やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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明けましておめでとうございます。
お餅は食べましたか?年越しそばは食べましたか?おせちは美味しかったですか?
コロナ禍の関係で帰れず、これらをすべて自分で作って食べた本城です(調理師免許持ち)。美味しかったけど、何かこれじゃあない……感が半端では無いですね。
それではどうぞ!



ノスフェラトゥチーム対弟子チーム

sideなし

 

ダン「ちくしょう!またなのかよ!」

 

サイキョー流道場にて、ダンは荒れていた。

…と言うのも、KOSFに参加する為のめぼしいメンバーが、みな既にチームを組んでいるか、若しくは連絡が付かないかのどちらかなのだ。

いつもそうだ。世界的に有名な大会、KOFが開催されると聞くたびに、ダンはサイキョー流を知らしめるまたとないチャンスだと思って勢い良くチームを組もうとするものの、毎度招待状が届かなかったり、フリー参加が可能な場合でも、大抵は既にチームを組まれているか、連絡が付かないか、断られるか…。

プライドを捨ててサイキョー流のパクり(と勝手にダンは思っている)極限流道場に頼み込んだ事もあるが…。

 

タクマ「お前と?ふざけるで無いわ!どうしてもと言うならば、極限流の門下に入れ!さもなぐば、覇王翔吼拳を会得してきてから出直せ!」

 

と言われたので、似たような「我道翔吼拳」や「覇王我道拳」を会得して出直してみたものの、タクマ・サカザキからは…

 

タクマ「未熟者めが……貴様が覇王翔吼拳を会得したとしても、極限流に並ぶ事などできぬわ!」

 

と、天狗の仮面を被って言われ、覇王至高拳で吹き飛ばされた。

ならばアンチ極限流チームを作ろうと奔走しても、如月影二や藤堂香澄達からは鼻で笑われて門前払い。

弟子(と勝手に思っている)であるさくらやジミー(ブランカ)はこういう時に捕まらない。

自棄になって無謀にも八神庵に頼めば

 

庵「下らん……お前と組むくらいなら京と組んだ方がましだ。楽には死ねんぞ!」

 

と殺されかけ、更に自棄になって豪鬼に恃めば

 

豪鬼「痴れものが!去ねぃ!滅殺!」

 

と殺されかけ、ギースに頼めば

 

ギース「ふん。良いだろう。だがまずはテストだ。この仕事を上手くこなして見せろ」

 

と、悪事に荷担されかけ、文句を言ったら大西洋に危うく沈むところだった。

 

自分でもあの時はどうかしていたんだと思わなくも無いが、とにかくダンはまともにチームを組めた試しがない。

今回もさくらやかりんを頼ろうと思ったが……

 

さくら「あ、ごめんなさい!既にアテナさん達と組んじゃったんだ!」

 

っとあっさり断られた。安くない電話代を公衆電話に飲み込まれたのに…。

ダンは失意のどん底で渋谷のハチ公前で項垂れていた。

 

 

真吾「そんなぁ!何でですか!草薙さんとチームが組めないなんて!」

 

柴舟「あやつには三種の神器としての使命があるからのう。お前はお前でチームを組んで出れば良いじゃろう」

 

真吾「簡単に言わないで下さいよ!だったら師匠が組んで下さい!」

 

柴舟「残念じゃが、ワシはワシで既にチームを組んでおるんじゃ。悪いが他を当たってくれ」

 

真吾「もう良いっすよ!紅丸さんや大門さんに頼んでみるっす!」

 

泣きながら草薙流道場を飛び出した真吾。何だかんだで面倒見が良い紅丸や大門ならば組んでくれるだろうと考えていたが…。

 

紅丸「悪いな。俺様はもう組んじまってるんだ。京の親父さんに聞いたら、京は既にチームを組んだと聞いていたからな。てっきりお前とゴローちゃん当たりと組むもんだと思ってたから、俺は俺でチームを組んじまったんだよ」

 

大門「ぬぅ?紅丸も京も既にチームを組んでおると聞いておったから、てっきりお主もそのチームに入っていたかと思ったぞ。すまんな…ワシも既に組んでしまった」

 

と、門前払い。自棄になって庵に頼んでみれば

 

庵「今度は貴様か……俺は今、機嫌が悪い。遊びは終わりだ!泣け!叫べ!そして死ねぇ!」

 

と、超必殺技を食らいそうになり、K´に頼んでみても

 

K´「テメェ……正気か?俺一人で充分だ…。シャラァ!」

 

と蹴り飛ばされ、セスに頼んでみれば…

 

セス「良いだろう。で、料金はこれくらいかかるが?」

 

と、法外な料金を請求されかけた。

冷静になって考えれば組織の依頼で動くエージェントが数日間にも及ぶ大会を無償で動いてくれる訳がないし、依頼ともなれば百万円単位の金を請求されても当たり前なので、法外でも何でも無いのだが、そんな当たり前の事も真吾は考えることが出来なかった。

あの時はどうかしていたのだと自分でも思う。

 

真吾「どうすれば良いんッスかー!」

 

思い返してみれば、真吾は草薙流のツテか紅丸のツテでこれまでKOFに参加できていたことに今更ながら気が付いた。

気付かない内に真吾は増長していたのかも知れない。

京や紅丸達とチームを組み、半ばKOFの常連となっている事で一流の格闘家のつもりになっていたのだと。

だが、蓋を開けてみれば誰もチームを組んでくれる者はいなかった。

口ずさまない者に至っては京や紅丸のオプション扱い、酷いときには日本チームの数合わせのオマケや、刺身のツマ合わせ扱いだった。

真吾の格闘家としての評価はこんなものだったのである。

 

真吾は知らない事ではあったが、柴舟は真吾と組んでくれそうなメンバーには心当たりがあったのだが、敢えて紹介をしなかった。

真吾の才能と実力は天才的だ。柴舟が教えられることはもうあまり無い程と言えるくらいに。

格闘技を始めてわずかな期間でKOFという大舞台で活躍出来ているのがその証拠だ。だが、今のままでは京達の陰に隠れてしまい、せっかくの実績も霞んでしまう。

真吾は日本チームの真吾ではなく、矢吹真吾として世に出るべきだ…。

その最初のステップ…それは。

 

「チームを自力で組んで、本当の仲間を作れ」

 

……と言う事。

ネスツとの戦いが終わり、京達に真吾は言われた。お前も本当の仲間を作れと。

その時、真吾は京達が自分を仲間だと思ってくれないのは自分が弱いからだと嘆いていた。だから、それを目にしていた柴舟は真吾を気紛れで弟子にしたのだが、師事してみてすぐにわかった。

京は既に真吾を仲間として認めている。それだけの実力は既にある。足りないのは実績と自信、それと切磋琢磨する存在だ。

それらを得られた時、真吾は………。

 

千鶴「柴舟さん。これで良かったのですか?」

 

柴舟「ええ。誰もが通る道じゃ。真吾にとっては今がその時なのじゃよ。……寂しいものじゃな」

 

そう、これは試練だ……。どんなときでも弟子はいずれ一人前になるときがくる…。人はそれを……。

 

千鶴「寂しい…ですか。確かにそうなのかも知れませんね」

 

柴舟「そうじゃな。弟子の一人立ちと言うのは、師にとっては寂しいものじゃ。そうじゃろ?京」

 

京は既に真吾を一人立ちさせようとしていた。

それを邪魔していたのは自分だ…。今こそ、本当の真吾の一人立ちの時なのだ。

わざわざ東京に出向いてまで千鶴に断られ、項垂れて渋谷のハチ公の前で座り込んだ真吾を、柴舟は隠れて見ていた。

 

 

一方、自称ケンの弟子、ショーンも東京に出向いて来ていた。

ショーンもKOSFに出場したいと考えていたが、師匠であるケンは数日前から仕事をほっぽり出して行方不明である。

ケンの事だから同門であるリュウと共に出場するだろう。もしかしたら最近見つかったケン達の師である豪拳と組むかも知れない。だったら自分も……と考えていたのだが、ショーンの場合は真吾と違ってケンに合格点を貰えるほどの実力はない。

一人立ちどころか、ケンがかつて全米格闘王の称号を得る切っ掛けとなった大会だって、予選大会の1回戦ですら突破したことが無いのだ。

ケンがチームメイトとしてショーンと組むことなどあり得る話ではなかった。ましてや、毎回主催者の思惑が絡み、大会が開催される度に何かしら事件が発生するKOFの流れを汲む大会なら尚更だ。

参加する事自体、ケンがいたら反対していただろう。それどころか、実力が伴わないショーンが出たがるなど、夢にも思ってなかった。それくらいの分は弁えていると思っていたのだが、ショーンは弁えていなかった。

ショーンはケンがいないとわかるや否や、すぐにメンバー集めの旅に出た。

全米格闘王の弟子ともなれば、すぐにメンバーが集まるだろうと甘く考えていたのだ。

手始めに空手で有名な極限流に行ってみれば……

 

マルコ「またケン・マスターズの関係者の道場破りか!覇王翔吼拳!」

 

