八幡のラブコメを観察したいのに、どうして私とラブコメするの!?   作:Faz

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第二話 ようやく私の『俺ガイル』観察が始まる。

「な、何を言ってるのかな雪乃ちゃん!?」

 

 記念すべき原作開始日の放課後、今まで私と雪乃ちゃんだけだった奉仕部に八幡くんが連れられて来ました。

 ここから青春ラブコメが始まるのかぁと感慨深く思っていた所、何故か雪乃ちゃんが八幡くんの入部を断ってしまいました。

 

「何を考えているか分からない男子を先輩の近くに置く訳にはいきませんから」

「いやいやいや!? 入れてあげようよ!」

「あーなんだ雪ノ下。こいつは危機管理能力には優れている。社会的に死ぬ行動を取る事は無いさ」

「そうだよ雪乃ちゃん! 八幡くんが可哀想でしょー?」

「あ、え、あの」

「……先輩。今あの男を名前で呼びましたか?」

 

 見ると八幡くんはブツブツと言葉を呟きながら少し頬を染めて視線を外している。

 流石に初対面で名前呼びは少し慣れ慣れしかったかな?

 これまでずっと頭の中で八幡くんって呼んでたからついつい普通に呼んでしまったけど、これからは苗字で呼ぼう。

 

「ごめんね比企谷くん。ついうっかりー」

「……あ、いえ。えっと、大丈夫ですけど」

 

 ある程度仲良くなったら雪乃ちゃんみたいに下の名前で呼べたらいいな! と思いながら、仲良くしてねという意思を込めた微笑みを返します。

 人付き合いが苦手な比企谷くんは口を閉じて目をキョロキョロと動かして照れています。

 確かに目は腐っているけれど、見ていて飽きない可愛さがあります。

 彼の妹である小町ちゃんはもっと可愛いのでしょうね! 早く会いたい!

 ……あの、雪乃ちゃん? 痛いから抓らないで? 大丈夫、雪乃ちゃんの方が可愛いから!

 

 そうして雪乃ちゃんが比企谷くんを猫のように睨み、オドオドしている比企谷くんがその目線に狼狽(うろた)えていたりしていると、静ちゃんが手を打ち鳴らして(まと)めに入りました。

 

「これは奉仕部としての依頼でもあるのだよ。ここで比企谷の孤独体質を解消して欲しい」

「雪乃ちゃん! 依頼だよ! 依頼なんだよ!」

 

 私が両手を合わせてお願いっ! とポージングすると、雪乃ちゃんは何度目か分からない溜め息と共に観念してくれた。

 何だかんだお願いしたら言う事を聞いてくれる雪乃ちゃん可愛い!

 

「……分かりました。先輩が大丈夫でしたら仕方がありません。ようこそ比企谷、いえヒキコモリくん」

「おい待て何で言い直した」

 

 比企谷くんとの仲は原作通りで理路整然(りろせいぜん)とした言い合いを続けており、私と静ちゃんはそんな二人の様子を見てニヤリと笑いました。

 雪乃ちゃんがこうして同い年の人と話をするのは珍しい事ですから、ぼっち同士仲良くして欲しいですね。

 原作通りに二人の心が通う事を祈りましょう!

 

「それでは失礼するよ。あ、そうだ進藤」

「はい?」

「先週没収したゲーム、返却するから反省文書いて持ってこい」

「……はいー」

 

 この前雪乃ちゃんがゲームをした事が無いと聞き、携帯ゲームを持ってきて部室で遊んでいたのですが運悪く静ちゃんに見つかって没収されたのです。

 とほほ、成績主席なんだからそれくらい大目に見てよー。

 

「先生。先輩は私の為にゲームを持ってきてくれたので、私も反省文を」

「進藤だけでいい。……まぁ反省文くらいで進藤が更生する訳が無いんだが」

「分かってるならいらなくないー?」

「馬鹿者、他の生徒に示しがつかないだろう。反省しなくてもいいから書いてこい」

 

 それは先生が言っていい言葉じゃ無いよね!?

 静ちゃんが去って行くと部室には一度の沈黙が生まれました。

 雪乃ちゃんの呆れた視線、比企谷くんの唖然(あぜん)とした視線が私の心を貫きます。

 

「さ、さぁ!」

 

 うぅ、変な先輩って思われてるよー!?

 

 

 

「それじゃあ改めまして自己紹介だね。私は進藤(しんどう)円加(まどか)。三年J組だよー」

「私は雪ノ下雪乃。二年J組よ」

「じゃあ俺も、いや僕は比企谷八幡です。二年F組っす、いやF組です」

「あ、無理して敬語使わなくていいよー! 同じ部活の仲間なんだしね」

 

 二人の視線に苛まれながらちゃちゃっと書いた反省文によって、愛しの携帯ゲームちゃんは私の鞄の中へと帰ってきました。

 試しに起動してみたら新しいセーブデータが作られていたのですが……ちょっと遊んだよね静ちゃん?

