やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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空条承太郎と一色いろはの本当の出会い

side三浦優美子

 

億泰さんは奥さんに引きずられて奥に引っ込んでしまった。こうなるとあーしらも暇になるし。

 

ジョルノ「さて……僕の予想通りだった。康一さんが僕のことを探りにネアポリスまで来たのは、それからすぐの話だったからね。あれが、僕の冒険が始まるきっかけだったんだ。それは良い。僕の話はアーシスの誰もが知っている話だからね。さて……今度は君の番だ。優美子。今まで何を隠していた?さっきまでの話と、君と姫菜の出会い、そして承太郎さんの話にどう繋がる?」

 

ちっ!覚えてたんだ……。てっきり億泰さんと京さんの話に聞き入って忘れていたと思っていたのに……。

 

三浦「多分、その件で承太郎が杜王町と東京を何度も行き来していた時、あーしと海老名は前世を思い出したんよ。承太郎と再会する事でね……。あーしはたまたまそこに居合わせただけだった。だから直接は関係ない。けど、海老名は違ったんよ………」

 

小町「え?そんなに昔から……優美子さんは前世を思い出していたんですか?聞かせて下さい!」

 

雪乃「そういえば不思議に思っていたのよ……三浦さんと海老名さんが…何故比企谷君がDIOであることを知っていたのかしらって………」

 

三浦「それも関係するんよ。長くなるけど……」

 

……多分、海老名も今頃、承太郎にその話をしているかも知れないね。良い機会だから……。

 

side空条承太郎

杜王グランドホテル

スイートルーム

 

承太郎「まさかあの時、あの子供がお前だったとはな」

 

世の中、何が縁で繋がるかわかったものじゃあない。

確かに不思議といえば不思議だった。

何故八幡がDIOの転生だったのかを海老名と三浦は知っていたのか……。

 

海老名「ふふぅん。これはもう、運命だよね?承太郎」

 

承太郎「ヤレヤレだ……」

 

俺はあの時の事に思いを馳せる。

まさかあの時、こうなる運命がほぼ決まっていたなんてな……。

 

side空条承太郎(2001年5月)

杜王町

 

杜王ヒトデに関する事で論文を発表し、博士号を取った俺はこうして学会に呼ばれる事も多くなっていた。

特に杜王ヒトデが生息している日本の学会からは特に頻度が多い。

俺はこの一年、多忙な毎日を送っていた。

多忙な毎日だったが……俺は仕事に没頭する事で家庭の事を忘れられていた。

もう、妻との関係は修復不可能だろう。徐倫の俺を見る目も冷たい。

スタンド使いの宿命から家族を巻き込まない為に覚悟してやったことだとはいえ……感情では辛いものがある。

離婚も時間の問題だ。妻ならすぐに新しい夫を見つける事が出来るだろう。

そいつが妻や徐倫を幸せにしてくれると信じるしかない。

じじいには感服する。そんな運命からも静を引き取って育てているんだからな。

静は今やもう一人の俺の子供みたいな物だ。あの子に俺は徐倫を重ねている。

そんな時だ。杜王町で億泰の家が襲われたと聞いたのは。

今回、俺は丁度学会の用件で来日していた。来日すれば俺は仗助に連絡を入れ、必ず会って近況を報告しあっていた。

吉良吉影の事件以来も杜王町は事件があったし、何があるかわからねぇからな。

そして………数日が経った昨日、仗助から連絡が入った。億泰と吉良京の事だった。

 

俺は滞在していた実家からすぐに支度を整える。

電話で新幹線を予約し、翌日に杜王町に到着できるように支度した。

そして翌日……つまり、今。事が終わった虹村家に到着する。

襲撃され、空き巣にあったとは思えない程に既に虹村家は片付けられていた。仗助達だけではそうは出来ないだろう。クレイジー・ダイヤモンドではそんな力は無いはずだ。つまり、これは吉良京の家事の腕か……。

家政婦か。もう別居をしている俺も、そういう人物を雇う必要があるな。

………と、まずは億泰の事だ。

いつものスタンド使いが起こす騒動……今回はどうもいつものそれとは違うらしい。

そして殺害された吉良東……。

何かの因縁の歯車が再び動き出す。そんな予感がしていた。

 

億泰「犯人が残した骨がよぉ……太陽の光に当てたらよぉ、灰になって消えちまったんッスよぉ」

 

少し前に見た時とは顔が引き締まった億泰から報告を受ける。この短期間で成長したようだな。億泰…。

それにしても億泰……いまなんて言った?

何だと?骨が日光で灰になって消えた?

