片膝を突いているギース。
しかし、その表情には笑みが………。
ギース「なるほど……ここまでやるとはな。影はともかく、ベガやルガール、そしてクローンとは言え、豪鬼すら退けただけはある。ここは素直に負けを認めるとしよう。中々楽しめたぞ……テリー達の弟子よ……」
八幡「はぁ……はぁ……素直に敗けを認めるじゃないか」
ギース「事実だ。負け惜しみを言ったところで結果が変わるわけではない」
八幡「素直に負けを認めたならば、観念して捕まり、罪を償え！ジェフさんの事とかな！」
ギース「ふ……勘違いするな。負けを認めたからと言って、私はお前達に従うとは一言も言っていない」
室内の照明が消され、暗転。
バリィィィィン！バルバルバルバル！
音のした方に目を向けると………
ビルから転落していく男の姿が。しかし、それはルガールの姿………。
「くぇぇぇぇぇぇぇぇ！」
ギースはヘリの縄梯子に掴まり、既に逃げ支度は万全に整えられていた。
ＤＩＯ「くっ、ルガールを落として自分は逃げるか。落ちるのはお前のお家芸だろ。逃げるのがお家芸のジョースター家だが、逆にやられるとムカツクな……」
ギース「ワハハハハハ！貴様らに落とされる程、私の命は安くはない！」
ベガ「逃げるか………ギース」
ギース「フンッ！ベガよ………影を唆して好き放題してくれたな………この借りは必ず返すぞ………必ずだ」
ベガ「良いだろう………いずれはその首、かっきる…」
消えるベガ。
静「く………豪鬼のクローンとルガールは倒したけが、ベガとギースが！」
ギース「さらばだ………二度と会うことは無いだろう。元々この世界は貴様らとは無縁の世界だ。貴様らが大人しくしていれば、こちらから手を出すことはない。私が決着を付けるべきは貴様らではない。わかっているだろう？アンディ・ボガードよ……フフフフフ……ハハハハハ………ハッハッハッハッハッ！」
アンディ「………」
ＤＩＯ「ギースが逃げるぞ？俺ならまだ何とか出来るが？どうする？」
八幡「いや。そのままで良い。アイツが言うように、あのギースと決着を付けるのは俺たちじゃない。そうだろ？アンディ兄ちゃんにとっては悔しいとは思うけどさ」
アンディ「………わかっている。あのギースと決着を付けるべきなのは………この世界の兄さんや僕であって、僕達じゃない。心は納得出来ないけどね……」
静「一応聞くあたり、ハッチにしてはおとなしいじゃん？」
ＤＩＯ「承一郎や忍さん達のお陰かもな。粋ってヤツが少しはわかったのかもな………ん？地獄門に光の矢が……」
封印の儀だ。
楓「今度こそ………本当にさようならだ……姉さん…」
地獄門が消えたことにより、禍々しかった空が嘘のように空は雲ひとつない澄みわたった青空が広がった。
ヴァレンタイン『………聞こえるか？八幡君』
ＤＩＯ「閣下。ご心配をおかけしました。この世界の異変は終わったようです。いろは達と合流し次第、また連絡を致します」
ヴァレンタイン『了解した。準備ができ次第、迎えに行こう』
ＤＩＯと静の通信機から、彼らの上司であるファニー・ヴァレンタインの声が響く。
地獄門の影響により、阻害されていた異世界の通信が通じるようになったようだ。
八幡「………どうやら、本当に終わったみたいだな」
ＤＩＯ「ああ。あとはいろはと陽乃さんを回収してドジャァァァァンだな。もうひとつ、やることがあるし」
Ｇ一色「もうひとつ？」
静「あんた達を元の世界に送り届ける事だよ。閣下に送り届けてもらう必要があるでしょ？」
八幡「そうだったな。知り合いばかりが出てきていたから、あまり異世界という感覚が無かった」
ＤＩＯ「さて………行くか」
餓狼世界・千葉稲毛
アンディ「送って頂き、ありがとうございました。ファニー・ヴァレンタイン大統領閣下」
ヴァレンタイン「構わない。八幡君といろは君の土下座とか珍しいものが見られたのだからな」
Ｇいろは「く………大統領とか雲の上の人過ぎて普通は混乱しますよ！」
八幡「思わずやってしまった………」
実はそれを密かに楽しみにしているヴァレンタイン。ポーカーフェイスを保ってはいるものの、どこか満足げである。
ＤＩＯ「さて……お別れだな。この世界の俺。比企谷八幡。結果的には楽しかったよ。お前との共闘はな」
