やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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2002比企谷小町誕生

side比企谷八幡

 

徐倫「父さんが時を止める練習がハッチに影響を与えていたんだ……」

 

時を止める能力が他に無いのなら、そうなのだろう。

今では完全にディオが融合しているから、そんな事は無いだろうが、当時はディオの残留意思は俺の体を乗っ取ろうとしていた。

その意識が強まる時が、止まった世界を認識する事だった。

承太郎のスター・プラチナとザ・ワールドは同じタイプのスタンドである。当時認識していなかったザ・ワールドだが、能力が消えていた訳ではなかった。

時を止める能力が発動すれば、ザ・ワールドの影響で当時の『僕』も止まった世界を認識することが出来た。その間はジョナサンの残留思念は時間停止と共に止まる。そうなると『僕』の中に残っている意思はディオだけになる。

『僕』の体からはザ・ワールドが出て、ディオの邪悪な意思だけが表に出ていた。

顔付きが悪くなり、悪人のような顔になっていたのはその為だ。

え?今ではディオの意思の方が強い?目付きの悪さがそれを物語っている?ほっとけ。それが『俺』だ。

 

八幡「まぁあれだ。そうなったとき、『僕』を落ち着かせる事が出来たのはいろはだけだったんだよ。いろはの声、いろはの温もり、いろはの匂いだけが……俺の清涼剤だったんだ。もしいろはがいなければ……ジョースター家と出会うあの日の前に、とっくに『僕』は暴走して邪悪の化身に堕ちていたと思う。プッチと結託してオーバーヘブンを目指していたかもな」

 

とっくの昔に決まってたんだよ……。俺にはいろはだけしかいないなんて事に………。

 

徐倫「ホントに綱渡りに近いのね……今の状況って」

 

小町「う~~………あのさぁ、今は小町の話だったよね?何でお兄ちゃんとお姉ちゃんの話になってるの?」

 

面白く無いのか、小町が口を尖らせる。

まぁ、俺といろはのイチャイチャ話のようなものだし、面白くないのだろう。

それじゃあ、話の続きをするか。

 

 

side比企谷八幡(回想)

 

時折ざわざわに襲われながらも俺は一色家でのお泊まりは続く。

SPW財団の千葉支部……更にその末端部署に就職したお父さんは忙しく、夜も遅い。出産が近く、入院したお母さんの代わりに僕の面倒をお父さんが見るのは不可能だと判断した一色のおばさんは、僕を一色家で預かる事に決めた。

ついでに言えば、僕のざわざわによる不安を両親は感じ取っており、その不安を解消できるのがいろはちゃんだけだと言うこともある。

両親は親なのに『僕』の不安を取り除けない事に歯痒さを感じていたと今では明かしてくれている。

そして………

 

八幡「元気に生まれてくれるかなぁ……僕の妹……」

 

同じベッドで手を繋いで寝る僕といろはちゃん。

検査の結果で生まれてくる僕の兄弟が妹であることはハッキリしている。

 

いろは「大丈夫ですよ?ハチ君」

 

八幡「更に問題は………普通の妹かどうかだよね?小町が……僕達と同じじゃあ無いかってこと……」

 

古来より可愛い女の子の事を『○○小町』と言う。僕の妹はそういう○○小町と呼ばれるような女の子になって欲しいという願いを込められ、小町と名付けられる事が決まった。とても素敵な名前だと思う。

生まれたならばいろはちゃんと同じように可愛がると予言する!

 

いろは「ホント、そこですよねぇ……」

 

僕達は……いや、両家全員がそこが一番不安だった。

なんで僕達が普通じゃあ無いのか…この時には意味が全くわからなかった。

 

八幡「ところでいろはちゃん?」

 

いろは「はい?なんですか?」

 

八幡「どうして僕、縛られてるの?」

 

いろは「身の危険を感じるので」

 

うう………僕はいろはちゃんが大好きなのに……。

いろはちゃんだって満更じゃあないと思うのに……。

ぐすん………。

 

翌朝

 

八幡父「一色さん!産まれました!小町が産まれました!」

 

いろは父「おおっ!生まれたんですか!おめでとうございます!」

 

典子「良かったですよー!わたし達も自分の娘が産まれるような気分でヤキモキしてたんですよー!」

 

比企谷家と一色家は普通ではない僕達という子供達の為か、もう数年来の友人のような……いや、既に親戚以上に家族らしい関係が築き上げられていた。

もう僕といろはちゃんを結婚させようかとまで言う始末である。良いぞ!もっとその話を進めろ!

