片膝をつくギース。
アンディ「終わりだ!ギース!」
立ち上がり、両手を上げるギース。
ナイトメア・ギース「レェェェェイジィィィィング…」
アンディ「くっ!超烈破弾!」
気を纏った弧を描くダブルミサイルキックがギースに命中する。
ナイトメア・ギース「うわぁぁぁぁぁ!」
ギースは壁を突き破り、高層ビルから投げ出される。
アンディ「ギィィィィスゥゥゥゥゥ!」
パシッとギースの腕を掴むアンディ。
アンディ(何故だ!何故僕はギースを助けようとしているんだ?あれほどギースの事が憎かったのに……)
自らの行いに困惑するアンディ。
ギース「フッフッフ……やはり兄弟か……あの時のテリーと同じ事をする……」
アンディ(兄さんも!?多分、兄さんもあのキング オブ ファイターズの時に……)
10年前にテリーがギースを倒したときのシーンが浮かぶ。
ギース「フフフ………アンディよ。楽しかったぞ……思えば真に恐れるべきは貴様達兄弟だった……。ジェフよりも……クラウザーよりも……」
ギース「我々は狼だ……。勝者が生き残り、敗者は散っていく………。このギースに膝を付かせ、あまつさえ止めを刺さずに逆に助けようとするとは……人としては貴様らは優しすぎるな………だが!good bye!」
♪嘆きの声 届かない夢
アンディの手を振り払う。
ギース「さらばだアンディよ!ワハハハハハハ!」
笑いながら落下していくギース。
アンディ「ギ、ギースゥゥゥ!」
ナイトメア・ギース・ハワード……死亡
死亡と共に消えていくギース。
アンディ「ギース…………」
しばらく動けないアンディ。
そんな彼の様子を黙って見まもる八幡。
DIOと静もこの時ばかりは空気を読んで大人しくしている。
そんな中、地獄門に光の矢が打ち込まれる。封印の儀だ。
楓「今度こそ………本当にさようならだ……義姉さん」
禍々しかった空が嘘のように、雲ひとつない澄みわたった青空が広がっていた。
八幡「アンディ兄ちゃん………」
アンディ「…………大丈夫だ…………自分を見失っていないよ。八幡」
DIO「良かった………あのまま一気に老け込んで、更に髪の毛が後退するかと思ったぞ」
静「舞さんに恨まれたくないしねー」
アンディ「今度は超神速斬影拳をやるよ?二人とも」
DIO「マックス2超必殺技は勘弁して下さいごめんなさい」
アンディ「まったく………しかし、このサウスタウンはまだ………」
八幡「サウスタウンがどうかしたの?アンディ兄ちゃん」
アンディ「そうか……君はまだ、サウスタウンに来たことが無かったね……」
八幡「まともに飛行機に乗ったのが今回が初めてということもある。つうか、パスポートとかどうなってるの?」
DIO「ああ。それならこっちのアンディさんのつてを使ってその筋(チン・シンザン)の人に偽造を………」
アンディ「ツッコミ空破弾!」(超烈破弾の原型となった必殺技)
DIO「ぐはぁ!」
アンディ「まったく………ある意味では助かったから良いものを……とにかく、すべてが終わったわけだね」
八幡「今回の大会は、いい修行になったな。これで少しはテリー兄ちゃんに近付けたか?」
アンディ「そうだね。今度、少し大きな大会があったなら紹介するよ」
アンディ(兄さんがロックに対してそうしたように。彼に足りないのは……大きな舞台に立つための経験だな)
アンディの表情は……少し寂しそうなものだった。
巣立ちの時が………近付いている。
それが嬉しいと同時に……寂しい。
餓狼世界……千葉・近くの公園
八幡「野郎……DIO……相変わらず汚い手段を……なんでハーミット・パープルが足から出ているんだ!」
八幡が足からこっそり伸ばしていたハーミット・アメジストに絡み取られ、雁字からめに縛られている。
DIO「だから俺は格闘家じゃあないから。勝てば良かろうなのだ!」
DIO本来の戦い方は暗殺者向けの実戦派だ。
正々堂々とはほど遠い。
舞「あらあら。あっちの八っちゃんはどちらかといえば北斗丸の修行相手にピッタリね?ほら、頑張って。八っちゃん!」
いろは「せんぱーい!頑張って下さーい!邪悪の化身なんてやっつけるんですよー!」
結衣「ヒッキー!負けないでー!」
