やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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岸辺露伴と材木座義輝は散歩に出る

『Dejikamette物語』

 

未来………

 

人類が栄誉栄華を誇っていた時代……

しかしそれは突然終わりを告げる。

生物学とロボット学を融合させたバイオ・ロイド、通称BRの開発に着手。しかし、バイオ・ロイド開発に使用していた生体ウィルス、通称ネバネバウィルスが開発事故によりバイオハザードを引き起こす。

ネバネバウィルスは瞬く間に世界中に蔓延、感染したものは『感染生物』と呼ばれるモンスターと成り果て、各地を襲撃。都市は破壊され、人々は瞬く間に感染生物に食い尽くされ、減少の一途を辿った。

国家は崩壊し、治安は乱れ、生き残った人々は日々の暮らしに追われるようになる。

そんな荒廃した世界の中で、一人の男が冷凍カプセルから目を覚ます。

「あ、やっと目が覚めたね?」

ピンクの髪のツインテールの少女が目を覚ましたばかりの男に目を覚ます。

「あなたの名前は?」

名を聞かれ、男は返答を返す。

「仗世文……条星仗世文……」

仗世文は体を確かめ………

 

 

side材木座義輝

ー杜王町ー岸辺露伴自宅ー

 

露伴「ふむ。君にしてはまともなプロットだな。義輝くん」

 

おおッ!珍しく露伴先生が誉めてくれた!

 

露伴「それがネバー○ールドのパクりであってもね」

 

バ、バレとる!

ま、まさか露伴先生が10年以上前の携帯MMOの事を知っておったとは!

 

露伴「まぁ、真新しい物を作るというのが困難な今の時代、むしろ古いものを形にするのは仕方のないことかも知れない。それで内容なのだが……」

 

ゴ、ゴクリ………

喉を通る生唾の感覚までもが研ぎ澄まされる……。

いつまで経ってもこの緊張には耐えられぬ物だな。前世でも作戦の立案や報告の時などは緊張したものよ。

 

露伴「これはあのMMOのメインストーリーを追っているな。感染生物との戦いや何故荒廃した世界になってしまったのか……それについての表現は良く出ているだろう」

 

おおっ!中々の好感触よ!

だが、そのわりには少し厳しめの表情なのは気のせいであるように思えるのだが……。

 

露伴「だが、一番の欠点が目立つ。この仗世文という男が入ったギルド、『Dejikamette』というチームの事にはほとんど触れていない。殆どがメインストーリーのチーム以外のキャラクターの事ばかりで、チームのリーダーであるリンシャとの交流、闘いの師匠であるBANPとの交流、宗介との交流、同盟の苺ミルクにマァチになんだ……川崎めぐりというのは………とにかくチーム同士の戦闘など、タイトルとなった物の事に触れていないのはタイトル詐欺と言えなくは無いのではないか?世界の謎を追うのであるならば、別にチームのメンバーとメインストーリーのキャラクターを差し替えても問題は無かっただろう?」

 

う、うぐっ!言われてみれば……。世界の謎……原作のストーリーを追い求める余り、そこを突き詰めることを忘れておったわ!

 

露伴「元ネタのゲームの楽しみかたを表現していないのも問題だ。錬金や賞金首とのやり取り等の事も一切触れていない。現実を離れた世界をモチーフにするならば、現実との違いを表現することもこのタイプの物語には魅力の1つだろう。それがよりリアリティーを補強する物だ。結論から言えば………」

 

こ、これは予想よりも点が低いやもしれぬ!

 

露伴「30点だな。タイトル詐偽、メインストーリーのパクりと色々あったが……」

 

さ、30点………だと?

 

材木座「新記録だぁぁぁぁ!」

 

露伴「少なくとも文章を見て情景がイメージ出来るくらいにはリアリティーがあったことは確かだ。それと、これまでは異世界ものと軍記ものに偏っていたのを現実に模した物語に変えた事も評価に変えてある」

 

露伴先生は基本的に辛口の評価しかしない。これまで平均15点だった自分の点数が一気に伸びて満足と言うものよ!