 

八幡父「ええ!八幡を預かって頂いたことも含めてありがとうございます!おおーい、はちまぁん!小町が生まれたぞぉ!」

 

おおっ!

生まれたんだ!僕の天使、小町がうまれたんだぁ!

 

八幡「目一杯、可愛がるぞぉ!」

 

いろは「可愛がりすぎてうざがられるタイプですね?きっと……」

 

八幡「そんな事はないよ!千葉の兄妹は仲良しって相場が決まってるんだ!」

 

いろは「それ、迷信ですから。変なアニメ見すぎですから。構いすぎると(嫌われて)死にますから」

 

いろはちゃんが何か言っているけど、かまわない!

 

八幡父「おーい!八幡、行くぞぉ!」

 

八幡「あいー」

 

お父さんが呼んでいる。小町の所へ行くらしい。

いまお兄ちゃんが行くからね!小町!

 

いろは「後で感想を聞かせて下さいね?お兄ちゃんになった感想を」

 

八幡「何を言ってるの?僕がお兄ちゃんならいろはちゃんはお姉ちゃんじゃん?」

 

そう言って僕はいろはちゃんに顔を近付け……。

( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

幽霊にビンタされた。

 

いろは「ちゅ、ちゅー禁止です!もう少し雰囲気を考えてくれれば良いのに……」

 

うーん。まだ最初の頃のあれが影響してるのかなぁ…。

まぁ良いや。とにかく今は産まれたばかりの妹の事だ。

 

 

side比企谷小町

 

ここはどこだろう?

体が思うように動けないし、呼吸も上手くいかない。

目が開けられないし、とにかく不便だ……。

それに私は誰?

最期は幸せだったけど、その半生はとてつもなく普通からかけ離れた人生を送ってきた気がする……。

とにかく状況の把握だ………。

 

??「お母さん!おめでとう!妹が産まれたんだね?」

 

???

なんて言っているの?英語やイタリア語じゃあないみたい。

私は普通じゃあない。鋭い機転で不利を有利にしてきたあの子だって最初は………。

あれ?あの子って誰?

そもそも私は誰の考え方で物を考えてるの?

わからない……わからないのがすごくどかしい……。

 

小町母「そうよ?八幡。この子があなたの新しい妹、小町よ?」

 

小町父「よく頑張った!すごく可愛い女の子だ!初めまして………小町。俺がお前のパパだぞ……」

 

言葉はわからなくても、お父さんとお母さんが私の誕生を喜んでくれているのがわかる。

それに、小さな男の子もいるようだ。

 

八幡「小町!初めまして!君のお兄ちゃんの八幡だぞ!よろしくね!小町!」

 

KOMACHI?

どうやらそれが私の名前のようだ。

コマチ……コマチ……ね。

とにかく、まずは言葉を覚える必要があるね。

情報を入手するにもまずは言葉がわからないと……。

でも、この誰だかよく分からない男の子……それっぽい人がペチペチと小町を触る……。

不快だ………とても。

 

小町「ろんお らっい いー!(Don't touch me)」

 

歯も生えてないし、舌が上手く回らない!でも、男の子は私に触るのを止めた。通じたのかな?

 

八幡父「どうした?八幡」

 

八幡「………もしかして……」

 

もしかしたらこの子は英語がわかるのか?

 

八幡『(英語)小町、僕の言っていることがわかる?』

 

この発音と文法は………イギリス英語だ。

良かった。イギリス英語ならわかる。

 

小町『うー。わかる』

 

八幡『マジかよ……僕はハチマン・ヒキガヤ。君のお兄ちゃんだ』

 

小町『あい?』

 

ええい!口が上手く回らない!それに、イギリス英語はあまり覚えてない。

 

八幡『そう。兄。君はコマチ・ヒキガヤ。日本人として産まれたんだ』

 

日本?日本って言えば確か戦争で……

 

父「八幡。どうしたんだ?急に英語で……しかもお父さんが知っている英語とは少し発音とかおかしいぞ?というか、少し変だけど、英語が喋れたんだな。いつ覚えたんだ?」

 

 

side比企谷八幡

 

