やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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異世界女性格闘家チーム対バーンシュタインチーム3 アーシスいろは対恭介

sideなし

 

リングの上に立つアーシスの一色いろは。

反対側に立つのは鏡恭介…。

バーンシュタインチームの先鋒は彼のようである。

私立太陽学園に通う風紀委員の男だ。

風紀委員でありながら髪を明るく染めており、某熱血硬派のような白い学ランを着用している。

 

エリナ(どことなく葉山先輩に似ていますねー……体育祭の時にも白ランを着ていましたし)

 

恭介は眼鏡をくいっと押し上げ、一色いろはを睨み、口を開いた。

 

恭介「ストライカー無しで僕に勝つつもりかな?」

 

恭介はチラリとストライカー待機スペースに目を向ける。そこには鶴のいろはが待機しているのだが、両手両足を縄で縛っており、ストライカーとして乱入が出来ない状態になっていた。

鶴のいろはは縛られる事に何かトラウマがあるのか、顔を青ざめてガタガタ震えている。

 

いろは「これが旦那様にされていると思えば……」

恭介「………むしろ大丈夫なのか?」

エリナ「さぁ……出会ったばかりのわたしには彼女が何のトラウマを持っているのかなんてわかりませんので」

 

エリナのいろはは伸びた髪を後ろに束ね、開始線に入る。

続いて恭介も開始線へと足を進める。

 

アナウンス「恭介 VS(バーサス) エリナ!」

エリナ「風紀委員が校則違反なんて、示しがつかないですよー?」

恭介「風紀を乱している生徒会長が言っても説得力が無いな。僕には勝てないよ。一色いろは」

エリナ「わたしは生徒会長にはなってないんですけどね?」

 

エリナことアーシスの一色いろはは基本世界の一色いろはとは違い、生徒会長をやっていない。雪ノ下雪乃が生徒会長をし、そして今は任期を終わらせて書記であった藤沢へとバトンタッチしている。

そもそも、この世界に集結している四人の一色いろはが生徒会長をやっている姿を想像するのが難しい。

弥七ことアルス界の一色いろはは八幡ファンクラブの運営があるし、ノスフェラトゥの一色いろはは組織に縛られている。

そもそも、基本世界の一色いろはが推薦人の嫌がらせを受けたのは女子生徒からのやっかみを受けたのが原因であり、この世界に集まっている四人の一色いろははそうなるとは思えない。

エリナいろはの場合は性悪コンビのとばっちりで被害を受けたようなものなのでノーカウントとしている模様。

 

エリナ(弥七なら片手間でやれそうな気もしますが…)

 

エリナは片腕を前に出し、横に構えを取る。後ろ手で鳩尾を隠すことを忘れない。

古武術と日本拳法の構えをベースにした構えかただ。

対して鏡恭介は若干猫背のような構えを取っている。

忌野流忍術の構えだ。

 

アナウンス「ラウンド1……レディ!ゴー!」

 

エリナ「ナイチンゲール・エメラルド!エメラルド・ショット!」

恭介「クロスカッター!」

 

エリナいろはは早速、自身のスタンド、ナイチンゲール・エメラルドを展開してエメラルド・ストライクの劣化版であるエメラルド・ショットを放つ。

5発の小粒の散弾が恭介に向けて飛んでいく。

対して恭介は腕をクロスに組み、それを素早く振り下ろす。

振り下ろされた腕からは2発の電気を纏った気弾が上下に別れて放たれる。

 

餓狼八幡「あのいろはの技は……エメラルド・スプラッシュか?」

Nいろは「いえ。エリナさんのあれはエメラルド・ストライクという技ですが……」

弥七「あれはストライクよりも更に弱い弾丸ですね」

 

弥七とノスフェラトゥの一色いろは……共に一度はナイチンゲール・エメラルド・アルファを使った事があるからこそわかるエメラルド・ストライクの威力。

 

弥七・Nいろは(何を考えているんですか?エリナちゃん?)

