やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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前回の2年F組の日常

八幡のクラスに転生者はいた。

かつて承太郎と共にエジプトまで旅をし、DIOの前に倒れたモハメド・アヴドゥルと花京院典明。
ふたりはそれぞれ三浦優美子と海老名姫菜として転生していた。
彼女たちもまた、八幡がDIOの転生であることに気付いている。
そう遠くない内に両者はぶつかり合うことがあるのだろうか?

新たな因縁が発覚しつつも、日常は過ぎていく。


材木座義輝の小説は世界一ぃ!

side比企谷八幡

 

昨日は俺といろはの休みの日だった。いろはが16歳となり、バースデーデートをするために有給を取って休みにしてもらった。

こんな時でもないと溜まった有給を消費することも出来ないしね。

いろはと二人きりで千葉の町を散策し、夕日をバックに美浜大橋でイチャイチャし、有意義なデートを楽しんだ。

心身ともにリフレッシュした翌日。

 

ジョジョと一緒に部室に向かうと、珍しいことに雪ノ下と由比ヶ浜が部室の前に立ち尽くしていた。つぅか、由比ヶ浜はなんか居着いている。

何してんのコイツら、と思って見ていると、どうやら教室の中を窓から覗いているらしい。

 

八幡「何してんの?」

 

雪乃&結衣「ひゃう!」

 

変な声を出してびくびくぅっと二人の体が跳ねる。

 

雪乃「比企谷くん、ビックリした」

 

うちのカマクラだってこんなにびくつかんわ。

 

八幡「ビックリしたのはこっちだ」

 

雪乃「いきなり声をかけるのは止めてもらえるかしら?」

 

八幡「知らねぇよ。で、何してんだ?」

 

俺が尋ねると、由比ヶ浜は扉を少しばかり開いて中をこっそり覗きながら答えた。

 

結衣「中に不審人物がいんの」

 

静「はたから見たら不審人物はあんたらよ」

 

雪乃「そう言うのはいいから、早く中に入って様子を見てきてくれるかしら?」

 

そうか、今日は仗助が出社の日か。

 

八幡「別にそういうのも副部長の立場としては役目だから良いけど、その程度の覚悟でよく世界を変えるとか言えるな?」

 

君、スタンド使いなんだから、並の不審人物程度なんかにびくついていてどうするんだよ。

由比ヶ浜みたいにポンコツのスタンドならともかく、お前のスタンドは普通の人型タイプのスタンドたろうが。

俺は呆れながら二人の前に立って慎重に扉を開け、中に入る。

相手がスタンド使いの可能性も在るからな。

そして俺達を待っていたのは一陣の風だった。

扉が開いた瞬間に、吹き抜ける潮風。この海辺に立つ学校特有の風向きで教室内に書類を撒き散らす。

それはちょうど手品で使われるシルクハットから幾羽もの鳩が飛び交う様子に似ていた。

その白い世界の中に一人、佇む男がいる。

ああ、この幻想的な光景を作り出したのはこの男か。

 

この幻想的(悪夢)な状況の元凶は…。

 

???「クククッ!まさかこんなところで出会うとは驚いたな。待ちわびたぞ、比企谷八幡」

 

八幡「言葉の矛盾は今はいい。それよりも、待ちわびる前にまず、書類を散らかした事について詫びろ!無駄無駄無駄無駄!」

 

静「余計な仕事を作るなっつーの!怒ラララララ!」

 

小町「こんにちわー!って、何この惨状!この人か!ゴミゴミゴミゴミ!」

 

いろは「まって、マチちゃん!一思いに気絶させるなんて温すぎるから!エメラルド・ヒーリング!はい、続きをどうぞ♪ついでに私も怒ってますから…無理無理無理無理!」

 

幼なじみ四人組によって気絶したくても気絶できない鬼のリンチを男はしばらく受け続けていた。

 

結衣「あの四人、怖いね」

 

雪乃「ギャングが身内らしいわ。実際、スタンド使い同士の戦いでは殺人も経験してるっていうわ。スタンド使わなくても生身で強いって…」

 

三十分後。

 

静「で、用は何?」

 

書類を一通りかき集め(整理はこれからだ。本当に余計な仕事を作りやがって)、各々の席に着いた俺達は、正座した男にジョジョは尋ねる。

 

???「クククッ!まさかこんな…」

 