極限流空手師範代のマルコの一撃であっさり撃沈。波動拳すら満足に撃てないショーンにはどうしようもなく、トラウマを植え付けるだけに終わった。前日にケンが道場破りと間違えられて多数の門下生が逃げられてしまったという不運もあったのだが、結果としては同じだったに違いないだろう。

次に日本へと渡り、竜胆館のまことを頼ったが…

 

まこと「誰じゃおまんは?ケン・マスターズの弟子?嘘つくんじゃなか!正中線五段突きじゃあ!」

 

女の子の拳を貰って一撃KO。

最後にケンがかつて指導したという名門、観月かりんを頼ってみたが……

 

バーディー「ケン・マスターズの弟子?お前が?誰かわからんが、ケン本人ならともかく、お嬢様がお前なんかとチームを組むわけが無いだろう。マダラチェーン!」

 

と、用心棒らしき男に鎖で巻き上げられ、二回ほど地面に叩きつけられた。考えてみれば世界旅行はおろか、個人で宇宙旅行が出来る財閥の令嬢であるかりんが面識のないショーンを、しかもアポ無しで会ってくれる訳がなく、門前払いされても仕方が無かったのだが、そんな事もわからなくなっているほどショーンは焦っていた。

既にかりんのライバルであり、リュウの自称弟子であるさくらがチームを組んでいたこともショーンが冷静ではなくなっていた理由なのかも知れない。

救いが無いのは真吾は日本チームの腰巾着とかパシリとか言われていても、それなりに格闘界では名前が知れていたが、ショーンに至っては全くの無名であることである。

真吾以上に実績が無いのだ。

 

ショーン「今更実家を頼るわけにもいかないしなぁ…」

 

ショーンは実家の家業を捨て、家出同然にケンの弟子にと飛び出した。今更頼るわけにもいかない。

 

ショーン「どうするかなぁ……イライザさんにKOSF出場するまで帰らないって大風呂敷広げちゃったから、手ぶらで帰るのもカッコ悪いし……」

 

かりんに門前払いされ、トボトボとハチ公前までたどり着いたショーンは、失意のどん底でとうとう座り込んでしまった。無名の格闘家の、ハードルの高い甘い考えから始まった無謀な挑戦は、手痛い挫折で終わろうとしていた。

 

 

アリス「信じられません!舞さんもキングさんも…テリーやロックまでチームを組んでしまっているなんて!」

 

テリーに憧れ、さくらや真吾のように自ら格闘技を始めるようになったアリス・ガーネット・ナカタ。

KOF14が開催された時、女性格闘家チームの若きホープとして本戦に出場できたアリスは、同じノリで舞やキングとチームを組もうとしていたが、世の中そんなに甘くない。

世間のアリスの評価はこうだ。

 

「女版矢吹真吾」「舞やキングのお荷物」「何年かに一人は現れるテリーのおっかけ」

 

である。

実力的には真吾同様にKOFでも渡り会えるだけの実力はあるのだが、いかんせん脇を固めていたのがKOF常連の中でも超一流の舞とキングである。

憧れのテリーにですら舞やキングのお陰で本戦に出場出来たと言われる始末だ。もちろん、そんな彼女が簡単にチームを組める訳がなく……。

 

ユリ「ごめんねぇ。舞さん達の仲間だから協力したいのはヤマヤマなんだけど、ちょっと今回は無理かな?」

 

…と、初代女性格闘家チームの先輩のユリには断られ、舞のツテを頼って香澄を訪ねても…

 

香澄「今回は本気で打倒極限流を掲げてますから、あなたではちょっと…」

 

と、断られ、千鶴や雛子にも断られた。

次に河口湖にある不知火道場を訪ねてみても……

 

アンディ「済まないが、弟子の北斗丸の面倒もあるし、舞にいらない誤解をされたくない。申し訳ないが、他を当たってくれ」

 

と、テリーの弟に断られ、舞の祖父の友人である山田十兵衛を訪ねてみれば……

 

十兵衛「ええぞ?じゃが、まずは組手をして実力をはからんといかんのう?」

 

とか言われて立ち会ってみれば、セクハラのオンパレードだ。流石にこんなスケベジジイなんかとは、例えチームが組めても御免である。

 

アリス「どうすれば良いのかわかりませーん」

 

何故かキム・カッファンの事が頭を過ったが、それはとても危険であるような気がした。

失意のどん底で渋谷のハチ公前で力尽きたアリスは、銅像の前でへたり混んでしまった。

 

 

ハチ公銅像の周りを取り囲む四人の溜め息が同時に出る。

 

ダン、真吾、ショーン、アリス

『大会、どうしよう…出たいなぁ~。KOSF』

 

『え………?』

 

偶然か必然か………

 

リュウやケンの兄弟子、ダン。

草薙柴舟と草薙京の弟子、真吾。

ケンの弟子、ショーン。

自称テリーの弟子、アリス。

 

この四人、成り行き任せの勢いでチームを組むまで、そう時間はかからなかった。

 

 

sideなし

 

八幡『とうとう、俺達の試合か。考えてみれば、こういった大会に出るのは初めてだったな』

 

イロハ「と言うよりは、仕事関連以外での戦いが初めてですよね?わたしたち」

 

材木座「うむ!もっとも、八幡は力を抑えぬととんでも無いことになりそうだがな!」

 

八幡『わかっている』

 

ノスフェラトゥの比企谷八幡も陽乃と同様に規格外の力を持っている。

おまけに死をも超越しており、例えバラバラにされても時間さえかければ再生することも出来る。

 

沙希「あたしが先鋒で良いの?比企谷」

 

ホテルロイヤルオークラに使われるようなタキシード姿の川崎沙希が問う。

パオパオカフェのバーテンが着用する服装だ。

一方でノスフェラトゥはバトルスーツを着用している。

ノスフェラトゥが作戦を遂行する時の服装だ。

椎拳祟はパーカージャケットに半ズボンを履いている。ネスツ編の時に着用していた服装だ。

 

八幡『ああ、勿論だ。格闘大会なら、本当の格闘家である川崎や椎が試合の経験を積んだ方が良いだろう?』

 

沙希「ありがとう。あんたも中々良い男だね。まぁ、あ、あいつよりかは劣るかもだけど………」

 

それはもちろん、餓狼世界の比企谷八幡の事である。あばたもエクボと言う奴だろう。

 

餓狼八幡「川崎ぃ!」

 

沙希「ひ、比企谷ぁ?」

 

餓狼八幡が餓狼いろはを伴って現れた。

 

沙希「い、1回戦を見ていたよ。キム兄弟二人抜き、カッコ良かった………天才キム兄弟を二人抜きするなんて、格闘家としても成長してるんだなって…。あたしも負けていられない。材木座には悪いけど、火引さんには勝たせてもらうよ」

 

サイキョー流チームのリーダーである火引ダン。

ノスフェラトゥチームの対戦相手のリーダーである。

かつてリュウやケン・マスターズの師匠である剛拳の弟子だった男である。

剛拳の修行を終えたダンは、サイキョー流という流派を旗揚げし、餓狼世界では材木座の師匠をしている。※1

なお、餓狼世界では材木座と血縁同士らしい。

 

餓狼八幡「ある意味で材木座が来ていなくて残念だったな。うちの世界の火引さんは行方がわからなくなっているわけだし……」

 

材木座「格闘家の世界の八幡よ。我ではダメなのか?」

 

餓狼八幡「いや……あんたはサイキョー流の人間じゃ無いだろ………」

 

八幡『全く……この残念イケメンは……』

 

2次創作の材木座義輝アルアル。

小説家希望の割には理数系に強い。

痩せるとイケメン。

 

餓狼八幡「相手のチームはショーンさんに矢吹さんにアリスさんか……。俺達の今の時代だとひとかどの人達だけど、この時代だとどうだろ………」

 

実は餓狼八幡達の知るよりもこの世界の人間は、一回り若くて全盛期の姿である。(それなのにロックやキム兄弟やユン達は何故か餓狼八幡の世界と同じであるのだが)

 

沙希「まぁ、胸を借りるつもりで頑張るよ。あんたに負けないようにね」

 

一部の男子(立派に育ってる胸はむしろ川崎だけど)

 

一色&イロハ「ムッ………」

 

ギュムウウウ!

さとりの力で悟ったのか、イロハが材木座のお尻をつねる。イロハと材木座の関係は恋人未満という間柄だ。

そして婚約関係の一人である餓狼いろはも餓狼八幡の尻をつねる。

もし、ここにノスフェラトゥ世界の雪乃がいたのならば、八幡もつねられていたに違いないだろう。

 

拳祟「羨ましいこったな……」

 

餓狼八幡「………」

 

拳祟「な、なんや?」

 

餓狼八幡「いや。奇妙な縁だと思いまして……」

 

実は餓狼八幡と餓狼いろは……付け加えると現在恋人関係にある餓狼雪乃や餓狼結衣にとって拳祟……と言うより、そのパートナーと言える麻宮アテナは間接的に関係があったりする。

餓狼八幡がテリー達伝説の狼の弟分になった10年前、テリーと草薙京(その場には二階堂紅丸、大門五郎、今回の対戦相手である矢吹真吾も京の応援でいた)の試合があったのだが、その前座のコンサートでは麻宮アテナがステージに立って歌っていた。

そのコンサートにおいて餓狼八幡は今の婚約者3人と運命的な出会いをしている。

もしかしたならば餓狼八幡は椎拳祟ともニアミスしていたかも知れない。そう考えると、色々思ってしまう餓狼八幡であった。そう告げると……。

 

拳祟「なんや。それやったらお前らの世界では俺もいるんかいな。奇妙な縁やな」

 

八幡『それがこうして俺達とチームを組んでいるなんてな……本当に奇妙だ。Ms.OFUKUROはその事も含んで俺達とチームを組ませていたのかも知れないな……』

 

side Ms.OFUKURO

 

Ms.OFUKURO「あら?今、誰か私の噂をしているような…」

 

鼻がムズムズしたのよね?