 

露伴「しかしあれだね、義輝君。君はリアリティーを表現する事とかはともかくとして、とびきり1つだけとんでもない才能を持ち合わせている」

 

とんでもない才能だと?

はて……それは何であろうか。

 

露伴「メンタルの打たれ強さの回復力だ。いくら辛辣な言葉を浴びせられ、『もうこいつはダメだな…』と追い込んでも数時間後には不死鳥のように蘇る。そのスタンド能力のようにね」

 

………何であるか!それは!

 

露伴「加えて最近は打たれ強さそのものが強くなって来ている。防御力には定評のあるガンズ・アンド・ローゼズの君らしいメンタルだ」

 

そりゃ毎日のように露伴先生の毒舌を浴びせられれば嫌でもメンタルが強くなろうと言うものよ!

 

材木座「それは露伴先生と自分の波長が合っておるからでは無いでしょうか?」

 

露伴「ふむ………そうとばかりも言えないな。僕が売れ始めた当初はそれなりにアシスタントや漫画の指導……言わば弟子希望の人間はそれなりにはいたんだが、君ほど僕に付いてきてくれる人間はいない」

 

露伴先生はアシスタントいらずであるからな。並の者ではまず自信を無くすであろう。某龍玉の作者と同様にスクリーントーンも使わぬらしいしな。

我の場合は畑違いと言うのもあるやもしれぬ。

 

材木座「ちなみに自分以外で最長記録はどのくらいの長さであるですか?」

 

自分が露伴先生の弟子になってから約半年。これが最長であるならば、これまでの人間はどのくらい持ったのであろうか?

すると露伴先生は指を三本立てる。3ヶ月か……。

 

露伴「三時間だ」

 

さ、三時間!?1日すらもっておらぬのか!

 

露伴「まず僕の毒舌で大半が一時間持たない。次に僕の漫画の書くスピードに自信を無くし、更にアシスタントの意味がないと二時間で帰っていく。僕はアシスタントなんていらないと言ったのに、それでも自分から押し掛けて来ておいて失礼な限りだ」

 

小説ですら辛口の評価である露伴先生だから、漫画ではより辛口であろうな。それに露伴先生の漫画は承太郎博士のスター・プラチナ並のスピードと精密さで書かれておる。人間精密パワー型の八幡や小町殿とて露伴先生に敵わぬと言っておるからな。

 

露伴「そこまでもったとしても、僕のリアリティー追求の行動についていけない人間が辞めていって三時間。そんな僕の師事を受けていながらも半年も僕に付いてきてくれる君にはある種の敬意を僕は持っている。波長が合う合わないもそうだが、そのある種の反骨心とも言えるその精神が僕は気に入っている」

 

……反骨心か。覚悟とも言えるそれは我が前世、シュトロハイムの影響であろうな。手榴弾でサンタナもろとも自爆しようなどと考えたりするなどといった行動に比べれば、露伴先生の毒舌や奇行などといったものに耐えるなど、ものの数ではない。

前世を思い出す以前の自分だったら、むしろ30分持ったかわからぬ程であった。

それに今ではある意味でライバルがおるしな。ガンズ・アンド・ローゼズ・アルファの自分……つまりA材木座義輝だ。

千葉村で会ったとき、きゃつの事について婚約者の女史から聞いた。何でも雪ノ下冬乃殿と言われる平行世界の雪ノ下殿の母君の師事を受け、プロデビュー間近なレベルまで実力をつけておると聞いた。

同じ自分なのに我よりも更に上を行く材木座義輝。

このままでは悔しいではないか。相手は自分自身なのだ。あの材木座義輝にできて、この材木座義輝には出来ぬ理由がなかろう?

それに、露伴先生は約束してくれたのだ。自分がプロデビューをした暁には、挿し絵を担当してくれると…。師が我の作品に協力してくれると言っているからには、しがみついてでもついて行かねばならぬではないか!

