やっとこさ、ちゃんとしたバトルに繋げられるぜぇー!
次回もバトルだぜぇー!
「髪……伸ばしたんだな」
取り敢えず上がれ。
そう言って彼女に家に招かれた折の事であった。
コーヒーメーカーにカップを新しくセットして、来客用のクッキーを出しながら彼女は言った。
「いや、切る暇が無くてね」
コートについた雪を払いながら答える。
ここに来るまでの経緯を考えて、声に隠しようの無い苦々しさが入ったのはどうしようもなかった。
「ねぇ、クレア。これ食べてもいいの?」
「ん? あぁ、勿論だとも。私の手作りだ、存分に堪能したまえ」
コートを椅子に掛けてからもう一人の連れを見やり。
椅子に座り、そわそわとした様子で彼女にクッキーを食べていいのか訊ねる少女がを微笑ましげに見る。
そう言えば、ここに来るまで何も食べて無かったけな……。
遅まきながら空腹を主張する自分の体に苦笑しつつ、クッキーに手を伸ばす。隣でひょいひょいと次から次にクッキーに手を伸ばす少女を見る限り、自分の分が必要分確保出来るか甚だ疑問だが。
「ったく、…………ちょっと待っていろ、軽く作ってやる」
そんな自分達の様子に事情を察したのか、呆れた様な声が投げ掛けられる。
どうやら軽く食べ物を作ってくれるらしい。そう言えば昔から料理は得意だったな……、と昔を思い出す。自分と彼女、それにもう一人の少年を加えてよく試食会をしていたのを思い出す。
思えばあの頃から自分達は料理が出来なかった様な気がする。もう一人はそれを気にはしてなかったが。
ありがとう。と言葉を返しクッキーに伸ばす手を止める。
流石に作って貰った物をクッキーで腹一杯だから食べられません、とは言えない。
隣で山盛りに積まれていたクッキーの山を崩さん、としている少女を見て思う。
これは昼食も食えるのかな。
「──で、何があったタカミチ」
キッチンの向こうから投げ掛けられた質問に、コーヒーを軽く口に含んで喉を潤わす。いい豆を使っているのかクッキーの甘味に馴れていた舌に、風味の良い苦味がはいる。
そして一呼吸置き。
「──
出来るだけ平静の声を出せたとは思う。それでも、もう割り切った事とは言え未だにくるものがある。
がちゃん。
一際大きな音がした。食器でも落としたのだろうか。
「ガトウが……死んだ!? 馬鹿を抜かせ、奴はあんなヘビースモーカーでも英雄の一人だぞ……!」
「姫様を狙う追手に不意打ちを食らってね。僕らを逃がすために、」
死んだよ。
そう言った。それでも直、信じられないのか動揺の気配が伝わってくる。
「そうだ……。姫。あの子は何で私の事を忘れている? ……一体何が起きているんだ」
最後の方は最早問う言葉では無く、自らへと投げ掛けた様に思えた。
自分の事を呼んだのか、と顔をあげる少女の頭を撫でる。
「記憶を封印したんだよ」
は、と彼女の口から息が漏れる。
「お前、それは」
「それしか、無かったとは言わない。全ては僕らの怠慢だし、無力だ」
「なら…………!」
なんで記憶を封印したり、彼女の言葉の続きが容易に想像できた。
それはきっと、自分が彼女の立場なら同じことを言うから。
アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフォシア。
黄昏の姫巫女。
十年前の大戦における中心地とも言える、王都オスティア。その元王女。
大戦期にはその身に宿したオスティア王族特有の特異能力『魔法無効果能力』、その力を十全に利用するためだけに何百もの命を吸いとらされた少女。
百年もの時を外法によって幼き身のまま生き延びさせられた、オスティアの
悲劇的に過ぎる人生だ。
それを、それを同じく十年前に『
漸く幸せへの足掛かりが出来た頃だった。
出来ることなら。