それよりも早くO・HA・NA・SHIを終えて宇宙に戻らないと。

別の意味で地球を狙っているパイロンちゃんを撃退しないといけないしね♪

 

Ms.OFUKURO「あ、考え事をしていたら割っちゃったわ♪承一郎ちゃんと忍ちゃん♪後はよろしくね?」

 

承一郎&忍(コクコク)涙目のルカ…。

 

私は鎮魂歌を奏でたおバカさんからアイアンクローをしていた手を離し、この場を付き合いの長い二人に任せるわ。

ホント、忙しくて仕方ないのにこのおバカは…。

 

空を見上げて両手を上げ………。

 

Ms.OFUKURO「シュワッチ!」

 

あー忙しい忙しい。

 

承一郎「ウルトラマンか?あの人……」

 

忍「そうであっても不思議じゃないわ……。むしろそれでも大人しいくらいよ……」

 

おバカ(原石)…矢を盗もうとし、鎮魂歌を奏でた事に関して規格外オブ規格外からお仕置きを受け、頭蓋骨を割られる。再起不能。藤崎忍のクレイジー・ダイヤモンドによって治療される。

 

 

 

sideなし

 

アナウンス「レディース&ジェントルマン!1回戦も半分が消化され、盛り上がって参りました!次の試合も好カード!サイキョー流チーム!あの火引ダンが……誰ともチームを組めないサイキョー流の火引ダンがチームを率いてやってきたぁ!驚く事にケン・マスターズの押し掛け弟子、ショーン!そしてKOF14で不知火舞選手やキング選手とチームを組んだテリー・ボガードの追っかけ、アリス・ガーネット選手!そしてKOFの半ば常連選手である草薙流古武術の門下生、矢吹真吾!渋谷で意気投合した彼らは今大会の台風の目となるのかぁ!」

 

八幡『テリー・ボガードの……ある意味ではお前の兄弟子……いや、姉弟子か?アリス・ガーネットは』

 

餓狼八幡「や、テリー兄ちゃんは認めてないけど。俺の兄弟子姉弟子はロックと北斗丸、それにジョーあんちゃんのジムの女の子だけだから」

 

八幡『姉弟子なのに名前を知らないのか……』

 

餓狼八幡「MOW2で出る予定だったらしいけど、その前にSNKは倒産したから公式で出てないんだ…KOF12のあんちゃんのストーリーでちょこっと出たくらいでさ……」メメタァ!

 

むしろシナリオライターは幻のキャラクターの存在を良く拾ったと言える。

 

アナウンス「対するノスフェラトゥチームはオルタ選手を筆頭に、材木座義輝選手!ストライカー専門の四つ子の三人目のさとり選手(ノスフェラトゥの一色いろは)!川崎沙希選手!そしてKOF常連選手の椎拳祟選手!」

 

餓狼八幡「オルタ?」

 

八幡『お前が比企谷八幡でエントリーしているのに、俺が比企谷八幡でエントリーするわけにはいかないだろ?幸い、俺には名乗るべき別の名前があるから、そっちでエントリーしたんだ』

 

実はノスフェラトゥ八幡には承一郎の中にいるジョニィのような別人格が存在する。ノスフェラトゥ八幡はその名前を借りる事にしたのだ。

オルタ……それがもう1つの人格の名前である。

 

イロハ「四つ子じゃないんですけど……弥七め……」

 

アナウンス「おおっと、オルタ選手!さりげなくセコンドにいるアンディチームの比企谷選手にそっくりだ!DIO選手も含めて三つ子かぁ!?」

 

オルタ八幡&餓狼八幡「『三つ子じゃねぇ!』」

 

実はニューヨークで死神13のマニッシュと戦った際、夢の世界で八幡とオクタとどこかのおバカαの意識が揃った。

その時にマニッシュから散々三つ子の腐り目と言われまくり、八幡とオルタにとっては嫌な思い出とされている。

マニッシュにはキッチリとあの世に行ってもらったわけだが……。どこかのおバカの手によって。

 

八幡『全く……どこかのおバカが関わるとこれだから』

 

 

アナウンス「ある意味で有名選手3人と有名選手の弟子のサイキョー流チームと一流選手である椎選手が束ねるノスフェラトゥチーム!果たしてどちらが勝つのかぁ!」

 

オーダーセレクト。

ノスフェラトゥチーム

先鋒……川崎沙希(極限流空手)

中堅……椎拳祟(超能力&中国拳法)

大将……オルタ比企谷八幡(流派なし)

ストライカー……一色イロハ(流派なし)

 

サイキョー流チーム

先鋒……ショーン(マスターズ流空手(空手をベースとした暗殺術))

中堅……矢吹真吾(草薙流古武術)

大将……火引ダン(サイキョー流)

ストライカー……アリス・ガーネット(マーシャルアーツ)

 

沙希 VS ショーン!

 

沙希がグローブをしっかりとはめ直し、ショーンに対してチョイチョイと手招きをする。

 

沙希「じゃあ、行くよ」

 

対する黄色い胴着を着込み、少し癖がある髪型をしている空手家、ショーンはチューインガムを膨らませて破裂させた後、吐き捨てて構える。

 

ラウンド1!

レディー……ゴー!

 

ショーン「トルネード!」

 

先に仕掛けたのはショーンだ。

竜巻旋風脚。

師であるケン・マスターズが使っている三種の奥義の1つだ。

 

沙希「なめられたものだね……。龍牙(りゅうが)!そりゃあ!」

 

ショーンの旋風脚を屈んで回避しながら、足のバネを利用して顎に拳をあてる。

極限流空手・龍牙。

虎砲、又はビルドアッパーとも言われる昇龍拳のようなジャンピングアッパーだ。

 

ショーン「ぐえっ!ま、まるで昇龍拳のような技を!ずるいッス!さてはうちの流派の物真似ッスね!」

 

沙希「そっちだって飛燕旋風脚の出来損ないみたいな技を使ってるじゃん。いや、なんか出来損ないの竜巻旋風脚って感じがするけど……」

 

ショーン「で、出来損ないって言うな!」

 

グサッと来たのか、ショーンは涙目でショルダータックルをしてくる。

 

沙希「幻影脚!」

 

沙希は片足で何発も蹴りの嵐を繰り出す。

 

ショーン「ガガがべべべべ!」

 

まともに入ったショーン。

蹴りの圧力で徐々に体が浮き上がっていく。

極限流幻影脚。

暫烈拳と並ぶ極限流の代名詞とも言える連続技だ。

 

餓狼八幡「うわぁ………あれは結構痛いんだよなー」

 

八幡『食らったことがあるのか?』

 

餓狼八幡「まあな。幻影脚は極限流の必殺技の中でも特に難易度が高い技だ。あれが出来るようになれば一人前とも言われる技なんだ。あれだけ完璧な幻影脚は時期無敵の龍と言われているマルコさんだって出来ないぞ」

 

マルコ・ロドリゲス。

餓狼八幡の世界では二代目Mr.KARATEとなったリョウ・サカザキが育てた師範だ。

 

八幡『あの技の凄さはわかる。蹴りの衝撃で持ち上げるなんてな………自分の体重と相手の体重を片足で支えながら、連続蹴りの衝撃で徐々に持ち上げる……普通の世界の基準ならばあれだけで1つの奥義だ……』

 

沙希「はっ!」

 

相手を充分な高さまで持ち上げた後に、上段回し蹴りがキレイに決まり、ショーンが吹き飛ぶ。

 

「見たか……今の技……」

「極限流幻影脚だ……」

「あの女……極限流?」

「最強の虎だ……現役を去ったロバート・ガルシアの代わりに誕生した最強の虎だ!」

 

沙希「ん?」

 

沙希は知らない事だが、この世界の……KOF世界のロバート・ガルシアは徐々に格闘への熱が下がってきていた。

家業であるガルシア財団の多きな仕事を任され、仕事が楽しくなってきたと言うこともある。

それに伴い、少しずつだがサカザキ一家との距離もできはじめている。

トレーニングこそ続けているが、かつてのキレは無くなりつつあるというのがジョー・東の評価だ。

沙希の世界ではユリ・サカザキと結婚し、沙希を格闘家として育てたロバートだが、この世界ではユリのことを好きであることは変わらないのだが、燃えるような思慕は薄くなり、自然消滅も時間の問題とも言われるレベルである。※2

沙希の世界では空手バカでおしどり夫婦の姿しか知らない沙希(ついでに餓狼八幡)からしてみれば信じがたい事実である。

 

沙希「ハァ……3代目最強の虎……いつかはそう呼ばれるのを目指して頑張っていたけど、まさか異世界で先に呼ばれるようになるなんてね………」

 

 

sideロバート・ガルシア

 

なんやあの()

知らん……ワイはあんな娘なんて知らんで!

