やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

68 / 731
前回までの八幡の日常

作文のことで呼び出された八幡と静。

ただの課題に対する呼び出しにしてはプライベートの事に踏み込んでくる平塚。
イライラついでに適度に(八幡的には)脅しながら思惑を聞くと、八幡達によく似た性格の人間が自分の部活にいるので、入部して助けてやってほしいとの内容だった。
当初は会社があるから断るつもりだった八幡達だったが、平塚から出た名前で考えを変える。
「雪ノ下雪乃」
奇しくも人類の天敵とつながる一族に連なる者のなまえであり、その切り口になりうるかも知れない可能性に、八幡達は平塚の要請に応じることにした。


雪ノ下雪乃

side比企谷八幡

 

八幡「あ、先生、ちょっと電話良いですか?会社になんですが」

 

平塚「それは後でも良いだろう?」

 

八幡「そちらから頼んできている割には偉そうですね…向こう三年の給料…いや、時間的に向こう6年の…」

 

平塚「すみません。どうぞ電話をお掛けください」

 

八幡「プライド高いのは結構ですが、相手を選んで下さいね?」

 

これはこれで立派な恐喝だが、元々は向こうから仕掛けて来たことだ。

相手の事をよく調べもせずに、学校のイメージだけで仕掛けてくるからこういう事になる。

じっくり反省してもらおう。

 

ぴっ!プルルル…

俺は仗助の特務用の携帯に電話をかける。

普段だったら会社の電話に外線で入れるか、秘書の携帯に電話を入れるが、スタンド使い関連だったり、特務部署が動くような案件は特務用のホットラインを使うことが許されている。

その場合は俺も携帯を変える。今使っているのは特務用の携帯。

 

仗助『どうした八幡!』

 

こちらで電話をかけた場合、最優先緊急事項に該当するので、仗助も慌てている。

 

八幡「いや、大したことじゃあない。ただ、特務に該当する案件が発生したのは確かだから、こっちでかけた」

 

仗助『内容は?』

 

八幡「ケースYYだ。接触する可能性が出てきた」

 

仗助『やっとか!ならば全ての業務に優先して学生組は事にあたれ!』

 

八幡「仕事の方は?」

 

仗助『ケースYYに備えて表向きの役職で対処してもらう。各人、交代で週一ペースで出勤してもらうが』

 

八幡「了解。あとで内容については連絡するが、徐倫と小町の常備応援を要請する」

 

仗助『あと、必要な要請は?』

 

八幡「無理のない範囲で総武高校への関係者の出入り許可の根回しと、うちらの校則に関する自由化だな。あと特務隊のサポートを頼むかもしれん」

 

仗助『任せとけ。こういう時の為にお前らのPTA会長を買って出てるんだ。全てうまくやっておくぜ』

 

流石は仗助。もう十年も大企業の支部長をやってない。

 

八幡「頼んだ、兄貴」

 

仗助「おうよ、任せとけ!」

 

ピッ!

 

平塚「誰に電話をかけていたんだ?仗助と聞こえたが」

 

八幡「東方仗助PTA会長ですよ?俺の直近の上司にあたりますから許可をもらっただけですが?」

 

平塚「その割には随分軽い応対だったな!」

 

八幡「まぁ、上司と部下と言うよりは、兄貴と弟、年の離れた親友同士と言った方が正しい関係ですかね。とりあえず、PTA関連からの圧力で部活に関することは俺達に一任されることになりましたのでご了承下さい」

 

平塚「いや、PTAにそんな権力は…」

 

静「うちの社長に限っていえば例外です。既に文部科学省と県や市の教育委員会への根回しと圧力は済んでますので。気に入らない教師を社会的に消すのは朝飯前ですよ?平塚先生?例えば解雇した上で数年分の年収がなくなる請求をしたりとか」

 

平塚「二度と逆らいませんのでマジで勘弁してください」

 

この発言に、平塚先生はおろか、他の先生もガタガタ震え始めた。

おっとりした雰囲気の鶴見先生ですら顔を青くしている。

やだぁ♪よっぽどの事がない限り、そんな事をしませんから安心してくださいよ♪

中学時代、ジョジョにセクハラしたバカ体育教師くらいですって♪

イタリアンなマフィアに連れてかれ、二度と帰ってこなかった人は。

ちなみに当時の校長は脂汗を流しながら、その教師が退職したと伝えたが、実際は………

 

ちょっといじめすぎたかな?まぁ、このくらいの事はしておいた方がちょうど良いのかも知れない。

この教師は少し横暴なところがあると聞いている。

実際、今日接していて十分理解できたが。

 

八幡「とりあえず、下手にかしこまられてもあれなんで、当初の設定通りで俺達を連れてって下さい」

 

平塚「わかった。ついてきたまえ」

 

平塚先生の先導で行こうとしたのだが、ふとあるものが目についた。

こんもりと盛られた灰皿だ。

 

平塚「おい、早くしろ」

 

八幡「調子に乗んなテメェ。あと、次に指定場所以外での喫煙をした形跡を発見したら、とりあえず一回ごとに一月分の給料が無くなると思え。仗助に頼らんでも俺達三人、そのくらいの地位と権力はあると思えよ。受動喫煙の被害をナメんな」

 

ギロッと腐った俺の目に睨まれ、平塚先生は慌てて前を先導した。

 

キングクリムゾン!

