やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

448 / 731
戸部翔は色々と疑問を持つ

side比企谷八幡

 

色々あった伏見稲荷を後にし、俺達ジョースター京都ツアー御一行は次の観光地、東福寺を目指す。

ここまで来たらジジイ達も意地なのだろう。何が何でも観光する気らしい。

それに、葉山達の事も気掛かりだ。

戸部の告白の事ではない。ウルフスの動向だ。

ウルフスは葉山達もターゲットにしている節がある。やはり柱の一族は奴等にとっては良い使いっ走りだったのだろう。

 

八幡「なーんか結局、ウルフスに振り回されてね?おまけに戸部の動きにピッタリとくっついてるって…」

 

ジョセフ「じゃが、奴等は元ブラッディ・スタンドもターゲットにしてしまっておるようじゃ。放っておくわけにもいかんじゃろ」

 

救いなのは東福寺は紅葉の名所として楽しめる場所だと言うことだ。まぁ、波紋の戦士としても東福寺は興味が無いわけでは無い。それに、仕事も忘れて(絶賛アーシスとしては業務中なのではあるが)旅行を楽しんでいるわけだし(昨日は寝て終わりだったが)。

東福寺は紅葉の名所ではあるが、京都中央部からやや外れているので修学旅行ではなかなか足が運び辛い。

強い人気を誇るのは紅葉だけでなく、この寺に架けられている通天橋も理由の一つだろう。通天閣ではない。かつて俺達がドンパチの果てに倒しかけた電波塔とは全く関係ない。

眼下に流れる小川に架けられた、寺と一体となった橋に立つと視界いっぱいに紅葉のグラデーションが飛び込んでくる。その景観は寺の落ち着いた雰囲気と相まって、実に雅やかな印象を与える。

紅葉も盛りは過ぎているので、おそらく最盛期よりは随分とましなのだろう。だがそれでも通天橋のあたりは多くの人がいる。

 

結衣「おーい、ゆきのーん!」

 

雪乃「これが有名な通天橋……どこにでもあるような朱色の橋なのだけれど、ヤッパリ本物は別格ね……ブツブツ……」

 

雪ノ下さーん?自分の世界に入りすぎじゃあ無いですか?確かにこの紅葉と通天橋には計算され尽くした美しさがあることは認めよう。だからといって勉強熱心さが半端では無いですって!

 

エンポリオ「鹿のウルフスがいなくて良かったね」

 

何で花札知ってんの?牡丹があったらここで亥のウルフスが現れんの?やだー。

 

雪乃「あら?隼人君達も楽しくやっていそうね?」

 

ん?おお、戸部と海老名が二人して紅葉をバックに写真を撮ったりしている。そのカメラマンを務めているのは人混みの中でも爽やかさを忘れない男、葉山隼人である。うーん、あいつ…そういうところでは目立ちすぎていて、間違ってもシークレットサービスとかには合わないな……音石さんクラスとかではないと逆に主役を食ってしまう。良い意味できらびやかな奴が全てに向いているとは限らない訳だな。

護衛(と言うことにはなっている)の三浦とかもそうだけどさ。あいつも何気に目立ちすぎるし。

 

八幡「しかし、戸部の奴のアプローチもあれだと任務の延長線みたいな感じで受け止められてるな」

 

最近ではそれなりに交流を持ってはいるものの、あれで告白するのは時期尚早のような感じがする。一度は壊れた関係だ。

 

いろは「二人きりにするのも危険ですからね。ウルフスが元ブラッディ・スタンド使いを狙っているのは確かですし、そうなると護衛が必要ですから。スタンドを取り戻したのは葉山先輩と南先輩だけですし」

 

静「海老名と三浦は任務としか考えていないかもね。まぁ、一度壊れた関係だからね。まずは関係の修復からってところじゃあないかな」

 

八幡「……それで告白って時期尚早のような気がするけど?」

 

それがわかってない葉山とは思えないが……。

 

静「それにさ。パパが言っていたけど、花京院さんって承太郎おじさんばりに女の子に人気があったらしいよ?」

 

いろは「その転生である海老名先輩が戸部先輩の空気に気が付いていない訳がない……ということですか?」

 

多分、そうだろう。既にその手の警戒とかしている感じがあるかも知れない。

あと、その血は君も継いでるからね?

