やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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餓狼八幡対藤堂香澄

Sideなし

BGM

ART Of FIGHT(龍虎の拳外伝 藤堂香澄のテーマ)

 

八幡と相対した藤堂香澄は掛けているタスキを締め直して深く立礼。

 

香澄「ハッ!よろしくお願いします!」

 

気合を入れて構えを取る。

相手を掴み取るような構えは合気道に近い、身軽そうな体格に似合わずどっしりとした構えだった。

 

餓狼八幡(思い出すな………雪乃や雪ノ下さんを相手にした時と………)

 

八幡はちらりと自分の世界のいろはの隣に座るアヌビス神の陽乃に視線を向ける。

 

アヌビス神「ん?んふふ………ひゃっはろー♪」

 

八幡の視線に気が付いたスタンド使いの陽乃は、ヒラヒラと手を振ってきて、いい笑顔を向けてくる。

 

餓狼八幡(うぜぇ………俺はDIOじゃない。それにしてもウチの世界の雪ノ下さんとは大分印象が違うな………俺、あの人からは敵対心しか向けられたこと無いからなぁ………)

 

夏休みの花火大会の後に八幡は陽乃に勝負を挑まれ、後日藤堂流古武術の道場でバトルをすることとなった。

餓狼世界の雪ノ下陽乃はユリシスコンであり、様々な経緯をもって雪乃、結衣、いろはの3人と付き合うことになった八幡に色々と思うところがあったようで、本気の恨みを彼に向けていた。

それが今の香澄と丁度重なる。

陽乃との勝負の場所は藤堂流道場。当然、その道場主である自分の世界の香澄とも八幡は会っている。

その時の香澄は三十路後半で、年齢もあってかとても落ち着いた雰囲気の美人であった。

八幡はその年齢を感じさせない香澄に口説きとも取れない発言を思わずしてしまったのだが、彼女は見事に受け流し、コロコロと笑っていた。

 

餓狼八幡(そんなあの人も、若い頃はこんなギラギラした一面があったんだなぁ………こんなにカワイイのに」

香澄「は?何を言っている!極限流の関係者が私を口説こうとするなんて、破廉恥にも程があるぞ!」

 

既にスイッチが入ったのか、先程までとはうって変わってぶっきらぼうな口調になる香澄。

 

餓狼八幡(本当にあの時の雪ノ下さんと似ているな。そこまで極限流が憎いのかよ………)

餓狼八幡「いえ、すいません。どうやら思ったことを口に出してしまう癖がありまして………口説く気は全くありませんから許してください。そんな事をした日にはあそこにいる俺の彼女が後で怖いことになりますし………」

 

八幡がDIOの隣にいるいろはを親指で差し、(正確にはエリナだが、入れ替わっていることをバラさない為に敢えてエリナを指差した)苦笑いを浮かべる。

実際、陽乃の隣にいる餓狼世界のいろはの目からハイライトが消えている………ような気がする。

 

香澄「ふざけるな!はっ!」

 

香澄は軽く飛び込んで鋭い空中蹴りを八幡に放ってくる。

八幡は素直にそれをガードし、香澄の力量を測る。

 

八幡(くっ!鋭い………!あのときの陽乃さんよりも若いのに、断然、藤堂さんの技の方が上だ!)

 

歳は陽乃よりも香澄の方が下だが、幼い頃から父の竜白より師事を受けていただけあり、遥かに鋭い。さらに言えば一流の格闘家が集うKOFに半常連選手として何度も出場した経験が技の鋭さに磨きをかけている。世間では父親よりも強いのでは?と囁かれているのが藤堂香澄だ。

 

香澄「まだまだ!」

餓狼八幡「くっ!このコンビネーションは………」

香澄「竜巻槍打!」※1

 

香澄は深く踏み込んでくると、そのガードをかいくぐる。そこから水平手刀打ちから打ち下ろし式肘打ちから更に八幡の懐に潜り込み、その顎に掌を当てると、中腰の体勢から伸び上がる勢いをそのままに掌底のアッパーで突き上げ、八幡を浮かせる。