 

本来のエメラルド・ストライクですら力不足。

この世界の格闘家達の身体能力は高い。

 

Nいろは(三人抜きをしたとはいえ、陽乃さんでも余裕で勝てたとは言えませんでした……)

弥七(スタンド使いとはいえ、波紋の戦士でもないエリナさんじゃ………)

 

二人のいろはが言うように、エリナいろはは波紋の戦士でも無ければスタンドそのものも近距離パワー型ではない。

分類するならば遠距離パワー型……それがナイチンゲール・エメラルドなのである。

そして思い出して欲しい。

完全な近距離パワー型であるDIO八幡のザ・ジェムストーン、静のアクトン・クリスタルact2、承一郎のクリスタル・ボーン、承太郎のスター・プラチナだとてこの世界の格闘家達には苦戦している始末だ。

事実、エリナいろはのエメラルド・ショットは恭介のクロスカッターに一発ずつヒットするものの、相殺しきれずに貫通。

エメラルド・ショットの残り3発と軌道を描いて1つに纏まったクロスカッターが双方にヒットする。

 

エリナ「キャッ!」

恭介「…………」

 

波動拳のような飛び道具と豆鉄砲程度の飛び道具……飛び道具同士のヒットとはいえ、どちらの方がダメージが大きいかは考えるまでも無いだろう。

 

餓狼八幡「覇王翔吼拳にパワーウェイブをぶつけたみたいな状況だな………」

 

波動拳やパワーウェイブを巨大な気の塊である覇王翔吼拳にぶつければ、覇王翔吼拳が波動拳を飲み込んで貫通する。格闘ゲームキャラクターならではの例えではあるが、そうではない人間にしてみれば解りにくいことこの上ないだろう。

龍玉の世界で例えるならばヤム○ャの操○弾をぶつけたところでベ○ータのビッグバン○タックに飲み込まれて終わりのようなものである。

 

弥七「もっとも、パワーウェイブならばクロスカッターを相殺出来るとは思いますけどね?」

 

大乱闘の世界で波動拳とパワーウェイブが相殺していた経験がある弥七には通用したようである。

 

餓狼いろは「つまり、覇王翔吼拳とパワーウェイブの差くらいはエメラルド・ショットとクロスカッターに威力の差がある………という事ですか……」

餓狼八幡「だとしたらあの一色……この大会に出てくる事自体が相当危険なのではないか?」

 

餓狼八幡の心配は至極まっとうとも言える。

そして、隣に立っている一色いろはとは別人だと言えどもエリナいろはは一色いろはの異世界同位体だ。

危険な目にあえば心配にもなるというものである。

 

Nいろは「うーん。それはどうでしょうかねー?」

 

餓狼八幡の言葉に首を傾げるのはノスフェラトゥの一色いろはだった。

 

Aいろは「そうなんですか?わたしはエリナさんの実力をあまり知らないんですけど。確かにエメラルド・ヒーリングは頼りになるとは思いますけど……」

Nいろは「ふぇ?弥七ちゃんは別の世界でわたしと同じストーンオーシャンを経験したと聞きましたけど、あのアーシスのエリナちゃんは戦わなかったんですか?」

Aいろは「そうですねー。戦ったと言っても、プッチとかそういうのとの戦いくらいで、どちらかと言えば回復役って感じですかねー?ノスフェラトゥのいろはちゃんはエリナさんの実力を知ってるんですか?」

Nいろは「基本的にわたしの世界で起こったストーンオーシャンではわたしとエリナちゃんはコンビで戦っていたので。力はこの大会の中では最弱だとしても、ただでやられるエリナちゃんではないと思いますよ?」

 

ノスフェラトゥの知るエリナいろはは今、苦戦しているエリナいろはとは違う。

今、戦っているのは弥七のいろはと共闘したエリナいろはだ。

しかし、ノスフェラトゥの一色いろはが知るエリナいろはと目の前のエリナいろはは千葉村の戦いまでは全く同じの枝分かれした世界線のエリナいろはである。

根は同じ……というよりはほぼ同一人物と言っても過言ではない。

 