 

この千葉市立総武高校の校舎は少し歪な形をしている。

上空から見下ろせば、漢字の口、カタカナのロに似ている。

その下にちょっぴりと視聴覚棟の部分を付け足してあげれば我が校の俯瞰図が完成する。

道路側に教室棟、それと向かい合うように特別棟がある。それぞれは二階の渡り廊下で結ばれており、これが四角形を形成する。

校舎で四方を囲まれた空間が似非リア充どもの聖地、中庭だ。

彼らはそこで昼食をとり、俺達が波紋の修行をテニスコート脇でやっている最中には腹ごなしにバドミントンをする。

放課後は俺達が仕事でヒーヒー言っているときに、暮れなずむ校舎をバックに薄っぺらな愛を語らい、そろそろ仕事が終わりを見せようかというときには潮風を浴びて星を見る。

ふざけんな。なんだこの差は!

傍から見ていると学芸会のお遊戯を頑張って演じているようなうすら寒さしか感じない。

俺の役はエキストラのサラリーマンってか?

うん、笑えない。

平塚先生が床をカツカツ言わせながら向かうのは特別棟のようだ。

ところで奉仕活動って何をやらせようとしたんだ?

ボランティア部か?

 

まぁ、奉仕なんて言葉は日常的に出てきて良いものではない。より限定的な状況下でのみ許されることだとおもう。

例えばメイドのコスプレをしたいろはと小町がご主人様に奉仕…とか」

 

徐倫「ハッチ…そういう趣味があったのね…」

 

静「これだから男はバカよね…」

 

徐倫とジョジョのダブル女ジョジョに呆れられた。

あれ?またやっちゃった?

いろはは目をキラメかせてサムズアップしてきた。

あ、オーケーなのね!ラッキー。

 

八幡「なんかデスクワークとか日常過ぎてイヤなので、俺、教室に入ると死んでしまう病が」

 

平塚「どんな長っぱなの狙撃手だ。麦わら海賊団か」

 

あんた少年マンガ読んでるのかよ。ん?麦わら海賊団?何かそれに似た能力が身近にあったような…気のせいか?

 

八幡「俺はあの雑誌はピンクダークの少年一筋なので」

 

平塚「む?珍しいな、君くらいの歳でピンクダークの少年が好きだというのは。あんなのを読んでいるからひねくれた性格になるんだ」

 

ムカッ!

減点1!

ピンクダークの少年をディスる=露伴先生をバカにすると言うことだ!

 

平塚「着いたぞ」

 

何の変哲もない教室。

プレートには何も書かれていない。

俺がある疑念を抱いていると、先生はガラリと戸を開けた。

おい!ノックはどうした!

ちなみにいろはは携帯のカメラで写真をとりまくっており、ジョジョは電話をかけている。多分、仗助だろう。

あ、これは感じている疑念は同じだな。

まぁ、必要な物はいろは達が集めるだろう。

おれは中の様子を見る。

その教室の端っこには机と椅子が無造作に積み上げられている。倉庫として使われているのだろうか。

他の教室と違うのはそこだけで、何の特殊な内装はない。いたって普通の教室。

だけどそこが異質に感じられたのは1人の少女がそこにいたからだろう。

少女は斜陽の中で本を読んでいた。DIOなら灰になっているな。

普通の人間ならば見惚れるくらいに絵になっているのだろうが、残念ながら姉の陽乃さんを知っているので何とも思わない。

というか、敵の可能性を考えれば警戒心くらいしか感じない。

 

雪乃「平塚先生。入るときにはノックを、とお願いしていたはずですが」

 

なるほど、確かに陽乃さんに似ていて端正な顔立ちに流れるような黒髪で、他の有象無象とは違って見える。

おれもいろはやジョジョ、陽乃さんに先に出会ってなければそう思っていただろう。

美人…というのは間違いないが、肝心の中身はどうだろうか?