八幡「そこからやり直すな。誰かさんのせいで余計な仕事が増えて忙しいんだ。…これは千葉支部の書類っぽいぞ、小町」

 

小町「ほいほーい。あ、これは本部の書類だね」

 

雪乃「比企谷くん、あちらはあなたの事を知っているようだけど」

 

雪ノ下と由比ヶ浜は教室の

 

ああ、確かに知り合いだ。

名前は材木座義輝。

大抵の奴には興味がない俺だが、こいつに関しては反骨精神が旺盛な点に関しては一目おいている。

普段の制服も改造してゴテゴテ付けており、たまに承太郎ルックとか仗助ルックをやる俺と同様、この男も制服の上に軍服を着ていた。

それも、大抵のマニアでも忌避するナチスドイツの軍服だ。

 

材木座「まさかこの相棒の顔を忘れるとはぁ!見下げ果てたぞぉ!八幡!」

 

結衣「相棒って言ってるけど」

 

ほう、俺にジト目を向けてくるか。

 

八幡「俺の相棒ってアイツだったっけ?相棒」

 

静「彼の想像の世界での話でしょ?相棒」

 

互いに婚約者は別々にいるが、親友の中の親友といえばジョジョだ。こいつを相棒と呼ばずして誰を相棒と呼ぶのだ?!勝手に人の相棒を名乗るんじゃあない。

 

八幡「で、さっき俺の事をクズもろとも死ねと言いたげな視線を向けたビッチがいるんだが、どう思う?相棒」

 

静「始末を指示する?このバッチを外して逆に向けて対象を指差せば、後はプロが手配されるはずだけど、どうする?相棒」

 

結衣「ごめんなさぁい!ユキノン、怖いよぉ!」

 

由比ヶ浜は顔を真っ青にし、泣きながら土下座してきた。

土下座も下手ですね。スタンド能力のせいですか?

 

八幡「相棒、許してやれ。経費がもったいないから」

 

静「そうね、相棒。二人ともそろそろ学習したら?あなたたちを始末するのもただじゃあ無いのよ?」

 

結衣「うう、殺されずに済んだのに、その理由が経費って…」

 

由比ヶ浜は机に突っ伏してしくしく泣き始めた。

何だ、せっかく見逃してやったのに。

 

材木座「何故だ相棒ではないかぁ!貴様も覚えていよう!あの地獄のような時間を共に駆け抜けた日々を!」

 

地獄のような時間?サンシャイン・ルビーに指を向けられ、波紋の修行をしている時?ジジイや承太郎に訓練を

させられるとき?毎日の社畜生活?ニューヨークからフロリダの旅?うーん、わからん。

 

いろは「本気で思い当たらないみたい…」

 

八幡「やっぱり思い当たらない。俺が思い付く地獄の時間って、大抵がコイツらが一緒に駆け抜けてくれているし。やっぱこの3人以外、相棒って言えるやつはいないわ。時たま一人、地獄をあたえる側に回るが」

 

材木座「貴様もあの悪しき風習、地獄以外の何物でもないと思うだろう!好きな奴と組めだと?お、恐ろしいッ我は恐ろしい!なにが恐ろしいかって八幡!やつらは心の傷口がわからないんだ、そして余った奴を見ると優越感に浸った目で見るんだぜぇ!」

 

八幡「たかだか体育でペアを組む程度でそこまでの地獄か?」

 

まぁ、ここまでくればどんなに鈍いやつだって気付くだろう。この男は大分アレだ。

 

八幡「で、何の用だ?材木座」

 

材木座「むっ、自分が魂に刻まれし名を口にしたか。いかにも、ワレが剣豪大佐、材木座義輝だ」

 

ポッチャリとした顔にキリリっとやたら男前な表情を浮かべてこちらを振り返る材木座。自分の作った剣豪大佐という設定に完全に入り込んでいた。

それを見るたびに思う。

本当の剣豪を紹介してやろうか?