奇しくも夏休みに陽乃が八幡に決めた連続技だが、既にKOFという異種格闘技大会最高峰の大舞台で洗練されている香澄。その威力は陽乃と比べるまでもない。

更に香澄は浮いた八幡の姿を目で追いながら、気を溜めて両腕を振り上げる。

 

餓狼八幡(この構えは………まさか………)

餓狼八幡「ここでその技はおかしい………おかしいですよ!カテジナさん!」

香澄「誰だ!?カテジナって!私は香澄だ!仰ぎ重ね当て!」※2

 

藤堂流重ね当て。

藤堂流創始者であり、香澄の父である竜白が編み出した気の衝撃波を打ち下ろす奥義だ。

その重ねあてを竜白は打倒極限流のために重ね当てを改良し、バリエーションを増やした。

そのバリエーションの1つが飛び込んできた対戦者を迎撃する為に頭上に放つ技が『仰ぎ重ね当て』だ。

本来は対空迎撃技であるが、香澄は連続技のフィニッシュとして応用をきかせてきた。

これも猛者が集まるKOFで勝ち抜く為に編み出された香澄なりのコンビネーションなのだろう。

 

餓狼八幡(やっぱり重ね当てか!まさかこんな応用を効かせてくるなんて………重ね当てを………それに若い頃の香澄さんを舐めていた!)

 

八幡は仰ぎ重ね当てを受けて砂浜のバリアまで飛ばされ、ダウン。

KOされるほどのダメージとは程遠かった為、すぐに立ち上がったが、それでも軽くはないレベルのダメージを受けてしまった。

 

餓狼八幡「いてて………軽く小手調べのつもりが手痛いコンビネーションを食らってしまったな………」

 

八幡は見誤っていた。今の八幡よりも歳下の藤堂香澄は自分の世界の雪ノ下姉妹よりは強いだろうとは思っていたが、それでも誤差の範囲内だろう程度のものと考えていた。

しかしながら、それは大きく誤っていた事を痛感する。

 

餓狼八幡(そういえば雪ノ下さんは昔から藤堂流の修行はしていても、他流試合はしていなかったと言っていたな。それに比べて香澄さんはその歳でテリー兄ちゃんや坂崎総帥達と何度も拳を疊ねていたんだ………雪ノ下さんなんかよりも遥かに手練れなのは当たり前だったんだ………)※3

 

それと同時に戦慄する。

もし、陽乃と戦うために藤堂道場へ赴いた際、自分の世界の藤堂香澄が八幡に興味を持ち、試合を申し込まれていたならば………。

 

餓狼八幡(相手にもならなかっただろうな………)

 

歳を重ね、眼前にいる香澄とは違って落ち着き、八幡の下らないネタに対しても見事に受け流してコロコロと笑っていた自分の世界の藤堂香澄。

あの時はただ美人としか印象しかなかったが、今では鬼のエンブレムを額に貼り付けてやりたい気分になる。

 

餓狼八幡(だけど………俺だってあの時の俺じゃない………キム兄弟や京さんのクローン、それにシャドルー四天王との襲撃で戦い抜いたんだ!今の俺ならば………1回戦前までに出来なかったトリプルゲイザーが出来た俺ならば………あのときのように!)

 

八幡は遠間から気を溜めて拳を上に突き上げる。

 

餓狼八幡「ハリケーンアッパー!」

 

気を溜めた分、普段よりも太めのハリケーンアッパーが出現。

八幡の師匠の一人、ジョー・ヒガシの代名詞である等身大の小型竜巻を発生させる技だが、八幡はそこで更に一捻り加える。

陽乃と戦った際にも同様のシュチュエーションがあった。その時は普通のハリケーンアッパーを放射状に何度も放つハリケーンアッパーだったが、陽乃にも満足に通用しなかった通常の爆裂ハリケーンが香澄相手に通用するはずがない。

そこで八幡の工夫だ。

出したハリケーンはすぐには飛んでいかず、八幡の目の前で留まる。そこに八幡は反対側の腕でもう1つ、竜巻を発生させる。

 

餓狼八幡「爆裂ハリケーン!バージョンRB!」

 

2つのハリケーンアッパーが複雑に絡み合い、螺旋を描きながら香澄へと飛んでいく。

爆裂ハリケーンは2発のハリケーンアッパーを重ねて発射するので発生は遅いものの、発生しきってしまえば通常のハリケーンアッパーよりも速度が速く、そして太さもあるので横移動の体捌きを利用した回避が困難だ。

そして更にハリケーンアッパー2発分の密度があるので藤堂流の遠当て術、重ね当てでかき消すことはできない。

 

餓狼八幡(どうでますか?香澄さん。ガードするか、ジャンプして回避するか………!)