可能ならば。
そのまま緩やかに失った心を取り戻して欲しかった。
だけど。
世界はそう甘くは無かった。ただそれだけの事だった。
対価無しの幸せなどこの世には限られるし、簡単なものではない。故に、
──彼女の力を求めて追手が来るのは当然だったと言えるのだろうか。
十年前。その力を、姫巫女の力を利用し世界を消そうとした組織『
大戦の黒幕とも言える組織、ガトウたち『
普通なら、緩やかに少女の回復を待ってもいいのだろう。いや、そうするべきなのだろう。
それでも、
「この子には幸せになって欲しい。気付いたんだよ。関わらせちゃいけないんだ、こんな血の臭いのする所には。この子は
そんな。
「──当たり前の幸せになっても、いい筈なんだよ。この子は。
その為なら。
「僕はどんな障害があろうと、打ち砕くぞ」
言いきった。未だに胸の中に燻る激情を無理矢理にでも押さえ付ける。
これは彼女への宣言であるのと同時に、自分への宣言だ。
力及ばずにあんな悲劇を生み出した自分への、楔。それを外すつもりはないし、忘れるつもりもない。
今はみんなを助けてくれる
過去は救えなかった。
今は何とか誤魔化し誤魔化しだ。
だから。
だからこそ。
未来だけは守って見せる。
僕が、守って見せる。
それがタカミチの覚悟。タカミチの決意。
これが。
これこそが。
十年前は魔法の使えない、何一つ救えなかった、ただの戦災孤児だった彼の成長。
──漸く少年は
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「そうか…………なら、私は止めないよ」
それがお前の決めた事なら。
クレアはそう言った。
別に止めるつもりなどクレアには無いのだ、事の顛末が気になっただけでクレアはクレアだ。
その本質は昔から変わらない。
何処までも寛容で、
──無責任だ。
聞いたのも好奇心からで、気になったから聞いた、その程度の認識。
勿論タカミチが力を求めればクレアは力を貸すだろう、その程度には信頼関係があるし。
好意を抱いている。
それが恋かどうかは別として、だ。
「何も言わないのかい……? 非難の一つや二つは覚悟していたんだけどね。何を言っても身勝手なのは変わり無いし」
だからと言って、今更曲げるつもりも無いが。
「それが悩み考えた末の事なら、……私は応援こそすれ否定はしないよ」
昔馴染みの温かい言葉に驚きと共に目頭が熱くなる。
これでも一人でここまで少女を守ってきたのだ、その心労はつもりにつもってタカミチを圧迫していたのだ。
「ありがとう……そう言ってもらえると助かるよ」
自然と感謝の声が漏れる。
「別に、大した事じゃない。気にするな」
「いや、それでもだよ。ありがとう」
「ふん、昔より変になったんじゃないのかお前」
言葉は悪いが、そこから険の様なものは感じられない。クレアも、なにも本気で言ってる訳では無いのだろう。
「だいたいお前は昔から──」
続けるようにしてタカミチを詰ろうとしたクレアが言葉を切る。
何故かは、問わない。
自分も
隣でクッキーを食べ終え、うつらうつらと船をこいでる少女を見て、立ち上がる。
「君の方かい?」
「いいや、地元の魔術師は三年前に叩き潰してから関わっちゃこないからな」
キッチンの方から声がするも動く気配は無い。どうやら動くつもりは無いらしい。
椅子に掛けていたコートを手に取り着込む。
キッチンの向こうからクレアが面白そうな顔でこちらを見ていた。
「と、なるとそっちの姫ちゃんか。尾行でもされていたのか?」
「いや、警戒していたから無いと思う。足跡でも追ってきたんだろ」
そうか、とクレアは言った。
「八年だ。八年もあったんだから腕は伸びているんだろうな?」
