やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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前回までの奉仕部の活動

ある日の奉仕部で、八幡の元に独特の男が現れる。
ナチスドイツの軍服に身を包んだポッチャリ男、材木座義輝。
彼の依頼は自作のライトノベルを読んで感想がほしいというないようだった。
果たして小説は面白いのだろうか!

八幡「少なくともこれよりは面白いんじゃね?」

淳「多分な」

八幡「肯定するのかよ」

淳「いや、まぁ、内容が…ね」


材木座義輝のガンズ・アンド・ローゼズ

side 比企谷八幡

 

俺達奉仕部は、材木座から預かった原稿をそれぞれ持ち帰り、一晩かけて読むことにした。

材木座が書いた小説はジャンルでいうならホラーだった。というか…どこかで聞いた話なんだよな。

一部の事を除いて。

これを読み終えた頃には空が白んでいた。

おかげで今日の授業はほとんど寝て過ごす羽目になってしまった。それでもなんとか気だるい6限目を過ごし、ホームルームを切り抜け部室へと向かうことにした。

隣を歩くジョジョも実に眠そうだ。

 

結衣「ちょー!待つ待つ!」

 

特別棟に入ったあたりで、俺達の背中に声がかかった。

振り返ることも無く、俺達は無視して歩く。

 

結衣「何で待ってくれないし!冷たくない!?っていうかヒッ…」

 

八幡&静(ギロッ!)

 

結衣「ヒッ!比企谷くんとジョースターさん、元気なくない?どしたの?っていうか、そろそろあだ名許してよ」

 

八幡&静「絶対に断る!」

 

結衣「うっ!何でだし!」

 

八幡「許してもアーシスのメンバーたけだ」

 

静「何であんたに大切なあだ名を呼ばれなくちゃあならないの?調子に乗るな」

 

結衣「うう…もぅいいよ…で、何で元気ないの?」

 

静「…あれを読んで元気でいるあなたがすごいわ」

 

結衣「え?」

 

由比ヶ浜が目をパチパチとしばたかせた。

 

結衣「…あー、だよねー。や、あたしもマジで眠いから」

 

静「読んでないならそう言えば?別に怒らないから。そんな嘘をつかれる方がよっぽどイラッとくるからやめてくれる?」

 

結衣「う、うん。ごめん…すっかり忘れてた」

 

八幡「………」

 

別に由比ヶ浜を怒る理由はない。

 

俺達が部室に着くと、雪ノ下は珍しくうつらうつらしていた。

そして、いろはが今日は出勤で、小町はもう到着してやはり船を漕いでいた。

仗助も仕事をしながら、材木座の原稿を読んでいる。

俺は小町の席の隣に椅子を置き、その頭を撫でる。

 

小町「むにゃ…お兄ちゃん…」

 

小町は寝ぼけ眼で俺を確認すると、俺の腕に抱きついてコアラモードで再びすうすうと寝息をたて始めた。

ジョジョは仗助にコアラモードだ。

 

雪乃「………驚いた、あなたの顔を見ると1発で目が覚めるのね」

 

うわぁ、俺も今ので幸せ気分が吹き飛んだわぁ!

ほんと、何で目が覚めたの?この女。

 

仗助「一応は読ませてもらっているが、 これは…」

 

静「まぁ、これは本人が来てからし聴くかないね」

 

結衣「あたしは無理」

 

静「そもそも読んでない人間が無理に話に割り込むなっつうの」

 

ジョジョが不愉快そうに言うと、由比ヶ浜が鞄から例の原稿を取り出す。折り目のひとつも付いていない、完全な保存状態だ。由比ヶ浜はそれをペラペラと異様に早いスピードでめくる。本当につまらなそうに読むな、こいつ。

 

八幡「別に材木座の原稿がライトノベルのすべてじゃあない。面白いのはいくらでもあるよ」

 

材木座のフォローにはなっていない事を重々承知で言うと、雪ノ下が首を傾げて聞いてくる。

 

雪乃「たとえば?」

 

