やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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折本かおりの『アースブルース63』

side比企谷八幡

 

折本「なになに!?なにこれ!」

 

八幡「どうやら敵のスタンド使いの攻撃を受けているようだな」

 

この映画は典型的なハリウッドアクション映画だ。

主人公側でも敵側でもかなり強力な攻撃を繰り出してくる。とりあえずは……

 

八幡「モード・ボヘミアン・ラプソディー&アンダー・ワールド」

 

ウンガロのボヘミアン・ラプソディーは絵本などの登場キャラクターを現実世界に登場させ、興味を持った相手をそのストーリーに引き込むというスタンド。

アンダー・ワールドは土地の記憶を再現させ、その事象に巻き込むというスタンド。どちらもディオの息子達というスタンドなのが皮肉だ。

 

八幡「隠れろ!何が起こるかわからん!」

 

この手のスタンドはとにかく分析が重要だ。

そして、登場してくる存在は全て敵だと考えるべきだろう。

 

葉山「ヒキタニ……ボヘミアン・ラプソディーとかアンダー・ワールドってどういうスタンドだ?」

 

八幡「それは………」

 

俺が概要を説明する。

 

葉山「そんな能力が……出れるあてはあるのか?」

 

八幡「あったらとっくに実行に出ている。とにかくヤバイぞ……仲町」

 

仲町「……何?」

 

八幡「能力を教えろ」

 

仲町「何で教えなきゃならないの?」

 

八幡「お前がスタンド使いなのは分かっている。グローブを付けてもゴーグルは着けていないからな」

 

折本と仲町はアーシス支援部隊標準装備であるグローブを装着している。それは何故か?

スタンド使いだからスタンドを見ることが出来るからだ。

折本の『アースブルース63』はビジョンが存在しないスタンドだ。そして戦闘力は皆無。

サバイバーのような能力だ。スタンド使いでありながら実働部隊に配属されていないのは康穂同様に戦闘に向いていないからだ。

仲町もそのタイプの可能性がある。

 

康穂「ハッチ、千佳ちゃんを疑ってる?」

 

八幡「ああ。能力のわからないスタンド使い。そして一応は同じ組織の味方である俺に能力を語らない…疑うには充分な要素だからな。味方であるような振りをして実は敵……良くあることだろ?」

 

仲町「…………」

 

良くあることだ。

だからこの状況下で俺はまだ自分のスタンドを展開していない。

 

折本「比企谷!千佳は私の友達だよ!」

 

俺のスイッチが入ったことを折本が感じ取ったのだろう。必死に弁護をする折本。だが……

 

八幡「だから?お前は俺と中学が同じなだけの同窓生ってだけの存在。それだけで仲町が味方であると信用できる要素はない」

 

俺は拳を仲町に向ける。この状況が仲町の仕業では無かったにしても、敵ならばその状況を利用しない手はない。

 

康穂「……違うよハッチ。千佳ちゃんのスタンドはこんな複雑なスタンドじゃあない。もっと単純……」

 

八幡「………康穂が言うんじゃあその通りだろう。だが、味方かどうかはまだ疑っている。康穂が信用しようと、騙す騙されるはスタンド使いにとっては当たり前だからな」

 

パチパチと波紋をスパークさせて仲町を睨む俺。

 

葉山「やれやれ……だったら俺の出番だろ?ヒキタニ」

 

O・S「オラァ!」

 

葉山がオーラル・シガレッツを発動させ、仲町を触る。

その手があったか。

 

葉山「答えてくれ、仲町さん。君は味方かい?それとも敵かい?」

 

仲町「疑われたのは不本意だけど、葉山くん達の味方。私は確かにスタンド使いだけど、こんな壮大な力を持っていない」

 

俺は警戒を緩める。とりあえず味方であるならばそれで良い。

 

葉山「では君の能力は……」

 

八幡「喋らなくて良い。味方であるならばそれ以上聞くことはない」

 

葉山「良いのかい?」

 

八幡「ああ。敵であるかどうかが重要だったからな。倒すべき奴が自分達の群れの中にいる……そうじゃあ無いかどうかが重要だった」

 

葉山がいてくれて助かった。今までは見分けるにはスタンドを見せてもらい、能力を確かめる必要があったからな。その為なら仲町にやったように無理矢理問い詰めるやり方しか無かった。もしくは露伴先生のようにヘブンズ・ドアーで無理矢理暴くか。

 

折本「それで終わりで良いの?」

 

八幡「スタンド能力を人に教えるということは危険なんだよ。それこそ命を相手に預ける形になる。仲町は俺達…いや、俺を信用していないからスタンド能力を教えないのだろう?だったらそれで構わない。康穂に嫌われたくないしな」

 

無理矢理聞き出そうものならば、康穂に絶縁状を叩きつけられてもおかしくない。

 

八幡「康穂……ペイズリー・パークだ。俺がこの場を凌ぐ。それまで葉山や折本を安全な位置で待機させていてくれ」

 

