそうなのかも知れない。
承太郎「ヤレヤレだ……。こいつを使わずとも勝てたか」
俺はココ・ジャンボから矢を取り出す。しかし、矢はスター・プラチナに刺さることは無かった。まだ時期では無いのだろう。
承太郎「レクイエムの餌食にならなかったことだけは、不幸中の幸いだな……横牛」
俺は息を吸い込む。
S・P「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オラァ!」
横牛「ギャアアアアアアアアアア!」
舞岡舞(横牛)…死亡
承太郎「何度も言わせるな。ウルフス……」
俺は倒した横牛に背を向け、いつものセリフを吐く。
承太郎「お前らは俺を怒らせた……」
俺が活路を開いた訳じゃあないから、イマイチしまらんがな。たまには良いだろう。
ヤレヤレだ……。
←To be continued
はい。二度目の横牛戦終了です。
承太郎回だったのですが、終わってみれば美味しいところを平塚先生と由比ヶ浜がかっさらっていました。
本当の承太郎の活躍はこれからですしね。
そろそろ戸塚と川崎にも活躍させたいところですね。
それでは次回もよろしくお願いいたします。