 

八幡『剣豪大佐と名乗る中二病に本当の剣豪というのを見せてあげて下さい』

 

陽乃『良いわよ?八幡君が一晩、朝まで付き合ってくれたら。前払いで』

 

八幡『いろはに殺されるので遠慮します』

 

最近、何でもかんでもこういう方向にもって来ますね、あの魔王。

 

静「ねぇハッチ。この人は何?」

 

八幡「こいつは材木座義輝。体育の時間、俺とペアを組んでるやつだよ」

 

正直それ以上でもそれ以下でもない。俺と材木座の関係性はただそれだけだ。まぁ、あの退屈な時間を過ごす暇潰しの相手(モルモット)と言うのは間違いない。

好きな人とペア作るって言われてもねぇ。俺は別に困らない。

材木座はそのキャラの痛さ故にあの瞬間は辛いようだ。

俺と材木座は最初の体育の時間、余った者同士組まされて以来、ずっとペアだ。正直、この中二病男がいなくても、俺にはスタンドという生まれついてのペアがいるからむしろ邪魔だ。

雪ノ下は俺と材木座を見比べると、納得したように頷く。

 

雪乃「類は友を呼ぶというやつね」

 

最悪の結論を出されていた。

 

八幡「俺には最高の親友がここにいるから良い」

 

ジョジョとガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!っと仗助億泰さんがたまにやるハンドシグナルをやる。

 

材木座「自分に友達などおらぬ。マジで一人」

 

材木座が悲しげに自嘲した。素に戻って。

 

雪乃「何でも良いけど、そのお友達、あなたに用があるんじゃないの?」

 

材木座「フハハハ!失念しておった。八幡よ、奉仕部とはここで良いのか?」

 

キャラに戻った材木座が究極生物的な笑い声をあげながら俺を見る。

 

雪乃「ええ、ここは奉仕部よ」

 

俺の代わりに雪ノ下がしゃしゃってきた(# ゜Д゜)

すると材木座は一瞬雪ノ下を見てからすぐさま俺の方に視線を戻す。雪ノ下のしゃしゃりはともかく、なんで部長のジョジョではなく副部長の俺の方に目線を戻す?

 

材木座「そ、そうであったか。平塚教諭に助言頂いた通りなら八幡、貴様は自分の願いを叶える義務があるのだな!?百年の時を超えてなお主従の関係にあるとは…これもゲルマン神の導きか…」

 

雪乃「別に奉仕部はあなたの願いを叶えるわけではないわ。ただその手伝いをするだけよ」

 

材木座「…ふ、ふむ。八幡よ、では自分に手を貸せ。思えば自分と貴様の前世は対等な関係!かつてのように世界をまたに駆けて戦おうではないか!」

 

八幡「百年間のほとんどは大西洋の底だわ。主従関係はどこに行った。大体前世の俺に主はおらんわ。あとなんでこっちみんだっつーの」

 

お前のせいで目茶苦茶になった書類の綴り直しが大変なんだよ。

 

材木座「ゴラムゴラム!自分と貴様の間でそのような些末なことはどうでもよい。特別に赦す!」

 

俺が許さねぇよ。誤魔化そうとするんじゃあない!

 

材木座「すまない。どうやらこの時代は在りし日々に比べるに穢れているようだな。人の心の有り様が。あの清浄なるナチスが懐かしい。そうは思わぬか?八幡よ」

 

八幡「だからナチスの時代は大西洋の海底だって言っているだろ!お前を棺桶に入れて大西洋に沈めるぞ!」

 

材木座「クククッ!死など恐ろしくない!あの世で国盗りするだけよ!」

 

材木座が腕を高く掲げる。

 

結衣「うわぁ…」

 

由比ヶ浜がドン引きしていた。気持ちはわかる。

 

雪乃「比企谷くん、ちょっと…」

 

八幡「忙しいんだが?あのバカのおかげで」

 

こいつが俺に話しかけるのってロクな内容じゃあないから、ついつい冷ややかな対応になってしまう。

 

雪乃「なんなの?あの剣豪大佐って」

 

すごく近い場所に一応はキレイな顔があって良い匂いがするのに、嫌悪感しか浮かばない。

まぁ、答えるだけなら仕事の手は止まらないので普通に答える。

 

八幡「あれは中二病だ」

 

雪乃「ちゅーに病?」

 

聞き耳を立てていた由比ヶ浜も話に加わってきた。

ここに集まるな。いろはの目線が怖いぃぃ!

