side虹村億泰
噴上の病室を出た俺達は未起隆のワイヤーを使って下り、病院の裏に出る。さて、今後はどうするか……。
次の目的地だと思っていたS市の警察病院にも奴はいねぇみてぇだしよぉ。
もっとも、警察施設に乗り込んでヤツをやろうとしたって到底方法なんて思い付かねぇんだけどよぉ。
ヤツの裏にいる奴の目的なんかもまったくわからねぇし、どこに向かえば良いのかわからねぇ。
未起隆「そう言えば、これは私のこの星での母が見ていた刑事ドラマの受け売りですが、犯人というのは現場に戻ってくる……という事らしいですよ?京さん、何か思い当たる事はありませんか?」
そうなのか?俺、刑事物とか見ねぇんだよなぁ。ニュースとかも見ねぇしよ。
那由多「現場……現場ねぇ……あるとすれば、あそこかな?」
那由多には何か思い当たる場所があるらしいな。もしかしたら吉良東はそこにいるかも知れねぇのか。運か良ければ裏にいる奴もいれば良いんだけどよぉ。
けど、吉良東は能力がわかっているから良いけどよぉ…裏にいる奴はどんな能力か分からねぇからなぁ…。那由多と二人がかりで何とかなりゃあ良いけどよぉ……。
いや、弱気はいけねぇ……変な負け癖ができちまってるけど、もう昔の俺じゃあねぇんだ。負けることを考えるんじゃあねぇ。そんなんじゃあ京や那由多との約束を守れねぇじゃあねぇかよ!
気合いを入れろ!虹村億泰!俺と兄貴のやったことを俺が責任取らねぇで……誰がやるっつぅだよ!
那由多「億泰。お願い」
那由多がコンパクトを出してくる。目的の場所はここからじゃあバイクじゃあないと遠いってことか……。
俺はコンパクトを開けると、中から那由多のスタンドが出てきた。
那由多「億泰。ボーン・ディス・ウェイBに乗って!場所のナビをお願い!」
B?ああ、京のボーン・ディス・ウェイとは微妙に能力が違うって言ってたもんなぁ。
億泰「おう!任せろ!ケリを付けるぜぇ!未起隆!」
未起隆「スタンドも含めて四人乗りは危ないですよ。それに、私には私の役割が出来たようです。億泰さん、健闘を祈ります。ただ………」
億泰「あん?」
未起隆「この戦いは確かにあなたの戦いでしょう。ですが、誰かを頼る……と言うのは決して悪いことでは無いと思います。私はそのお手伝いをしたいので、制服のボタンを1つ、頂けますか?」
億泰「お、おう………良いけどよぉ……」
??
何をするって言うんだ?未起隆の奴は……。
俺は制服のボタンを引きちぎって未起隆に渡す。
未起隆「行って下さい。億泰さん、京さん、那由多さん」
億泰「おう!ありがとうな!未起隆!絶対に勝って帰ってくるぜ!」
那由多「行くわよ……億泰。しっかり捕まって」
俺はザ・ハンドでボーン・ディス・ウェイのライダーにしっかり捕まり、那由多がバイクを走らせる。
那由多「ねぇ……この街の………の場所はわかる?私、意識が朧気なままあなたの家に辿り着いたから、自分がどうやって歩いて来たのかわからないの」
億泰「………ああ。わかるぜ。忘れたくても忘れられねぇ場所だからな………」
よりにもよってあそこかよ。これで三度目だよな?事件であそこに行くのはよぉ………。
side支倉未起隆(未起隆から後に聞いた未起隆視点の話)
未起隆「行きましたか………」
多分、彼らはここに来るでしょう。
億泰さんの話を聞いていた限りですと(私は地球人と比べて耳が良いので話は聞こえました)、彼らは京さんが億泰さんを拐って行ったようにも捉える事ができます。ならば、探しても見付からなかった億泰さんの手掛かりとなる噴上さんの所へ必ず来ます。
ブオオオオオオオオン!
来たようですね?
ブオン!ドゥルルン……ドゥルルン……。
仗助「未起隆!何でこんなところにいるんだよ!」
康一「相変わらず変な所で会うなぁ……」
仗助さんと康一さんがバイクに乗ってここに来ました。予想通りですね。待っていて正解でした。
私が億泰さんに付いていって手助けをするのも良かったですが、もっとも彼が信頼し、力になれる人はこの二人の他にありません。
仗助「おい未起隆。何で病院なんかにいるんだよ。体でも悪いのか?」
未起隆「いいえ?体は至って健康ですよ?」
地球人と比べて丈夫な私がそうそう健康を害する事はありませんから。
康一「じゃあ、何でこんなところにいるの?」
話すのは簡単ですが、今は私の事に構っている場合では無いと思いますよ?