康穂「わかった。でもハッチも気を付けてね?敵はウルフスの可能性もあるから。一人じゃあ死ぬかも知れないよ?」

 

八幡「分かっている。くれぐれも葉山を守り抜いてくれ」

 

もしかしたら葉山は必要な存在だ。

こんなところで死なせる訳にはいかない。

 

折本「比企谷!私も……」

 

八幡「お前の能力はドンパチに向いていないだろ?大人しく隠れてろ」

 

今は装備も何もない。あるのは俺の体とスタンドのみ。

 

八幡「ザ・ジェムストーン!頼んだぞ、康穂!」

 

康穂「オッケー!あたしに付いてきて!」

 

俺は映画の舞台であるニューヨークの街中に躍り出る。

ニューヨークはある意味では庭だ。財団の本部がある場所であり、何よりジョジョの故郷でもある。留学している時は俺もここにいたわけだしな。

 

米軍兵『いたぞ!奴等だ!』

 

敵では無いものの、ストーリー上では主人公達の対立相手である米軍兵がこちらにライフルを構える。

 

八幡「ジェムストーン・ザ・ワールド!時よ止まれ!」

 

一斉に向けられる銃口。そんなものの一斉攻撃を受けてしまってはさしもの俺も避けきれない。

時間を止め、一気に射線から逃れる。

 

八幡「悪く思うんじゃあないぞ?こっちも命が惜しいんでな!」

 

道路に停めてある何台かの車を放り投げ、そして隠れる。

 

八幡「そして時は動き出す」

 

時が動き出し、奴等の頭上に車が落ちる。

 

米軍兵『う、うわぁぁぁぁぁ!』

 

ドォォォォォォン!

奴等は舞台の設定の駒だ。現実で役者がどうなるかまではわからないが、今を切り抜ける方がこちらとしては重要だ。

 

米軍兵『ホワット!?』

 

八幡『良いものを持っているな。もらおうか』

 

俺は米軍兵が持っている銃剣を奪い、その喉元をかっきる。そして、ライフル銃を奪う。

実用性の高い武器、銃剣。これを奪えたのは重畳。

俺のスタンドは近距離パワー型だ。ハーミット・アメジストで射程を伸ばしたところで20メートル。

銃等を……特に中距離以上を相手に攻撃できる手段はない。

 

米軍兵『何だ!このアジア人は!こんな出演者を知らないぞ!』

 

八幡『何事にも例外ってのはあるんだよ。臨機応変に立ち回らないとなぁ!』

 

横凪ぎに掃射し、手当たり次第に倒す。

 

八幡「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」

 

時を止め、奴等の弾倉を奪いながら移動を開始。

パッショーネでの経験を生かし、その上で軍隊を相手にした時の経験や承一郎の世界の経験をいかす。

移動場所は舞台になっている潜入先のビル。

 

八幡α『来たか!俺!』

 

いつの時代の俺かは解らない。

 

八幡『出てくる?このタイミングで?フェニックスもいるの?』

 

八幡α『さぁな。だが、お前の足……』

 

ポンッ!

射撃。

はい、ストーンオーシャン以前の俺と断定。

 

八幡α『て………この……野郎……』

 

八幡『俺の代わりに蜂の巣になってろ』

 

俺は敵の役者のど真ん中にαを投げ込む。

 

米軍兵『いたぞ!撃てぇぇぇぇ!』

 

八幡α『ぐわぁぁぁぁぁ!』

 

蜂の巣にされ、隠れている米軍兵達の集中砲火をくらい、あっさり御臨終するα。

 

八幡「この能力がフェニックスの能力なのか、はたまた別のスタンド使いの攻撃かはわからないが……フェニックスがいるならばザ・ジュエルも視野に入れないといけないな………」

 

ウルフスは普通に倒すだけじゃあダメだ。

それではただの撃退に過ぎない。

 

八幡「しんどいドンパチになりそうだ……」

 

いつもは仲間の誰かが一緒だが、今回は葉山一人だけ。それも足手まといを守りながらだ。

救いなのは康穂がいることだろう。これはマジで覚悟を決めた方が良さそうだ。ヤレヤレだぜ。

 

 

side葉山隼人

 

折本「すごい……あれが実働部隊の実力……初めて比企谷の力を目にした……」

 

葉山「知らなかったのか?」

 

と言いながらも俺も初めて知った。本気のヒキタニがあそこまで強いなんて。

これも長年の修行とパッショーネでの経験なんだろう。

 

康穂「ハッチは強いよ。特に乱戦の中でのハッチは、ああやって敵陣に飛び込んで中を引っ掻き回した後に、適度なタイミングで離脱して、同士討ちを誘発させる。相手の命を奪う事に集中した時ほどハッチの真価が発揮される」

 

ザ・ワールドの時を止める能力を上手く使っているんだな。これは乱戦の中では本当に厄介なやり方だ。

味方で良かったと言うべきか……。

 