 

ロバート「リョウ!自分、最近ワイが空手から遠ざかっていたから言うて、あないな娘を育てておったんかいな!」

 

冗談やとしても笑えへんで!?リョウ!

ワイはまだまだ最強の虎や!お前のライバルを止めたつもりはあらへんで!

それとも何か?前回のKOFで焼肉屋に本腰を入れたワイやユリちゃんや師匠に対するアンチか!?

 

リョウ「知らない……お前がマルコに対抗して密かに育てていたんじゃないのか!?」

 

ロバート「アホ!ワイにそないな時間があったと思うとるんか!?ガルシア財団なめとったらあかんで!片手間で出来る仕事やないんや!」

 

リョウ「だとしたら……」

 

ロバート「考えとう無いが……師匠!失踪していた数年の間にまさか隠し子を……年齢的にも合っとるわけやし、完璧な幻影脚をつこうてる事を考えても……」

 

ユリ「もしかしたらあの子は妹かも知れないんだ………お父さんはどこ?!探しだして問い詰めなきゃ!」

 

慌ただしくなるワイとサカザキ兄妹。

許さへん……許さへんで師匠!

何年も幼いリョウやユリちゃんを放って自分は浮気して子供まで作ってたやなんて!

 

ジョセフ「浮気かのう?やはり生涯妻しか愛さないのが家庭円満の秘訣じゃのう」

 

承太郎「なるほど。だから将来、ジョースター家もお家騒動が発生するんだな?……仗助の事、早く決着を付けておけよ?基本世界のように11年後にテメェの代わりに杜王町に行くのは御免だからな……」

 

後ろの席にいた日本の古いヤンキーとやたらがたいの良いじいさんが何や言うてるが、ワイらは気にしている余裕は無かった。

 

 

sideなし

 

ショーン「ハハハ……まさか極限流だったなんてな。ケン師匠が組んでるのも極限流の無敵の龍とその妹だし、お陰で俺は師匠やリュウさんとも組めないし……極限流はいつも俺の邪魔をする………」

 

沙希「え?ちょっと?」

 

ダークな雰囲気を漂わせてワナワナと震えるショーン。

ショーンもダンと同様に極限流には煮え湯を飲まされていた。

全米異種格闘技の大会でも初の1回戦抜きをとエントリーした試合ではリョウ・サカザキの弟子であるマルコに敗れ、夢が潰えたりしている。※3

 

ショーン「ちくしょう……ヘイ!アリス!」

 

ショーンは後ろを向いたまま、ストライカーのアリスに向けて手を伸ばす。

 

アリス「ヘイ!パース!」

 

アリスはショーンに向けてバスケットボールを投げ、ショーンはそれを受け取ってジャンプシュートを沙希に向けて投げる。※4

 

八幡「ん?空手にバスケットボール?テリー兄ちゃんが昔試合したって言うストリートファイターに似たような人がいたような………」

 

沙希「ラッキー・グローバーさんか!あんたは!龍撃拳!」

 

沙希が放った気の弾丸がバスケットボールを相殺する。

極限流式の波動拳と言ったところだろうか。本来は虎煌拳という名前なのだが、虎を敬う拳という意味のある虎煌拳を虎が使うのは違和感があるためか、龍を撃つ拳という意味を込めた龍撃拳という技名をロバートが付けた。

それが災いをしてか、何故か無敵の龍であるリョウが虎の名を冠した技名を使用し、最強の虎であるロバートが龍の名を冠した技名を使用するというワケのわからない事になっているのだが………。

 

沙希「飛燕旋風脚!」

 

前方に躍進し、4発の空中回し蹴りを放つ沙希。

 

ショーン「ドラゴンスマッシュ!」

 

対するショーンはケン・マスターズの代名詞、昇龍拳をアレンジしたドラゴンスマッシュを放つ。

奇しくも初手のやり取りが逆になった形となる。

昇龍拳は片方の腕でアッパーを放つ対空技なのだが、単純故に完全に修得するのが難しいのか、それを両腕でカバーしている状態だ。

 

沙希「やるね、あんた。けど、そろそろおしまいにするよ」

 

沙希は両腕をクロスさせて気を高める。

 

ショーン「その構えは極限流の奥義、龍虎乱舞か!だったらこれで迎え撃つ!ハドウバースト!」

 

ショーンがかめはめ波のような構えを取り、合わせた両手に気を溜め、気の弾を放つ。

波動拳。

完全に修得できていないショーンは師やリュウのように連発は出来ないが、代わりに溜める気の量を多くさせて一発の威力を高めている超必殺技だ。

飛んでくるハドウバーストに対してニヤリと笑う沙希。

 

沙希「覇王!翔吼拳!」

 

構えを切り替え、波動拳のように両手に高めた気を具現化させて放つ沙希。

巨大な気の弾を放つ極限流奥義の1つ、覇王翔吼拳。

龍虎乱舞と見せかけて覇王翔吼拳に切り替えた沙希。

覇王翔吼拳とハドウバーストとぶつかり合い、消滅する。

 

ショーン「咄嗟に切り替えた技が通用するかってんだよ!って………あれ?」

 

相殺が終わり、消滅した気の先には沙希の姿が消えていた。

 

沙希「そんな事は100も承知だよ」

 

背後から聞こえる声。

 

ショーン「お前……覇王翔吼拳をブラインド代わりにして……」

 

沙希「元から狙っていたのはこれだよ。覇王翔吼拳は決まっても決まらなくても良かったのさ。はっ!龍翻蹴!」

 

ボディ・ブローから特殊技の龍翻蹴という後ろ回し蹴りを放つ。そして崩れている所を………

 

沙希「無影疾風!重段脚!」

 

飛び上がり、飛燕旋風脚の姿勢で攻撃する沙希。

違うのは蹴りの数だろう。飛燕旋風脚で幻影脚を放っている…と言うべきか?

 

沙希「はぁぁぁぁぁぁぁ!龍斬翔!」

 

ショーン「結局勝てねぇのかよぉ!」

 

着地と同時に極限流式のサマーソルトキック、龍斬翔で的確に顎を捉え、華麗に着地する沙希。

 

八幡『凄い技だな………』

 

餓狼八幡「あいつ……舞姉ちゃんと戦った時よりも更に強くなってないか?うかうかしていたら差を付けられるな……」

 

八幡『幻影脚に覇王翔吼拳、そして無影疾風重段脚か。極限流……参考になる流派だ……』

 

餓狼八幡「俺、その流派から粉をかけられてるんだよな……ブラボー・オー・ブラボーって感じに」

 

八幡『ポルナレフさんか?お前……』

 

KO!

Winner is 沙希!

 

沙希「よしっ!1本!」

 

軽くガッツポーズをして勝利を喜ぶ沙希。

 

沙希「このまま行けるところまで行くんだ!」

 

気合いを入れる沙希。

 

八幡『想像以上に強いな。先鋒戦では大したダメージを受けているようにも見えんし、あの川崎……もしかしたら三人抜きも出来るんじゃないか?』

 

材木座「そいつはどうであろうな?二人目の矢吹真吾……彼は要注意であるぞ。下手をすればチームリーダーである火引ダン殿以上にだ」

 

沙希「は?イヤイヤ。あたしの世界でのアンタはダンさんの弟子なんだけど……何でアンタが?」

 

材木座「そちらの世界の我の事など知らぬ!ユリ・サカザキ殿以上の天才を相手にすると心得よ!」

 

沙希「ユリ師範以上の?あ……時間だ」

 

今一つ頭の片隅に引っかかる沙希。

ユリ・サカザキは沙希にとってみれば師匠の一人として尊敬する存在である。

何しろユリ・サカザキは極限流を習い始めてわずか1年で虎煌拳や覇王翔吼拳等の奥義を修得した天才だ。

そんなユリを超える逸材などそうそういないであろう。

時間が経ち、中堅の矢吹真吾がリングに上がる。

矢吹真吾。17歳。青い学ランのボタンを外し、額にはバンダナを鉢巻のように巻いている。

腕には金環日食の刺繍をあしらわれた独特の指ぬきグローブをはめている。

師匠である草薙京から貰った草薙家の家紋入りのグローブだ。

真吾は沙希と対すると、胸に手を置いて深呼吸。

 

真吾「クールに行こうぜ……真吾」(子安ボイス)

 

と自分に言い聞かせ、拳を握って構える。

 

沙希 VS 真吾!

ラウンド2!

レディー……ゴー!

