やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

549 / 731
格闘家達の憩いの場へ

サウスタウン

メイン通り……

BGM…176th street(餓狼伝説WABテリーのテーマ&KOF99餓狼伝説チームのテーマ)

 

忍「あら?」

承一郎「お?」

餓狼八幡「ん?」

N八幡『よぉ』

DIO「うす……」

 

路地裏から出て、メインストリートに出た二組の主人公5人がバッタリと出くわした。

 

忍「珍しい組み合わせね?八幡ちゃん達?」

N八幡『藤崎さん。俺達3人、全員八幡ですから』

忍「あらごめんなさいね?異世界ではDIOと名乗ってたわね。どうしたのよ。全員服がボロボロじゃない。特に……ええっと、DIOちゃんと組んでる八幡ちゃんは自慢の茄子ヘアーがアフロになりかけてるわよ?」

餓狼八幡「茄子言わんでくれません?草薙流の最終奥義をまともに食らってしまったので………」

承一郎「草薙流?草薙京ならば、少し前まで僕達と一緒にいたけど?」

DIO「その草薙京、本物か?俺達はそのクローンとひとドンパチしていたわけだが……」

忍「ひとドンパチって……お風呂じゃないのよ?」

DIO「何気ない日常が突然ドンパチになるのがスタンドなので……なぁ?承一郎?」

承一郎「ノーコメント……」

 

思わず目を逸らす承一郎。同じスタンド使い故に思い当たる節がいくらでもあるのだろう。

 

N八幡『そういう藤崎さんも一条も、疲れが見えるが?』

承一郎「こっちも、八幡……スタンド使いの八幡風に言えばドンパチだったものでね……八神庵とビリー・カーンと山崎竜二が襲いかかってきてな…」

餓狼八幡「おいおい。その3人と戦って、よく無事でいられたやなぁ」

承一郎「変にオロチに睨まれてるっていうか……」

餓狼八幡「オロチ?八神庵か?」

忍「山崎竜二よ。確かテリーちゃんと因縁あると聞いているけど、知らないの?ボガード八幡ちゃん?」

餓狼八幡「や、そんな話は聞いたことが無いですけど?兄ちゃん達からも聞いてないしなぁ……」※1

 

うーむ……と頭を悩ませる5人。

 

餓狼八幡「アンディ兄ちゃんに聞いてみるか……秘伝書の関連で山崎と因縁があるわけだし……」

承一郎「おいおい、しっかりしてくれよ。笑えないボケをかましてくるのは集とスタンド使いの八幡だけにしてくれ」

N八幡(そうか……一条はジョルノ義兄さんの弟……実父のオリジナルDIOの事を憎んでいると聞いたな……だからDIOの八幡の事を頑なにDIOとは呼ばんのか……)

 

承一郎に対し、妙にシンパシーを感じるノスフェラトゥの八幡。

 

N八幡『俺達比企谷八幡がそれぞれ違うように、その山崎竜二という男が違うこともあるだろう?』

餓狼八幡「ああ、確かに………つうか、うちの世界の山崎がオロチ一族だったとしたら、八傑集とかと戦わなくちゃいけなくなるから、心の底から奴がオロチじゃないことを願うわ」

 

餓狼八幡が山崎を『奴』と言うように、当然テリー達の敵である山崎の事は大嫌いだ。

京の押しかけ弟子である矢吹真吾が八神庵の事を「草薙さんの敵は俺の敵!」と言うように、餓狼八幡にとって「兄ちゃんの敵は俺の敵!」と言った感じなのだろう。

例外があるとすれば、先祖の魂に肉体を乗っ取られている秦兄弟だけだろうか?