八幡「お薦めは…」

 

雪乃「機会があったらね」

 

『その言葉をいった人間は絶対に読まない法則』が発動したのを如実に感じていると、部屋のドアが荒々しく叩かれる。

 

材木座「頼もう」

 

材木座が古風な挨拶と共に入ってきた。

 

材木座「さて、では感想を聞かせてもらうとするか」

 

材木座は来客用の椅子にどっかりと座り、偉そうに腕組みをしている。

顔はどこかしら優越感じみた、自信に満ち溢れた表情だ。

 

静「雪ノ下さん、私達は後で良いわ。あなたから感想を言いなさい」

 

雪乃「チッ……」

 

雪ノ下はあからさまな舌打ちをした。

同級生に命令されるのが気に食わないようだ。

雪ノ下はジョジョを睨むと、正面に座る材木座に申し訳無さそうな顔をして…

 

雪乃「ごめんなさい。私にはこういうのよくわからないのだけれど…」

 

そう前置きすると、雪ノ下は小さく息を吸って意を決した。

 

雪乃「つまらなかったわ。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ」

 

材木座「げふぅ!」

 

八幡「まるで雪ノ下雪乃の人生みたいにか?」

 

仗助、静、小町「ぶっ!」

 

三人が上手い!と言いたげに吹き出した。

ゲラゲラ笑い出すアーシス組。

一刀のもとに切り捨てやがった雪ノ下を、俺が背後から切り捨てた感じだな。

 

材木座「ふ、ふむ…。さ、参考なまでにどの辺がつまらなかったのかご教示願えるかな?」

 

雪乃「まず、文法が目茶苦茶ね。何故いつも倒置法なの?『てにをは』の使い方知ってる?小学校で習わなかった?」

 

材木座「ぬうぐ。そ、それは平易な文体でより読者に親しみを…」

 

雪乃「そういうことは最低限まともな日本語を書けるようになってから考えることではないの?それと、このルビだけど誤用が多すぎるわ。『能力』に『ちから』なんて読み方は無いのだけれど。だいたい、『波紋疾走』と書いて何でオーバードライブになるの?オーバーはどこから来たの?逆に波紋はどこへいったのかしら?」

 

波紋の戦士が全員目をそらした。だって太古から続く読み方だもの!

 

材木座「げふっ!う、うう。違うのだ!昔からその言葉はそういう読み方だし、それに最近の異能バトルではルビの振り方に特徴を」

 

雪乃「そういうのを自己満足というのよ。あなた以外誰にも通じないもの。人に読ませる気があるのかしら?そうそう、読ませるといえば、話の先が読めすぎて一向に面白くなる気配がないわね。で、主人公の母が五十才なのに見た目は二十歳ってなにかしら?そんな事あり得ないじゃない。それも主人公がそれを知らずにお風呂を覗くって、必然性が皆無で白けるわ」

 

小町「ゲフゥ!」

 

あ、小町にダメージが入った。だって、まんまリサリサの事だもんな。

 

雪乃「そして地の文が長いししつこい字が多いよみづららい。というか、完結していない物語を人に読ませないでくれるかしら。文才の前に常識を身につけた方がいいわ」

 

材木座「ドジこいたーッ!」

 

材木座が四肢を投げ出して悲鳴を上げた。肩がビクンビクンと痙攣している。目なんか天井を向いたまんま白目になってるし。

オーバーリアクションがそろそろうざくなってきたし、そろそろ止めよう。

 

八幡「その辺りで良いだろう?あんまり言ってもあれだし。あ、波紋疾走とかいてオーバードライブという場所に行きたければ言ってくれ。命の保証はないが、意味はよくわかるようになるから」

 

雪乃「まだまだ言い足りないけど、まぁいいわ。じゃあ次は由比ヶ浜…」

 

静「じゃあ、次はマーチ。というか、多分私達三人は同じ結論だと思うから、代表としてマーチが質問してくれる?場合によってはアーシスの出番だけど…」

 