 

真吾「極限流空手か……ユリさんを思い出すな」

 

沙希「ユリ師範はあたしの師匠の一人だよ。まずは小手調べだよ……飛燕!龍神脚!」

 

垂直にジャンプした沙希が、空中に一度滞空し、そのまま前方に鋭い降下蹴りを放つ。

忍がクリスから受けたグライダースタンプに似た技だが、極限流の技として研鑽されてきた飛燕龍神脚の方が鋭さもスピードも比ではない。

 

真吾「百式……鬼焼き!うおりゃあ!」

 

アーシスの三浦優美子のマジシャンズ・レッドが使うような裏拳気味のアッパーが迎撃。※4

鋭い蹴りと裏拳が同時に互いの顔面に入る。

相手が草薙京や草薙柴舟、八神庵であったならば炎によって一方的にダメージを受けていたであろうが、草薙や八神の血を引いていない真吾の鬼焼きには炎が纏われていないので、相討ちに終わった。

 

真吾「おわっ!」

沙希「ぐぅ!」

 

相討ちに終わった初手だが、ダメージは沙希の方が大きかった。

 

沙希「な、何?このバカ力は!」

 

真吾「真吾キィィック!」

 

タイガーマスクの飛びげりを参考にしたと本人が言う鋭いキックが飛んでくる。

草薙流古武術独楽屠りを京がアレンジしたR・e・d・kick。正式名称、レインボー・エナジー・ダイナマイトキックだ。

それが沙希の立ち上がりに合わせて使われる。

 

沙希「ぐっ!」

 

辛うじてガードをするも、苦痛に顔を歪める沙希。

沙希や餓狼八幡ら格ゲーの世界の人間は身体能力が非常に高い。が、矢吹真吾の場合はその中でも頭1つ、身体能力が抜き出ていた。

中肉中背の見た目に反して馬鹿力の持ち主なのである。あのザンギエフや大門五郎に匹敵するかも知れないレベルでの怪力かも知れない。

 

真吾「このぉ!」

 

真吾が力任せに振り下ろしパンチを打ってくる。

 

沙希(な、なに!?)

 

真吾「そりゃっ!」

 

極限流に入門してしばらくたった人間すらもやってこないようなお粗末な蹴り。

 

沙希(何?この人のちぐはぐさは………)

 

鬼焼きや真吾キックのように洗練された技がある反面、その馬鹿力を振り回すだけの打撃技……。

矢吹真吾という人間に混乱する沙希。

それもその筈である。

矢吹真吾は格闘技らしい格闘技を始めてからまだ1年と経っていない。※5

それどころか草薙京は真吾を弟子と言うよりは、技を1回見せるだけでヤキソバパンを貢いでくれるパシリ程度にしか当初は思っておらず、真吾はたった一度見せて貰った技を愚直なまでに自己鍛練で真似をしていたに過ぎない。

最近でこそ京の父、草薙柴舟から手解きを受けているものの、ベースは指導というのもおこがましい適当な指導を受けただけで、KOFの大舞台に半常連として戦って来たのが矢吹真吾だ。

結論から言わせれば大天才……と言える逸材である。

 

餓狼八幡「な、なんだあの人……材木座!お前、知っていたな!矢吹さんの事を!」

 

材木座「そちらの我の事は知らんが、我は格ゲーを趣味でやっておる!当然、KOFもだ!」

 

材木座義輝は基本世界においてもゲーマーとして格ゲーをやっていた。それによって相模南の弟が活動している遊戯部とトラブルを起こすくらいにはだ。

ゲームキャラクターとしての真吾を知っているからこそ、材木座義輝は周囲の下馬評の影響を受けない。

 

材木座「異常としか思わざるを得ないのよ……草薙流古武術は、草薙の血を受け継ぐ炎を操る者にしか扱えぬ伝説の武術……炎ありきで成り立つそれを、矢吹真吾殿は独自のセンスでKOFの猛者達とやりあっておるのだ…餓狼世界の八幡よ…ユリ・サカザキ殿は1年で極限流の奥義を修得した天才である。が………」

 

八幡『矢吹真吾は……それすらも超える逸材……か。勝てるのか?川崎は矢吹真吾に』

 

材木座「そうであるな……餓狼世界と比較すればではあるが……ユリ殿が誘拐された当時のロバート・ガルシア殿以上に強くなければ厳しいであろう」

 

餓狼八幡「それって……今の俺から見たら30年前の話だぞ!いくらなんでも盛りすぎじゃないか!?」

 

材木座「盛りすぎであるものか!KOF97、オロチ編で初登場したときで、初期のKOF(龍虎の拳2)の頃のロバート殿と同じ実力であったロバート殿と渡り合っている矢吹殿だぞ!小説の世界ではユリ・サカザキ殿にも勝っておるわ!(小説版KOF98、遺された者達)」

 

沙希(そこまでか!矢吹真吾!)

 

材木座「それからどれだけの時間が経ったのかはわからぬが、既にこの世界はKOF時間軸で後のネスツ編やアッシュ編、それにKOF14の大会は終わっておる!つまりは矢吹真吾殿は草薙柴舟殿から本格的に格闘技を習っておるのだぞ!まともに指導を受けておらぬ状態でユリ・サカザキ殿を降しておる矢吹殿だ!大天才の矢吹殿が全盛期のロバート殿と渡り合えていてもおかしくない!それに気付くんだよ!八幡!」

 

餓狼八幡「わかってるよ!だからこそ、川崎に希望の光を見せなくちゃならないんだろ!」

 

自分の世界の八幡のアホネタはともかく、材木座の叫びを小耳に挟んだ沙希が戦慄する。

実際の所は盛りすぎであるのだが、KOF出場経験の中で真吾がリョウ、ロバート、ユリ、タクマ達極限流空手を相手に渡り合っているというのもまた事実である。

矢吹真吾もまた、餓狼八幡や餓狼沙希と同様に一人立ちの時期ではあるが、積んだ経験は段違いなのである。

日本チームのパシリだの、金魚の糞だのと心ない言葉を浴びせられる真吾。

そのせいで本人も自分自身を過小評価しているが、実際には京も柴舟も、紅丸も大門も真吾の事を認めているのである。

サイキョーチームの思わぬダークホース……それが矢吹真吾だった。

 

真吾「弐百拾弐式、琴月!」

 

ダッシュからの肘打ちを放つ真吾。

肘打ちをしゃがんでガードする沙希だったが、これが失敗に繋がる。

 

材木座「マズイ!乱入せよ!いろは殿!」

 

イロハ「了解です!てりゃあ!」

 

イロハがストライカー援護攻撃で入り、沙希の後方の死角から狙撃銃で射撃する。

もっとも、撃ったのはゴムスタン弾であるので殺傷能力こそない。プロボクサーの拳程度の威力なのだが、普通の世界ならば気絶するダメージだ。

しかし……ケロッと何事も無かったかのように立ち上がる真吾。

 

イロハ「………効いて無いとかどういう頑丈さなんですか?」

 

真吾「うわぁ!撃ったねアンタ!お、親にも撃たれた事ないのに!」

 

イロハ「親に撃たれる訳が無いに決まってるじゃないですか。バカなんですか?はい、オマケです♪」

 

例の癒しの力を沙希に施し、気力を回復させるイロハ。

格ゲー的に言えば超必殺技ゲージが1つドーピングされたと言った感じだろうか。

 

餓狼八幡「ア○ロネタに走っている!お前の中の人はWのゼクスだったり、∀のハリーだったり、seedのムゥだったりのはずなのに!そこに痺れる憧れる!あれ?アイツはどうした?」

 

前世が真吾と同じ子安声のおバカは現在、規格外オブ規格外のアイアンクローによって頭を割られ、気絶中です。

 

八幡『おバカに匹敵するそこのおバカ2号はともかく、何故一色に乱入させた?』

 

材木座「矢吹真吾殿の弐百拾弐式・琴月・未完成の2撃目はジャンピングダブルハンマーで脳天を殴り抜く技である!馬鹿力に定評がある矢吹殿のダブルハンマーを受ければ無事では済まぬぞ!」

 

餓狼八幡「すげぇ、この材木座……俺以上にこの世界の人達の事を理解している……材木座!貴様、見えているなぁ!」

 

おバカがいない分、餓狼八幡がギャグ役で大活躍である。

 

材木座「ネタに走っておる場合ではないわ!川崎殿!不用意に間合いに入るでない!極限流連舞脚と同じような技を矢吹殿は持っておる!それを食らえばKOだぞ!」

 

材木座のアドバイスは正しい。

真吾は『真吾謹製 オレ式錵研(にえとぎ)』と『真吾謹製 オレ式神塵(かむくら)』という技を持っている。

特に錵研ぎはまずく、肘打ち2発の後にジャンピングショルダータックルで浮かされる。

その後に追撃されるのは間違いなく『百壱式朧車(おぼろぐるま)』であろう。

飛びながら左右の上段蹴りを放ち、最後に前方宙返りをして踵落としを決める技だ。

 

沙希「チッ!危なかった……」

 

真吾「なんなんすかその人!こうなったら単発でやるっス!百壱式・朧車!せい!」

 

材木座の読み通り、錵研からの朧車を狙っていたようである。必殺技2つの組み合わせであるが、真吾の馬鹿力で繰り出される連続技だ。

そのワンコンボで超必殺技1発分に匹敵する。

しかし、材木座のアドバイスによって錵研を回避した沙希は、バックステップで距離を取った事によって単発の朧車を回避した。

 

沙希「最後の空中踵落としをガードすれば……」

 

真吾「あれ?」

 

しかし、前方宙返りを失敗した真吾はそのままダイレクトに頭から落下し……

ゴチィィィィン!