 

承一郎「で?お前らが3人揃っていて、そんなにボロボロなのは?草薙京のクローンを相手にしただけなら、お前らがそんなになるわけがないだろ?特にそこの性悪がいるならば」

N八幡『草薙京のクローンだけじゃなく、シャドルーの幹部達が襲ってきた上に、フリとは言えそこのバカが裏切った』

 

話を聞いた二人はジト目でDIOを見る。

それを誤魔化そうとDIOは毎度ヘタクソな口笛を吹くが、余計に二人の不快度指数を上げるだけだ。

 

忍「DIOちゃん?詳しく聞かせて貰おうじゃない?」

承一郎「丁度空腹になっていたところだし、腰を落ち着かせて聞かせて貰おうじゃあ無いか。なぁ?性悪八幡?」

忍「逃げようだなんて思わない事ね?そんな事は無駄なのよ。無駄無駄。あちし、無駄な事は嫌いよ」

承一郎「ジョルノ兄さんみたいな事を……」

 

忍と承一郎二人を相手にして、DIOが逃げ切れる訳がない。

時を止めても忍が承太郎やDIO自身に変身すれば無意味だし、承一郎……というよりはジョニィのスタンド、ブラッディ・シャドウを使えば瞬間移動が出来る。

 

DIO「…………はい」

 

うなだれるDIO。

 

承一郎「で、どこで食事をするかだが……僕はサウスタウンの地理に詳しくないしなぁ。おい性悪。どこかいい店を知らないか?」

DIO「おい承一郎。ついに八幡が呼び名から消えたぞ。後、サウスタウンなんて俺達の世界には無いんだから知っている訳がないじゃあないか」

餓狼八幡「ああ、ならばいい店を知っているぞ?サウスタウンには来たことが無いけど、格闘家ならばその店を知らないのはモグリと言われる店がな」

 

そう言って、仗助に変身した忍がクレイジー・ダイヤモンドで治療を受けた後、餓狼八幡は先導して歩き出す。

そうして連れられた店は………

 

「パオパオカフェ本店」

BGM……ハレマー教カポエラ派戦いの歌(餓狼伝説…リチャードステージのテーマ)※2

 

忍「カフェ?あちしの店とは大分違うわね。あちしも夜はバーとして営業しているけれど、ここは………」

 

忍はSunny Lightというカフェを営んでおり、夜はバーとして営業しているが、どちらかと言えばこの店は……。

 

餓狼八幡「パオパオカフェはカフェと言いつつも、どちらかと言えばバーの方がメインなんですよね。そして、俺は自分の世界では千葉支店でバイトしてるんですよ。川崎も一緒に働いてますね」※2

DIO「バー?や、料理の匂いといい、どちらかと言えば……」

承一郎「本格的な居酒屋……な感じがするな……」

 

そう。パオパオカフェはカフェと銘をうっているが、ここを訪れる客達かコーヒーやお茶等を注文することは滅多にない。

承一郎が言うように、バーというよりは居酒屋のような感覚で酒や料理を注文し、酔い痴れる。

 

N八幡『大丈夫なのか?酒場なんて……』

餓狼八幡「大丈夫だよ。一応はカフェだから、未成年お断りってわけじゃないから」

DIO「酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞ♪酒が飲める酒が…」

 

ゴン!

率先して飲酒をしようとするDIOに対し、承一郎がゲンコツを落とす。

メインのツッコミ、空条徐倫が不在の為、代わりにゲンコツを落としたようだ。

 

承一郎「未成年が飲酒をしようとするんじゃあない!そしてここはアメリカだ!飲酒年齢は日本よりも高い!」

 

至極正論を言う承一郎に対し、DIOはゲンコツされた頭をさすりながらニタァと笑う。

嘲笑と言うのが正しいだろう。

 

DIO「電子タバコとはいえ、未成年で喫煙している奴に言われたく無いんだが?承一郎君?んん〜?その辺どうよ?」

 

馴れ馴れしく承一郎の肩を組んでポンポンと叩くDIO。

DIOの場合は承一郎とは逆で飲酒はすれど喫煙の習慣はない。

 

承一郎「い、いや……そ、その……タバコは……」

DIO「承太郎の真似か何かか?大丈夫だ……承太郎だって留置所でバドワイザーを………日本なのにわざわざアメリカのビールを持ち込んで飲んでいたじゃあないか?しかも缶の下の方をペンで穴を開けてチビチビと変な飲み方をしてなぁ……大丈夫だ。憧れの承太郎だってそうなんだ……安心しろ……安心しろよ、承一郎……」

 

ゴン!