その特徴を俺は良く知っている。

エジプトで……あの下衆野郎の死体を朝日に照らしてそうしたのは俺とじじいだった…。だとしたら億泰の家を襲った奴が残した骨は……吸血鬼の骨だった可能性が高い。

そして俺は虹村万作を見る。

DIOの部下だったという億泰の父親がいるこの家で、それが遺留品として残されていたこの場所……。

犯人の目的は……DIOの関係者である可能性が高いと俺は直感した。

 

承太郎(DIOが死んだ今……DIOの関係者らが動くとしたら…)

 

あのDIOの手記だろう。天国へと至るあの気味の悪い手記。

 

承太郎(とうとう、それが関わるようになったか…)

 

俺は動くことにした。まずはもう一度、DIOに関する事を調査する必要がある。12年経った今だからこそわかることもあるかも知れない。

こうして動き出した以上、何かが起こる前にそれを阻止しなくてはならない。

やはり徐倫を俺から引き離したのは正解だった。

いつかは関わると直感していた。

 

承太郎(次に狙ってくるのは……俺だろう)

 

それから半年……。

 

俺は康一君へ依頼し、億泰の元に京を届けた帰路にいる。

DIOの身辺を探ったら、とんでもない存在がいたことに気が付いた。

汐華初流乃………。

億泰の所で起きた事件とは無関係だろう。だが、DIOの息子であるという事実は放っておけない。汐華初流乃は現在15歳。その汐華初流乃が俺達に仇なす存在なのか……見極めなければならない。

学会の仕事もほぼ終わった。俺はアメリカに帰る為に成田からテキサスまでの飛行機のチケットを予約する。

ヤレヤレだ……。もうじき羽田が国際空港となるって話だが……俺はそれでも成田から帰国していただろう。なぜなら……

 

承太郎(まずは日本を経つ前に……あいつに報告だな)

 

千葉にある花京院の墓前に報告をしなければならない。花京院の遺体は家族に引き渡された。身元が……家族が唯一存在した犠牲者。それが花京院だった。

千葉には花京院がいる。だから帰国した時は成田からと俺は決めていた。

関西での仕事だったとしても、関西国際空港を使わずに俺は成田で降りている。非効率的なのはわかっているが、花京院の墓参りをするには成田が丁度良い。

俺は帰国の都度、実家に顔を出し、花京院の墓参りをすることに決めているからだ。

そうしなかったのはじじいや静と一緒に杜王港から出発した時くらいか?

 

俺は東京を経由し、成田まで移動するべく東京駅に向かう。

 

承太郎「む………」

 

一色典子「あ………」

 

タイミングが悪い……。

花京院の親戚の一人と鉢合わせてしまった。

花京院の従妹だったか?花京院が死んだ頃はまだまだ子供だった女の子が、今では娘であろう子供を抱いていた。

年を取ったと実感できる。

 

いろは「う~……ばぶぅ」

 

……なんだこの子供は……。

俺はこの子供に……何かを感じていた。そしてこの子供は……普通じゃあなかった。

子供なのに子供の振りをしている何か……俺を見透かそうとしているその瞳は……何だ?

 

典子「この子を……いろはを見ないで下さい。この子はあの人と同じ……典明くんと同じなんです……」

 

花京院と同じ?つまりは………

 

承太郎「スタンド使い……」

 

俺がそう言うと、花京院の親戚は「キッ」と俺を睨んでくる。

 

典子「そんなのじゃあない……いろはは……あなたの仲間なんかじゃあない……。スタンドなんて……大っ嫌い。そんなものがあるから、典明くんは死んでしまった……典明くんと同じ力があるから……いろはは花京院家の中で迫害に近い扱いを受けるのがわかる…。だからうちは……東京から逃げる羽目になった。典明くんが眠る……花京院のおじさんがいる千葉なら……典明くんが守ってくれる……何故だか……そう思えるから……」

 

そうか……この子の家は引っ越しているんだな。花京院は両親と馴染めなかったということを後で知った。

そんな花京院の本家は……花京院と同じ力を持つこのいろはという娘を良く思っていないのだろう。

 

典子「何で……スタンドなんてものがあるの……?出来る事なら……いろはの代わりに私が……その呪われた力を受け継げば良かったのに………」

 

スタンドというものは呪いか……。確かにそうなのかも知れないな。

未だに続いているDIOとの因縁。そして今回の杜王町で起きた事件……。

スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う。

 

承太郎(それにしてもこのガキ……)

 

俺はこの1年、日本に来る度に妙な魂の惹かれあいを感じている。杜王町を去った後の……数ヶ月後だ。

(1999年、8月8日……比企谷八幡が誕生、2000年4月16日に一色いろはが誕生、小町は2002年3月に誕生した為、この段階ではまだ八幡の母に小町は宿っていない)

それは俺と仗助の間にあった魂の惹かれ合いだと思っていたが………もしかしたらこのガキが?

しかし、何故花京院の従妹の娘と俺がこの惹かれ合いを感じる?