八幡「ああ。だが、心残りはある」
ＤＩＯ「あん？」
八幡「お前との決着だ。結局は、最後まで戦えなかったからな」
ＤＩＯ「本来スタンド使いの闘いは、こんな正面からドンパチするようなものじゃあ無いからね？やることが出来る幅が広がるから、ジジイや小町から波紋の修行を受けていて、あの戦いに付いていけたけど、君達と俺達の世界の基礎身体能力は雲泥の差があるからね？それで未完成とかなに？」
八幡「それでも俺は、お前とはきちんと戦いたい」
ＤＩＯ「…………ったく。わかったよ。遠くない未来でまた来るよ。面倒だけどな。全く……完全な格闘家になりやがって。なに？そのうち真の格闘家でも目指すの？」
アンディ「僕の心残りは君達を完全に更正出来なかった事かな？キムにでも任せるべきかもね」
八幡「それは名案だね。アンディ兄ちゃん。更正といったならば、キムさん以上に適任者はいないや」
ＤＩＯ「勘弁してくれ………ツッコミ鳳凰脚は勘弁だ」
ヴァレンタイン「八幡君………そろそろ……」
ＤＩＯ「了解です。閣下。じゃあな……格闘家の比企谷八幡、そしてその堅苦しい兄貴分よ……俺の事を忘れるなよ？」
アンディ「また会おう。僕の事が嫌いじゃなければね。間抜け面」
八幡「そうそう忘れるキャラじゃないぞ。お前はな。元気でな。そして次に会うときには、もっと完全な格闘家になっているよ」
ＤＩＯ「…………知らぬは本人のみ………か」
八幡「あん？」
ＤＩＯ「何でもないよ。アリーヴェ………いや、チャオ。八幡………それに、アンディ・ボガードに一色」
ヴァレンタイン「ドジャァァァァン！」
アメリカの国旗に包まれ、自分達の世界に帰還するアーシスの面々。
Ｇいろは「帰っちゃいましたね？先輩」
八幡「ああ………。でも、最後にアイツはどういう意味で言ったんだろうな？アンディ兄ちゃん、わかるか？」
アンディ「………さぁね」
アンディ(八幡………君もロックや北斗丸と同じなのさ。君も………巣立ちの時が来ているんだよ。もう君は弟のような弟子ではなく、一人の格闘家として……)
不思議そうな顔をしている八幡。
結衣「あっ！ヒッキー！アンディさん！いろはちゃん達だ！おーい！どこに行ってたの！？あたしもゆきのんもすごく心配したんだからね！」
雪乃「比企谷くん。説明をしてくれるわよね？」
八幡「由比ヶ浜と雪ノ下か。あの二人を見ると、やっと日常に戻れたんだな………ね？アンディ兄ちゃん？」
アンディ「そうだな………」
アンディ(……誇らしく思うと同時に、寂しいとも思う。人の心は………複雑だな)
八幡「アンディ兄ちゃんも、後が怖いと思うぞ？舞姉ちゃんとか………」
アンディ「……………あ……………」
顔を青くするアンディ。すっかり忘れていた。
その背後にはいつの間にかアンディの背後を取っていた舞の姿が………。
さすがは不知火流忍術の正当伝承者である。
舞「ア～ン～ディ～？私を置いてどこに行っていたのか、詳しく聞かせて貰うわよ～？」
雪乃「私もよ、比企谷君と一色さん。特に一色さんからは色々と聞かせて貰うことが多いようなのだけれども…」
八幡＆アンディ＆Ｇいろは「い…………」
画面が空へとスライドしていく。
八幡＆アンディ＆Ｇいろは「イヤァァァァァ！」
数日後……
パオパオカフェ・千葉支店
極源流空手の使い手、川崎沙希がカウンターの中でグラスを拭いている前で、宿命の三人……テリー、アンディ、ジョーが並んで座り、酒を傾けていた。
テリー「そうか………。別の世界とはいえ、八幡はＫＯＦで戦える実力を見せたのか………。若い頃のMr.KARATE(リョウ)や京とも対等に戦うなんてな……」
八幡が現極源流総帥、２代目Mr.KARATEと対等に戦ったと聞いた沙希は、驚きのあまり危うくグラスを落としそうになる。
ジョー「それもギースとやりあえるくらいによ……」
アンディ「もう……彼はロックや北斗丸と同じなのかも知れないよ……巣立ちの時だと言うべきかな」
テリー「もう少し早ければ、アイツを『ＭＵＸＩＮＵＭ ＫＩＮＧ ＯＦ ＦＩＧＨＴＥＲＳ』に連れて行っていたかも知れないな………」