今度は忍が徐倫に変身して鋭いゲンコツを叩き落とす。

DIOへのゲンコツは徐倫が一番だろうというチョイスだった。

 

忍「承一郎ちゃんを酒飲みの道へ誘うんじゃないわよ!承一郎ちゃんも付け入る隙をDIOちゃんに見せるからそうなるのよ!あちしの目が黒い内は未成年の飲酒はさせないからね!?」

N八幡『ああ、この光景を見て思い出した……』

 

ノスフェラトゥ八幡はDIOの胸倉を掴み……

 

N八幡『お前、魂が砕けて俺の体に入ってきた時は、人の体で飲酒をしようとするわ、下らないことをしては空条先生にポンポン頭を叩かれるわ、機会があったら一度フルボッコにしてやりたかったんだ。覚悟は出来てるよな?パッショーネの関係者なら、覚悟が道を切り開くんだよな?』

DIO「それは俺じゃあない!俺だけど俺じゃあない!冤罪だ!弁護士!めぐり先輩のお父さん(SPW財団千葉支部の顧問弁護士)、俺の弁護をぉぉぉ!」

N八幡『関係ない………逝け…………』

 

 

 

 

N八幡『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!無駄ぁ!』

DIO「ギャッはァァァ!」

 

DIO(ザ・ジェムストーン)……再起不能(リタイア)

 

N八幡『ふぅ……やっとコイツを殴れた……』

承一郎「あー……鬱憤溜めていたんだなぁ……」

忍「気持ちはすっっっっごくわかるわ……」

餓狼八幡「あの……そろそろ入店したいだけど……ギャグは俺の担当じゃ無かったのか?」

 

 

 

静「あ、ハッチーズ達だ。おーい!」

N八幡『誰がハッチーズだ……まったく。お前は俺が出会った静・ジョースターと比べたらだいぶちがうな……』

静「ワイルド・ハニーのグラサン女と私を一緒にするなっつーの。良いからこっち来なよ」

 

ハッチーズ改め八幡達が入店すると、大テーブルで食事をしていた静が声をかけてきた。

席にはアンディ達を筆頭に全ての関係者が揃っていた。

 

沙希「あ、やっぱりあんたもここに来たんだ」

餓狼いろは「やっぱりサウスタウンに来たならば、ここにこなければですよねー?はーちくん♪」

餓狼八幡「まぁ、一度は来てみたかったけど…今の本店って多分、すごく大きくなっているって話なんだよなー」

 

餓狼八幡達の世界では日本にも進出しているパオパオカフェだが、この世界のパオパオカフェはサウスタウンを始めとした数店とメキシコ等のアメリカ大陸の数国に出店しているだけだった。※4

この世界のテリー達の年齢を考えると、おそらくは餓狼八幡の世界よりも過去だと考えるのが自然だろう。

一部、ロックやキム兄弟の年齢がおかしいような気もするが。

 

ボブ「ハーイ!あなた達はエリナさんのお知り合いですねー?今夜は貸し切りですので、どうぞごゆっくりして下さい!」

餓狼八幡「えっ!?ボブ・ウィルソンさん!?確か2号店の店長の!?どうして本店に!?」

 

ハッチーズの応対をしたのはドレッドヘアがトレードマークの陽気なイケメン黒人男子、ボブ・ウィルソン。

オーナーの一番弟子であり、パオパオカフェ2号店の店長だ。

陽気な笑顔にキラリと光る綺麗な歯が眩しい。※5

 

ボブ「大会前にギースに襲われて怪我をしていたのですが、アンディさんに紹介して頂いたエリナさんに治して頂いたのですよ。そのお礼に今夜はこうして貸し切りにしていまーす!」

 