マジかー。小町も僕達と同じだ。普通の子供じゃあ無かったんだー。

僕も小町と同じだった。産まれた時から英語、中国語、アラビア語とかは何故か知っていた。

逆に日本語がわからなくて言葉を理解できなくてもどかしかった。

 

八幡「うん。僕は何故か英語が勉強とかしなくても理解出来るんだ。日本やアメリカの英語は少しわからないけど……イギリス英語だけはよく知ってる。日本語は難しいよね?ひらがなが最近、やっと読めるようになったくらいだし。でね?お父さんもお母さんも聞いて欲しい」

 

両親「???」

 

八幡「小町は……僕やいろはちゃんと同じかも……。英語が理解できてるんだ……」

 

両親「!?!?!?」

 

すごく………そして悲しそうに驚くお父さん達。

 

父「まさか………」『小町ぃ。お父さんだぞー。よろしくな~』

 

お父さんもSPW財団の職員だけあって最低限の会話程度なら使える。

 

小町「あいああー?」

 

間違いない。今、この子は『my father』と言った。

産まれたばかりだから思うように言葉を発せられないだろうが……。

日本人の発音方法じゃあない。流暢な発音だ……。

 

八幡『な?英語に反応し、英語で答えたろ?』

 

父「英語で言うな。日常的には使えん。それにしてもそれが本当なら大変な事だぞ……何で俺の子供はそんな子ばかりが………」

 

お父さんとお母さんが辛そうに泣く。

 

父「八幡……」

 

八幡「うん?」

 

父「小町を………お前の妹を守ってやってくれ……お前と同じなら………出来るな?」

 

母「小町………ぅぅ………」

 

そうだよな。兄妹二人してこんな子供だったら……。

 

八幡「うん!守るよ!だって小町は僕の妹だもん!精一杯可愛がるって決めたんだ!」

 

僕がそう言うと、お父さんとお母さんは涙を流しながら僕に抱き付いてきた。

怖いと思っていたお父さんも、改めて見てみると優しいお父さんなんだなぁ………。なんで僕はお父さんの事を怖いなんて思ってたんだろう……。

それにしても小町もかぁ……いろはちゃんに話してみよう。

 

side一色いろは

 

いろは『わかりますよ?少しだけならイタリア語もわかります』

 

ハチ君は帰ってくるなり、いきなり英語で『いろはちゃん。英語はわかる?』と話しかけてきました。それも馴染み深いイギリス英語の発音でです。

アメリカでしたら『イギリス訛り』と言われる発音ですね?

わたしはアメリカ英語が主流の日本で育っているはずなのに何故かイギリス英語の方が馴染みが深いのです。アメリカ英語もわかるんですけどね?

 

八幡『え?うそでしょ?なんで黙ってたの?』

 

いろは『だってハチ君は日本人ですし、普段は日本語で喋りますし、英語なんて使って無かったじゃあないですか。絵本とかも日本語版でしたから気が付かなかったんですよ』

 

でも、言われてみれば喋る言葉が日本語のわりには絵本とかは平仮名とかを勉強しながら読んでいるって感じでしたね?

 

いろは『っていうか、平仮名よりも漢字の方を知っていませんか?ハチ君』

 

八幡『僕が知っている漢字とは少し違うけどね?』

 

ていうか、英語の方が互いにスラスラと言葉が出てくるのはなんででしょうね?

あと、何でハチ君はここにいるのか疑問ですか?

まだ比企谷のおばさんが退院してないので、一色家でハチ君を預かっているからです。

 

いろは『それで………どうして急に英語を?』

 

八幡『実は………』

 

ハチ君は事情を話してきました。

なるほど……小町ちゃんもわたし達と同じでしたか。

わたしも産まれた時から言葉の壁がまずありましたから。そうなると大変ですね。

小町ちゃんもわたし達と同じとなると……。これは他人事ではないです。

 

いろは『解りました。男の子のハチ君よりも女の子のわたしの方が色々と力になれるでしょう。任せて下さい』

 

どういう訳か、子育てのアレコレが脳裏に浮かびます。

なんだか3人の子育てを既に経験したことがあるような…。

 

八幡『ありがとう!いろはちゃん!お礼に……』

 

いろは『キッスは禁止です!』

 

八幡『あ?ヤッパリ?』

 

 

side比企谷小町(現在)

 

徐倫『ちょっと話の腰を折るようで悪いんだけど』

 

思い出話の流れで会話が英語になったからか、徐倫お姉ちゃんの言葉使いまで英語になっちゃった。

というかこのメンバーだと全員が全員、英語の方が話しやすいんだよね?