何気によく告白されてるのを知ってるよ?恐るべし、花京院の血筋……。

 

雪乃「告白とかしようとしてくる時って、周囲のざわつき加減でわかるものね」

 

静「からかいだったりあざけりだったり、そうした周りの声が耳に入ってくるし」

 

いろは「そういう前兆があってだいたい呼び出されたりします」

 

八幡「経験談ですか」

 

前述のいろははともかく、ジョジョも雪ノ下もアーシスの他の連中も性格が性格だからついつい忘れがちになるが、基本的に美少女であり、モテるのである。

 

小町「あの感覚、やられる側はたまったものじゃあないよね」

 

八幡「へぇ………」

 

雪乃「まるで晒し者や見世物にされる気分になるの。良い迷惑だわ。誰かさんにはわからないと思うけれども」

 

八幡「だな。こんな目だから怖がって近づきもしないしな。いろは達の話でもよく聞くわ。非モテ最高」

 

雪乃「嫌味のつもりだったのだけれど、むしろ肯定の上に流されてしまったわ……」

 

別に不特定にモテてもどうでも良いからな。

この手の話はいろはからよく聞いている。その後不機嫌になったいろはを宥めるのは結構大変なのだ。

花京院時代ほどでは無いにしても、海老名もそういう経験はあるだろう。黙っていれば男子なら誰もが一度は好きになること請け合いの黒髪見た目清楚系の美少女だ。前世も含めて異性の空気には敏感であっておかしくない。

本性を知ってればとんでもないが。格ゲーの時は酷すぎたし。お腐れプレイが半端ではなかった。動きを止めて至近距離でレロレロって……思い出したくないからやめよう。この話はまた別の機会にするかもしれない。

 

結衣「まぁ、なるようにしかならないんだろうけどね」

 

依頼を受けていたならば色々と考えなければならないのだろうが、残念ながら戸部の依頼のようなものは俺達の方針からはもっともかけ離れたタイプの上に苦手なタイプだ。

その戸部が俺達に気づき、手を振ってくる。

葉山や相模、海老名達も手を振ってきたので由比ヶ浜が代表して大きく手を振る。

俺達?軽く手を上げた程度だ。

それが合図になったのか、葉山達がこちらに合流したきた。

 

戸部「よっす。今日は良く顔を見合わせね?俺らは先に嵐山に行こうと思っててさ」

 

知ってる。なるべくこちらの行動に合わせるように打ち合わせしておいたからだ。奴らがブラッディ・スタンド使い達もターゲットにしてくる可能性がある。

 

結衣「あ、そーなんだ。あたしたちももうちょっとしたら行くんだ」

 

由比ヶ浜がさらっと話を合わせた。

こちらの事情を話していないだけで嘘は言っていないからな。なかなか上手くなったじゃあないか。

葉山、戸部、由比ヶ浜、相模グループと人当たりの良い人種の和やかなムードに比べ、裏側では夏に戻っていた。

 

三浦「………」

 

八幡「………」

 

静「………」

 

三浦と俺達性悪コンビが無言で視線を交錯させる。いやいや、それほど企みも何も無いってば!一応は相模とお前は仲良くなっただろ?だから護衛を頼んだんだってば。怒りの炎を出すんじゃあない!

居心地悪いからもう帰りたい……千葉に。

京都に来てから何の楽しみも無いしさ!強いて言うなら武者修行だよ!

何でウルフスとのドンパチばかり起こるんだよ!

内心泣きたくなるのを堪え、三浦から視線を外すと誰かと目が合った。

 

戸部「比企谷君」

 

いつものように軽い感じでウェイウェイやるような声音。その調子っぱずれに明るい感じでようやく戸部だと認識する。いや、その声で話しかけられたからこそわかったのだと言っていい。

普段の戸部翔なら決して見せなかったであろう、その仄暗い瞳。

声をかけたきり、戸部は歩き出す。

通天橋から移動して、庭の方へ出るつもりらしい。振り替えることもなく、人の間をするすると、まるでサッカーのドリブルで敵の選手の間をかわすかのように華麗にかわして行く。

言外に付いてこいと告げているようだった。

で、あれば俺はそれを追うだけだ。

庭園は見事に紅葉が色づいていて、多くの人が足を止めて眺めたり写真を撮ったりしていた。

ほとんどオートマチックに人を避ける能力を持つ俺にとって、この人混みはどうということはない。というか、どうにかなってしまったら小町とジジイにエア・サブレーナー島に送られて波紋の再修行をさせられてしまうだろう。

その俺から見ても戸部の人の間を避ける能力は中々である。普段はああだが、サッカーの練習は真面目にやっているのだろう。ディフェンスを抜くように動きに無駄がない。

観光客が行き交う順路の端、人の流れを見定めるような場所で戸部は思い詰めたような顔で俺を待っていた。

 

戸部「比企谷君……改めて相談があるんだけど…」

 

おいおい……。ここにきてまたかよ。

 

八幡「海老名の事なら断ったはずだし、何度相談されても答えは変わらないぞ?」

 

戸部「それじゃあないんだ!」

 

普段の軽々しい口調ではなく、余裕のない切羽つまった感じの口調で俺に詰め寄ってきた。

 

戸部「何を隠してるんだよ!教えてくれよ!隼人君は何も教えてくれない!困ったような顔をして何でも無いって言うんだ!隼人君が俺に何かを隠してる!そしてそれは比企谷君やジョースターさん達にも関係してる!教えてくれよ!」

 

八幡「何で……そう思う?」

 