話を聞くと、先日パオパオカフェ二号店にギース・ハワードの襲撃があり、ボブはギースに痛ぶられたとの事。

元々アンディはパオパオカフェに寄ろうとしていたようなのだが、店は休業していた。

オーナーのリチャードが大会に出場しているからだ。

事情を聞いたアンディは、エリナを連れて療養中のボブを訪れエメラルド・ヒーリング。復活したボブはリチャードが大会に出場中は本店で営業を買って出た。

ギースの襲撃によって2号店はボロボロ。従業員もギースを恐れてみんな辞めてしまったようで、どっちにしても2号店は営業不可能なようで、ボブは一時的に本店の店長代理をやるようにしたとのこと。

 

ボブ「今日は私を治してくれたエリナさんとアンディさん達にお礼でーす!」

 

そのエリナいろはとNいろは、そして弥七の3人のいろはは唐揚げを美味しい美味しいと舌鼓を打っていた。

 

エリナ「いえいえ、アンディさんのお知り合いのようですから、こんなのはお安いご用ですよー♪それにしても美味しいですねー?お肉の味が鶏肉みたいで少し違うような感じですけど、何のお肉ですかー?」

餓狼八幡「ん?もしかしてそれって………」

 

パオパオカフェ千葉支店の従業員である餓狼八幡にはその唐揚げには凄く見覚えがあった。もっとも、それを注文するのは一人しか知らないのだが………

 

沙希「ワニの唐揚げ……」

餓狼いろはを除くいろは✕3「えっ………」

 

ワニの唐揚げ。パオパオカフェの名物料理だが、これを頼むのは宿命の3人の一人、ムエタイチャンプのジョー・東しかいない。

餓狼いろはがワニの唐揚げを食べていなかったのは、自分の世界でこれを知っていたからだ。

 

承一郎「ワニの唐揚げ……ちょっと興味があるな……」

N八幡『栄養があるならあるならば俺は何だって食える……』

呂布「これ……好き……」

 

一部にはえらく好評のようだ。

 

リチャード「ほう、君が異世界では私の店の従業員の子かね?」

 

店の奥から出てきたパオパオカフェのオーナー、リチャード・マイヤが出てきて餓狼八幡に声をかけてきた。

単身荒くれ者が揃うサウスタウンでパオパオカフェを立ち上げ、一代で国を超えた大きなチェーン店まで成長させた天才オーナー、リチャード・マイヤー。

元の世界では八幡を雇い入れた人物である。

話がわかる人物で、沙希が起こした事件でも笑って許した上に、沙希の事情を汲んで色々と解決案を示した人物である。

KOF世界でもその経営手腕は確かで、タクマ・サカザキが経営する焼肉屋、極限焼肉の経営にも色々とアドバイスをしている。

ロバート・ガルシア曰く、『リチャードはコンサルタントでも食っていける』という事らしい。

 

餓狼八幡(オ、オーナー!)

リチャード「ふむ……さすがはテリー、アンディ、ジョーが手塩をかけて鍛えた事はある。格闘に必要な筋肉は付いているようだ。どうだ?カポエラに興味はないかね?パオパオカフェは格闘家は歓迎だ。特にカポエラマスターはより大歓迎で、店長に必要な資質はカポエラマスターが必須だ。そちらの私も君がカポエラマスターになれば即店長にする事だろう」

 

ベタベタと餓狼八幡の体に触れながら、勧誘してくるリチャード。

 

餓狼八幡「お、お言葉は嬉しいですが、俺は兄ちゃん達のスタイルを貫きたいので……」

 

餓狼八幡が断ると、リチャードは肩を竦めて首を振り、とても残念そうにする。

 

リチャード「そこのお嬢さんにも断られたし、残念だ」

沙希「す、すみませんオーナー。あたしも極限流で頑張っていきたいので……」

 

餓狼八幡はジョーのムエタイを、沙希は蹴りを主体としたロバートのスタイルを受け継いだ極限流をやっている。

恩あるリチャードの誘いを断るのは心苦しいが、それだけは外せない。

もっとも、餓狼八幡はタクマ・サカザキから熱烈な勧誘をうけているが。

そのことをリチャードに話すと……

 