我は約束を守らねばならぬ。そうであろう?我がジョジョであり、我が友、ジョセフ・ジョースター老……。

 

露伴「さて。お昼も過ぎた。昼食をとりに行こう。少し遠いが、構わないかね?御馳走しよう」

 

材木座「はい!喜んで!」

 

露伴「杜王駅の近くに美味しいパン屋がある。サンジェルメンという店だ」

 

そう言って露伴先生は手早くスケッチブックと筆記具一式と虫眼鏡を持って立ち上がる。

自分も財布と携帯、デジカメとメモ帳を無意識に手に取る。習慣ついてしまったものだ。

露伴先生について玄関を出ると………。

 

露伴「おや?」

 

玄関の足元にめぐり殿のシンデレラ・ハーヴェストがボーッと家を見ていた。

 

露伴「めぐりくん?こんなところで何をしている?」

 

C・H「…………」

 

露伴先生が話しかけてもシンデレラ・ハーヴェストは反応しない。

 

露伴「…………行こう。義輝君」

 

しばらく歩くき、杜王駅の近くに行く。すると……。

コンビニ(オーソン。ローソンではなく、オーソン)の横の小道でもまた、シンデレラ・ハーヴェストが佇んでいた。

 

材木座「また……でありますな……この小道には何があるというのであろうか……」

 

自分が小道に入ろうとすると、露伴先生が強く自分の肩に手をかけ、それを止める。

 

露伴「その小道に入ってはいけない。そこはあの世への道だ。めぐりくんの前世、鈴美さんが15年……留まり続けた道。迂闊に入ればあの世へ連れ去られる」

 

そう言えば聞いたことがある。ジョジョからも東方会長からも駅前のオーソンの横に小道があったならば近付くな………と。

あ、危ないところであった……。

それにしてもめぐり先輩のシンデレラ・ハーヴェストがここにおるのも頷ける……。

かようなところで15年も……。

 

形兆「おや?お前は……俺がスタンド使いにした…」

 

妙に古くさいヘアスタイルの学生服の男がいつの間にか我々の横に立っていた。

 

露伴「直接会うのは僕がスタンド使いになって以来だな。聞けばあの千葉村でも出てきたというが……久しぶりだな。虹村形兆。義輝君、彼は虹村形兆。虹村億泰の兄だった男の幽霊だ」

 

形兆「ああ。お前は岸辺露伴とその弟子、材木座義輝だったな?億泰から聞いている」

 

露伴「その通りだ。お前にはわずかばかりに感謝している。ヘブンズ・ドアーは役に立っているからな。ところで虹村形兆。このスタンドはいつからここにいた?本体らしき少女は?」

 

形兆「そうだな……億泰や仗助がここで作業して帰っていってからしばらくしてからだから……かれこれ3時間はここにいるぜ?何をするわけでもなく、じっとここにいるんだ。本体らしき少女?悪いが写真とかを見せてくれねぇか?」

 

露伴「この少女だ」

 

すると露伴先生は定期入れらしき物に入れられている城廻先輩の写真を形兆殿に見せる。露伴先生の腕に抱きつき、輝かんばかりの満面の笑みを浮かべた城廻先輩の写真だ。

携帯の待ち受けのみならず、生写真も肌身離さず持っておるとは……口では嫌がっているようでも、露伴先生は露伴先生なりに城廻先輩の事を想っておるのだな?