予想外のヘッドドロップとなって沙希の脳天にヒット。

これ……ゲームだとガード不能だったりする。

 

沙希「いっつぅぅぅぅ……」

 

真吾「す、すいません……たまに欲張って踵落としを私用とするといつも失敗するんっスよ……」

 

沙希「………キレたわ………決定的に……」

 

ガシッ!と真吾の胸ぐらを掴む沙希。

 

沙希「こんのぉぉぉぉ!」

 

ビビビビビビビビビビ!

( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン!

 

百烈ビンタ。

ユリ直伝の必殺技である。

 

沙希「さらに………スマーッシュ!」

 

渾身の中段前蹴りが真吾の鳩尾にヒット。

飛燕足刀。又の名を「ユリちょうスマッシュ」。

足技は余り得意ではないユリでもワイヤーフレームダメージが起こる技なのだが、足技が得意なロバートから師事を受けている沙希の飛燕足刀……「沙希ちょうスマッシュ」は……それはそれは強力なものだった。

リング際まで吹き飛ばされた真吾。タフネスにも定評がある真吾が、今の一撃でピヨリ状態になった。

奥義は基本にあり……。渾身の力を込めたリョウ・サカザキの正拳突き、『天地覇王拳』の足版とも言うべき蹴りが沙希の無意識で発動した。

『天地覇王脚』……とでも命名するべきか。

 

沙希「何?今の飛燕足刀……。まるで龍虎乱舞……いや、龍虎乱舞以上の威力が……」

 

あらゆるスピードを超えたような蹴り。しかし、沙希の感覚ではゆっくりとしたモノ。

明鏡止水の心理が今の沙希にあった。

 

材木座「川崎殿!今の内に止めを刺すのだ!」

 

沙希「考えても仕方がない!極限流奥義!」

沙希(今なら……いつもの以上のが出せる!)

 

腕をクロスさせ、自分の力と気を解放する沙希。

 

ロバート「あかんで!そいつをやっちゃあ!」

 

リングの外からロバートの声が聞こえる。

しかし、その声は届かない。何より、この状態になった者は、完全に自分自身を制御することが出来ない。

今から沙希がやろうとしているモノは、本来はこの精神状態になってこそ真価を発揮する技なのだ。

沙希は解放した気の力を心の赴くままに突進力へと変える。

沙希「龍虎乱舞!」

 

残像が生み出される程のダッシュ。

そこからは凄まじかった。

暴力そのものとも言える突きが、蹴りが、沙希の体の限界を超えて繰り出される。

 

沙希「オラオラオラオラァ!」

 

まるでスター・プラチナのように雄叫びをあげる沙希。

真の龍虎乱舞。

これこそが極限流免許皆伝技とも言える究極奥義だ。

 

ロバート「し、信じられへん……あの娘、ユリちゃんを超えよったで……」

 

ユリも、そして今までの沙希も、龍虎乱舞は使えた。

しかし、それは形だけを真似た龍虎乱舞ではない。

我を忘れ、精神が肉体を超えた時に初めて出せるのが真の龍虎乱舞だ。

 

沙希「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

乱舞に幻影脚を組み込み、蹴りあげる。

 

沙希「もらったぁぁぁぁ!」

 

渾身の力を込めた龍斬翔。

 

真吾「ありがとう!そしてさよぉならぁぁぁぁ!」

 

派手に吹き飛び、動かなくなる真吾。

 

KO!

Winner is 沙希!

 

沙希「押忍!」

 

拳をクロスさせ、空手の礼をする沙希。

 

沙希「今の龍虎乱舞は………」

 

ロバート「それが真の龍虎乱舞や。それを自在に操れるようになってからが、極限流免許皆伝っちゅう訳やな。ワイやリョウとて、その領域に至ってへん。が、よく今の龍虎乱舞が使えたで?」

 

沙希「ロバート……師範……押忍!」

 

ロバート「せやけど、ここまでや。大将戦は止めときや。初めての真の龍虎乱舞…それにあのゴツイ蹴りを放った後や。体が持たんやろ」

 

沙希「あれ………体に力が………」

 

フラッ………バタッ。

限界を超えた技の反動により、沙希の意識が落ちた。

 

ロバート(リョウの『天地覇王拳』みたいな蹴り……あんなのは、ワイでも出来ん技や……ホンマもんの天才や……この娘……ワイに出来たんか?この娘の歳の時に、真の龍虎乱舞を………負けてられへんで……こないな娘に負けていられへんわ!)

 

沙希の姿に、本当の意味で最強の虎・ロバート・ガルシアが戻ってきた瞬間だった。

 

 

気絶した沙希がイロハの手により運ばれる。

 

イロハ「よく戦いましたよ、沙希先輩。拳祟さん、続いて下さいね♪」

 

一色「頑張って下さいね♪」

 

弥七「拳祟さんの良いところを見てみたいです♪」

 

三人の一色いろはが拳祟に声をかける。

キャルン♪

 

拳祟「お、おう。しゃあないわな。やったるで!」

 

拳祟はアテナ一筋だが、それはそれとして可愛い女の子3人に声援を送られれば悪い気はしない……というよりはテンションがマックスになる。(パワーゲージマックス)

…………悲しい男のサガである。

 

拳祟「よっしゃあ!お前の出番は無いで!八幡!」

 

八幡『それならそれで構わんから早くいってこい。残念イケメン2号』

 

意気揚々とリングに上がる拳祟。

それをジト目で見る八幡。

 

八幡『何か………今一つ信用性に欠ける奴だな……椎拳祟って男は』

 

材木座「まぁ、サイコソルジャーチームのギャグ担当であるからな……。悪いフラグをビシバシ立てて行っておる気がするのだが………」

 

餓狼八幡「あ~………不運(ハードラック)踊る(ダンス)っちまう系のフラグだな………」

 

一方で……

 

真吾「すいません………俺までやられてしまいました」

 

ダン「気にするな!あれだけの極限流相手によくやったぜ!おめぇ、草薙流なんてやめてサイキョー流に鞍替えしねぇか?さくら並みに素質があるぜ?」

 

真吾「はは……遠慮します。だって俺、草薙さんに憧れてこの世界に飛び込んだんっスから」

 

ダン「か~!俺が粉をかける奴は何でどいつもこいつも似たような事しか言わねぇのかねぇ」

 

さくらはリュウ、ショーンはケン、アリスはテリー、そして真吾は京と、何故かダンがコイツ!と思った存在は皆、憧れの誰かがいてしまう。

ガックシ肩を落とすダン。

 

ダン「まぁ、良いや。後は俺に任せな!キッチリと決めてやるぜ!」

 

仲間達に背中を向け、サムズアップをするダンがリングに上がる。

そしてゴロゴロゴロゴロと転がり………

 

ダン「伝説を見せてやるぜぇぇぇ!」

 

と拳祟に挑発をする。

当の拳祟は肉まんを1つ一口でペロリと平らげ、ダンの挑発を軽く流す。

 

 

拳祟VSダン!

ラウンド3!レディー……ゴー!

 

ダン「よっしゃあ!我道拳!」

 

まるでリョウ・サカザキの虎煌拳のように、片手で気の弾を放つダン。

 

拳祟「セオリー通り飛び道具を撃ってきたな?折り込み済み………え?」

 

拳祟は我道拳を飛び越してジャンプキックをしようとするが、目が点になる。

飛び越すまでもなく、ダンが放った我道拳が撃ったその瞬間に消えてしまったのだ。

父を殺され、サガットを憎む心を隠しきれなかったダンは、それを剛拳に見抜かれ指摘されていたのだが、一向に直らなかった故に波動拳を覚える前に破門されてしまった。

それ故にダンは波動をキチンと放てないのである。

そうとは知らなかった拳祟は、普通の飛び道具を避けるつもりで(この世界の格闘家達にとっては)セオリー通りに飛び越して……という予定だったのだが………。

 

拳祟「な、何や!何で飛びもせん飛び道具をその間合いで撃ってきよったんや!」

 

ダン「貰ったぜ!晃龍拳!」

 

拳祟「おわはぁ!」

 

ダンのジャンピングアッパーが拳祟に決まる。典型的な飛ばして落とす攻撃。まぁ、跳ぶ必要性は全くなかったので、ただの拳祟の自爆としか言えないのだが。

 

材木座「あの技……ゲームの通りであるな。全く前に前進しておらん。川崎殿の龍牙の方が技としても完成されておる……」

 

材木座の分析通りである。

晃龍拳は剛拳の昇龍拳をダンなりに模倣した技である。

形こそリュウやケンが使う昇龍拳に似ているが、晃龍拳は全く前に進まない。

基本的に余り前進しないリュウの昇龍拳とて、一歩分は前に進むと言うのに………。

俗に言う踏み込みが足りないという奴である。

 

ダン「楽勝!」

 

ダンが挑発をする。

 

拳祟「なめるんや無いでぇ!龍連牙・地龍!」

 