未起隆「私がここで何をしていたか……それはまた今度お話しましょう。とても良いお話なのですが、今はそれどころじゃあありませんよね?」
仗助&康一「!!」
私の言葉にお二人は息を飲みます。大体察したようですね。さすがは仗助さんと康一さんです。無駄な説明が省けるので助かりますよ。
仗助「未起隆……おめぇ、億泰とあの女に会ったな?」
康一「未起隆君!億泰君はどこに!?大変なんだ!」
相当慌てているようですね。
未起隆「大丈夫ですよ。彼女は億泰さんや噴上さんの敵ではありません。噴上さんからの証言は取れてますから間違いないでしょう」
その事を説明するために私はここに残ったのです。
未起隆「何でしたら、私が噴上さんの病室まで案内しましょうか?先程億泰さんと京さんの手助けをしたようにすれば簡単ですから」
仗助「そうか……あの女は億泰の親父を傷付けた奴等の仲間じゃあ無かったんだな……で?億泰は?億泰はどうした?大変なんだよ!」
おや?京さんの誤解が解けても慌てているとはどういうことなのでしょうか?確かに億泰さんは京さんのお父さんと……吉良東さんと戦う為に行きました。しかし、その事を仗助さん達は知らないはずです。
未起隆「億泰さんは本当に噴上さんを襲った人と戦いに行きました。しかし、何かあったのですか?」
仗助「ああ。億泰達を見失っちまった俺達はよぉ、億泰が行きそうな所を色々と探したんだけどな?結局見つからずじまいでなぁ。それで、もしかしたら家に戻ってるんじゃあ無いかと思ってよぉ……そしたらな……」
康一「………億泰君の家に誰かが侵入していたんだ。何か物色された形跡があったし、中で億泰君のお父さんが酷く怯えていた。猫草も侵入者と戦ったみたいで酷く傷つけられていてさぁ……。何か盗まれた物はないかとかは億泰君じゃないとわからないけど……」
仗助「クレイジー・ダイヤモンドで猫草を治してな?それから色々と調べていたら遅くなっちまってよぉ」
どうりでここに来るのが遅かった訳です。普通ならもっと早くに来るかと思っていましたから。
億泰さんの自宅が荒らされていた?どういう事でしょうか?
未起隆「それはおかしいですね……」
仗助「あ?どういうことだ?」
未起隆「京さんが億泰さんの自宅に保護されていたことを噴上さんを襲った犯人は知るはずがありません。それどころか億泰さんの存在そのものを知らないはずなんです」
京さんが億泰さんの家に向かったのは二年前に虹村形兆さんの名前を聞いたからです。ですが、その時は吉良東は京さんにやられ、再起不能になっていたはずです。
吉良東が京さんを狙うのに、億泰さんとつながるはずがありません。
億泰さんの家に押し入ったのは……。
未起隆「吉良東を二度も脱走させた黒幕の仕業…。その何者かは……最初から虹村家に何かを探していた…と言うことでしょうか?」
仗助「だとしたらよぉ……吉良東だったか?何でそんなヤツの力が必要だったんだよ」
それに推測を立てたのは康一さんでした。
康一「多分だけど………黒幕は僕達の事はあまり重要視してなかったんじゃあ無いかな。ただ、僕達というスタンド使いが邪魔で、吉良東はその為の囮だった…確実に億泰君の家に侵入するタイミングを作る為に……」
仗助「ちょっと待てよ康一ぃ!何だって億泰の家に侵入なんかする必要があるんだよ!言っちゃあなんだけど、あの家には何もないぜ?財産もねぇし、形兆が持っていた矢だって、音石を捕まえた時にSPW財団が回収していたはずだぜ?」
康一「うーん………一番自然なのは、犯人はそれを知らなくて、矢を盗むために億泰君の家に侵入した……って考えるのが自然なんじゃあないかなぁ」
何故でしょう。それが一番しっくりくる筈なのですが、私は何か違うような気がしてなりません。
犯人が何かを求めて虹村家に侵入する為に、吉良東を囮にして仗助さんや億泰さんを誘き寄せる事については同意します。
わざわざそんな事をしなくても、通学中を狙えば良いとは思いますが、そこまで念を入れるということは余程用心深い人物なのでしょう。
それ故にそんな人物がほぼ2年前に回収された矢の情報を持っていないと言うのはとても不自然な気がします。
もっと他の何かが億泰さんの家にあったと思うのです。思うのですが、それが何なのかはまったく考え付きません。