 

香澄「ハッ!」

 

香澄が選択した行動は爆裂ハリケーンアッパーを飛び越す回避行動だった。八幡はそこで内心、苦笑を浮かべる。

 

餓狼八幡(同じだ………あの時と………香澄さんは両腕を大きく上に上げている!ならば次の香澄さんの取ってくる技は………)

 

八幡は香澄がジャンプの到達点に達する前に行動に移る。

 

餓狼八幡(あの時は雪ノ下さんの攻撃をスカしてから迎撃をする予定だった………だけど、俺は雪ノ下さんの空中重ね当てを知らず、迎撃が出来なかった………だけど今の俺は空中重ね当てを知っている!)

餓狼八幡「くらえ!黄金のカカト!オラオラァ!」

香澄「超!重ね当て!」

 

八幡は宙返りをした後に気を纏った踵落とし………黄金のカカトで迎撃。しかし、香澄がやってきたのは重ね当ては重ね当てでも通常の重ね当てよりもはるかに気が練られた超必殺技の『超重ね当て』だった。

必殺の気が込められた超重ね当ては、通常の重ね当てよりも発生が早く、陽乃の空中重ね当てならば余裕で迎撃できたであろう黄金のカカトに合わせられる。

 

餓狼八幡「な、なにぃ!でも、こうなったら押し通す!」

香澄「なっ!無理矢理!?キャア!」

 

超重ね当ての気の波を数発受けつつも、八幡は黄金のカカトをダメージ無視して敢行。無理矢理の甲斐があって香澄の腹部に蹴りが決まる。

カウンター気味にヒットした香澄の体が浮いたのを確認した八幡は、膝を抱えて溜め行動に移り、空中跳び膝蹴りを放つ。

ジョー・ヒガシの代表的な対空必殺技………その名は………

 

餓狼八幡「タイガーキック!」

 

黄金の気を纏ったタイガーキックが浮いた香澄の顎を捉え、その身を炎に包む。

八幡は自覚なかったが、このタイガーキックも普段のものとは違い、ジョーが超必殺技へと昇華させた『黄金のタイガーキック』という技である。何故燃えるのかはジョー曰く、『俺が燃える男だから!』だそうだが、たった今放った黄金のタイガーキックがどういう原理だったのかは八幡自身もわかっていない。

 

餓狼八幡「何だ………何だ今のタイガーキックは!?ハハハ…まさかこんな事が…」

アンディ「まだ終わっていないぞ八幡!気を抜くな!」

 

自分の技の冴えが予想外のものだった事で一瞬呆けてしまった八幡は、アンディの檄でハッとなる。

 

餓狼八幡「そうだ………まだ俺はワンコンボを決めただけだ!行くぜ、ダメ押し!爆裂拳!オラオラオラオラァ!」

 

受け身を取って気の発散で炎をかき消した香澄に重ねるようにパンチの連打を叩き込む爆裂拳で畳み掛けようと仕掛ける。しかし、呆けていた一瞬が決定的な差を生み出してしまった。

最初のうちは前進しながらの爆裂拳でガード越しにガリガリと香澄の体力を削っていたのだが、次第にノックバックにより間合いが離れ、スカりの隙を見せてしまう。

 

餓狼八幡(や、ヤバ………)

 

そしてその隙を逃す香澄ではなかった。

香澄は左手で八幡の腕を捌き、そのまま掴んで間合いを詰める。

 

餓狼八幡(投げられる………!)