 そして長机に雪乃ちゃん、私、少し離れて比企谷くんと座り、雪乃ちゃんの淹れてくれた紅茶で一息吐いてから漸く話が始まります。

 

「あ、えっと、そうすか」

「比企谷君。先輩はそう言っていますが、ちゃんと敬意を持ちなさい」

「分かってる、雪ノ下。それで、ここはなんの部活なんだ?」

「そうだねー。何の部活だと思う?」

 

 本来なら雪乃ちゃんの台詞なのですが私が言っても大丈夫でしょう、言ってみたかったし。

 少し考えてから比企谷くんはその答えを口にしました。

 

「……文芸部だろ?」

「へぇ、その心は?」

「この部屋の中に特殊な環境、特別な機器が存在しない」

「外れ」

「じゃあ何部なんだよ?」

「今ここで私たちがこうしているのが部活動よ」

「……降参だ、さっぱり分からん」

 

 おー!! 原作で見た通りだよ!

 比企谷くんと雪乃ちゃんの捻くれた者同士の会話は、この世界に産まれた時から夢にまで見た光景です。

 これから二人が仲良くなっていくのが楽しみですなー。

 

「それじゃあ先輩。教えてあげてください」

「そこで私に振るの!?」

「部長ですから」

 

 えぇー、このまま二人の会話を傍で見ておきたかったんだけどなぁ。

 

「えっとね、ここは奉仕部っていう部活なんだ。皆の悩みを聞いて解決に導くんだよ!」

「先輩、話が飛び過ぎです。つまりは持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える、人はそれをボランティアと呼ぶわ」

「……雪乃ちゃんの言葉も分かりづらいよね?」

「ま、まぁ、そうっすね。つまりはボランティア部ですか?」

「いいえ。困っている人に救いの手を差し伸べるのが、この部の活動よ」

 

 そうしてスケットダンスのような部活だよーと教えた私たちは、先程先生に頼まれた比企谷くんの更生について考えます。

 

「比企谷くんはぼっちなの?」

「うぐっ、でも俺はそこそこ頭が良いんですよ。顔もそこまで悪くないと思うし、一人で居るのは自分の意思なんですよ」

「比企谷君。貴方が今話しているのはテスト満点が普通の主席で、容姿端麗の天才人間よ」

「えへへー、照れるなー」

「そ、それは知ってる。有名だしな」

 

 成績優秀なだけでなく親友の現生徒会長を巻き込んで色んなイベントをやったり、先生に伝えずにゲリライベントを催したりと進学校の生徒とは思えない事をしている私は、どうやら有名だそうです。

 前やったゲリラトランプマジックショーは楽しかったなー、またやろっと。

 

「先輩、反省してください」

 

 色々と企んでいた私を表情で察したのか雪乃ちゃんにめっ、という感じに叱られました。

 怒ってる雪乃ちゃんも可愛い! でもこれ以上やると本気で怒るから今は自重します……。

 

「それで比企谷君は、何を言いたいのかしら?」

「俺は別に変わりたくないんだって」

「それは貴方の逃げでしょう?」

「変わるっつうのも現状からの逃げだろ?」

「それじゃあいい案があるよ!」

 

 言い合っている二人を止めて、私は立ち上がりました。

 原作なら静ちゃんが入ってきて二人の勝負に持ち込む筈ですが、どうやら来ないようなので私が代わりに勝負を仕掛けましょう!

 

「互いの正義がぶつかった時は、勝負で決めよう!」

「なんすかその少年漫画みたいなシチュエーションは」

「そこうるさいよー。……ごほん。ここは奉仕部、誰かの悩みを解決してあげる場所。だからどちらが正しいかは、ちゃんと依頼を解決出来るかの勝負で決めよう!」

「先輩。そんな事は必要ではありません。こうして私たちと会話が出来ている以上、更生等いらないのでは?」

「うーん、よし! それじゃあ勝った方には私が何でも言う事を聞いてあげよう!」

「何でも!?」

 

 顔を赤くした比企谷くん、思春期真っただ中の彼には少し刺激が強すぎたかな?

 雪乃ちゃんは比企谷くんをキッと睨んでから私の肩を掴んで顔を近付けました。

 いつになく真剣な眼差しです。

 

「それはいけません先輩!! きっと厭らしい事を命令するに決まってます!」

「なら雪乃ちゃんが勝てばいいんだよ? ほら、雪乃ちゃんならそんな命令する訳無いし」

「私が勝ったら……」

 

 何を想像しているのか顔をボンッと赤くさせる雪乃ちゃん。

 いや待って、本当に何を想像したの? 私に何をさせようとしているの!?

 

「分かりました、受けて立ちます。じゅるり。先輩を守る為にやりましょう」

「じゅるりって何!?」

「次の依頼が楽しみですね、じゅるり」

「いや、俺はやると言ってな……はいやります」

 

 やる気の無かった比企谷くんをまるで猛禽類のような眼光で黙らせた雪乃ちゃん。

 ふぇぇ、軽はずみで言う事を聞くって言っちゃったけど、何だか身の危険を感じるよぉー。

 

 そして次の日、奉仕部が三人になってから初めての依頼がやってくるのでした。

 テンションの高いもう一人のヒロインと共に。

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