DIO「アウェイ感半端なくね?無理矢理仮想ロック・ハワードとして付き合わされてるのに、周りからの野次が酷くない?せめてこっちの声援があってもよくない?」
雪乃「DIO君。あなたの戦い方、嫌いだわ」
DIO「あぁそうですか!嫌いで結構ってなぁ!」
組手を再開する八幡とDIO。
それを見守りながら、テリーとアンディは先の戦いの事について語り合っていた。
テリー「そうか……お前もギースと……」
アンディ「ああ……あの世界のサウスタウンは……あの頃のままだったよ」
テリー「今のサウスタウンはあの頃以上に治安が悪いからな。ビリーの奴がギースの後釜として、ロックを狙っているらしい」
ギース亡き後のサウスタウンの治安は悪化の一途を辿っている。誰もがギースの後釜を狙い、ボスを名乗って群雄割拠の時代。
皮肉な事に強大な力を持っていたギースが君臨していたからこそ、サウスタウンの治安は守られていた。
アンディ「ビリーは妹さんの……たしかリリィさんと一緒にイギリスに帰って普通の生活に戻ったはずだろ?」
テリー「ギースが君臨していた街で、ギース以外の誰かがキングだなんだと言っているのが我慢ならない…だとよ」
アンディ「今はメフィスト・フェレスという組織のデュークがサウスタウンのキング……だったかな?」
テリー「サウスタウンが誰の街なのか……わからせるか……」
アンディ「責任を感じているのかい?兄さん」
テリーは未だに悪夢としてギースが死んだときの事を見るそうだ。
時にはあの時のギースがロックになったり、ギースが落ちた後に自分がロックから蹴り落とされたり……。
テリー「責任は感じちゃいないさ……俺にとっては父さんを殺した憎い相手だった事は変わりはないし、それに……」
テリーは飲んでいたバーボンを飲み干し、コースターにグラスを置く。気持ちに整理を付けたかったのだろう。
テリー「ギースありきで保たれていたサウスタウンの平和は……俺がギースを倒さなくてもいずれは今のようになっていたさ……」
ギースだって人間だ。
いずれは老衰で死んでいたであろう。それこそ、秦の秘伝書の伝説が本当なのであったのならば、永遠の命を得ることも出来ていただろうが……。
もっとも……
アンディ(その秦の秘伝書を全て集めたギースが兄さんの手によって死んだのだから、秘伝書の伝説なんてものは幻想に過ぎなかったんだな……)
アンディもテリーの隣でバーボンを煽る。
普段は酒を飲まないアンディだったが、今日だけは飲んでいたかった。
アンディ「兄さん……あの時、ギースの手を思わず掴んだ時……兄さんはどう考えていたのかい?」
テリー「………無意識だったさ。頭の中ではぐるぐると色んな事が渦巻いていた。おかしいだろ?」
アンディ「…………僕もだったよ………」
暗く影を落とすアンディ。
何故、自分達はギースを助けようとしてしまったのか。それは当人たちにもわからない。思わずとしか言いようがなかった。
アンディ「兄さんは……十年近くも抱え込んでいたんだね。普段の兄さんからは想像も付かないけど……」
テリー「よせよ。柄じゃないのはわかってるんだから」
肩まで伸びた髪をかき、照れるテリー。そしてテリーはDIOと組手をしている八幡を見る。
テリー「もうじきか?アイツの巣立ちは……」
アンディ「北斗丸に続いてね」
アンディ(もし、君がその時を迎えたのならば、僕は君を弟のような弟子ではなく、ライバルとして見ることになるだろう。そしていつの日か、僕を越えてくれるならば、それほど嬉しいことはない………)
DIO「浸っているところ悪いんだけどさ、パツキン後退のボガードさん」
アンディ「ツッコミ斬影拳!」
DIO「ごふっ!いいツッコミだ………ところで、暗殺式の技をやったらやり過ぎて伸びちゃったんだけど…」
アンディ「なっ!あれほどその手の技は控えろと言っただろ!この邪悪の化身!」
いつの日か巣立ち、そして自分を越えてもらいたいと思う反面、可愛い弟分でいてもらいたいと言う背反する感情。
八幡の巣立ちの時は……もうそこまで来ている。
はい、アンディ側のエンディングです。
次回はDIO八幡のエンディングとなります。