香澄「藤堂流奥義!」

 

投げが来ると思い、投げ抜け動作をしようとする八幡。しかし、香澄の狙いは投げ技ではなく………

八幡の鳩尾に拳を添えて………

 

香澄「不知火!」

 

ノーモーションから気を込めた一撃が放たれる。

 

餓狼八幡(寸勁………いや、まるで気の波で発生した衝撃を直接叩き込まれたような!体がバラバラにされそうなこの衝撃は!まるで陸奥圓◯流の『無◯波』じゃないか!)

 

鳩尾を突き抜けられたような衝撃の後に全身に走る衝撃。

全身がバラバラにされそうな痛みに崩れ落ちそうになる八幡だが、香澄の猛攻は止まらない。

 

香澄「そして『心眼!葛落とし!』」

 

捌いた腕を離さずに逆関節を極め、そのまま背負投げ。逆関節で投げられた八幡は、うつ伏せの状態で地面に叩きつけらる。

そして、その八幡の後頭部に向けて拳を振り下ろして追撃。

『甲割り』と呼ばれる藤堂流のダウン攻撃だ。

この一連の技が心眼葛落とし。

この世界における日本古武術の技術の代表的な技、当て身投げの藤堂流版。その当て身投げを更に昇華して奥義へと発展させた技である。

本来は相手の技をいなした後に決める技であるが、もう1つの奥義である『不知火』によって既に片手を掴んでいた状態だったので、香澄はそのまま心眼葛落としを極めたのである。

そんな藤堂流の秘奥義と奥義の地獄のコンボをまともに受けた八幡はたまったものではない。

全身はバラバラにされたような激痛。後頭部を追撃されているので意識は朦朧とし、更には逆関節背負いを受けた時に肘の靭帯を損傷したようだ。鈍痛とともに腕の動きが鈍い。

八幡はうつ伏せに倒れながら、今まさに意識を手放そうとしていた。

 

餓狼八幡(ああ………そういえば忍さんとかいう人がお世話になっている怒部隊のレオナさんって人が面白いコンボを使っていたっけ?)

 

極限状態に陥った八幡は試合とは関係ない事を思い出していた。

1回戦の会場で忍や承一郎を保護しているハイデルン司令率いる軍人チームの一人、レオナ。

1回戦前夜で暴走した時、サムに対して使った斬撃の効果がある気の球を発する「ボルティックランチャー」で相手を浮かせたレオナは、そのままジャンプして急降下。手刀で相手を斜めに斬り刻んだあと、返す刀で更に逆側にも切り刻んだ。

『Vスラッシャー』

その名の通り、対象を急降下で襲い、Vの字で斬る超必殺技だ。

 

八幡(あのコンボはまるで『超電磁マシーン ボ◯テスV』の必殺技の『天◯剣ボールVの字斬り』みたいだったなぁ………)

 

どうでもいい事を考えながら、意識が闇に沈もうとしていたその時………。

 

餓狼いろは「立って!はちくん!」

 

アヌビス神陽乃に絡まれていた八幡のいろはが絶叫する。

 

餓狼八幡(いろは………!)

 

意識が沈みかけていた八幡だったが、いろはの声援でわずかに持ち直し、全身が悲鳴をあげているのを無視して立ち上がる。

コンディションは最悪。もはや立っているのもやっとの状態の八幡だったが………

そんな極限状態だからこそ出来ることがあると八幡はテリー、アンディ、ジョーから教わっていた。

 

餓狼八幡(あるじゃないか………こんな極限状態だからこそ出来る超必殺技が………今だからこそ出来る潜在必殺………いまこそあの技を使うぜ!アンディ兄ちゃん!ジョーあんちゃん!)

 

痛みを無視して痛めている腕でアッパーを放つ。そこから出る螺旋の竜巻。

 

香澄「苦し紛れのハリケーンアッパーなんて通用しません!」

 

香澄は飛び上がり、ハリケーンアッパーを回避しようとする。

 

アンディ「いや………ハリケーンアッパーじゃない!まさかあれは………スクリューアッパーか!」

餓狼八幡「超ォォ気力ゥゥゥ!タァァツゥゥマァァキィィィィ!」

 