 

徐倫『前から疑問だったのよ。あんた達ってジョースター家と出会う前から何でそんなにバイリンガルなの?』

 

ああ、その事?今更だよねー?

 

小町『エリザベス・ジョースター。生まれはイギリス、波紋の道に入ってからはイタリア在住。以降、柱の一族との戦いが終わるまでイタリア。再婚後はアメリカ在住で、残りの半生を過ごしたからイギリス英語よりもアメリカ英語の方が馴染み深いんだよね。で、比企谷小町として日本に住んでいたから3カ国語が堪能』

 

いろは『エリナ・ジョースター。イギリス生まれのイギリス育ち。なのでアメリカ英語よりもイギリス英語の方が昔は馴染みがありました。晩年はニューヨークに移住。リサリサやスージーとの関係もあって、少しばかりイタリア語を嗜み程度に教わりました。本格的にイタリア語を習ったのはマチちゃんからでしたけど』

 

八幡『ジョナサン・ジョースター。イギリス生まれのイギリス育ち。ディオ・ブランドー。同じくイギリス生まれのイギリス育ち。東洋の毒薬とかの研究の為、中国語を勉強。DIOとして復活後はエジプト在住。生活に必須だった関係でアラビア語を習得。部下の管理もあってスワヒリ語とかも使えた方が良いかと思って暇に任せて勉強。イタリア語は小町といろはから習った。なまじ中国語を知っていた関係で日本の漢字の方がむしろ苦手』

 

お兄ちゃんが語学堪能なのはDIOの影響なんだよね。変に中国語を知ってから日本の漢字を覚えるのが逆に苦労していたし。特に『比企谷(ヒキガヤ)』の『ガ』の読み方に違和感を覚えたとか言ったときのお父さんのショックを受けた顔は無かったよね。

 

徐倫『でもあんたたち、むしろ今はアメリカ英語を普通に使ってるよな?イギリス訛りがほとんどないじゃん』

 

八幡『必要ないからな。イギリス訛り』

 

うん。必要ないね。

 

八幡『だって今はイギリスに用は無いし?今となっては同じイギリス生まれのじじいだってアメリカ生活の方が長いし?』

 

いろは『ホリィに至ってはアメリカ生まれのアメリカ育ちですし?承太郎だってアメリカ在住じゃあないですか?』

 

小町『ジョースター全体がもう既にアメリカ英語が基準だし?小町達の留学だってアメリカだったじゃんか』

 

元々アメリカ英語が慣れちゃってた小町はともかくとしてさ、アメリカ留学ではお兄ちゃんもお姉ちゃんもイギリス訛りだと苦労してたからアメリカ英語に直すのは必須だったんだよね。

 

八幡『逆にお前が日本語を知っていたのが驚きだったよ。エルメェスさんみたいに露伴先生パワー?』

 

徐倫『…一応は父さんが日本人だったからね。貞夫おじいちゃんも純粋な日本人だから、覚えたんだよ』

 

あ、貞夫の事を忘れてたよ。

リサリサの時に貞夫から日本語を教えてもらってたら子供の時に言葉で苦労することはなかったかも?

…………無理だね。特に必要と感じなかったから日本語を習わなかったんだし。

 

小町『ところでお兄ちゃん。最近ではこっそりアラビア語とか中国語とかでの悪口が無くなったよね?何で?』

 

八幡『…………いるだろうが。俺以上に世界の語学に堪能な奴が………。そいつにチクられるんだよ………』

 

あ、そうだったね。忘れてたよ。

 

←To be continued




意外なところで八幡達の語学のルーツを書くことになってしまいました。
特に八幡が中国語を習得していた設定には疑問を持った方もいたのではないかと思います。
DIOが毒薬を勉強したり、ワンチェインとの繋がりを考えると、中国語を勉強している可能性があったのではないかと思っています。
さて、最後に八幡が言っていた、八幡以上に語学が堪能なのは誰でしょうか?
正解は二人います。

1三浦優美子
2ジョルノ・ジョバァーナ
3戸塚彩加
4空条エンポリオ
5川崎沙希
6川崎大志
7空条承太郎

それでは次回もよろしくお願い致します。

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