仗助「とにかくよぉ……億泰にこの事を伝えておかねぇとよぉ……もしかしたら億泰の身に何かあるとも限らねぇからよぉ……未起隆。アイツらの行き先を知らねぇか?ったくよぉ、だから携帯を買っとけって言ってあったのによぉ!」
未起隆「残念ながら。行き先については知りません。噴上さんの仇については京さんに何か心当たりがあるようなのですが、生憎とそこがどこなのかは聞いていませんでした」
仗助「おいおい未起隆!勘弁してくれよ!何で肝心のそれを聞いておかねぇんだよ!うっかりで済まされる話じゃあねぇぞ!」
勘違いしないで下さい。うっかりという訳じゃあありませんよ?確かにあの段階で京さんの心当たりを聞いておくこともできましたが、それがどこだか聞いていたとしても確実性がありません。そこにいない可能性だってあるわけですし、そうなると今度は別の場所へと向かうでしょう。だから私は確実な手段を取ったのです。
未起隆「仗助さん。これを」
私は億泰さんの制服のボタンを仗助さんに渡します。
仗助「これは?」
未起隆「億泰さんの制服のボタンです。私は億泰さんに頼んで頂きました」
仗助「こんなのを貰ってどうするんだよ。卒業式に好きな男から第2ボタンを貰って恋の成就をするっつー女子のおまじないじゃああるまいしよぉ」
海老名『ジョジョオク!きましたわー!ミキオクでもミルクが進みますわー!』(八幡や海老名は既に誕生している。この段階で2歳。小町はまだ誕生していない)
何でしょうか……感じてはならない電波を受信した気がしますが……。私にそんな趣味はありません。たまに言動から勘違いされがちですが。
未起隆「違います。これは億泰さんが今着ている制服から引きちぎった物です。これならば、億泰さんの居場所がわかるようになりますよね?仗助さんのクレイジー・ダイヤモンドならば」
仗助「グレート!どうしちまったんだよ未起隆ぁ!いつもの天然ボケが信じられねぇくれぇに頭が冴えてるじゃあねぇかよ!」
仗助さんが私の肩をバンバン叩いて来ます。
止めてください。あなた、結構力が強いんですから。
そうです。私は始めからこれが目的で億泰さんからこのボタンを借りていたのです。
海老名『チッ!』
……この舌打ちは無視することにしましょう。声の主は幼女のような気がしますが……末恐ろしい幼女もいたものです。
仗助「モタモタしてられねぇなぁ。乗れ、康一!」
康一「うん!」
未起隆「仗助さん、そのバイクは?」
仗助「露伴から借りたんだよ。あの女がバイクのスタンドを使うからよぉ、こっちもバイクを使わねぇとまた逃げられちまうからよぉ。こう、直結してちょちょいと」
未起隆「それは借りたのではなく、盗んだというのではないですか?露伴さんは海外に行っているはずですし。またケンカになりますよ?」
仗助「良いんだよ。後で直して戻しときゃバレないって。じゃあな、未起隆!ありがとな!クレイジー・ダイヤモンド!」
仗助さんは億泰さんのボタンに能力を使い、それをバイクで追っていきます。私が出来ることはやりました。後はあなた方が決めるだけです。あなた方が決める友情の力を。私はそれを見るのが好きなのです。
汚い人間の世界、腐敗した政治。この杜王町も例外ではありません。
そんな中、スタンド使い達が織り成す奇妙な事件に奇妙な日常。力を持って狂う人々が跋扈するこの街で、それでも黄金の精神を持つ彼らが必死に生きているこの街は見ていて飽きません。
この街は本当に面白い。
………あ、そう言えば………。
未起隆「噴上さんの治療をお願いすることを忘れていましたね。彼がいればもっと楽になっていたはずでしたのに」
これは本当にうっかりです。私としたことが…。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
まだドンパチにはなりません。もう少しお待ち下さい。
さて、黒幕は一体誰でしょうか?
億泰編が終わるまでにわかるかたはいらっしゃるでしょうか?
ヒントを出すと………
ジョジョの原作キャラクター
弓と矢はあまり関係ない
本作に既に登場している
ウルフスは関係ない
以上がヒントです。
それでは次回もよろしくお願いいたします。