アンディが言うように、反対側の腕で八幡が放った技はジョーの超必殺技、スクリューアッパーだ。

ジョーの代名詞、ハリケーンアッパーの超必殺技版で、前方に飛ばない代わりに上に竜巻を巻き上げる技だ。彼が撃った技をハリケーンアッパーと勘違いし、飛び越えようとした香澄のような相手を迎撃するのにピッタリのハマり技だったりする。

 

アンディ「そこはスクリューアッパーって叫んでやれよ!ジョーが可哀想だろ!」

静「待ってアンディさん!アイツは今、極限状態だから!意識が半分トンでるから!無意識でネタに走ってるから!ここでツッコミ必殺技をやったらKOしてオウンゴールになるから!っていうか今は試合中!ストライカー以外が乱入したら反則負けになるから!こらえてぇぇぇ!」

 

ツッコミ必殺技を(倒立体勢になっているからおそらくは空破弾)やろうとしているアンディを静が必死になって止めている。

それをチラリと見た八幡は………

 

餓狼八幡(そう、ここで出すべき技は………)

 

八幡はここでアンディと同じ体勢を取る。

そして痛む腕で無理やり倒立して空破弾のように孤を描くダブルドロップキックを放つ。

いつもの空破弾と違うのは、その足元から黄金の気が出ており、体をキリモミ回転させ、黄金の気が体に螺旋を描いて纏わりつく。

 

アンディ「空破弾………じゃない!あれは………」

餓狼八幡「超………」

アンディ「やはり超裂破弾!君はついに………ジョーのスクリューアッパーと僕の超裂破弾の複合技を………」

 

弟のように思っている八幡がついに自身の超必殺技をと………目を潤ませて感動するアンディだったが………

忘れてはならないのが八幡は極限状態。そのアホアホ具合も極限状態だ。つまりは………

 

餓狼八幡「超………気力!スピィィィィィン!」※4

アンディ「だから何で僕の感動を木っ端微塵にするんだ!君という男は!」

静「だから乱入しようとすんなっつーの!あとコン◯トラーVの超◯磁スピンは頭から突進だから!足からじゃあないから!」

 

感動の涙を嘆き涙に変えているアンディとツッコミを阻止しようとしている静はおいておくとし、スクリューアッパーもとい超気力タツマキで舞い上がっている香澄に向かって超裂破弾もとい超気力スピンで追撃。

竜巻に翻弄されていた香澄の腹部へと超裂破弾が直撃し、その体力が完全にゼロとなった。

 

香澄「こ、こんな奴に負けるなんてぇぇぇぇ!」

 

断末魔の叫びを上げ、香澄は砂浜に叩きつけられて動かなくなった。

 

「K・O!WINNER is 八幡!」

 

審判が下され、八幡の勝利が確定する。

 

餓狼八幡「ハァ………ハァ………ハァ………」

 

八幡はいつものテリーを真似た帽子を投げる勝利ポーズを取ろうとツバに手をかけるが………その手を途中で止めた。

 

餓狼八幡「いや………ここは………」

 

両膝をついて半立の状態になり、天に向けて両腕を突き出す。

 

餓狼八幡「ヨッシャアァァァ!」

 

大好きな兄貴分、ジョー・ヒガシの勝利ポーズだ。

思えばこの試合、最後の超裂破弾を除けば大半がジョーの技で戦っていた。ならばこの試合の勝利ポーズはジョーの勝利ポーズが相応しい。

八幡はそう思った。

会場のテンションも盛り上がる。しかし………

 

八幡「う………………がハッ!」

 

最高潮に達したとしても、現実は厳しい。

まだ試合は第1ラウンド。

相手側のコーナーには絶望を象徴する巨漢がたっていた……中堅のエドモンド本田だ。

タイマーに目を向けて見れば香澄との残り試合時間はわずか5秒。休憩に配当される時間は少ない。

そして八幡は意識が保っているのがやっとの状態だ。

 

アンディ「八幡!無茶だ!弟子の領域をやっと抜け出したばかりの………それも満身創痍の体で角界の達人、エドモンド本田関が相手じゃ!」

静「代われ八幡!最悪死ぬっつーの!ハッチ!」

DIO「ああ………」

 

DIOの八幡は肩にかけていたタオルを手に取る。

タオルを投げて第2ラウンドを強制的に終わらせようとしていた。

しかし………

 