肘を前にしながら一足飛びで迫る拳祟。

それをダンは冷静にガードする。

続いて空中前蹴り、最後に飛び回し蹴りで追撃するも…

 

ダン「サイキョー流ガード!」

 

謎の壁みたいなものが発生し、最後の回し蹴りをした拳祟とダンの間合いが離れる。

そして、隙だらけの状態でダンの前に着地する拳祟。

 

拳祟「し、しまった!下手やってもうたわ!」

 

ダン「サイキョー流奥義!必勝!無頼拳(ぶらいけん)!オラオラオラオラオラオラオラ!ダァ!セイ!セリャァ!」

 

沙希がやったような乱舞技が拳祟に決まる。

が、この必勝無頼拳………早い話が龍虎乱舞の劣化コピーである。

龍虎乱舞は相手に突進し、突進が決まれば乱舞に移行して乱舞を命中させる技だが、必勝無頼拳はその場で乱舞を始める。

相手にヒットしようとしまいといきなりにだ。

今回は上手く命中したが、大概がその場でいきなり踊りだし、不発に終わるどころか無駄に隙を晒す羽目になる。

 

材木座「く……良いように舞い上がりおって!我がストライカーに回らずに中堅に出ておれば良かったわ!」

 

八幡『……というか、どういうことだ?椎はそんなに弱くないんだろう?KOFにもほぼ常連だと聞いているのに……』

 

材木座「ふん!単に合間合間に入れられている挑発に乗せられておるのよ。大方、3人のいろは殿に良いところを見せたいというあれもあるのだろうがな」

 

八幡『何か、戸部と被って見えてきたぞ……』

 

ダンと言えば挑発男。

何かにつけては必ず挑発を繰り返す男なのだが、相手次第ではこの挑発に乗って自分のペースを乱す。

今の拳祟がそうであるように。

 

餓狼八幡「同じく……それにしても、うちの材木座の必殺技も劣化極限流って感じがしたんだが、あれは材木座の腕が足りないというよりも、サイキョー流自体がそもそも劣化極限流だったからなのか………」

 

材木座「やはりなのか……」

 

頭を抱えるノスフェラトゥの材木座。

 

拳祟「何でやねん!何で俺がこんな中途半端な奴に…」

 

材木座「一々挑発に乗っておるからだ!この粗忽者!」

 

基本世界の材木座義輝という男を知っている人間がいるのならば、誰もが『お前が言うな』という言葉を吐くであろう残念イケメンの檄(遊戯部とのトラブルはそもそも材木座が遊戯部の挑発に乗ってしまった事が発端だった)。

しかし、その声は拳祟に届かない。

 

ダン「決めるぜオラァ!」

 

ペースを乱して混乱している拳祟に数発の攻撃を入れ、体勢を崩させたダンは、両腕を前にクロスさせる。

 

餓狼八幡「ま、まさか……覇王翔吼拳!?極限流でも無いのに!?」

 

ダン「サイキョー流奥義!覇王……我道けぇぇぇぇぇぇん!」

 

まるで覇王翔吼拳のような巨大な気の塊を拳祟に当てるダン。

 

拳祟「今日はこんくらいにしといたるわぁぁぁぁ!」

 

三流臭漂う負け台詞を放ちながら派手に吹き飛び、ダウンする拳祟。

ノスフェラトゥの八幡、材木座、いろはが頭を押さえる盛大な自爆劇。

 

ロバート「フォローできへんわ。情けないで……ケンスウ。あないな似非極限流に負けるやなんて……」

 

訛りが強い言葉を使う古参のKOF選手仲間としてそれなりに認めあっているロバートすらもフォローしきれずに肩を落とす。※6

 

ダン「余裕っス!」

 

ロバート「ユリちゃんか?ユリちゃんの真似やな!?ええで、次はワイが相手になったるわ!」

 

材木座「待て待て!これはうちのチームの試合である!ロバート殿が出ては我らが失格になってしまうであろう!」

 

ユリの勝利ポーズに良く似ているダンの勝利ポーズに気を悪くしたロバートが乱入しようとするのを材木座が慌てて止める。

因みにユリ本人はあまり気にしていない模様。

 

拳祟「すまん!堪忍してぇな!」

 

八幡『まぁ、良いですけど……』

 

出番が回ってきたノスフェラトゥ八幡が肩をぐるぐると回してリングに上がる。

 

ロバート「大丈夫なんやろうな?自分。あないな極限流もどきに逆三人抜きで負けよったら承知せぇへんで?」

 

ロバートが餓狼八幡をちらりと見てから八幡を睨む。

餓狼八幡はKOFレベルで見れば今一歩、完成していないように見えるロバート。あり大抵に言えば矢吹真吾と同等と見ているようである。

無様に負けた性悪なおバカ1号は論外過ぎて言うまでもない。

ロバート・ガルシアの中では比企谷八幡という男の株はだいぶ下がってしまっているようだ。

餓狼八幡のレベルだって、この年齢を基準に考えれば相当なレベルなのだが、同年代に麻宮アテナや藤堂香澄といった一流レベルが何人か存在しているせいで、ロバートの目が厳しいのは餓狼八幡にとっては不運と言うべきだろうか?

 

八幡『問題ない。この世界の格闘家は普通よりも身体能力が高いと言われているが……陽乃(義姉)さんや川崎の試合を実際に目にして見てもう問題はない』

八幡(というよりもどうした?あのおバカ……ツェペリの川崎の戦いを見た限りではそんな力の差なんか誤差の範囲の内のはずだろう?いくら身体能力が高いと言ったって、うちの小町程ではない……どういうつもりだ)

 

八幡は承一郎も感じている疑念を考えながら、どこかで聞いたことのあるセリフを口?(ノスフェラトゥの八幡は声帯が潰れているので、喋るときはノスフェラトゥが開発した機器を使って音を出している)にする。

 

オルタ VS ダン!

ラウンド4!

レディー……ゴー!

 

開始を告げられるが、動かない両者。

 

ダン「どうしたどうしたぁ!ビビってんのかぁ!」

 

八幡『それはこちらのセリフだ。別にお見合いをしていても構わないぞ?時間切れになった場合、判定で勝つのはこっちだ。椎との戦いに勝ったとは言え、無傷ではないだろ?』

 

KOSFの時間切れの判定は、その試合の優劣ではない。残り体力……どちらがダメージを負っているように見えるか……だ。

ダンは一見余裕ぶっているが、拳祟から受けた細かいダメージが蓄積されている。このまま判定に持ち越せば、八幡の勝利が確定する。

 

八幡『それとも……ビビっているのか?』

 

ダンの挑発に対して逆に余裕たっぷりの挑発を返す八幡。

 

ダン「んだとゴラァ!」

 

八幡(挑発を武器にしているくせに、自分は煽り耐性低いのかよ……)

 

顔を真っ赤にして突進してくるダン。

 

ダン「断空脚!せいせい!せいやぁ!」

 

1回の前方ジャンプで膝蹴り、前蹴り、回し蹴りを繰り出すダン。

八幡はそれを余裕を持って掌で受ける。

 

八幡『こんなものか?飛燕旋風脚……だったか?』

 

ロバート「それは飛燕疾風脚や!それもパチモンの!リョウや師匠、それにワイの飛燕疾風脚は威力も速度もそないなもんや無いで!」

 

補足すれば、飛燕疾風脚は遠間から凄まじい速度で前方に水平ジャンプし、気を纏った前蹴りの後に空中回し蹴りをやる技だ。が、リョウ・サカザキの飛燕疾風脚はアレンジされた飛燕疾風脚で、飛び回し膝蹴りから同じ足で前蹴り(俗に言う回し二枚蹴りという空手の伝説のキック)→後ろ回し蹴りへと変化させる技だ。

一見、ダンの断空脚と同じに見えるが、速度も威力も段違いである。

 

八幡『どうした。そんなものか?片手で耐えられるぞ?』

 

普段はもっと力が強い人外を相手にしている八幡。

この男ならば、森羅が関わった事件で六本木に現れたというゲシュペンスト・ハーケンが相手だったとしても余裕で対処できたかも知れない。※7

 

ダン「片手で弾いただと!?」

 

八幡『少し加減が狂うかも知れないが……』

 

ドズッ!

という音がなり、くの字に体が曲がるダン。

 

ダン「お………が………」

 

八幡『ちぐはぐでありながら、ある意味では大した男だ。あんたは……』

 

大物感を出している態度や年齢で騙されそうになるが、火引ダンという男の技は通常技から必殺技に至るまで、全てが中途半端だ。八幡は第三者の目からそれを見抜いていた。

それをハッタリと挑発で相手を乱し、長い格闘経験から臨機応変に対応して乗り切っていたのだろう。※8

 

八幡『だが、そこまでだ……。運が無かったな』

 

八幡は蹲っているダンの頬に拳を入れる。

 

ダン「参りましたぁぁぁ!」

 

たった2発。

拳祟との戦いで多少はダメージを受けていたとはいえ、少なくともタフさだけは剛拳も認めるダンをあっさりと沈めた八幡。

 

KO!

Winner is オルタ!