仲町「あいつの能力は?」

 

康穂「教えないよ?千佳ちゃんがハッチを信用しないなら、ハッチも千佳ちゃんを信用するはずがない。そんな相手にハッチが能力を教えるわけが無いじゃん」

 

もっとも、ヒキタニや空条博士の能力はスタンド使いの世界ではもっとも有名だという。ヒキタニのスタンド能力を知らないということはモグリに等しいとジョースターさんから聞いた。つまり、仲町さんは本気でヒキタニの事を知らなかったのだろう。

 

康穂「今!敵が混乱してる!かおりちゃん!」

 

折本「うん!『アースブルース63』!それある!」

 

折本さんが指を指す。

すると、敵の兵士達の混乱が更に深まる。

 

八幡「使ったのか?折本」

 

背後に出現したヒキタニ。時を止めて合流したみたいだな。

 

折本「うん。これくらいしか使い道ないから」

 

八幡「使い方次第じゃあ厄介なのはスタンド能力全てに言えるんだよなー。でなければ中学の時のあの事件は無かっただろ?」

 

葉山「アースブルース63の能力……俺にはわからないんだが……」

 

するとヒキタニは折本さんの方を向く。『喋っていいのか?』というゼスチャーだろう。

折本さんは躊躇いながらも頷く。

 

 

side比企谷八幡

 

折本のスタンド能力か……。相変わらず種がわからないとわけのわからないスタンド能力だ。

 

八幡「折本のアースブルース63はテンションの加速。イケイケモードならよりイケイケに、険悪モードならより険悪に、負けムードならより負けムードに。サバイバーというスタンドが怒りを加速させるスタンドであるならば、アースブルース63は全てのテンションを加速させる。『それある!』という言葉が発動キー。射程は指先の方向に放射線を描く範囲。直接相手を指差せる状況内でのみ効果がある。障害物なんかがある場合は無効」

 

『それある!』は折本の口癖だろう。

そして中学時代はサムズアップではなく、相手を指差してそれを行っていた。自分のスタンド能力など全く気が付かずに。

サムズアップに変えたのは矯正施設で教育された結果なのだろう。

テンションの加速。それは地味に厄介だ。

戦闘には一切向かない能力。されど、気が付かない内に相手はその加速されたテンションに巻き込まれる。

敵の部隊が混乱状況に陥っているならば、それが加速されれば余計に混乱し、同士討ちが始まる。そして、立ち直る事はない。

 

八幡「因みに解除方法を知らんのだが?」

 

折本「あたしが興味なくせば解除になるみたい」

 

八幡「なら、敵が全滅するまでパニックさせとけ。意地でも興味を無くすな。死にたく無ければな」

 

葉山「相変わらず性格がオニだな」

 

康穂「案外、地味に役に立つ能力なんだよね。戦闘力は全く無いんだけどさ」

 

八幡「バッカ!サバイバーは役立たずなスタンドだが、これは本気で厄介だぞ?テンションってのはバカに出来ない。葉山、サッカーにおいて格下に負けた…なんて事はいくらでもあるだろ?」

 

葉山「………確かに何度か経験あるな。勝っているのに相手の逆転ムードに押しきられたり、最初から負けムードが漂っていたり……」

 

八幡「折本のスタンドはその逆転ムードと負けムードを更に加速させるんだ。堪らないぞ?やられた方は。ソースは中学時代の俺。そしてその時の折本はスタンド能力に気が付いていなかった。由比ヶ浜のリバースact1のようにな」

 

ビジョンがないスタンド能力というものは中々気が付かない。折本が本来なら交わらないはずの俺達の中学時代と関わってしまったのも、この無自覚スタンドによる被害があったからだ。

 

八幡「終わったら話すが構わんか?折本」

 

折本「う、うん……」

 

八幡「じゃあ、俺は更に敵情を引っ掻き回して来るわ」

 

そう言って俺は武器を引っ提げて戦場となったマンハッタンの街中へと躍り出る。

そう言えば何でこの映画を見ようとしたんだっけ?たしかニューヨーク本部が決戦の場所として財団がロケ場所を貸したから……だったか?

財団ビル最上階から主人公達が爆風に煽られて……目玉シーンは確かそこだったハズだ。

敵が仕掛けてくるのは恐らくはそこだろう。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

やっとお披露目の折本のスタンド、アースブルース63。
能力はテンションの加速。
ほとんどサバイバーの上位互換性のスタンドですね。
しかしながら、折本らしいスタンドであると思いますし、こんなわかり辛い能力だからこそ中学時代の八幡達は引っ掻き回されたのだと思います。

元ネタは『キック・ザ・カン・クルー』の『地球ブルース3・3・7』です。

キック・ザ・カン・クルーネタは他にも使いたいところですが………

折本「それある!」

チャッチャッチャッ!チャッチャッチャッ!
チャチャチャチャチャチャチャ!

「上・げ・ろ!上・げ・ろ!皆で皆を持ち上げろ!」

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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