材木座との戦いの後、八幡達と由比ヶ浜の関係は少し良好な形となった。
そんなある日、麗らかな昼休み、八幡達のベストプレイスを通りかかる由比ヶ浜。穏やかに会話する八幡達に新たな出会いがあった。
男子テニス部部長、戸塚彩加。
中性的な容姿をもつ彼との出会いは八幡達に新たな冒険をもたらすか?
side戸塚彩加
まただ。またこの夢が…
戸塚?「なんだって!?ジョースターさんが!?」
手下「はい…ジョースターさん達を乗せた船が…沈没したそうです…」
戸塚?「ジョースターさんは!?エリナさんは無事なのか!」
手下「………生存者は2名」
その2名がジョースターさんとエリナさんであって欲しい!
手下「一人はエリナ・ジョースターさん」
戸塚?「エリナさんは無事だったのか!?良かった…あと一人はジョースターさんなんだよな!」
手下「………」
戸塚?「どうした?何故黙ってる?ジョースターさんなんだろ?」
嫌な予感がしてくる。
戸塚?「何で黙ってるんだよ。ジョースターさんだって言ってくれよ…そうなんだろ!なぁ!ジョースターさんだって言ってくれ!」
手下「あと一名は…エリナさんが助けた生まれたばかりの女の子です……ジョースターさんは…亡くなりました…」
力が抜けるのを感じた。僕は膝から崩れ落ちる。
戸塚?「何でだよ!これからだったじゃあねえかよ!ジョースターさあぁぁぁぁん!」
助けになれなかった…力になることが出来なかった…僕は…太陽を失った。そして、二つ目の太陽と出会うまで、二十年もの時が必要だった。
年を取った僕は…
戸塚?「今度こそ、守って見せるぞ…見ていてくれ。ジョースターさん」
僕はいつもそこで目をさます。
昔から見ていた夢だったが、去年からは、特に頻繁に見るようになった。
あの四人…いや、今年に入ってから五人になったあの人たちを見てから。
東方仗助PTA会長
空条徐倫先生
二つ目の太陽とよく似た二人。
静・ジョースターさん
夢の中の男がしきりに叫んでいた太陽の名前。
一色いろはさん
そして……比企谷八幡
男の太陽達に似た何かを持つ人達…
戸塚「助けるんだ…力になってあげるんだ…今度こそ…僕のこの力で!」
side比企谷八幡
ゴールデンウィークが終わった。
承太郎とジョルノはあと数日の内に来日するらしい。
ちなみに、今年もゴールデンウィークはアメリカに呼び出された。やったぁ!5年連続だぁ!
なんか、ゴールデンウィーク恒例行事と化して来たなあ~。
徐倫経由で「高校生活を振り返って」と「美味しいカレーの作り方(での親子共々ギャグが滑るの件)」の作文が承太郎とジョルノの二人に渡っており、二人によって俺とジョジョはジョースター邸の庭のオブジェとなったのは苦い思い出だ。
特にジョルノは容赦ないからな…
石から作られた木の蔓に逆さ釣りにされ、再びワサビの刑に処された。これ以上ワサビを嫌いにされたくないんだけど…。刺身が不味くなる!
そして、その前でジョルノ、久々に会ったミスタさん、トリッシュさん、ジジイ、承太郎、徐倫、小町、いろは、陽乃さんのギャングダンスが披露された。
これまでにない豪華キャストによるギャングダンスだなぁ、おいっ!
ズッダン ズッズッダン
ホリィさんも貞夫さんも朋子さんも爆笑するな!
仗助はワサビも承太郎のお仕置きも、両方の辛さを知っているから、ダラダラ汗をかいていた。
いつもならその後はいろはのキスの嵐がくるのだが、「キスの味が辛くなるので嫌です」とお断りされた。
おのれジョルノォォォ!あ、更にハバネロが追加されてしまった。
俺考案のMAXコーヒーのキャッチフレーズ、「人生は苦い」…から「人生は辛い」に変えようかな?
そして帰国して再び体育の時間。
度重なる壁打ちの結果、今ではボール三つまで同時にできるようになった。あれ?そんなことが出来る俺、他の平行世界にもいたような…
明日の授業からはしばらく試合に入る。つまり、ラリー練習は今日が最後だ。
ラケットを両手に持って右手と左手で一人スカッシュの試合でも開催するかな?