少し前に第２のサウスタウンと呼ばれたセカンドサウスで行われたＫＯＦ。
ロックや北斗丸が出場した大会。
今の八幡はその大会に相応しい実力を持っているとアンディから報告を受けたテリー。
その表情は嬉しそうでもあり、そして寂しそうでもあった。
ジョー「次の『ＭＵＸＩＮＵＭ ＫＩＮＧ ＯＦ ＦＩＧＨＴＥＲＳ』があったならば、出場させてみるのはどうだ？テリーよぉ。もっとも、そんときには俺の育てたアイツも出す予定だから、俺としても複雑だがな」
弟子の成長というものは、師匠にとっては寂しいものである。
あるいは独り立ち間近の子供に対する親の心境なのかも知れない。
沙希「………ＭＵＸＩＮＵＭ ＫＩＮＧ ＯＦ ＦＩＧＨＴＥＲＳか………もしそれが開催されるのならば、その時までにはあたしも負けていられない……」
ライバルである比企谷八幡に触発され、更なる修行を付けた川崎沙希が、ロバート・ガルシアの後を継ぎ、３代目『最強の虎』の名を冠するのは、それからしばらく後の話だった。
数ヶ月後………
セカンドサウス
第二回ＭＵＸＩＮＵＭ ＫＩＮＧ ＯＦ ＦＩＧＨＴＥＲＳ決勝戦
八幡「待っていたぜ！この
ロック「時々、ワケのわからないネタをやるよな。八幡」
まるでどこぞの東方仗助に匹敵する金髪トサカ頭の魍魎みたいな事を良いながら、ロック・ハワードと対峙する八幡。
決勝戦までの道のりは長かった。
３代目無敵の龍『マルコ・ロドリゲス』や３代目最強の虎となった川崎沙希、キムの息子達にちゃっかり参加していたＤＩＯやら静・ジョースターにアンディの弟子の北斗丸、ジョーの弟子の女の子などくじ運が悪すぎるとしか言いようがないトーナメントを勝ち抜いた八幡。
本人曰く。
八幡「この上なく『
とどこぞの
そのうち音色をトーンとか言って、セロニアスのミドルネームを持つ『時貞』みたいな事を言いそうだが、本物の天草な時貞が現れ、『侍魂』が始まりそうなので是非とも止めていただきたいものである。
ロック「どこまでが余裕で、どこまでが本気かわからないけど………やるなら全力でやるよ。八幡」
八幡「ＫＯＳＦでお前との本気のバトルはリハーサル済みなんでな。どこまでも羽ばたくのは俺の方だ。ロック」
１０歳の頃に出会い、兄弟のように育ちながらも互いにライバルとして切磋琢磨してきた八幡とロック。
その長年の集大成が今、ぶつかり合おうとしていた。
八幡「全力で……飛ばすぜ！」
ロック「来いよ………ルーキー！」
次代の伝説の狼となるのは、悪のカリスマの息子か…それとも、誰よりも優しい宿命の三人の弟子か……。
その答えは……また次の機会に。
はい、餓狼世界の八幡のエンディングです。
さて、川崎沙希の３代目最強の虎とマルコ・ロドリゲスの３代目無敵の龍……。では２代目の無敵の龍と最強の虎とは？
実は２代目の無敵の龍と最強の虎こそがリョウ・サカザキとロバート・ガルシアの龍虎主人公コンビであり、それでは初代は誰？という話になりますが……。
初代無敵の龍はリョウの父、タクマ・サカザキ。最強の虎はタクマのライバルであり、龍虎の拳に登場しているリー・パイロンの師匠、リー・ガクスウだったりします。
そして、さりげなくリョウ・サカザキが２代目Mr.KARATEになっていますが、実はリョウ・サカザキ。初代餓狼伝説の段階で既に２代目Mr.KARATEとなっています。
考察ソースは餓狼伝説ワイルド アンビジョン(以下『餓狼ＷＡＢ』)。餓狼ＷＡＢはストーリー上では初代餓狼のパラレルワールドと語られており、それをソースにすると龍虎２～初代餓狼の１２年間の間にリョウはタクマからMr.KARATEの名を受け継いだと考えられます。
え？餓狼伝説スペシャルでリョウ・サカザキが全盛期の姿で出ている？
当時はまだ龍虎の世界が餓狼の１０年前という設定が確定していませんでしたし(確定したのは龍虎２に登場した若ギース)、餓狼伝説スペシャルそのものが餓狼伝説２をベースにしたストーリーなしのお祭りゲームでしたから(ギースは餓狼伝説スペシャルで再登場していたが、生きていたというのがストーリー上確定したのは餓狼伝説３。餓狼伝説の時系列では餓狼伝説から４年後)。
次回はアンディ・ボガードのエンディングです。