Nいろは「最弱でも……ただでやられるスタンド使いではない……それがあなたも良く知るジョースター家じゃないですか?弥七さん♪」

Aいろは「………そうですね。信じてみますか。エリナさんを」

餓狼いろは「むぅぅぅ。何か同じわたしなのに、わたしの知らない内容で盛り上がってるんですけどー」

餓狼八幡「取り敢えずいろははさくら先生から波動拳をマスターしてみたらわかるんじゃね?」

餓狼いろは「はちくん!適当な事を言わないで下さいよ!気の使い方なんてわかるはずが無いじゃ無いですか!」

餓狼八幡「確かさくら先生って今のいろはの頃に格闘を始めたって聞いてるんだよなー」

 

大天才の春日野先生と同じように扱うなと思う餓狼いろははむくれて頬を膨らませる。

そんな餓狼いろはを微笑ましく思いながら、ノスフェラトゥの一色いろははエリナいろはに強くエールを送る。

 

Nいろは(信じてますよ?いろはちゃん。わたしがナイチンゲールを使えた時に、エメラルド・スナイプのヒントを与えてくれたあのいろはちゃんと同じなのならば)

 

ノスフェラトゥの一色いろはは思い出す。

彼女の経験したストーン・オーシャンの出来事を。

弥七いろはと同じく、ノスフェラトゥの一色いろはもアーシスが現れた時、ナイチンゲールを使うことができた。

弥七と同じように完全にナイチンゲールの力を使えなかった彼女。しかし、ノスフェラトゥの前に現れたアーシスのいろはは彼女にスタンドとは何なのか……を解いた。

精神の本質が形になったものだと。

その結果、彼女は空条家の屋敷で肉の芽に操られたハイエロファント・グリーンを操る海老名姫菜の『ハイエメラルド・スプラッシュ』を破ったのである。その技がエメラルド・スナイプ。

狙撃を得意とするノスフェラトゥの一色いろはのオリジナルの必殺技を編み出すきっかけとなった出来事だ。

 

 

 

一方で試合の方は………

 

恭介(直撃したはずなのにジャブを一発受けた時よりも軽い……なるべく傷付けないように倒さなければ……)

 

恭介はエメラルド・ショットを受けたダメージからエリナいろはの実力を判断する。

格闘ゲームで表現するならば、エメラルド・ショットの威力は必殺技をガードして若干の体力を削られた時のダメージと変わらない。

もしガードをしていたのならばダメージにもならなかっただろう。

エメラルド・ショットの威力はそれほど弱かったのである。

気の力が弱い……某龍玉の世界と同じように、この世界の人間は誰しもが気の力を持っている。少し格闘をかじれば気を用いた飛び道具が使える……。

見よう見真似で波動拳を使えた自称リュウの一番弟子を名乗る春日野さくらのような天才程では無いにしても。

だが、アーシスの世界はその限りではない。気の概念はあったとしても、それは内側での事だけだ。

 

恭介「雷神アッパー!」

 

下から書き上げるように腕を振り上げると、その腕を追って雷の柱が上がる。

 

エリナ「くっ!」

 

アッパーをガードするも、エリナいろはの腕は波紋のカッターを受けたかのように痺れてしまう。

 

恭介「遅い!」

 

少し前に飛び上がり、そのまま雷を纏ったサマーソルトキックを放つ。

幻影キック。

ガードブレイクをしてしまっていたエリナいろはの顎を捉え、エリナいろははダウンを奪われてしまう。

 

恭介「君のように幽霊のようなモノを操る者は力が弱い者が多かったが、その中でも君はそれが顕著のようだ。下手をすれば委員長達の方が強いだろう。悪いことは言わない。早いところ、大会を棄権すべきだろう」

エリナ「…………くっ」

 

誰の目から見ても明らかだった。

弥七と呼ばれている一色いろはが雷神・覇王翔吼拳を放ったことで注目を浴びていた「一色いろは」だが、エリナいろはの場合は大会に出場できるレベルにはいないということを………

観客にも、そして鑑恭介にも落胆の色が浮かんでいた。

 

 

観客席の一角

 

荒れた黒髪をポニーテールのように頭を結んでいる浪人風の男が瓢箪からグビグビと酒を飲み、試合を眺めていた。

隣には銀の髪を同じように結んでいる西洋貴族のような服装をしている青年が涼しげな瞳で試合を眺めている。

粗野粗暴の浪人に対して、青年は理知的で凛としている。

知らぬものが見ればこれが同じチームを組んでいる者同士とは誰も思わないだろう。

浪人の名は覇王丸、青年の名は忌野雹と言った。

 