戸部「比企谷君。バカにするんじゃあない。色々とおかしいだろ!最初におかしいと思ったんは文化祭の頃からだよ。今まで俺らとは距離を取っていた比企谷君達が徐々に隼人君達と距離が近付いて来てたし、時々放課後も一緒にいるときがあったっしょ?それだけなら何かあって仲良くなったって程度で気にしなかったよ…」

 

上手くやってるつもりでもボロは出るものだな。

戸部にとっては葉山は本当に親友なのだろう。

 

戸部「決定的におかしいと思ったんは修学旅行。色々と誤魔化そうとしてるけど、ここまで何度もおかしな事が起きておいてバレないと思ってるって?舐めねーでくれねーかな?」

 

……確かにな。

戸部は何度か巻き込まれて気絶している。普通に考えれば色々とおかしいことに気が付くだろう。

 

戸部「更には優美子や海老名さんが今日は俺らと行動している事だけどさー。あれ、俺の為に気を回してくれたとかじゃあ無いだろ?依頼を断ったし、そんな気を回すなんて事をやるような甘い人間じゃあねーべ?他に何か理由があるんだよな?」

 

く………舐めてた。

失礼な事だが、戸部翔という男は深くそういうことを考えない性格だと思っていた。だが、戸部だって総武高校に入学出来るくらいの学力を持っている。

修学旅行の奇妙な事の連続で何も思わない程バカな奴に入れる程総武高校は甘くない。

 

戸部「それに……俺、見ちまったんよ。昨日、お化け屋敷で幽霊みたいな何かを。あれ、演出とかじゃあ無いよな?」

 

なん……だと?

スタンドが見えた?

ハーメルンが見えたと言うことか?

 

戸部「息をのんだっしょ?最近、どういう訳か人の行動の細かい動きっていうの?そう言うのが気になるんよ。比企谷君……やっぱり何かを知ってるよな?それを教えてくれ!それが新しい俺の依頼っしょ!」

 

葉山や相模、平塚先生がそうだったんだ。戸部のスタンド能力が何らかの条件で復活していてもおかしくはない。

事情を話すのは容易い。だが、それを判断するのは俺じゃあなくてジジイ達だ。

だからこそ葉山も話せなかったのかも知れない。もしくは戸部まで巻き込みたくなかったのか……。

これは葉山やジジイ達と話す必要がある。

 

八幡「知っている」

 

戸部「………やけに素直に話してくれたんだな」

 

八幡「戸部が言うとおり、単純に誤魔化しても無駄だと思ったからな。それに、口八丁で上手く誤魔化しても納得はいかないだろ?だが、話せるのはそこまでだ」

 

戸部「どういう事?」

 

八幡「ジョースター家が動いているのはわかっているよな?それはSPW財団が動いているって意味でも」

 

戸部「……ああ、比企谷君達がSPW財団の職員って事もわかってるっしょ」

 

最近ではその立場を隠せなくなってきてるからな。開き直って堂々としているくらいだ。

 

八幡「……戸部が知りたがっていることはそれに抵触する事だからな。悪いが、話せる資格が俺にはない……という事だ。これでも大分譲歩をした上での解答だぞ?」

 

俺がそう言うと、戸部は何かを言いたそうにしながらも口を閉じる。

組織としての事情を出すのは逃げだろう。だが、これでも自力でここまでたどり着き、信用ない俺に対して相談してきた戸部翔という人間に対する俺なりの最大限の敬意と譲歩だ。

 

八幡「もし、話す時が来るならいずれ話す。それまで待っていて欲しい……。俺が言えるのはそこまでだ。戸部には悪いが……」

 

俺は戸部に対して頭を下げる。

 

戸部「………わかった。その時を待つわ……比企谷君が頭を下げるなんて珍しいものも見れたし。今はそれで納得するけど……」

 

八幡「やけに素直に納得したな」

 

俺の誠意が伝わったのだろうか?

 

戸部「……下手したら比企谷君、ヤクザ以上に怖いんっしょ?これ以上に追及しようものなら消されてもおかしくないわー。そんな比企谷君が頭まで下げたんなら、充分誠意を見せてくれたって納得したわー」

 

誠意の伝わりかたがあんまりだぁぁぁぁ!だったが、自分で撒いた種だったのでここは黙っておくしかなかった。

 

←To be continued




話す気になれば八幡だって話せる立場にはあるでしょうが、これまでのウルフスとの戦いで弱気になりつつあるかも知れません。
解答を先送りにした八幡。
まあ、組織としてはそれが正解なんですけど、本作の八幡としてはらしくないところではありますね。

それでは修学旅行編のクライマックスもそろそろです。
戸部の告白はどうなる?ウルフスも黙っているとは思えない!果たして?

原作との相違点。

回っている場所が同じ事くらいでほとんど全てですね。
とりわけ重要なところはここですか。

八幡を連れ出したのは海老名→戸部

隠された依頼の確認をする海老名、この段階では海老名の真意に気が付いていない八幡→ここまでのおかしな事件に我慢が出来なくなり八幡にストレートに聞く戸部だが、「知っている」という事だけを伝えて後は話せないと伝える八幡

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。