スタンドが使えれば混合ダブルスが出来るんだがな。
変な都市伝説が追加されるからやらないけど。(一人スカッシュでも都市伝説が追加されます)
そんなことを考えていると、ちょんちょんと右肩をつつかれた。
誰だよ。新たなスタンド使いか?俺に話しかける奴とか皆無だし。
と、思って振り向くと右ほほにぷすっと指が刺さった。
戸塚「あは?ひっかかった♪」
そう可愛く笑うのは先日知り合った戸塚彩加である。
相変わらず性別不詳な男だ。
だが、この男、見た目の可愛さとは別に、何か俺達側の雰囲気を時々醸し出す。
腕も足も腰も細く、肌が透けるように白いが、決して弱くはない。そんな空気がある。
八幡「どした?」
戸塚「うん。今日さ、いつも、組んでる子がお休みなんだ。だから、良かったら僕と、やらない?」
八幡「ああ、いいよ。俺も一人だしな」
一人スカッシュ大会は中止だな。
俺が了承すると、戸塚は安心したように息を吐き、「緊張した!」と小声で呟いた。
なにこの可愛い生き物。
由比ヶ浜が言っていたが、女子の一部では戸塚の愛らしさを指して「王子」と呼んでいるらしい。
その「王子」という単語の中には「守ってあげたい」的な意図もあるんだろう。
見た目で判断したらそうなのだろうが、俺の見立てではそんなに甘い男ではないと思うのだがな。
そして、俺と戸塚のラリーが始まった。
戸塚はテニス部だけあって、それなりに上手い。
俺の正確無比なサーブを上手に受け、俺の正面にリターンしてくる。
それを何度もやっていると、単調にでも感じたのか戸塚が話しかけてきた。
戸塚「やっぱり比企谷くん、上手だね」
八幡「ジョジョとか小町を相手にプライベートでやるからな、後は会社の接待で」
戸塚「それだけじゃあ無いよね?比企谷くんやジョースターさんの驚異的な身体能力は、その呼吸に秘密があると僕は思っているんだ。これだけ打ち合っていても、全然呼吸が乱れて無いよね?運動部の僕の方が息が乱れ初めているのに」
!?
八幡「何故、そう思う?」
戸塚「何でだろうね?だけど僕はその呼吸を知っている気がするんだ。そして、君の秘密も…。君は、前世って信じるかな」
戸塚は今度は強めの球を打ってくる。
くっ!?何だ!ジョジョ並の強い球が飛んできた。
戸塚「不思議な夢をよく見るんだ。二代に渡る太陽の精神をもった二人の男と。その二人の力になりたいって願った一人の男…結局は力になれなくて、後悔していた男の夢を…」
俺は戸塚の話を聞きながら、その強打を打ち返す。
波紋の力を加えながら。
戸塚「くうっ!この力だよ!比企谷くん!その男が欲しがっていた力!若いときに欲しがり、才能が無いから諦めざるを得なかったこの力!」
戸塚は俺の波紋入りの打球を顔をしかめながら受け取り、そして再びあの強打を打ってくる!
八幡「戸塚…お前は…!何者だ…!」
戸塚「比企谷くん、君なんだ!その男が失ってしまった一番助けになってあげたかった最初の太陽に、君は似ているんだ!波紋の力が必要と言うことは、まだこの世界に太陽の精神と力が必要だと言うこと!」
戸塚の打球を受け止める…が、今度は強すぎてラケットが折れてしまった。
戸塚「少し、休憩しようか」
息を切らせた戸塚が提案してくる。
八幡「お、おう…ごめんな、テニス部の備品を壊してしまって」
戸塚「良いんだよ。それよりも、僕がこの力を使って打ったのに、比企谷くんの手首は無事なんだね。流石は波紋の戦士だよ。やっぱり、あの夢は過去に実際にあったことなんだって実感するね」
八幡「戸塚……お前はどこまで知っている?何故波紋の事を知っている?そして、その力はスタンド能力じゃあないのか?何者だ!お前は、誰の転生なんだ!」
あまりの事で声を荒げる。
ただの男では無いことは察していた。
そして、さっきの打球…こいつは間違いなくスタンド能力か、それに近しい特殊なちから。
波紋使いではない。波紋使いなら、この程度の運動量では疲れない。不気味だ…。
戸塚「順番に答えるよ。僕はイギリス、メキシコ、イタリアで起きた事は夢で見た。波紋の戦士、ジョースター、ディオ・ブランドー、石仮面、吸血鬼、柱の男とそれに関わったナチス・ドイツ軍とSPW財団特殊部隊…」
ディオのフルネームを知っている!?それに石仮面にも関わっているだと?
戸塚「そして最近の事ではGDst閉鎖に君達が関わっているよね?僕は夢で見たんだ。空条先生、東方PTA会長、空条博士、君に似た別の人…沢山見守る魂の中に、僕もいたんだ。思い出したのはつい最近だったけれど…でも、何となくわかった。君があの場所にいたんだって。君が関わらなければならない何かがあるって。それは今も続いているって直感できた」
確かにあの時、俺は一人で建物の中にいたはずなのに、ジョルノがレクイエムを発動させる前に一度仗助達を応援する沢山の魂と、俺自身の幻を見た。その中に戸塚もいたのか!
