八幡のラブコメを観察したいのに、どうして私とラブコメするの!? 作:Faz
私が所属している三年J組は国際教養科は全校生徒から一目置かれるエリートクラスです。
その中でも生ける伝説とまで呼ばれている私は生徒からは尊敬の目を、先生方からは恐怖と諦観の目を向けられる超エリートなのです!
「さてさて前回はトランプマジックだったからね、今日の昼休みはこの百円玉を使ったマジックを披露するよ!」
『おおー!』
そんな私が今居るのは校舎に囲まれた中庭のど真ん中、近くの教室から借りた長机に黒いマットを引いてガラスのコップに百円玉が貫通するマジックを行います。
コップにはこの前都内のマジックショップで買った仕掛けが施されており種も仕掛けも存分にあるのですが、種明かしされるまで意外と分からないもんですよね。
そんなコップを筆頭にしたマジックグッズを沢山披露し生徒たちの歓声を浴びていると、遂に先生方が現れました。
「進藤ォー! またお前かー!」
先頭に居るのは教頭先生ですね、結構なお歳なのに頑張りますなぁ。
でも私はやめないし捕まる気も無いけどね!
「それじゃあ皆また今度! 今日は来てくれてありがとねー!」
『よかったよー!』
『楽しみにしてるぞー!』
『片付けはやっとくからなー』
「ありがとねー! では、ドロン!」
まぁドロンと言っても走って逃げるんだけどね!
「――進藤。この三年で何枚反省文を書けば気が済むんだ?」
「知らないよー。反省してないのに何を書けって言うんだよー!」
「反省してないな!? 全く雪ノ下……姉の方が卒業して学校が静かになると思ったが、お前の方が厄介だとはな。頼むから雪ノ下妹と比企谷、それに新入部員の由比ヶ浜に変な影響を出させるなよ」
「分かってますよーだ。それに結衣ちゃんはまだ新入部員じゃないからね」
陽乃ちゃんが居た頃は、破天荒な雪ノ下陽乃に連れ回されている可哀想な女の子のように思えていたのかもしれませんが、彼女が卒業してからは私の独壇場です。
今では雪乃ちゃんを巻き込む事もあるので静ちゃんの懸念はもう既に手遅れかもしれませんが。
あ、結衣ちゃんは奉仕部に入り浸っていますが入部届を貰っていないので正式な部員ではありません。
「そうだ進藤。また相談者が来たから奉仕部について教えておいた。多分今頃、部室に来てると思うぞ」
「お、そうなんだ。それじゃあ早く部室に行かないとね。ほい、反省文でございますお納めくださーい」
「……文章に反省の意が全く見えないな。まぁどうせ直らないからいいとしよう」
「静ちゃんのそういう所好きだよ!」
「静ちゃんって言うな」
あまり怒らせるとまたお説教が始まってしまうのでさっさと退散しますか。
面と向かって好きと言われたせいか少し恥ずかしそうにしている静ちゃんを置いて部室へと向かうと、何やら中で騒がしい声が聞こえます。
結衣ちゃんの次に来る依頼は確か、中二病の材木座くんだった筈。
ラノベは好きだけど原作であれだけ酷評されてた物を読むのは少し面倒だなぁと思いながら、私は扉を開けました。
「遅れてごめんねー!」
「先輩、お説教お疲れ様です」
「あ、円加先輩! やっはろーです!」
「……うす」
「あ、貴女様はっ、し、しん、進藤先輩っ!? は、八幡ッ! これは一体!?」
うむ、実際に見ると凄い迫力だな材木座くん。
コートに手袋、原作通り中二病のようだね!
「やっはろー! それで君は材木座くんだね? 依頼はライトノベルの感想が欲しいっと」
「なっ、何故それをぉ!?」
一昔前のアニメのようなリアクションを取る材木座くんを尻目に、雪乃ちゃんが訝し気な眼差しをこちらに向けます。
「先輩、盗み聞きですか?」
「違うよ! これも私のシックスセンスさ!」
「円加先輩……かっこいい!」
「はぁ……由比ヶ浜さん、先輩の言葉を真面に受けない方がいいわよ」
「そうなのゆきのん?」
いつの間にかお昼を一緒に食べる程に仲良くなった雪乃ちゃんと結衣ちゃん。
結衣ちゃんも原作通りに雪乃ちゃんの事をゆきのんと呼んでいます。
……私もゆきのんって呼んでみようかな?
二人の百合百合しい姿はいつまでも見ていられるのですが、今は材木座くんの依頼を先に済ませましょう。
「えっと、それで今はどんな状況ー?」
「そうですね。材木座の原稿がかなり多いので、持ち帰って明日感想を言うって事になりました」
「なるほどー。それじゃあ私の分は預かっておくね」
「分かりました。材木座、部長にも見てもらっていいよな?」
「か、構わんぞ八幡!」
うわ分厚っ!? これを読むのは骨が折れそうだなぁ……。
原作でもちゃんと読まなかった結衣ちゃん以外眠たそうにしてたし、こりゃ私も徹夜コースかー?
「ふむ、そういえば『非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……』の最新刊明日発売だね! 明日は本屋に寄って帰らないと」
「な、なんと!? し、進藤先輩もライトノベルをお読みになるのでしょうか!?」
「……意外だな」
「先輩はよく漫画やライトノベル? を読んでますね。面白いんですか?」
「あ、円加先輩がオススメする本読んでみたい!」
材木座くんがとても居づらそうにしていたので、私も大好きなラノベトークで場を盛り上げていきます。
……あ、しまった~!? せめてガガガ文庫の話にするべきだったぁ!!
この世界に『俺ガイル』は無いけど出版元のガガガ文庫はあるんだよね、せめて関わりのある出版社のラノベにすればよかった……。
「し、進藤先輩の推しキャラは?」
「う~ん。メインヒロインの
「おおっ! 拙者は姉キャラの
「ほほぅ、よく分かっているじゃないかー」
ラノベに詳しくない女子二人がキョトンとしていますが私と材木座くんは同士よ、と握手をしました。
「比企谷くんは誰推しなのー?」
「うむ、八幡よ! 魂の同士進藤先輩と共に語り明かそうでは無いか!」
「あ、えっと、その」
比企谷くんは言葉を濁していますが、どうしてでしょう?
キャラクターを好きだと言える事は決して恥ずかしい事では無いのに!
「……こ、この話はやめにしよう。な、雪ノ下」
「ええ、違う話題の方がいいと思うわ。そうよね? 由比ヶ浜さん」
「そ、そうだね!」
そう、材木座くんと握手をして勝ったなガハハと笑っている私には見えなかったのです。
雪乃ちゃんのその、とっても冷たい表情が。
――次の日。眠そうな私たちにバッサリと酷評された材木座くんは持ち前のガッツで新たな作品制作へ動き出しました。
そしてその日から雪乃ちゃんが頻繁に手を繋ごうとしてくるのですが、今の私には皆目見当も付きませんでしたとさ。