やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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そして歯車は動き出す

side空条承太郎(現在)

 

そうだ……俺はあの時、いろはと出会っていたんだ。

長い時間が経っていたし、ジョルノの事とか離婚、それらが色々と重なって忘れていた。

八幡が暴走したあの墓場での騒動よりも前に…俺はいろはや八幡に……既に出会っていたんだ。

いや、いろはや八幡だけじゃあない。海老名や三浦…それに陽乃や雪乃とも……。

 

 

 

side空条承太郎

(2001年5月)

 

「キャアーーー!姫菜ぁ!」

 

叫び声が聞こえ、そちらを見てみると………。一人の幼女がホームから転落しようとしていた。

 

承太郎「まずいッ!」

 

俺は考えるよりも先に、急いでその子供の所に走る。

 

いろは「よぅよ~!」

 

くっ………いろはというガキがまたしても……仕方がねぇ!

 

承太郎「済まん!花京院さん!」

 

典子「あっ!」

 

俺はガキをひったくり、そのまま走る。

スタンドを引き剥がすよりも、こうしてガキ共々走った方が早いからだ。

今はチンタラしている場合じゃあない。

 

承太郎「スター・プラチナ!ザ・ワールド!時よ止まれ!」

 

こんなことでスタンドを……時を止めるということが許されるか……等と言うことは頭に無かった。

ここで使わなければあの子供の命が危ない。ただでさえ小さな子供がホームから転落すればそれだけで命が危ない。ましてや電車はもうそこまで迫っている。

考える余裕なんて無かった。

 

 

side海老名姫菜

 

楽しかった東京旅行もきょーで終わり♪

今はおうちに帰る為に駅のホームで電車待ち♪

 

わたし、海老名姫菜は自分で言うのもなんだったけど、不思議な女の子だった。

何故だか既に大人のように物を考えることが出来ていた。大人が話している言葉の内容も理解できていた。

だけど………私はそれを出してはならない。

何故だか悲しい気持ちが沸いてくる。

私は………いったい何なんだろう。

 

『最後の………メッセージです………』

(ジョースターさん……承太郎………)

 

悲しい何かが………時々襲ってくる。

私は普通でなければならない。普通を装わなければならない。そうじゃあなければ……花京……あれ?いま私は何を………。

わからない。気が狂いそうになるような……そんな感覚が時々出てくる。

 

『間もなく、三番線に電車が参ります』

 

あ、電車がもうじき来る。

海老名(考えてもわからないなら、気にしたって仕方がないよね?)

 

私はこれ以上、考えるのを止めた。

だって考えたってわからないし、悲しい気持ちになるだけなんだもん。

それよりは今、おうちに帰る事だけを考えなきゃ。

楽しかった東京の事を思い出して忘れよう……。そうだ!今は大相撲の夏場所だ!テレビで見なきゃ♪

大きな男の人がくんずほぐれつ………ぐふ♪

 

海老名「おっすもー♪おっすもー♪」

 

海老名母「姫菜は本当にお相撲が好きねぇ」

 

海老名父「でも何故だろう……姫菜の相撲好きは何かが違うような気がする……」

 

『ザザザ…お前、相撲は好きか?特に土俵際の駆け引きは……手に汗握るよなぁ!』

 

『ええ。大好きですよ?でもザザザ…殴るのは反則ですよ?』

 

最初はこの記憶から見た事で私は相撲を見るようになった。最近では男の人が裸で組み合う姿に……キャー!

 

『敗者が悪なのだよ……ザザザ……』

 

『なに?だったらヤッパリテメェの事じゃあねぇか』

 

………まただ。

また変な記憶が………。

 

典子「無理です!ごめんなさい!」

 

んん?あのおばさん……何か見覚えがあるような……。それに、そのおばさんの近くにいる白いコートを着ているあの大きな男の人……あの変に破れた帽子……あの人は……あの人は……。

 

『ザザザザ…郎』

 

海老名「…………郎……」

 

間違いない………あの人は……

 

『ザザ……太郎』

 

海老名「………太郎………」

 

もう少し!もう少しで出てくる……あの人は……

 

花京院『承太郎』

 

海老名「承太郎ぉぉぉぉぉ!」

 

思わず駆け出してしまう。

 

海老名母「姫菜!危ないから行っちゃダメ!」

 

そうだ!承太郎だ!空条承太郎!

