八幡のラブコメを観察したいのに、どうして私とラブコメするの!? 作:Faz
「ふぅ。雪乃ちゃんの紅茶は美味しいね、比企谷くん」
「そうっすね」
「ありがとうございます」
新しい仲間が増えた奉仕部は今日も平和な時間が流れています。
雪乃ちゃんと比企谷くんが勝負する事になって一日、今の所新しい依頼は来ていません。
まぁ原作を知っている私は今日新しい依頼が来ることを知っているんですけどね!
「そういえば雪乃ちゃん。明日は暇?」
「ええ、特に予定はありませんが」
私の質問に首を傾げた雪乃ちゃん、艶々な横髪が頬に掛かってとても可愛い。
「それじゃあ私の家に来ない? この前ゲームについて教えられなかったから、教えようと思ってねー」
そう提案すると雪乃ちゃんは少し思考してから、綺麗な微笑みを浮かべました。
比企谷くんには原作通り……いや、原作よりも厳しくあたっている雪乃ちゃんですが、去年からの付き合いである私にはとても甘く接してくれます。
私が陽乃さんの友達という事を雪乃ちゃんは知っていて目の
……その代わり陽乃さんが私を羨ましそうな目で見るようになりましたが。
「はい、大丈夫ですよ。お昼過ぎでいいですか?」
「やたっ! じゃあお昼過ぎとは言わず私の家でご飯食べようよ! あ、比企谷くんも来る?」
「あ、いや」
「それは駄目ですよ先輩。家族が居るからと言って男を気軽に部屋に上げてはいけません」
どうせなら歓迎会にしようかなと思ったのですが、雪乃ガードによって比企谷くんの参加は無理そうです。
比企谷くんに手を合せてごめんねと謝り、雪乃ちゃんの機嫌を直す為に明日やるゲームの話をして、一緒に料理しようと提案したりしました。
雪乃ちゃんの機嫌が戻るどころかそれ以上になる頃、部室の扉の前へと誰かがやって来ました。
「開いてるよ! どーぞ!」
『うひゃぁっ!? なに? なになに!?』
うひひ、驚いてる驚いてる。
雪乃ちゃんにデコピンされていると彼女は扉を開けて入ってきました。
「し、失礼しまーす。ってヒッキー!? どうしてヒッキーがここにいんの!?」
大きな声で驚くお団子ヘアーの彼女は由比ヶ浜結衣ちゃん。
原作で一番目の相談を持ち掛けてくる比企谷くんのクラスメイトで、雪乃ちゃんに並ぶもう一人のヒロインです。
雪乃ちゃんとは正反対の大きなメロンを持っていて、容姿端麗と名高い私でも勝てないでしょう。
……違うよ! 私は美乳なんだよ! 雪乃ちゃんみたいに小さい訳じゃごめん雪乃ちゃん、謝るからデコピンやめて。
「こほん。二年F組、由比ヶ浜結衣さんね」
「……学校全員の名前覚えてるのか?」
「雪乃ちゃんは努力家だからねー」
褒めてあげると雪乃ちゃんはそっぽを向いて照れているのを隠すので、よく褒めてはニヤニヤ観察しています。
比企谷くんにも頑張って欲しいですね!
「それじゃあ相談を聞こうかな? あ、私は部長で三年生の進藤円加ね。よろしくー!」
「し、進藤先輩! わ、私は由比ヶ浜結衣です! 結衣って呼んでください!」
「緊張しなくてもいいよ、結衣ちゃん? 私は円加って呼んでねー」
「は、はい! よろしくお願いします、円加先輩!」
どうやら結衣ちゃんは私のファンだそうで、この前のトランプマジックショーも端っこで見ていたそうです。
ふっふっふ、憧れの視線で見られるのは嬉しいですね。
今度部室でマジックを見せてあげる事を約束していると、話が脱線していると雪乃ちゃんの指摘が入って相談が始まりました。
「――どうしてこうなるのかしら」
場所を調理室へと移した私たちの前に出て来たのは、真っ黒に焼かれた何とも言えないクッキーでした。
結衣ちゃんの相談は原作と同じお世話になった人にクッキーを渡したいという事で、静ちゃんに調理室の使用許可を取りました。
その際、家庭科担当の先生に絶対に危険な事はするなと念を押されたのですがこちとら主席ですよ?
いつも馬鹿みたいにイベントを催してるからと言ってそんなのあんまりですー!
「これって、毒とか入ってないよな?」
「ヒッキー酷い!……やっぱり毒かな?」
比企谷くんと結衣ちゃんは黒いクッキーを手に取りましたが、口に入れる勇気は出ないようです。
なので私はひょいと手に取って口に入れ、何だかジャリジャリと音がしますが咀嚼しました。
「ちょっ円加先輩!? 食べなくてもいいですよ!」
「……先輩、中々チャレンジャーね」
「進藤先輩って怖いもの知らず過ぎじゃ?」
「むぅ、酷い言いようですねー。確かにこれは失敗作です。でも結衣ちゃんが頑張って作ったんですから、決して美味しく無い物ではありませんよ。……いや、やっぱ美味しくは無いです」
「円加先輩……最後は酷いけど、嬉しいです」
……あっ!? これって私が言っちゃ駄目なんじゃない!?
確か原作では比企谷くんが大事なのは味じゃなくて作った人の気持ちだなんだって諭すんだった筈。
これは
「進藤先輩、流石ですね」
「でしょう? 先輩は素晴らしい人ですから」
「なんでお前が自慢気なんだ雪ノ下」
「『私の』先輩だからよ」
「……アッハイ」
「うぅ、円加先輩……そうですよね、分かりました! 私、沢山気持ちを入れて作ります!」
「あ、うん。頑張って」
それからもう一度雪乃ちゃんによるクッキー教室を行って、先程よりはまだ黒く無くなったクッキーを作れるようになりました。
片付けを終え部室へ帰って来ると結衣ちゃんは、頑張ってクッキー作ります! と宣言して帰って行きました。
どうにか比企谷くんに惚れるように仕向けようとしたのですが、結衣ちゃんが調理以外で私の傍から離れる事は無く、それを見た雪乃ちゃんも私の傍へと近付いてきてしまいました。
違うの! 私が見たい青春ラブコメはこれじゃないの! まちがってるの!
「……由比ヶ浜さん。中々手強いわね」
「あーその、頑張って下さい進藤先輩」
「うぅー!! こうじゃないよー!!」
その次の日、再びやってきた由比ヶ浜さんから比企谷くんに渡したクッキーよりも大きなクッキーを渡されるのですが、まだ私は諦めませんよ!