八幡のラブコメを観察したいのに、どうして私とラブコメするの!? 作:Faz
「まーちゃん、一緒にお昼ご飯食べていい?」
「もぐもぐ? んくっ、いいよーめぐりちゃん」
お昼休みになって朝買っておいたパンを食べていると、私の親友で生徒会長である城廻めぐりちゃんがJ組の教室へとやって来ました。
彼女はとても面倒見が良く色々な問題を起こす私をまーちゃんと気軽に呼んでくれて、見捨てずに叱ってくれる優しい子です。
まぁその叱り方が全然怖くなくて、寧ろ癒やしにも感じているんだけどね!
「最近奉仕部はどう?」
「新しい部員が増えてねー、楽しいよ」
「そうなんだ。良かったね」
ラノベ批評で材木座くんの心が折られかけてから数日が経って、時々奉仕部へとやって来る材木座くんとラノベ談義を行う今日この頃。
比企谷くんと雪乃ちゃん、そして未だに入部はしていないものの入り浸っている結衣ちゃんの絡みを見ていて微笑ましいものです。
それに雪乃ちゃんと比企谷くんの仲が進展している様子は見えませんが、気軽に言い合える関係になっているのが分かります。
うふふ、お姉さんが見守ってあげますから存分に青春してくださいね!
「そういうめぐりちゃんはどうなの? 生徒会の方」
「うん。この前誰かさんが中庭でマジックショーをしたせいでその対策を練らなきゃいけなくなっちゃったけど、それ以外は楽しいよ」
「誠に申し訳ございませんでした」
くっ、そういう対策は先生の会議で話し合ってればいいのに!
生徒会にまで問題を持って行かれたら活動しにくくなるじゃないか!
「ごめんねぇめぐりちゃぁん……」
「まぁいいんだけどね。今に始まった事じゃないし、まーちゃんのお陰で凄く楽しいから」
「ふぇぇ、めぐりちゃぁん!」
抱き付いためぐりちゃんの柔らかなボディに癒され、しょうがないなぁと頭を撫でてくれるむず痒さが心地良い。
私はクラスメイトの暖かい視線を浴びながら、めぐりちゃんのクッションと共に珍しくゆったりとしたお昼休みを過ごすのでした。
「――そういえば、はるさんから電話があったんだけど」
「陽乃ちゃんから? 珍しいね」
「うん。大学が詰まらないから、今度遊びに行くねって言ってたよ」
「Oh……それは流石に伝えておいた方がいいかもね、先生たちに」
「珍しく先生方に優しいね、まーちゃん。もう伝えておいたから大丈夫だよ」
卒業生が高校に遊びに来るのは時々ある事ですが、陽乃ちゃんが来るという事は必ず一波乱起きるでしょう。
普通に仲良くすればいいのに、雪乃ちゃんに態と嫌がられる態度を取ってはその後私に泣きついてくるので勘弁して欲しい所です。
千葉の兄妹は仲が良いのに、姉妹が仲悪いってのはおかしいよ!
……あ、比企谷くんじゃない方の千葉の兄妹は仲が良い所じゃないけどね。
「うん。まーちゃんは雪ノ下さんのケア頑張ってね」
「頑張るよー。さっさと仲良くすればいいのにねー」
「そうだね」
事情を知っている私たちからすると、陽乃ちゃんが拗らせている歪んだ愛情を直すだけでいいのにと思うんだけど……家庭環境が複雑だから仕方がないかぁ。
流石に実家の事までとやかく言ってしまうとお節介を通り越して傍迷惑になってしまうでしょうから、私が出来るのは雪乃ちゃんが孤独を拗らせないように優しいお姉ちゃんで居てあげる事だけだよ。
「……そういえば陽乃さんから三十通くらいメールが着てたんだけど、めぐりちゃんの方から何とか言ってくださいませんか」
「それは難しい相談だね。私じゃちょっと難しいかな」
「だよねー。メール全編に
「はるさん、まーちゃんの前では素顔を見せるから。はるさんからするととっても助かってるんだと思うよ」
「だったら私の苦労も報われるんだけどねー」
私としては皆が原作よりも良い関係になれば嬉しいし、その輪の中に入れれば更に嬉しい。
……しゃーない、陽乃ちゃんのお悩みくらい聞いてあげるかー!
「……それじゃあ一通目から返信していくかぁ」
「が、頑張って」
その日の夜に全てのメールを返し終わり眠りにつこうとした私でしたが、新しいお悩みメールがやってきて徹夜コースになるのでした。
「あ、来た来た! こっちだよ円加ちゃん!」
「……メールであれだけお話したのに、まさか数日後に呼び出されるとは。私の苦労は一体」
私がやって来たのは原作にも出てくる『ららぽ』という商業施設です。
その中にあるお洒落な内装と渋いお爺さんのマスターが淹れてくれるコーヒーが人気の喫茶店へと、陽乃さんからの呼び出しが掛かりました。
「いやー円加ちゃんは変わらないねぇ」
「つい一ヶ月前くらいに会ってますからね? 食事に連れて行かれましたからねー?」
「でも美味しかったでしょ? あそこのスパゲッティ」
「あれはごっつあんでしたー」
こんな風に私と陽乃ちゃんは大の仲良しです。
多分私が陽乃ちゃんと雪乃ちゃんの間に緩衝材として入れば大抵の問題が解決するのでしょうが、そうなると比企谷くんの役目が無くなってしまうのでそれは無しです。
「相談に乗ってくれてありがとね。でも雪乃ちゃんを私から取ろうとするのはいただけないなぁ」
「取ってませんって。そう思うならもっと距離を近付ける努力をしてくださいー」
「それは無理かなぁ。雪乃ちゃんに家を継がせる訳にはいかないから」
「捻くれた優しさですよねぇ。あ、そうそう、捻くれたといえば!」
本来はもう少し後で比企谷くんの存在を知るのですが、ここで話しても大丈夫でしょう。
……少しくらい良い印象になるように説明しておきますか。
「新しい部員が入ったんですよー。比企谷くんって言って、中々捻くれた性格をしてる男の子で」
「男の子? それはちょっと私が監査しないといけないかなぁ?」
「大丈夫ですよ! 雪乃ちゃんも比企谷くんを認めてますし、陽乃さんも気に入ると思います!」
「へぇ、雪乃ちゃんが。それは気になるなぁ」
「えぇ! きっと雪乃ちゃんも比企谷くんに惹かれてる筈ですよ!」
「……いや、それは無いと思う」
ほへ? あ、雪乃ちゃんが妹として好きな陽乃さん的には認めたくない事ですよね。
シスコンのお姉ちゃんを持って雪乃ちゃんも大変だ!
「……絶対分かってないよねぇ。(雪乃ちゃんが惹かれてるのは円加ちゃんだし)」
「分かってない? 何がですか?」
「ううん、こっちの話。それじゃあまた比企谷くんにも挨拶しに行かないとね」
「期待しててください!」
お膳立てはしておきましたよ比企谷くん! 後は頑張って下さい!
「それじゃあ円加ちゃん。遊びに行こっか?」
「はい! この前時間が無くて撮れなかったプリクラやりましょう!」
そして後日。手帳に貼り付けたプリクラ写真を雪乃ちゃんと結衣ちゃんに見られ、連行される宇宙人のようにプリクラへと連れて行かれるのでした。ちゃんちゃん。