思い出した!私の中でくずぶっていた何かを!

私は……私は……花京院典あ………

 

ドン!

 

海老名「あ………」

 

誰かにぶつかり、飛ばされてしまう私。

もうすぐ電車が入ってくるこのタイミングで……。

 

承太郎「まずい!」

 

承太郎が私に気が付いて走ってくる。

でも……間に合わない。せっかく会えたのに……せっかく思い出したのに………間に合わない!

 

承太郎「スター・プラチナ!」

 

承太郎がスタンドを……スター・プラチナを出すけど、スター・プラチナは近距離パワー型……。とても間に合わない……。

 

承太郎「ザ・ワールド!」

 

…………

 

 

次の瞬間には………私は何事もなかったかのように承太郎に抱かれていた。

 

海老名(この……感覚は……一切の時間差がない、この感覚は…………あの時と同じ……DIOのザ・ワールドの感覚と………ハッ!)

 

あれは………

 

私は確かにハッキリと見えた。

年を重ね、美人になった典子ちゃんの背後に映る子供連れの夫婦に抱かれている男の子から……(たった今、思い出したんだけど)忘れたくても忘れられないあの黄色いスタンドが………子供にしてはとても邪悪な目を浮かべているあの子供から出ているスタンドは……。

 

海老名「う………う………う………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

違う!叫びたいのは……張り上げたいのは泣き声じゃあない!

 

承太郎「よしよし………怖かったな………」

 

気が付いて!承太郎!背後にいるスタンドを!あなたや私の……花京院典明の宿敵だったあの恐ろしいスタンドを!

DIOのザ・ワールドを!

 

承太郎「ん?俺の後ろに何かあるのか?」

 

承太郎は背後を振り向く。しかし、もうザ・ワールドは消えていた。あのアホ毛の男の子の目も、もう普通の男の子のような目に戻っていた。

だけど私はバッチリ見た。見間違えるはずがない。あれは確かにDIOのザ・ワールドだった!

 

典子「いろはを返して下さい!いろはを連れてこんな危険な事をして!」

 

いろは「う………う………うえええええええん!」

 

典子「ほらっ!いろはも怖がって泣いちゃったじゃあないですか!もうわたしやわたしの家族の事は放っておいて下さい!空条承太郎博士!」

 

典子ちゃんは娘を承太郎から取り返すと、そのまま荷物を持って歩いて行っちゃった。

 

八幡父「おや?一色さん……でしたか?今度お隣に引っ越して来られる……」

 

典子「あ、比企谷さん。今日、お隣に引っ越すんですよ?今日からよろしくお願いします」

 

八幡母「それはそれは……こちらこそ、よろしくお願いします。お子さんも八幡と歳が近いようですし…仲良く出来ると良いですね?」

 

八幡「かわいいなぁ………」

 

いろは「んゆ?ようよ?」

 

だめ………典子ちゃんの娘さん。そいつはDIO……DIOも私と同じように………。

名前は比企谷八幡……か。

覚えた……その名前は確かに覚えた!

いつか私が大きくなって……そしてまだ生きていたら…今度こそ必ず!

 

海老名「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

私は……相変わらず泣いていた。幼い体が……恐怖によって生まれた感情が……体が勝手に反応してしまう!コントロール出来ないなんて……。

 

承太郎「ヤレヤレだ……」

 

海老名母「あ、ありがとうございます!娘を助けて頂いて………」

 

承太郎「人として当然の事をしたまでだ……間に合って良かったと言うべきか………さて。更に嫌われてしまったか……これは一本、電車を遅らせた方が良いようだな。飛行機には……花京院の墓参りをしてギリギリといったところか………本当にヤレヤレだ」

 

承太郎は私をお母さんに渡し、立ち上がる。

 

??「承………太郎………」

 

承太郎「…………??」

 

女の子が一人、承太郎に声をかける。だけど承太郎はよく聞こえなかったのか、そのまま階段を上ってホームから姿を消してしまった。

 

海老名「………承太郎………」

 