 

結衣「病気なの?」

 

静「本当に病気な訳じゃあないよ。スラングみたいなもんだと思って」

 

中二病とは要するに、中学二年生くらいの年代の連中によくある痛々しい一連の言動を指して言うものだ。

中でも材木座の場合、『厨二』とか『邪気眼』とか称される部類に入る。

スタンド使いのような能力に憧れを抱き、自分にもそうしたものがあるように振る舞う。

そうした能力を持つ以上、そこへ必然性を付与するために自身を伝説の戦士の生まれ変わりだとか神に選ばれた戦士だとか特務機関のエージェントだとか設定を作り上げるのだ。

なぜそんなことをするのか?

カッコいいからだ。

だけどなリアル伝説の生まれ変わりで、何かレクイエムに選ばれている感じで、リアル特務機関のエージェントもどきになっている俺から言わせれば…

俺の平穏な日常を返せ!カッコいいどころか面倒しか無いんだよ!

スリーアウトでチェンジしたい!中二病に憧れるなら代わってくれ!

人間関係だけを残して、後の設定をあげるから!

 

そんな内心は伝える理由はないので、概要だけをざっと伝える。

雪ノ下は自身が昔からスタンド使いだから、それで理解したらしい。

 

結衣「意味わかんない」

 

逆に由比ヶ浜はうえっと嫌な感じに口を開けて呟きを漏らす。まぁ、最近スタンドを自覚し、しかも明確なビジョンや能力じゃあない由比ヶ浜ではスタンドを例に出してもピンと来なかったかも知れないのは無理はない。

とはいえ、あなたもその道に片足を突っ込んでしまったのだから、少しは理解してあげて。

 

雪乃「ふぅん。つまり自分で作った設定に基づいてお芝居をしているような物なのね」

 

八幡「大体合っている。アイツの場合、ナチスの将校を下敷きにしているみたいだな。後は室町十三代目の足利義輝から剣豪を名乗っているみたいだ。名前が一緒だからベースにしやすかったんだろう。ナチスの方はわからんが」

 

雪乃「あなたを仲間とみなしているのは何で?」

 

八幡「八幡って名前だから、八幡大菩薩を引っ張って来ているんじゃあないか?清和源氏が武神として信奉していたんだ。鶴岡八幡宮とか知っているだろう?」

 

実際はイギリス貴族と邪悪の化身の生まれ変わりだけれどな。前者はともかく、後者は武神とは真逆、邪神と言った方が正しい。

 

八幡「アイツの場合、史実をベースにしている分、まだましだな」

 

それを聞くと、雪ノ下は材木座を一瞥すると、心底嫌そうな顔をして尋ねてきた。

 

雪乃「参考なまでに聞くけど、どんなもの?」

 

八幡「イギリスの貴族、ジョナサン・ジョースターと邪悪の化身、ディオ・ブランドー。二人の戦いはジョナサンの勝利に終わったかに見えたが、妻のエリナと新婚旅行中に首だけとなったディオに首から下を奪われ、ディオは百年間、大西洋の海の底で眠り、海賊に拾われ復活、エジプトを根城としてジョナサン達の子孫と戦い、敗北して死亡。ジョナサンとディオの魂は融合して転生し、かつて自分と敵対したジョナサンの子孫と協力して事件を解決していく。それがこの比企…ってお前の尋問誘導にやられる所だったわ」

 

何前世を語っているんだよ、俺。

 

雪乃「何一つ誘導してないのだけれど」

 

結衣「気持ち悪い…」

 

八幡「言葉に気を付けろ由比ヶ浜。うっかり仕事をボイコットするぞ」

 

実際に過去に起きたことで設定じゃあねぇよ!

 

雪乃「つまり比企谷君はあれと同類ってことね。剣豪大佐だのなんだの詳しいわけだわ」

 

八幡「何言ってるんだお前?自国の歴史くらいはある程度把握して当然だろ?」

 

雪ノ下は疑わしきは死ねという目で見てくる。

この野郎、自分自身の足下すら見えてない奴にこんな目で見られる筋合いはない。

大体、先程言ったように、中二病だとはいえ、俺は材木座のその周囲に流されず、己を貫く姿勢を買っている。

それに、自分には特別な力があって、いつか世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれるんじゃあないかと布団のなかで想像する…良いじゃあないか。

想像するだけで終わるなら、夢があって楽しいじゃあないか。

 

八幡「ああやって想像しているだけならほほえましいだろう?スタンド使いの戦いのような、命のやり取りを本当にやるわけじゃあないんだから、平和な物だ」

 