リチャード「タクマがなぁ……今のタクマを見ていると、そこまで空手に打ち込んでいるようには見えんがね」

沙希「え………ご隠居が?」

 

空手バカで、初代Mr.KARATEとして世界中の格闘家から恐れられるタクマ・サカザキ。

そんなタクマの姿しか知らない餓狼沙希は驚く。

 

リチャード「今のタクマやユリは焼肉屋の経営に夢中でな。この間もそれに激怒したリョウがサウスタウンを出るとか言って騒ぎになったものだ……」※6

沙希「ご、ご隠居が焼肉……想像付かないんだけど……」

餓狼八幡「タクマご隠居は蕎麦ってイメージだものな……」

沙希「比企谷。ご隠居の前で蕎麦は禁句だからね……」

餓狼いろは「この前はひどい目に遭いましたもんねー」

静「そば如きで大袈裟な……」

 

静がそう言うと、餓狼八幡、餓狼いろは、沙希が詰め寄る。

が、大袈裟ではない。タクマの趣味はそば打ち。しかし、一度始めると短くて3日、下手をすれば一週間はサカザキ家の食卓は毎食がそば一色になる為、極限流ではそばが禁句となっている。

閑話休題

 

ジョセフ「しかし、カポエラが店長の条件とはな……それはなぜかね?リチャード君」

N八幡『それは俺も気になっていた……何でもこの店は格闘家達の聖地と呼ばれているようだが……』

弥七「あ、それはあの舞台じゃ無いですかねー?」

 

パオパオカフェの中心には客席全体から見えるように舞台が設置されており、その舞台では今、カポエラダンサー達が軽快に踊っていた。

 

弥七「格闘家達の聖地、サウスタウンでカポエラマスターのリチャードさんがカポエラを売りにしてショーダンスをしているんならば、それだけで宣伝になるじゃないですかー」

 

弥七いろはがにこやかに回答する。しかし、それは微妙に違うようで……

 

リチャード「ハハハハハ!惜しいが違う。確かに昔は私のカポエラを売りにしていた。だが、それはカポエラダンスではない」

ボブ「確かにカポエラをダンスと勘違いしている人は多いですが、歴とした格闘技でーす。あの舞台の本来の用途は武舞台なんでーす」

 

カポエラがダンスと勘違いされるのにはその時代背景にあるだろう。

大航海時代、アフリカ大陸から奴隷として南米に連れて来られた黒人達。その黒人達が手枷を付けられ、両手を封じられた状態で白人達に反抗するために足技を中心として編み出された格闘技がカポエラだ。

しかし、堂々と反抗手段を練習する行動を白人が許すはずもなく、その為に踊りとして偽装してカポエラマスター達は訓練してきた。

格闘技を舞踊として隠し、訓練するというのは珍しいことではなく、ミドラーのジプシーダンスもその1つだろう。

そしてパオパオカフェが格闘家達の聖地として目されるのは…

リチャードが毎晩、武舞台で腕自慢の格闘家を相手にカポエラで試合をし、客を集めていた事が始まりだ。

その武舞台はいつしかKOFの試合会場として利用されるようになり、やがてパオパオカフェには一流の格闘家やそれを目当てとした客達で賑わうようになった。

もちろん、パオパオカフェのような店はサウスタウンでは珍しく無いが、そこはジョー一人の為に(ついでにアンディの好物の納豆スパゲッティー)ワニの唐揚げをメニューにしたり等のリチャードの人柄、パオパオカフェの料理とロバートから称賛される経営手腕、リチャードのカポエラの腕その物など、様々な要素が上手くミックスされ、パオパオカフェは世界的にも有名な店となった。

パオパオカフェの店長がカポエラマスターである必要があるのは、ショーとして毎晩行われる試合には、店長が武舞台に上がることがある事も重要だからである。

 

N陽乃「へぇ。毎晩行われている格闘試合……ねぇ」

 

ノスフェラトゥの陽乃が興味なさげに油揚げパフェを口に運ぶ。

近くのジャパンタウンから油揚げを急遽取り寄せて来たのだろうか?