??「あーた、スタンド使い?承太郎をしってるの?」

 

そうだ。この女の子は誰?承太郎を知っているみたいだけど……。

 

海老名「グズ………私は海老名姫菜……」

 

三浦「あーしは……三浦優美子。ねぇ、何で承太郎を知ってるの?あーたはスタンド使い?」

 

海老名「………うん」

 

多分、スター・プラチナやザ・ワールドが見えたのならば………

 

海老名「ハイエロファント・グリーン」

 

出てきた……私の……花京院典明の時から使えた法王の緑(ハイエロファント・グリーン)が。

 

三浦「ハイエロファント・グリーン…花京…院…?まさかあーたもあの時に……死んでいたの?」

 

海老名「ぐす……あなたは?」

 

三浦「マジシャンズ・レッド……」

 

海老名「!!アヴドゥルさん!!」

 

なんて偶然………承太郎だけじゃあなく、アヴドゥルさんまで私と同じで………。

 

三浦「あーし、今思い出したんだし……承太郎のスター・プラチナを見て……」

 

海老名「私もだよ?アヴドゥルさん……そして、DIOのザ・ワールドも……いた……」

 

三浦「!!!DIOまで復活していたなんて……ねぇ、花京院……あーた、どこに住んでるん?」

 

海老名「私は千葉の…………」

 

三浦「ふぅん……結構近くじゃん?だったら……もしDIOの復活した男ってのがまだあーしらが大人になっても生きていたら………」

 

海老名「うん………今度こそ………私達の手で……DIOを………」

 

私とアヴドゥルさん……優美子は………打倒DIOを掲げて再会を誓った。お互いにその日まで力を付けておくようにと………。

 

三浦「ねぇ、花京院。女になったんだから、スタンドはハイエロファント・グリーンじゃあなく、女教皇の緑(ハイプリエステス・グリーン)にしたら?」

 

あ、それ良いかも?

それにしても………女として見る承太郎……けっこう渋くて良い男だったかも?

あ………前世の私と承太郎………

 

海老名「承花……いけますわ……」

 

三浦「あーた………女になって変わったし……なんか開いてはいけない扉を自分で開いてる気がするし……」

 

愚腐……愚腐腐腐……♪

 

 

side空条承太郎

 

ヤレヤレだ……。やっと着いたか。

俺は花京院の墓に花を添え、線香に火を付ける。

 

承太郎「花京院……また色々と動き出しそうだ…。DIOとの因縁が………また始まる……」

 

俺は花京院に色々と語りかける。

近況を……康一君を汐華初流乃の所に送り込むことを。

花京院は怒るかも知れないな……。

 

承太郎「康一君なら大丈夫だ……あの子は……お前と同じ黄金の精神に満ち溢れているからな……そういえば汐華と言えば………」

 

ヤレヤレ。もう一ヶ所、見に行く所があったことを忘れていた。年を食って忘れっぽくなったのか?まだ30前だって言うのに……。

 

キングクリムゾン!

 

雪ノ下家 正面入り口

 

承太郎「ここか………」

 

雪ノ下家……

汐華初流乃の母親である汐華と関係がある一族と目されている家だ。

 

承太郎(……雪ノ下建設の代表取締役であり、千葉県県議会議員……か。ただそれだけだったら何も引っ掛かることは無かったんだがな)

 

DIOの子を産みながら、奴の食料になっていないというのが気になる。

DIOが気紛れで食料にしなかったのか、それとも別の何かがあって出来なかったのか……。

汐華初流乃の母親にも何かあるのではないか……と疑ってしまう。

 

陽乃「っ!!」

 

庭で遊んでいたであろう子供が俺を見て固まっている。

まぁ、コワモテの俺を見て固まる子供は少なくない。

すると、子供を抱いた一人の貴婦人が現れた。

 

秋乃「我が家に何か?」

 

承太郎「随分立派な家だと思ってついつい見入ってしまった。すまなかった……」

 

一般的な旅行者がこの家をじっと見るには妥当な理由だろう。汐華がどういう一族かはわからんが、無駄に事を荒立てる必要はない。

………今はまだな。

 

秋乃「そうですか?よろしければ中もご覧になられますか?」

 