スタンド使い同士の肉親は何か波長のようなものを感じる。胸糞悪いことにあのDIOと俺の間でもそれはあった。

DIOの首から下はじじいの祖父、ジョナサン・ジョースターの体だったからな…。

その感じが今、このガキから感じている。

だが妙だ……このガキはジョースター家とは何の関係もない。なのに何故……。

困惑する俺。

 

典子「この子を見ないで下さい……と言いましたよね?空条承太郎博士」

 

承太郎「あ、ああ……済まない」

 

子供を抱えながら、引っ越しの道具を運んでいたのだろう。花京院の親戚は疲れから、移動する体力も残っていないようだった。

それならば俺が移動すれば良いのだが……何故か俺はこの子供に惹かれてしまい、移動できない。

気まずいのはわかっていた。だが、それでも俺はこの娘に惹かれてしまう。

その内、京葉線に電車が入ってくる。

空港までの路線とは違うのだが、俺の目的地は花京院のお墓だ。それは千葉の市街地に存在する。

 

承太郎「持とう……目的地までは手伝う」

 

俺は花京院の親戚が持っていた荷物を持つ。

 

典子「結構です……それよりも私の前から消えてください」

 

承太郎「わかった……気を付けろよ……」

 

俺とこの娘が出会ったように、スタンド使いとスタンド使いは惹かれ合う。

道中で何があるかわからないからな。

後ろ髪を引かれる思いで俺は花京院の親戚から離れようとすると……

 

いろは「あっえー!よぅよ~、よぅよ~」

 

ガシッ!

例の子供がスタンドを出し、俺のコートを掴んで離さなかった。

このスタンドは……花京院のハイエロファント・グリーン!いや………似ているが、所々が違う。

親戚同士なのか、スタンドはよく似ているものかも知れないな。

ザ・ワールドとクレイジー・ダイヤモンドもよく似ていた。近距離パワー型という特徴は俺のスター・プラチナとも似ていたしな。

 

いろは「よぅよ~。よぅよ~」

 

何故だか……この娘は俺の事を「ジョジョ」と言っているように聞こえた。

それにしても何故、こんな子供から大人タイプのスタンドが……。

だが、スタンドと一言で言っても様々なタイプがある。このハイエロファントに似たスタンドはそういうタイプのスタンドなのだろうと思い直す。

スタンドの事は未だに全てが解明されていない。基本的なルールだってぶち破るスタンドがある。

吉良のキラー・クイーンや康一君のエコーズ等がそうだろう。

 

典子「……どうしたのですか?」

 

承太郎「その子のスタンドが俺を離さないんだ」

 

典子「いろはちゃん!」

 

いろは「よぅよ~。よぅよ~」

 

どうやらなつかれたようだ。こんな小さな子供になつかれるなんて……珍しい事もあるものだな。

実の娘の徐倫や静だって、俺にはなかなかなつかなかったって言うのに……。

 

いろは「よぅよ~」

 

いろはと呼ばれた乳児は、俺が近付くと今度はその小さな手で俺のコートを触る。

 

いろは「キャッキャッ!」

 

乳児のスタンドは俺の背後に回り、首の後ろを見る。俺の痣を見ているのか?ジョースターの血統に代々受け継がれているこの痣を……。

 

承太郎「俺の痣が気になるようだな……」

 

典子「痣?確か今度お隣になる比企谷さんのお子さんにも……それに……この子も……」

 

何だと?

俺はこのいろはという娘の後ろ首を確かめようとする。が、それは親に止められた。

 

典子「何をしようとしているんですか?ペドコンなんですか?あなたにこの子の事は見られたくないって何度も言っているのがわからないんですか?とにかくこの子の痣を確認しようなんてことは許せません。無理です、ごめんなさい」

 

く……よく回る舌だ。よくこんな長い台詞を噛まずに早口で一気に言えるものだ。

 

承太郎「花京院さん……その子の痣というのは……こういう形をしていないか?」

 

俺は母親に俺の痣を見せる。

 

典子「………いえ、そんなまだハッキリとした形には……って何でわたしにそれを見せるんですか!肌を見せるって何ですか?もしかして遠回しにわたしを口説いていたんですか?確かにあなたはイケメンですし若い世代にはない渋い感じになってますし普通の女の人ならコロッといっちゃうかも知れませんけどあなたはあの家の人間ですし何より典明くんの仇のようなものですし絶対あり得ませんから無理です!ごめんなさい!」

 

また高速お断りがきた……。

あり得ないから安心して欲しい。俺はまだ、妻や徐倫の事を引きずっている。

ヤレヤレだ……とことん嫌われているな。

花京院の事を思えば当然か……

重苦しい旅に………

 

???「キャアーーー!姫菜ぁ!」

 

どこからか悲鳴が聞こえてきた……。なんだ?一体…

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

杜王町での出来事が終わった後、アメリカに帰ろうとしていた時、運命の歯車がまた1つ、動き出す。
一体何が起きるのか?
これは事件にもならないほんの小さなお話です。

それでは次回もよろしくお願い致します。

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