雪乃「興味ないわ」

 

残念ながら、遅かれ早かれ巻き込まれる事になるがな。

そう言って雪ノ下は材木座の前に立ち、由比ヶ浜は小さく「ユキノン逃げて」とか言ってるし。さすがにそれは失礼過ぎるだろ。

 

雪乃「大体わかったわ。あなたの依頼はその心の病気を治す事で良いのかしら?」

 

それならカウンセラーに行かせているよ。

一介の高校生が出来る範疇を越えているわ。

 

材木座「八幡よ!俺は貴様との契約の元、我の願いを叶えんが為にこの場に馳せ参じた」

 

一人称がぶれぶれだ。それに、こいつは雪ノ下に話しかけられると必ず俺を見る。

まぁ、気持ちはわからんでもない。雪ノ下の本性を知らなければ話しかけられる度にどぎまぎしてろくに顔を見れない男は多数いるだろう。

しかし、雪ノ下はそういう男の純情を介するような人並みの心を持っていない。

 

雪乃「話しているのは私なのだけれど。人が話しているときはその人の方を…」

 

ゴン!

俺は雪ノ下に拳骨を落とす。

 

八幡「元々材木座は俺と話していたんだ。勝手にしゃしゃり出てきたのはお前だろうが。平部員が何を代表者面をしていやがる。とっとと自分のパイプ椅子にもどってろ!用があるなら呼ぶから!」

 

雪乃&結衣「…………はい」

 

何か言いたげな目で睨んで来るが、俺が殺気を込めて睨み返すと大人しく自分の席に戻った。

 

静「やっと静かになったところで、本題に入りましょう。材木座君、あなたの依頼をお聞きしてよろしいでしょうか?」

 

ジョジョが書類をある程度まとめ終わっており、立ち上がって流麗な動作で材木座の前に立った。

完全な仕事モードだ。

 

静「申し遅れました。私は奉仕部の部長、静・ジョースター。先程はうちの平部員が失礼しました。人の趣味や主義を差別するなんて我がジョースター家の運営する部員としては相応しくない行為。心よりお詫び申し上げます。どうぞ、お許し願います」

 

俺は自分の書類を纏めようとして気付く。既に俺の書類はいろはによって纏められていた。

 

いろは「先輩があの二人を相手にしていてくれている間にまとめておきましたよ?お疲れさまでした♪」

 

道理であの二人が何を言っても静かだったわけだ。

その間に仕事を片付けておいてくれたのか。

さすがは頼りになる俺の仲間だ。

 

八幡「そっちこそお疲れさんな。」

 

俺はいろはと小町の頭を撫でる。

 

いろは&小町「えへへへへ////」

 

二人は気持ち良さそうに目を細めてそれを受け止める。

一方、ジョジョと材木座の会話も進んでいた。

 

静「その軍服、素敵ですね?ナチスの物ですか?」

 

材木座「う、うむ!これはナチスドイツの軍服である!何故か自分はナチスの軍服が性にあっているので」

 

静「そうですか!私の父もナチスドイツの友人がいたそうなのですよ!大戦中、スターリングヤードで亡くなってしまったそうで、残念がってましたが」

 

ジジイの戦友にいたらしいな。サイボーグみたいになったって言うナチス軍人が。

 

材木座「そうであったか。しかし、自分の格好は奇抜であるから、皆敬遠するのだが、ジョースター嬢は自分の格好は気にならないのであるか?」

 

静「それを申しましたら、私のサングラスや制服のバッチ、比企谷さんの制服など、奇抜も良いところですよ?私の兄も叔父みたいな甥も、今はひとかどの人物ですが、学生の頃はヤンチャしていまして…ですから、私達はあなたのその自己主張には何か通じるものがありますわ」

 

取引のとっかかりはいかに自分とあなたは気が合うよ、というアピールが重要だ。

特に日本はその傾向が強い。

 

材木座「う、うむ。人から理解を得られたのは初めてであったので自分は嬉しいであります」

 

静「それと先程は失礼しました。お体は大丈夫でしょうか?」

 

材木座「う、うむ。何の異常はない。大丈夫だ」

 

静「そうですか。先程の紙の演出は凄く格好良かったのですが、出来れば会社の書類を無断で使用するのでは無く、プリンターが置かれているあちらの棚の中にある未使用の再生紙を使って頂けると助かります。それでしたら紙の使用量のみの請求となりますので。今回のようなケースをまたやられてしまいますと、これだけの請求額が発生してしまいますのでご注意下さい」