 

ボブ「ええ。それがパオパオカフェの売りですからね」

弥七「へー?そうなんですかー……それって、今日もやりますかー?」

 

弥七がミルクティーを飲みながらボブに尋ねる。

 

ボブ「いえ、今日は貸し切りてすので……」

 

普段は腕自慢の客や招待選手でエキシビションマッチを組んでいる。今夜の場合はそれが難しい。

 

弥七「だったのならば、わたしがボブさんの相手をして良いですか?今日はストライカーで一回だけ援護に入っただけですしー、せっかく技を覚えて来たのにフラストレーションが溜まってるんですよねー」

 

うら若き女子高生がプロのカポエラ使い……ボブを指名して挑む。

普通ならば一笑に伏せられることだろう。

しかし、この世界は普通ではない。

この世界にもっとも近しい餓狼世界の沙希を始めとし、春日野さくら、神月かりん、風間アキラ、鮎川夏、麻宮アテナ、四条雛子、双葉ほたる、キサラ・ウェストフィールド、いぶき、エレナ、桃子などが多数の女子高生がKOSFに出場している。

特にエレナと桃子はリチャードとチームを組んでおり、プロの格闘家と五角以上に渡り合っているのだ。

今更弥七いろはがプロの格闘家に対して挑むことが無謀だと考えるボブではない。

 

ボブ「………格闘家として………そしてパオパオカフェ2号店の店長として、挑まれたからには挑戦を受けなければなりません。そして、一度構えたのならば手加減はできません。あなた、覚悟は出来ていますか?」

弥七「勿論ですよー?」

ボブ「わかりました……準備をしてきますので、少しお待ちくださーい!」

 

陽気な態度とは裏腹に、その眼の奥にある炎は激しく燃えていた。

ボブ・ウィルソン……飲食店の店長よりも、カポエラ使いの方が本質のようである。

 

←To be continued……




※1
山崎のオロチ設定
山崎竜二はオロチ八傑集の一人としてKOFシリーズで語られているが、餓狼伝説世界ではそういう設定ではない。
オロチ八傑集の数合わせとして設定されたが、当時の餓狼伝説シリーズスタッフは山崎がオロチ一族であることを否定している。

※2
ハレマー教カポエラ派戦いの歌
餓狼伝説のリチャードステージのテーマ。
リチャードステージはパオパオカフェ本店。
このテーマはスマブラでも使われており、餓狼伝説のBGMを選択すると、一番上にリチャードステージのテーマがある。
カーポーエラー♪カーポーエラー♪

※3
パオパオカフェ日本支店
餓狼八幡の世界では川崎のバイト先はエンジェル・ラダーではなく、パオパオカフェだった。
その事件で餓狼八幡は川崎とドンパチ。そのまま餓狼八幡もバイトとして働く。

※4
パオパオカフェ・メキシコ支店
KOF94龍虎チームのステージ。
その背景には龍虎2のキャラクター達と、何故かギースとビリーが試合を観戦している。

※5
ボブ・ウィルソン
餓狼伝説3で登場したリチャードの弟子であり、パオパオカフェ2号店の店長。
リチャードがブラジルで見つけたカポエラの天才。
リチャード仕込みの経営手腕も確かで2号店の経営は良好。
KOF14では何故か本店で働いていた。店の雰囲気も初代餓狼伝説の頃とも違うので、別の店舗かも知れない。

※6
極限焼肉
タクマ・サカザキが開店した焼肉屋。
リチャードが色々と経営に関わったらしく、その経営は上々。
KOF14龍虎チームのエンディングでは極限焼肉で祝勝会をするも、優勝したことよりもタクマ、ロバート、ユリは焼肉屋の事ばかり。
キレたリョウがサウスタウンを出ていくと言って幕を閉じた。

さて、長らく出番の無かった弥七のドンパチです。
弥七はどちらかと言えば前回までのガチドンパチで活きるキャラクターですが、大いに暴れて貰おうと思います。
それでは次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。