戸塚「次の質問はスタンド…だったっけ?それはもしかして、これの事かな?」
戸塚はエコーズact1のようなサイズの帽子を被ったスタンドを出した。
八幡「スタンド…お前はスタンド使いだったのか」
戸塚「見えるんだね?比企谷くんも」
八幡「あ、ああ…スタンドはスタンド使いにしか見えない。ある方法で例外が出来たが。そして、俺もスタンド使いだ。前世から引き継いだスタンドだが」
戸塚「前世…やっぱり君はジョースターさんの…」
八幡「いや、ジョナサンだけじゃあない。確かにベースはジョナサンではあるが…俺は…ディオの転生でもある」
俺がそう言うと、戸塚は目からあふれんばかりの涙を流して俺に抱きついてきた。
え?何?こいつ男のクセにいい匂いがする!
やめて!また海老名さんが反応するから!
え?自重しろし!とか三浦の声が聞こえる!
海老名さんのハイエロファント・グリーン、変な能力に成長してね?
BLに敏感な能力って嫌すぎる!
戸塚「ディオまで融合しているのは意外だったけど…でも、君はやっぱりジョースターさんだ!やっと…やっと会えた!僕の太陽に!僕が力になりたかった人に!」
戸塚はワンワン泣いて俺の胸の中に収まる。
授業が終わるチャイムが鳴り終わると、クラスメイト達は俺達を変な目で見ながら、まばらに片付けをしながら帰ってゆく。
もう昼休みだ。
戸塚「僕の能力の名前はホール・シンクス。そして僕の前世は………」
ひとしきり泣き終えた戸塚は、目に力を入れて最後の質問に答えた。
その驚くべき名前を…
戸塚「僕の前世はロバート・E・O・スピードワゴン。ジョースターさんとジョセフの戦いを見守ってきた、しがないチンピラだった男の転生さ」
スピードワゴンだって!
あの財団の創始者である、ジョナサンやエリナの親友であり、エリザベスやジョセフの大恩人…
亡くなってもなお、俺達の力になり続けた男の転生!
ジョナサン『スピードワゴン!僕も会いたかった!なんて奇跡だ!また会えるなんて!』
俺はジョナサンの感動に煽られるように、戸塚を抱きしめ返した。そして、涙が溢れ出す。
最近、こういうのが多いなぁ…
八幡「俺のジョナサンの残留思念も言っている…スピードワゴン!良くまた俺の前に現れてくれた!お前が遺してくれた物は…今でも俺達に受け継がれているんだ!戦う力だけが力じゃあない!お前の力は今でも俺達の助けになり、そして力になってくれている!充分に力になってくれたじゃあないか!」
戸塚「ジョースターさん!ありがたい言葉だよ!うう…また会えた!会えたんだ!」
戸塚はまた泣き出す。二人してまた抱き合って泣いたあと、戸塚は立ち上がり、そして……
戸塚「比企谷くん。いや、ジョースターさん。今度こそ、僕はあなたの力になりたい。だから、君にお願いがあるんだ」
八幡「お願い?」
戸塚「今度こそ、僕は君の力になる。今度は戦士として…だから、僕を仲間に加えて欲しい」
八幡「何を言っている?スピードワゴンは充分に…」
戸塚「それは前世のスピードワゴンの話であって、戸塚彩加の話じゃあない。僕は、戸塚彩加として、今度こそ君を守りたいんだ」
八幡「バカな…こんな闇の道に自ら歩くことはないじゃあないか!お前は今世を生きろ!太陽の下で!」
俺がそう言うと、戸塚は目を細め、睨み付けてくる。
戸塚「もう、僕は見ているだけのスピードワゴンなんかじゃあない!僕を甘く見てるなら……試してみなよ。僕と勝負しよう。ジョースターさんと初めて出会った、あのスラムでのように…そして、認めさせてあげるよ!僕にも出来るってことを!時間を改めて、君に決闘を挑むよ、比企谷くん」
戸塚はラケットを専用バックに入れ、立ち去る。
去り際に
戸塚「また、後で君の所に行くよ。比企谷八幡。じゃあね」
欧米人がフルネームで相手を呼ぶとき…それは本気で怒っている時。そして、決意が固い時……。
百二十年の時を超え、前世の親友同士がぶつかる。
←To be continued
はい、戸塚の前世はスピードワゴンさんでした。
これは物語が開始した当初から考えていました。
スピードワゴンとジョナサン、戸塚と八幡。
どちらも主人公の力になりたい、しかし、力が及ばずに歯噛みする。
どことなく似ている二人に見えませんか?
まぁ、見た目はいかついチンピラと男の娘で全然似ていませんが。
いやぁ、戸塚をやっと出せました。
早く出したかったんですよね。スピードワゴン戸塚を。
そして、俺ガイル原作では1つの話が二つに別れる形になりました。
そうです、先だって登場していた第3部転生のあの二人とも戦う時がそろそろやって来ました!
俺ガイル原作第1巻のハイライトに突入します!
それでは、次回は戸塚戦!
皆様!またお読み下さい!