俺は見た目が良いだけの奴には何の興味も示さない。

例えば葉山のグループの一番騒がしい女とか。

 

平塚「ノックをしても君は返事をした試しがないじゃあないか」

雪乃「返事をする間もなく、先生が入ってくるんですよ」

 

平塚先生の言葉に、彼女は不満げな視線を送る。

ちなみに、いろはは写真をまだ撮っており、ジョジョはボイスレコーダーを起動していた。

着々と証拠を集めてるなぁ。

 

雪乃「それで、そこのぬぼ~っとした人を筆頭に、そこのゴテゴテ制服に装飾品を付けた三人は?」

 

彼女は冷めた瞳が俺達を捉えた。

それ以上に俺達の白けた視線を俺達は送る。

お前、情報には聞いていたが、本当に俺達の事を知らないんだな?

俺達はジョースターなのに。

当然ながら、俺達はこの女を知っている。

2年J組、雪ノ下雪乃。

俺達はこいつの監視のためにこの総武にいるようなものだ。

もちろん、接触したことがないのは今の会話でわかるだろう。

俺達もこの雪ノ下も学校で人と会話すること自体が稀なのだから。

総武高校には普通科9クラスの他に、国際教養科というのが1クラスある。このクラスは普通科よりも2~3、偏差値が高く、帰国子女や留学志望の連中が多い。

その派手、というか自然と注目が集まるクラスの中で一際異彩を放っているのが雪ノ下雪乃だ。

彼女は定期テストと実力テストの両方で常に1位に鎮座する学力優秀者。

もう1つ加えるなら、ジョジョ並には優れた容姿で注目を浴びている。

まぁ、手を抜きまくってあまり目立たないようにしている俺達と、誰もが知っている有名人。

普通なら彼女は俺達の事を知らなくても(ジョジョといろはがカワイイので手を抜きまくっていても男子だけからは注目されるのだが)当然なのだが、一族として命を狙った対象、しかも実質的に親の会社を乗っ取ったライバル会社の非公式ながらも大幹部三人を知らないってあり得なさすぎじゃあないか?

ちなみに、俺達は注目されるのが嫌で普通科を選んだ。

理由は目立つのが嫌いなのと、世間知らずということから彼女は普通科だと思っていたからだ。

直前までアメリカ留学をしていたのもあるのでデータが不適切だったのもあるが。

 

平塚「空条先生は知っているな?他の彼らは比企谷八幡、静・ジョースター、一色いろは。入部希望者だ」

 

うん、そういう流れだし、仗助もそうしろと命令してきた。

 

八幡「2年F組比企谷八幡、入部希望者だった(・・・)

 

静「同じく静・ジョースター。同じく入部希望者でした(・・・)

 

いろは「1年C組一色いろは。入部希望者でしたが、それも無理そうです(・・・・・・・・・)

 

徐倫「空条徐倫よ。今日から顧問の一人になる予定だったわ(・・・・)

 

そう、みんな過去形で答える。

 

平塚「何故だ!何故過去形で答える!」

 

徐倫「ちょっと生徒会と教頭に確認とった後に仗助兄さんに相談するわ」

 

そう言って徐倫は去っていった。

 

平塚「どういう事だ?」

 

八幡「減給くらいで済めばいいな?非公認クラブの顧問の先生?」

 

平塚「!?!?!?」

 

雪乃「あら、何か不都合でもあるのかしら?」

 

こいつは優秀(笑)か?

 

八幡「お前は…いや、何でもない。取り敢えず、続けろ、平塚先生。空条先生が戻ってきたときはこの部が無くなっているかもしれないが」

 

平塚「あ、ああ…」

 

雪乃「平塚先生、彼らはどういう理由でこの部に?」

 

平塚「彼らは見ての通り、根性が腐っている。比企谷は見た目通りとして、ジョースター、一色も中々のひねくれ具合だ。人とのつきあい方を学ばせれば少しはまともになるだろうと思ってここに連れてきたわけだが」

 

本当は連れて来させただがな。

 

雪乃「それなら先生が殴るなり蹴るなりして躾れば良いと思うのですけど」

 

こわい女ですね。

 

平塚「それならやろうとして危うく腕を折られかけた…そして六年間タダ働きになるか、文字通り消されるか、教師をクビになって二度と再就職出来なくなるか、素直に謝るかの選択を突き付けられて逆に躾られた…私には手に負えない連中だ」

 

平塚先生は俺以上に目を腐らせて言った。

 

雪乃「お断りします。そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると、身の危険を感じます」

 

雪ノ下は別に乱れていない襟元を掻き合わせるようにしてこっちを睨み付ける。

 

八幡「あ゛?誰がそんな成長期が残念すぎる結果に終わった奴に欲情するか。大体、婚約者の目の前でそんな真似をしてみろ。ラブ・デラックスによって酷い目に遭うのはこっちだっつぅの!」