承太郎「とても魅力的なお誘いだが、生憎と飛行機までの時間もない。とても残念だがな」

 

本当に時間が無いことは確かだし、敵かも知れない一族の居城を不用意に入り込むのは危険だ。

それはDIOの館で懲りている。

 

秋乃「そうですか。それは本当にとても残念です」

 

雪ノ下夫人はにっこりと笑う。

 

秋乃「お名前を伺っても?」

 

承太郎「東方久太郎だ。それでは失礼する」

 

すまんな仗助。ここで本名を名乗りたく無いのでな。

 

雪乃「う、うう………うわぁぁぁぁぁん!」

 

すれ違う時に雪ノ下の……恐らくは先ほど庭で遊んでいたであろう娘の妹が泣き出した。

俺に会った普通の子供の大抵はそうだ。

花京院の従妹姪のようになつかれる方が珍しい。

さて、タクシーでも拾って空港に急ぐとしよう。かけた時間のわりにはそれほど収穫は無かったがな。ヤレヤレだ……。

 

 

side雪ノ下秋乃

 

秋乃「………都築さん、立場さん」

 

都築「はい」

 

都築と立場は雪ノ下建設の社長秘書であると同時に汐華の関係者である。

 

秋乃「今の男、見覚えある気がするのですが……」

 

都築「直接は関係ありませんが、SPW財団の会長の孫だったかと……最近では海洋学者として表舞台に出てきたかと思います。確か空条承太郎」

 

秋乃「SPW財団の会長の……確かジョセフ・ジョースター……カーズを倒した忌々しい波紋の一族の…」

 

空条承太郎という名前そのものは知らないが、彼の祖父であるジョセフ・ジョースターの事はよく知っている。我が柱の一族の眷属ならば、特に警戒をしなければならない。

ましてや彼が興したジョースター不動産は……SPW財団は日本にも進出してきている。

我が家の家業の天敵だが、地力が違う。

SPW財団が本気を出せば雪ノ下建設など相手にもならない。ジョセフ・ジョースターの孫が我が家を下見にきた……。

これは何かの前触れなのだろうか?

 

立場「空条承太郎は13年前にDIOを倒しています」

 

DIO……確かそれは冬乃様が戯れに相手をしたカーズが生み出した石仮面の吸血鬼だったはず…。

 

秋乃「立場、冬乃様にご報告を。カーズ様とDIOを倒したジョースターの一族がやって来た……と」

 

好きにはさせませんよ……ジョースター……

 

 

 

side空条承太郎(現在)

 

承太郎「なるほど……ズィーズィーの時の相撲の発言から相撲を見るようになり、そのままあの趣味に走ったのか……」

 

随分と飛躍しているような気もするが……

相撲好きからどうなってホモ好きになるのかわからん。思えば花京院の頃からよくわからないところはあった気がするが……。

 

海老名「でも、私を助けてくれた承太郎、かっこよかったよ?前世の記憶もあって、私は承太郎が好きになったのかな?」

 

承太郎「………勘弁してくれ」

 

海老名「承太郎?本気で嫌がってるなら……特に一番嫌いな若い女の子にまとわりつかれたら怒鳴ってるじゃん?花京院の時に見ていたよ?」

 

ちっ………厄介な奴に好かれたものだ。

だが………なんだかんだ言って俺は海老名の事が嫌いじゃあない。

困った事にな……。

お袋とか徐倫とか、じじいとかも乗り気のようで仗助のように外堀を埋めて来やがっている。

こいつは…………時間の問題かもしれないな。ヤレヤレだ……。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

承太郎を中心に幼い主要人物達が………

小町「ちょっと待ったぁー!」

はい?

小町「小町は!?小町はどうして出てないの!?」

いやぁ……八幡と静を1999年生まれとして、年代を設定した場合……小町は黄金の風の時には生まれてない設定になるわけで………
黄金の風は2001年の出来事で、君は2002年3月生まれになるから………
残念ながら2001年5月の話では……ねぇ。

小町「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!本城のバカァ!ボケナス!八幡!ゴミィ!」

そうは言ってもなぁ(・・;)

それでは次回もよろしくお願い致します

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