 

オルタ『全く僕の出番は無かったね』

 

八幡『わからないぞ。この大会レベルでやっている内は、いつかはオルタの力を借りるかも知れない』

 

マーブルヒーローズのアポカリプスやらオンスロートが現れればそうかも知れないが……。

いや、リュウやケンもそれらと戦っているので、もしかしたら…………。

 

八幡『華がなくて申し訳ないな。あなたたちや川崎のような必殺技らしい必殺技は、特に無いんだ』

 

リングを降り、ロバートに言う八幡。

 

ロバート「いや……ワイは自分と戦いとうなってきたわ。そこの娘とも見てみたいしな……負けるんやないで?ワイらと戦うまではな」

 

八幡『ああ。約束だ』

 

ロバートは手を上げて去っていく。

本来の目的も忘れて……(沙希の事情を聞く)。

 

ダン「す、すまん!俺が悪かった!真吾やショーンの頑張りを無駄にしちまった!俺の責任だ!」

 

一方で相手チームではダンがチームメイトに土下座をして謝っていた。

 

真吾「良いっスよ。火引さんは大会までの間、俺の面倒とかちゃんと見てくれましたし」

 

ショーン「相手が悪かったんっスよ。それに火引さんがいなければ、俺達は大会にすら出られて無かったんっスから。いやぁ、この大会はレベル高いっスね?」

 

アリス「またKOFが開催されたら、このチームで戦いたいです♪」

 

三流格闘家で大口叩きのダンではあるが、案外彼を嫌うものは少ない。面倒見が良く、どこか憎めないキャラなのが火引ダンである。

 

八幡『案外、格闘家の世界のお前も、そのどこか憎めない性格に惚れたのかもな……』

 

材木座「気持ちの悪いことを言うでないわ!次は我が出るからな!」

 

拳祟「そりゃ無いで!俺の実力はあんなもんやない!次こそ勝つから見捨て無いで欲しいわ!」

 

八幡『空条博士じゃないが、ヤレヤレだ……ちぐはぐなのはうちのチームの方かもな?』

 

←To be continued




※1
ダン
ストリートファイターゼロより登場したピンク色をした胴着をきている隠しキャラクター。
隠しキャラクターと言えば強い………というイメージを払拭した男。
弱い弱いと言われる程に極端に弱くはないのだが、キャラクター性能がリュウやケンの劣化版というイメージが強い上に一つ一つの技がクセが強く、使いこなすにはテクニックがいる。
劣化版リュウケンと言われるが、実質的には劣化版龍虎。
飛ばない飛び道具、我道拳のモーションは波動拳と言うよりは片手で放つ虎煌拳。ダン版竜巻旋風脚といえる断空脚は飛燕疾風脚である。
そもそもSNKの龍虎キャラを意識的にパク……オマージュされているキャラであり、黒いアンダーシャツを着たツナギタイプの胴着姿はリョウ・サカザキを、オールバックの髪を後ろで束ねているヘア・スタイルはロバート・ガルシアを、勝利ポーズの「余裕っす!」はユリ・サカザキの「余裕ッチ!」を。果ては父親が天狗なのは明らかにタクマ・サカザキ(Mr.KARATE)をパクっている。
以降、ダンは極限流を、ユリはリュウケンを公式にパクりパクられの関係を続けている。
なお、ダンは剛拳から破門された。一応は父親をサガットに殺されているという重い設定を持っているのだが……。

※2
バトルコロシアムのロバート・ガルシア
龍虎の拳シリーズのサブ主人公であり、外伝では主人公を務めたロバート。
しかし、ネオジオバトルコロシアムでは一転して空手家としての情熱をほぼ失っている姿がある。
ライバルである二代目Mr.KARATEことリョウ・サカザキが極限流総帥となっている年老いたロバート。
熱烈にユリにアプローチしていた頃の姿はなく、あまつさえ
「そのうち適当に結婚し、家庭を持つ……悪くないやろ?リョウ」
と言ってしまっている状態である。
KOF12の個別ストーリーではバトルコロシアムの道へ進みそうなストーリーが展開されていたのもあり、KOSFではバトルコロシアムルートで書いている。
「佐世保中年ライダー」さんは龍虎の拳外伝のロバートエンディングを採用しているのか、ユリと結婚している彼が描かれている(龍虎の拳外伝ではイタリアに帰国する彼を追ってユリが着いていった。リョウエンディングではリョウがユリの背中を押している)。
なお、「佐世保中年ライダー」さんを意識してこういう差別化をしたのではなく、元々KOSF本編のセレブチームを書いていた時に設定した物である(約二年ほど前)ので、完全に偶然である。
もしかしたならば、佐世保中年ライダーさんはKOSFを読んだのだろうか?
ロバートのエンディングはまだ書いてはいないが、概ねバトルコロシアムのロバートエンディング同様に本腰を入れて極限流に復帰し、リョウと二代目Mr.KARATEの名を争うというものを考えている。

※3
ショーン・松田
ケンの押し掛け弟子。ストリートファイター3シリーズに登場している日系ブラジル人の三世。
全米格闘王であるケン・マスターズが有名すぎる為に格闘界ではそこそこに知られているが、それはどちらかと言えばケンの弟子という部分でのみでのこと。
本人は未だに大会で1回戦を勝ち抜けていない未熟者である。
ストリートファイター5では姉のララが参戦している。
元々は松田流柔術(グレイシー柔術のオマージュ?)の家元の孫で、柔術は未熟ながらも経験はしているのだが、後付け設定の為かそれらしき技は使っていない。
空手+バスケットボールという事で、KOSF本編のライバルには日米スポーツチームのラッキー・グローバー(KOFのアメリカンスポーツチームのメンバー。モデルはマイケル・ジョーダンか?)を予定している。

※4
ショーンのバスケットボール
パーソナルアクションと呼ばれる一種の特殊技。
アリスのストライカー動作ではなく、ストリートファイター3当時から存在している。
必殺技に波動拳がないショーンの飛び道具ではあるが、いったいどこから飛んで来るのやら……(他にもホワ・ジャイの酒、ビリー・カーンの棒、ラッキーのバスケットボール等も同様。今回はチームメンバーがパスをしてきているという設定)。

※4
マジシャンズ・レッドの対空技
未来への遺産でアヴドゥルがしようしている。
どう見ても草薙京の百式・鬼焼きをパクっているとしか思えない。
もちろん、本家は草薙流古武術の百式・鬼焼きである。
京の鬼焼きは名前の通り、拳に炎を纏っているため食らえば火だるまになるが、草薙の血を引いていない真吾は本当にただの裏拳アッパー。

※5
KOF世界はサザエさん時空
KOFは95以降、時の流れが止まっているのか、年齢が加算されていない。
よって、本来ならばとっくの昔に高校を卒業している筈の真吾や麻宮アテナは未だにティーンエイジャーなのである。
それを考えると、KOF96で真吾が京に憧れ、押し掛け弟子となってから1年も満たないで何度もKOFの舞台に立ち、一流の格闘家たちと渡り合っている矢吹真吾は、下手をしたらユリ・サカザキ以上の大天才ということになる。
……というより、設定上の扱いはともかく、格ゲーキャラの性能は登場する度に強くなっていき、作品次第では上位に組み込むこともしばしばで、弱いどころかかなりの強さをもっている。設定に騙されて舐めてかかり、手痛い敗北を喫する者も少なくない。
恐るべし………矢吹真吾。

※6
拳祟とロバートの大阪弁
本来、KOFの世界で使われている言語は英語であり、一部の方言を使っているキャラは英語に訛りがあるという設定である。(龍虎の拳の謎という本を参考)
それを思いきり出しているのが藤堂竜白の娘であり、龍虎の拳外伝より登場した藤堂香澄である。
香澄は龍虎の拳外伝とKOF96ではカタコトの言葉やぶっきらぼうな喋り方をしているのだが、日本の高校生で英語は得意ではないという設定を出しており、勝利ポーズにも和英事典を見てから相手に一言言うという英語が苦手な設定をこれでもかと出している。
KOF99で再登場した時には流暢に話しているのだが、英語は克服したのだろうか?そしてかつての自分の姿を重ねたのか、香澄と真吾の対戦では技を復習しようとメモ帳を見ている真吾に対し、「手帳なんか見るな!」と一喝しているのだが、お前がそれを言うのか?というプレイヤーは数多くいたことだろう。

※7
ゲシュペンスト・ハーケン
プロジェクトXゾーンで春麗や風間仁、小牟の前に登場したシャドウミラー製の小型パーソナル・トルーパー(モビルスーツみたいな物)。
小型と言っても人よりは大きい。
出自はスーパーロボット大戦外伝・無限のフロンティア。
他にもアルトアイゼン・ナハト、ヴァイスリッター・アーヴェント、アークゲイン(ソウルゲイン)、上手くフェイクラウド(フェアリオン)が存在する。

※8
ダンの格闘家履歴
ストリートファイターZERO2でのケンのライバル戦前の会話にケンがダンの事を知らなかった事から、リュウやケンが剛拳に弟子入りする以前にダンは破門されていたと解釈が出来る。
格闘年齢は実は相当長かったようで……。

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