やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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幕間・再会のフーゴ

sideパンナコッタ・フーゴ

 

千葉…稲毛

 

京都でのミッションを終え、イタリアに帰る前に僕達はジョルノ達より1日先に千葉へと降り立った。彼女に会う許可はジョルノに得ている。後は直接彼女に会うだけだ。

 

康一「お久し振りです、フーゴさん」

 

千葉駅で待っていたのは日本支部の関東支部建設部門の部長である広瀬康一さんだ。来年からは比企谷八幡君の後釜として関東支部の支部長に就任すると聞いている優秀な人だ。

 

フーゴ「広瀬さん。わざわざあなたがお迎えに来て下さるとは………お久し振りです」

 

康一「あはははは。私情も挟んでますけどね。京都は大変だったと聞いています。康穂や由花子さん、仗助君達は元気でしたか?」

 

フーゴ「ええ。元気でしたよ。とても何戦もウルフスと戦い抜いたとは思えないくらいに……」

 

康一「そうですか。それが確認できただけでも僕がフーゴさん達を迎えに来た甲斐がありました」

 

ジョースター家の親友をやっているだけあって家族思いの人だ。明日になれば会えるのに……。

もっとも、聞いていた限りだと二日間の間に相当な数の敵に襲われていると聞いているから心配するのもわかる気がする。

ただでさえスタンド使い同士の戦いは油断が出来ない。相性と使い方次第で次の瞬間には命が簡単に消えてしまうのだから。ナランチャやアバッキオだってそうだったからな。

 

康一「それでは行きましょうか?彼女の所まで」

 

フーゴ「ええ。お願いします」

 

僕達は駅の駐車場に停めてあった康一さんの車に乗り込む。

いよいよか………

 

康一「緊張しますか?」

 

フーゴ「ええ……彼女は……許してくれるでしょうか」

 

康一「それは何とも言えないですね……」

 

康一さんはハンドルを握りながら答える。

最後に彼女……いや、彼を見たのはボートに乗って裏切り者として去っていく姿。

あの時には既に死んでいたのだとか……。

 

キング・クリムゾン!

 

とある小学校の校門前。

元気に下校する子供達は、停めてあるセダンなど目もくれずに走り去っていく。

この頃は僕も無邪気だったかな……。いや、あの頃の僕は既に周りとの溝を感じて孤独だったかも知れない。そう、一人で静かに歩いているあの女の子のように。

 

フーゴ「?」

 

何かシンパシーを感じた少女は不思議な事にまっすぐにこちらを見ながら歩いて来た。見た目の雰囲気からはジョルノが妹として扱っている陽乃の妹、雪乃にそっくりだ。

 

??「珍しい人がいる……」

 

彼女は僕達の前まで来ると、歩みを止めてそう言ってきた。

 

康一「久し振りだね。留美ちゃん……こちらは……」

 

留美「知っている。ボンジョルノ……フーゴ。あなたから見たら15年ぶりかな?」

 

彼女が………。

僕が上司として認めた男、ブローノ・ブチャラティの転生、鶴見留美……。

 

フーゴ「……お久し振りです。ブチャラティ」

 

留美「うん。久し振り。日本で会うとは思わなかった。ミスタは元気?」

 

フーゴ「ええ。彼も着々とイタリア支部をものにしてきています。間もなく僕の手を離れても問題は無いかと思います」

 

留美「そう……でも、あのミスタの事だからまだまだ心配。やっぱりあなたの力は必要」

 

僕の顔を見るなりパッショーネの心配をするあたり、相変わらずですね。ブチャラティ。

 

留美「それで……フーゴは何で日本に?」

 

フーゴ「任務でジョルノ達の支援に。その帰りに寄らせて頂きました。あなたに会いに」

 

留美「私に?何で?」

 

フーゴ「一目だけでもお姿を見たいと……そして、出来ればあの時の事を謝りに……」

 

するとブチャラティ……留美はキョトンとした顔を僕に向ける。

 

留美「何を謝る必要があるの?私はあの桟橋で言ったはず。強要はしない……と。ディアボロを……組織を裏切るのは命令ではなく、各自の意思を尊重するって」

 

確かに彼はそう言っていた。

 

留美「組織を裏切らない選択をしたあなたの判断は正しい。それにジョルノから聞いている。あなたは私達を影から助け、ジョルノの組織改編にも力を貸してくれていたことを。あなたが私に謝ることなんて何もない。胸を張って生きていけば良い」

 

フーゴ「ですが……僕が袂を分けなければアバッキオやナランチャが助かっていたかも知れない。あなたが孤独に死ぬことも……」

 

留美「フーゴ。ブチャラティ達の死を悼んでくれることは嬉しい。でも、それをあなたが後悔する必要はない。私達はその結果になることを受け入れていた。そうなる覚悟を受け入れていた。ただそれだけのこと」

 

留美はそう言って僕の頬を優しく撫でる。

いつの間にか僕の目からは涙が流れていたようだ。

 

留美「私は……フーゴの事を怒っていなければ、何一つ恨んでもいない。ただ………」

 

フーゴ「ただ?」

 

これがまだ幼女と言っても過言ではない少女でなければ見惚れるくらいの美しい笑顔を彼女は僕に向ける。

 

留美「パッショーネもSPW財団もアーシスも……組織も何も関係ない、ただの友人としてのパンナコッタ・フーゴと再会できた事が私には嬉しい。ただいま。フーゴ」

 

フーゴ「ブチャラティ………」

 

彼女は僕の腕を手に取り、握手する。

 

留美「今の私はアーシスの仮隊員。本当にアーシスに入隊したら上下関係は付きまとう。その前にフーゴに会えて良かった……。来てくれてありがとう」

 

フーゴ「ええ……僕も……あなたに会えて良かった。本当に千葉に来て良かった……。何の憂いもなく、僕はイタリアに帰ることが出来ます」

 

僕達は笑い合いながら、もう一度固く握手をする。

これ以上の言葉は要らない。それだけで僕達はわかり合うことが出来た。

 

留美「チャオ、フーゴ。また会いましょう」

 

フーゴ「ええ。待ってますよ。あのネアポリスで……それまではお元気で……チャオ、留美」

 

僕達は笑顔で別れ、留美は帰路に着き、僕は康一さんの待つ車に戻る。

 

康一「良かったですね、フーゴさん」

 

フーゴ「ええ。聞こえていたのですか?康一さん」

 

康一「僕のスタンドは音のスタンドですからね。聞こえてしまうんですよ。それに、その顔を見ればわかりますよ。良い結果に終わったって。良く眠り、柔らかな朝日を顔に浴びて目覚めた朝のように、晴れやかな顔をしています」

 

フーゴ「そうですか。それはとても気持ちの良い朝でしょうね。…………ありがとうございました。これで思い残す事はありません。夕方の便でイタリアに戻ります」

 

康一「送りますよ」

 

康一さんは運転席に乗り込み、助手席に僕も乗る。

成田までの道程は、康一さんが言うようにとても晴れやかな気分で旅をすることが出来た。

先に待っていたシーラにはイヤらしい顔をされたけれど、それも良い思い出になるだろう。

千葉に来て良かった……また会いましょう。

 

鶴見留美。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

フーゴとブチャラティの転生である留美とは一度引き合わせてみたいと思っていました。

彼らの再会に幸あらん事を………。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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