 

いろは「ハチ君の婚約者でぇす!自惚れないで下さいね?雪ノ下先輩。ハチ君にちょっかいだすなら消しますからね?物理的にも社会的にも。ただでさえ、最近は姉の下のちょっかいが勢いを増してきたのに」

 

そうなんだよな。最近は陽乃さんの猛攻が激しいんだよなぁ。

おまけに康穂の猛攻も強化されたし、由花子さんの誤解も加速されて、再び拉致されかけた事もある。

 

雪乃「どんな卑怯な手を使ったのかわからないけれど、婚約者がいるのなら救い出さなければね。それに先生のたのみを無下にはできませんし、承りました」

 

平塚先生は満足気に微笑む。と、そこで…

 

鶴見先生『平塚先生、平塚先生。至急校長室までお越し下さい。繰り返します平塚先生、平塚先生。至急校長室までお越し下さい』

 

平塚先生は汗をダラダラかいている。

 

徐倫「承る前にこのクラブは現時点を以て廃部よ。平塚先生、早く行って下さい。減給以上は覚悟してくださいね」

 

平塚「………はい」

 

平塚先生はとぼとぼと歩き始めた。

 

雪乃「廃部ですって?どういう卑怯な手を使ったのかしら?場合によっては許さないわ。覚悟は良いわね」

 

雪ノ下は氷の塊のようなスタンドを顕現した。

まるでエックスメンのアイスマンみたいなスタンドだなぁ。

わかりやすい能力っぽいが。

 

八幡「お前、やっぱりスタンド使いだったか…」

 

いろは「それを私達に向けたということは…」

 

静「野放しには出来ないわね」

 

徐倫「可哀想だけど、ちょっとお話を聞かせて貰うわ。あたし達の別の顔、特務部隊スピードワゴン、通称USS(アーシス)が」

 

特務部隊スピードワゴン(unit of special speed-wagon)、通称USS(アーシス)

5年前にヴァレンタイン大統領の号令で発動されたプッチの計画を阻止する特殊任務部隊、水晶十字軍=クリスタル・クルセイダーズを母体として、当時のメンバーとスピードワゴン財団の特殊任務部隊を中心に再編された部隊だ。

俺達スタンド使いの実働部隊とそれを支えるジョセフ時代から続く戦闘支援スタッフの部隊。

まぁ、ぶっちゃけ今までと変わらないが、あの時のメンバーは正規、非正規に関わらず、所属している。

 

現在は雪ノ下建設を実質無力化した以上、雪ノ下とその親玉である汐華への対策として戦力が集められている。

その為のアーシス先行隊が俺達日本支部総武部隊だ。

 

雪乃「アーシス?聞いたことがないわ。それよりも、あなた達はこのエンジェル・ダストが見えるのね。意外だわ。今まで親族以外に誰にも見えなかったと言うのに」

 

ほう、貴重な情報だ。

つまり、コイツらの親族はほぼスタンド使いと言うことか…。

 

徐倫「ストーン・フリー!」

 

いろは「ナイチンゲール・エメラルド!」

 

静「アクトン・クリスタル!」

 

三人の女性陣がスタンドを出す。

そして俺も…

 

八幡「ザ・ジェムストーン!」

 

お馴染みザ・ジェムストーン。

さて、久々の実戦だ。

 

八幡「覚悟は出来てるか?雪ノ下」

 

雪乃「貴方の方こそ、覚悟は出来ているのかしら?卑怯谷君」

 

俺本体も波紋の呼吸を整えて構える。

 

八幡「俺は出来ている」

 

雪乃「そう…ならば、行くわ」

 

←To be continued




第3章最初の戦いが始まりました。

いきなり四人がかりですが。

雪ノ下雪乃のスタンド、エンジェル・ダスト。

名前の由来はアイスマンの見た目から、icemanの曲「エンジェルダスト」から取りました。
数ある名前の内、この名前を付けた理由はもう1つあるのですが。

ところで…特務部隊USS、通称アーシスなのですが、何かしっくり来ません。
本当はユーズと考えたんですが、何故か危険な気がしたので止めました。
何かいい名前が無いでしょうか?
部隊名を募集します。誰か考えて下さると嬉しいです。


原作との相違点

平塚先生の横暴を封殺する。

本来は連行される八幡だが、逆に脅して案内させた。

原作八幡は雪乃に見とれたが、本作八幡は特に見とれない。理由は幼馴染み達と、トリッシュや徐倫の存在などに加え、陽乃と先に出会っているので特に感じる事は無かった為。プラスして事故の一件。

奉仕部廃部!いや、生徒一人にプレート無しの部室って明らかに非公認の部活でしょ。

それでは次回もお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。