覇王丸「ングングングング……プハァ……」

雹「覇王丸殿……酒を嗜むよりも試合の方を……もっとも、ほぼ恭介に決しているようなものですが……」

覇王丸「いや、この試合の見所はまだこの先だぜ」

 

覇王丸は酒臭い息を吐き、懐から雹が用意したサキイカを取り出してバクッと噛み付く。

日本のコンビニならばいざ知らず、サウスタウンでどうやってサキイカを用意したのかはつっこまない。

 

雹「ほぼ一方的に押している恭介が負けるとは思いませんが………」

 

伝説の剣豪と呼ばれる覇王丸の目も案外頼りにならないなと雹は思う。

 

覇王丸「目が……違うんだよ。何か狙っていそうな目がなぁ」

雹「精神論ですか………私には理解できませんね」

 

雹は文武両道を尊ぶジャスティス学園の生徒会長だった男だ。

江戸時代の『武士は食わねど高楊枝』という考えが普通だった江戸時代の非合理的な精神論は理解できない。

 

覇王丸「根性だぁなんだのが全てとは言わねぇが……かといって、それを賢こぶって甘く見てりゃあ……」

 

覇王丸は瓢箪をもう一度煽ってから………

 

覇王丸「負けるのはオメェの弟かも知れねぇぜ?雹」

 

意地悪く笑ってリングを見た。

忌野雹は鑑恭介が探している双子の兄である。

 

雹(恭介が負ける………か。そうなればそうなるで構わないだろう。私の事など忘れ、静かに自分の人生を歩めば良い……)

 

 

恭介「止めだ!はぁぁぁぁぁ!」

 

試合の方では辛うじてエリナいろはがフラフラと立ち上がっているところだった。

DIO八幡がそうであったように、ガードを固めていたとしてもじわりじわりと体力を削られていたエリナ。

流石に恭介も試合だとはいえ、女性……しかも自分と同じ高校生をいたぶるのは気が引けていた。

だからと言ってわざと負けるわけにもいかない。

自分はまだ何もなし得ていないのだから……。

だからせめて苦しまないようにと完全燃焼アタック…別の用語で言えば超必殺技やスーパーコンボと呼ばれる必殺技でトドメを刺そうと考える。

幻影キックの強化技、スーパー幻影キックのサマーソルトがエリナの顎を狙う。

しかし………

 

エリナ「相手が勝ち誇った時……その人は既に敗北しているんですよ……鑑恭介さん」

 

もはや一削りでKOとまで追い込まれていたエリナいろはだったが………その蹴り足を上半身を反らすことによって回避。攻撃避けだ。

スーパー幻影キックの最初の一撃であるサマーソルトがまさかの回避。一度発動した技は止まらない。

 

エリナ「ショット!」

 

空中で……しかも宙返り状態で隙を晒していた恭介の目にエリナいろはは情け容赦なくエメラルド・ショットを発射する。

 

恭介「目が……目がぁぁぁぁ!」

 

恭介は某大佐の如く目を押さえてゴロゴロと回る。

エメラルド・ショットは確かにジャブ1発分の威力よりも劣る。

だが、目は小粒の砂が入り込んでも大ダメージを負う急所の1つだ。

そしてエリナいろはは力は参加選手達の中でも最弱だったとしても、実践経験は豊富だ。

それも………

 

恭介「目を狙うなんて……非常識な……」

エリナ「おかしな事を言いますね?この大会は極力実戦的な格闘大会だったと思いますけど?」

 

エリナいろはは卑怯汚いは敗者の戯言と平気で口にするスタンド使いの実戦を………だ。

戦闘に適していないエリナいろはが経験した戦いのどれもが楽勝というものはなかった。

壮絶な苦戦の果てに重ねてきた白星。

自分が非力なのは知っていた。

自分の能力が戦闘に不向きなのも知っている。

それでも…………

 

エリナ「足らぬ足らぬは工夫が足りないんですよ」

 

ニタァと性悪コンビのように唇を歪ませたエリナの反撃の時間が始まった。

 

←To be continued


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