ジョジョが言うと、小町が立ち上がった。

 

小町「この話は創作じゃあない。約八十年前に実際に起こった人類の天敵、柱の一族との戦いを描いた物。しかも、ある一族にしか伝われていない、改編されていない歴史をまるで見てきたかのように…材木座さん、あなたはこの小説の元となった物を、どうやって知ったのですか?」

 

材木座「え?な、どうやってって………」

 

静「この波紋疾走という技を使う者は実在しています。それも、八十年たった今でも…その男の名は…」

 

仗助「そうだ。俺の父親であり…」

 

静「私、静・ジョースターの義理の父であり…」

 

八幡「空条先生の曾祖父にあたる、俺達の会社の先代会長」

 

波紋の戦士としてのその名を…俺達以外の者から再び聞くことになるとは思わなかった俺の前世の孫で、小町の前世の息子…

 

小町「その名はジョースター…。ジョセフ・ジョースター」

 

俺と小町とジョジョの三人は材木座を取り囲む。

先に雪ノ下に感想を言わせたのは小説としての純粋な評価を言って貰うため。

後の者の意見はもはやただの尋問とかすためだ。

もしかしたら、こいつは奴等の協力者の可能性もある。

何故なら、こいつも…

俺は一枚の写真を取り出した。

まるで金属生命体のような人型のビジョンを背負った銀色のオーラを纏った材木座の写真。

この小説を読んだ俺が材木座を念写した写真だ。

血が流れていないので、ブラッディ・スタンドでは無いことは確かだが、柱の一族を知るスタンド使いは放ってはおけない。

 

八幡「答えろ、材木座」

 

材木座「ジョースター…ジョセフ・ジョースター…ジョジョ…波紋の戦士…柱の一族…サンタナ…カーズ…石仮面…何だ…頭が……俺は何を知っていると言うんだ!うわああああぁぁぁぁぁぁぁー!」

 

材木座が発狂し、写真に写った銀色の金属生命体へと変化する!

俺達みたいな人型のスタンドというのではなく、本体が金属生命体になるタイプのスタンドかっ!?

 

ダダッダッダッダダ!

 

何故かターミネーターのあのリズムが頭をよぎる。

どちらかと言うと、ターミネーター2だが。

 

材木座?「我ガどいつノ医学薬学ハ世界一ィ!」

 

発狂した材木座…いや、ターミネーター2のようなスタンドが俺達に蹴りを入れて吹き飛ばした!

ぐぅ!

俺達三人の波紋の戦士は吹き飛ばされる!

 

材木座?「俺は祖国の為に、ナチスドイツの為に不老不死を研究せねばならないぃぃぃぃ!その為に柱の一族のことは研究せねばならないぃぃぃぃ!」

 

材木座だった銀色のスタンドは無差別に暴れ始めた!

これは俺が陥った状態、スタンドの暴走!

逃げ惑う由比ヶ浜と雪ノ下。

 

仗助「我を失ってやがる!これは暴走!?十二年前の八幡と同じ状態だ!戦えない奴は逃げろ!アーシス、緊急出動!暴走を止めるぞ!ジョジョ、八幡、小町!」

 

スタンドを出現させ、臨戦態勢に入る俺達四人。

 

仗助「ターミネーター2のようなスタンドだな。その主題歌にちなんでガンズ・アンド・ローゼズと仮名する」

 

思わぬ形で戦う事になっちまったぜ。

ただ知りたかっただけなんだけどな…。

 

とにかく、話を聞くためにも材木座の暴走を止めなければならない…。

少し痛いかも知れないが、許せ材木座…。

 

←To be continued




急展開でごめんなさい。

ですが、懸命なるジョジョファンならば、いい加減材木座が誰なのかはもうお分かり頂けたでしょう。

材木座のスタンド名は仗助が作中で語っている通り、ターミネーター2の主題歌、ガンズ・アンド・ローゼズからまんま取りました。

さて、どんな戦いにしようか…

次回、またお読み下さい。

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