 

ジョジョは手書きの請求書を材木座に見せる。

 

材木座「す、数千万にも及ぶではないか!高々書類で大袈裟ではないのか!?」

 

静「いえいえ、これらの書類には、中には数億の取引がなされる物も少なくないのですよ。それに問題なのは、それを決定する私どもの仕事が停滞することです。私どもの決定が遅れた事により、取引が無くなったり、相手の有利な条件を飲まざるをえなくなったりと、その損害額は小さな会社なら死活問題となる場合もあるのです」

 

材木座「そ、そうであったのか。あいすまん!今後は二度とせぬので、どうか平に!」

 

静「今回は幸いにしてそこまでの損害は発生しませんでしたし、比企谷さんの知人であるとのことなので、特別に請求はいたしませんが、次回からは損害額相応の請求はさせて頂きます。必ず、絶対に。ですので是非、ご注意下さいね?」

 

材木座「わ、わかりました!二度とせぬのでご容赦願いたい!」

 

これは絶対に遵守して貰わないと困る。

さすがに数億の書類がこの部屋に転がっている訳ではない。というより、取引書類は扱っていない。

だが、俺達の決裁が遅れるのはまずい。

タイム・イズ・マネー。時は金なり…だ。

 

静「ご理解していただいたようで何よりですわ。それで、後用向きはなんです?そのご趣味でしたら、恥じることは御座いませんわ♪もっと堂々と自分を出すことを誇りとされては如何かと♪趣味や主義は個人の自由なのですから!」

 

材木座「いや、違う。だが、自分もこの趣味には自信は持てなかったが、ジョースター嬢のお陰で自身が持てた!ありがとう!だが、本当の要件はこれだ!」

 

さすがはジョジョだ、誰かさんのように傷をえぐるでもなく、相手を立てながらするべき注意をしっかりとしつつ、相手を立てて程よく気分を良くさせて相手の本題を引き出す。やるなっ!

 

材木座は鞄から文字が羅列された原稿用紙を取り出してみせた。

 

静「小説ですか?」

 

材木座「ご賢察痛み入る。いかにもこれはライトノベルの原稿だ。ある新人賞に応募しようと思っているが、友達がいないので感想が聞けぬ。読んでくれ」

 

中二病を患ったものがラノベ作家を目指すようになるのは当然の帰結と言える。憧れを続けたのを形にしたいというのは正当な感情だ。好きなことをして食っていけるならそれはやはり幸せなことだからだろう。

だから材木座が作家を目指すのは不思議なことではない。不思議なのはわざわざ俺達に見せようとすることだ。

 

八幡「投稿サイトとかで晒せば良いじゃあないか」

 

ハーメルンとか。

 

材木座「それは無理だ。奴等は容赦がないからな。酷評されたら多分死ぬぞ、自分。いや、だが我がライトノベルの面白さは世界一ィ!」

 

心弱ぇー…

でも、ネットとかよりも確実な目線で評価を出せる人がいるんだよなぁ。

でも、あの人はネットの評価よりもより厳しい評価を下すからなぁ。

とりあえず、俺が見てやるか。

だが、それよりも…

 

八幡「多分、投稿サイトよりも雪ノ下の方が容赦ないだろうなぁ…」

 

←To be continued




原作八幡にどんな扱いをされようとも、彼を慕って信じ抜く男、材木座義輝の登場です!

もぅ、彼の正体も予想つきますよね?


原作との相違点

材木座が使った紙吹雪は自らの原稿➡SPWの書類

材木座の服装はコートに指ぬきグローブ➡ナチスドイツの軍服。

体育のペア決めは地獄の試練➡普段の日々に比べたらそんなもの天国だ。

剣豪将軍➡剣豪大佐

八幡の中二病における黒歴史➡前世を含めて人生が既に中二病の領域。

八幡にとって中二病は黒歴史なため、材木座に冷たい➡むしろ杜王町組のお陰で好意的

依頼内容はユキノンが脅しながら聞き出す➡静がよいしょしつつ聞き出す

次回は感想を言う回です!またよろしくお願いします。
ダダッダンダッダッダ!ダダッダンダッダッダ!

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