これが男のツンデレ……か。

 

形兆「ほう……?なかなかカワイイ女じゃあねぇか。こりゃ将来、とんでもねぇ美人になるぜ?オメェのコレか?」

 

形兆殿はからかうように露伴先生に向けて小指を立てる。その表現は前時代的であるぞ?形兆殿。

あ、前時代的な人だったな。我が生まれた年に亡くなった御仁であるのだから。

 

露伴「下衆の勘繰りは良い。この娘が来たかどうかを僕は聞いている。そもそも君はそんな男じゃあないだろ?」

 

形兆「死んでこの世のしがらみが無くなったからな。自由になった代わりに、暇でしょうがないんだよ。代わり映えしないこの風景を見ているだけなんだからよ。ときたま迷い込む奴もいるみてぇだから見張っている必要もあるから目を離せねぇしよ。で、この女か?確かに来ていたぜ?ここに来てハラハラ泣いていたから気になっていたんだ。そんで花なんか供えて行ってよ……。俺の声なんかも聞こえて無かった感じだぜ?」

 

見れば仏花がオーソンと隣の建物の横に供えられておった。いつの間に小道が無くなっておったのだ?城廻先輩はここに来ておったのか。

 

形兆「あ、あと気になると言えばよ、広瀬康一一家も犬の散歩でここを通りすぎたんだけどよ、その犬が妙に反応していたのも気になるんだぜ?」

 

康一殿や康穂殿の犬が?

 

形兆「あの犬は広瀬康一の姉が飼っている犬みたいなんだが、毎日ここを通ってはしばらくここで休んでマーキングしていくな」

 

露伴「犬…………か。まさかな……」

 

少し露伴先生は考え込み、そして自分を見る。

 

露伴「めぐりくんや義輝君、八幡君達の例もある……あり得ないと断じるには前例がありすぎている……確かめてみる必要があるか」

 

自分や八幡達と何か関わりがあること?見当が付かぬのだが……。

 

露伴「情報の提供に感謝する。虹村形兆。行くぞ、義輝君。お昼は遅くなるが、少し付き合って欲しい」

 

そして露伴先生は自分を連れ回し、様々な場所へと向かった。

歯医者(元はエステだったらしい。葉山殿達とこの近辺で会った)、金物屋(以前は靴屋だったらしい。近くの牛タン屋で珍しく顔を青くしている酔っておる陽乃殿と、ジョジョの義手を共同開発した川尻早人殿と会った。中では出来上がっておるエルメェス殿もおったが、我々は見なかったことにした)、ぶどうヶ丘高校中等部、かめゆう、ぶどうヶ丘銀行本店、露伴先生の生家、矢安宮と書かれた家、吉良の社、早人殿の御自宅、そして目的地であったパン屋のサンジェルメン……。

そのいずれにもシンデレラ・ハーヴェストが佇んでいた。

 

材木座「露伴先生……どう言うことですか?露伴先生はまるでわかっておるようにシンデレラ・ハーヴェストがいる場所に立ち寄っているように思えるのですが」

 

露伴「わかっている場所だから確かめていたんだ。めぐりくんが無意識に気にしている場所を……ね。僕達が回っていた場所は共通点がある。杉本鈴美、矢安宮重清、辻彩、吉良吉影、そして僕が深く関連した場所を回っていたのさ……殺された場所であったり、その人物が深く関わった場所に………もしかしたら他にもあるかも知れないな」

 

露伴先生はシンデレラ・ハーヴェストの頭をヘブンズ・ドアーで撫でてから、携帯を取り出す。

 

露伴「康一君か?君にお願いがあるのだが……」

 

しばらく話した後に、露伴先生はサンジェルメンでサンドイッチ等をいくつか買い、そして歩きだす。

あの………そろそろ空腹が限界なのであるが。

 

露伴「お昼は彼女を迎えに行ってからだ。それまでは我慢してくれ」

 

仕方がござらぬ。

自分は懐から携帯食料を取り出し……開けようとしたところだが……。

 

露伴「済まないがそれを渡して欲しい。もしかしたら必要になるかも知れない」

 

ああっ!我のソイジョイがぁ!取り上げられてしまった!何をする!露伴先生!

 

←To be continued




はい。今回はここまでです。

何故最後に露伴は材木座のソイジョイを奪ったのでしょうか?
それにはとある理由があるのです。

ここで城廻めぐりの原作にはない追加設定を。
本作のめぐりはとある食べ物が嫌いです。
普段はそれを表に出していない為、露伴や材木座は気が付いていないのですが……。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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