本田「待ちんしゃァァい!」

 

本田が四股を踏み、その場の全員の注目を集める。

本田はタオルを投げ込もうとしているDIOをキッと睨んで牽制し、アンディへと顔を向ける。

 

本田「アンディ・ボガードさん。あんさん、弟子の限界を察し、その身を慮る(おもんばかる)んはわかる。じゃが、あんさんはそこの若者の眼をよぅみんしゃい」

 

アンディは本田に言われ、八幡の瞳を見る。

体はガタガタで、利き腕の状態は最悪に等しい。しかし、八幡の目はまだ、死んでいなかった。

 

餓狼八幡「やらせてくれよ………アンディ兄ちゃん………俺はまだ………立ってるんだ………エドモンド・本田関………大相撲の達人の胸を借りれるなんて………こんなチャンス………取らないでくれよ………」

 

フラフラとセコンド位置から仕切り線へと向かう八幡。

 

餓狼八幡「こんな状態でも………例え負けても………ここで立ち向かわなくちゃ………本物じゃない………俺は………俺は………本物が欲しい!」

DIO「まったく、ヤレヤレだぜ」

 

DIO八幡は持っていたタオルで額の汗を拭うゼスチャーをした。全く汗などかいていないのに………

 

餓狼八幡「DIO………」

DIO「勘違いするんじゃあない。俺は汗を拭くためにタオルを持ち直しただけだ。投げ込んでもらえるなんて思っていたのか?このマヌケが」

静「ヤレヤレだっつーの。本物なんて言葉を聞いたんじゃあ、引き下がるしかないじゃあないの。その代わり、自己責任だからね?ボガードのハッチ」

 

性格が悪い性悪コンビも、本物という言葉には弱い。

比企谷八幡という男の本物という言葉は決して軽くはないということを二人は知っている。

 

アンディ「………フッ。弟子の成長とは早いものだね。いつの間にか君は、本当の格闘家になっていたようだ。格闘家がやると言ったからには、僕が言うことは何も無いよ」

 

最後にアンディが折れる。

 

本田「日本男児はこうで無くちゃいかん。どーんときんしゃい!」

餓狼八幡「いいますよ………本田関!」

 

「八幡VSエドモンド本田!

ラウンド2!レディー………ゴー!」

 

ラウンドコールが鳴る。もう止めることは出来ない。

 

餓狼八幡「片手爆裂拳!」

本田「ガッハッハッハ!手数と速さでワシを翻弄する気のようじゃが、ワシは手数にも自信がある!受けてたっちゃるわ!百裂張手!どっっせぇい!」

 

八幡の爆裂拳を本田の百裂張手が正確に受け止める。

 

餓狼八幡(速い!そして重い!ならば………)「爆裂拳フィニッシュ!くらぇぇぇぇ!」

 

一歩踏み込んで突きを放つ八幡。

本田はその突きを張り手で叩き落さず、敢えて額でその拳を受け止める。

そして、二人は睨み合い………

 

本田「いい拳じゃのう。審判」

 

本田は構えを解く。

 

「KO!WINNER is エドモンド本田!」

 

スタンディングKO。

八幡は立ったまま………気絶していた。

そんな八幡を満足気に見て頷くエドモンド本田。

 

本田「大した根性だったわい!世界は広いのぅ!弟子に欲しいくらいじゃわい!ガッハッハッハ!」

 

藤堂香澄(藤堂流古武術)…KO(リタイア)

比企谷八幡(餓狼)(マーシャルアーツ+不知火流骨法+ムエタイ)…KO(リタイア)

 

←To be Continued




※1 竜巻槍打
分類的には打撃投げ。防御不能。浮かせ効果があり、追撃ができる。

※2 重ね当て
藤堂流古武術の代名詞と言える技。分類的には飛び道具だが、射程は短い。

※3 坂崎総帥
KOF世界ではタクマ・サカザキの事をさすが、餓狼世界における極限流空手の総帥は二代目Mr.KARATEのリョウ・サカザキのことである。

※4 超気力スピン
佐世保中年ライダーさんよりネタを提供。元ネタはもちろんコン◯トラーV。
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