なるほど、どうやらタカミチの八年の研鑽を見たいらしい。
もしここに一般人がいれば、訳が解らないと呼べる会話の連続だ。
しかし。
あいにくとタカミチは一般人ではないし。目の前の彼女も一般人とは呼べない。
どちらが
それに、先程見栄を張ったばかりなのだ。
「──敗けられない、よなぁ」
だから。
「後何分位で出来そうなんだい?」
「んー? あぁ、これな。そうだな…………十分位じゃないのか?」
なら、話は簡単だ。
「五分」
なに? 、と返ってくる声をそのままに、玄関のドアに手をかける。
そのまま振り返り、
「五分で終わらせてくるよ」
ドアを開けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
冷たい冬の風がタカミチをうつ。
先程まで外にいたとは言え、屋内の暖炉の暖かさに漸く慣れてきたのだ、勘弁して欲しい。
先程感じた魔力はこの土地の主──クレアにむけたものだろう。
いくら隠密が基本とは言え、土地を管轄する魔術師の機嫌を損ねたら成功率が下がる。その事を見越しての事だろう。
事実、それは正しい。
ケルトの魔女クレア・ティアーヌ。
現代に残る数少ない本物の
機嫌を損ねたが最後、目の前に広がる森のどこぞにあるヤドリギに生け贄として捧げられるだけだろう。
おかしいな……。
だからこその疑問。
魔術師としては基本。当たり前とも言えるそれだが、だからこそ不可解。
基本的に本国──『
魔術師ではない。
旧世界『地球』にそう言った技術体系があることを知っていても、詳しくは知らない。
その筈だ。
故にタカミチは今まで楽と言っても良いほど簡単に追手に対処できたのだ。
だが、これは。
「追手に魔術師がいるのか……。厄介だな」
それしかあり得ない。
と、なると。今までとは少し事情が変わってくる。
対魔法使いから対魔術師に、だ。
それに周りに民家が無いことは来るときに把握したから、容赦も無いだろう。
面倒だなぁ、と溜め息を一つ。
右手を胸の前に上げ、その五指に嵌められた銀の指輪を左手の親指、人差し指、中指の三指で摘まむ様に撫でていく。
「
魔力が人差し指の指輪に流れる。
ギリシア語で
「
中指が同じく緑色に。
「
小指が黄色に。
同時に体内で気を練り、身体中に行き渡らせる。全身に活が入り、なんでも出来るような全能感が身を襲う。
それを落ち着かせると同時に指に嵌められた『霊装』が力を発揮する。
「──っ……!」
気で強化された体にさらに力が加わる、今にも溢れだしそうな力の奔流を一瞬で把握し掌握する。
次いで視界が切り替わる。
極彩色の世界。
視界の全ての色と言う色が濃くなった感じ。
そして新たに視界に写る森中を覆う魔方陣。森の中心に位置するここを基点とした結界だろうか。
ここから見るだけでもわかるほどの圧倒的な情報量。
一体どれ程の式を組み込んでいるのか。
それを一瞥し、新しく自身の周りにシンプルな作りの球状の魔方陣が展開されるのを確認する。
障壁の構築式としては物足りないが強度は確かだ。
そもそも、大規模な儀式魔術や霊装を防ぐほどの力は無いが、石化や麻痺と言った直接的ではない呪術を対象としたものだ。
戦闘では十分に役に立つ。
「よし。キチンと動くか」
準備は万端。
欲を言えばもう少ししっかりとした霊装が欲しいが、欲は言えない。
現状はこれがベスト、霊装が発動できるだけ儲けもの。
だから、
「行くぞ……!」
────跳んだ。
一足跳びの大跳躍。
縮地術あるいは瞬動。
そう呼ばれる古来中国に伝わる空間を縮める秘技、それの模倣。
勿論空間そのものを縮めてしまう術もあるのだろうが、これは違う。
魔力、あるいは気。それらの力を足に溜めて大地を蹴る。
魔法戦士あるいはこちらの戦士にとってポピュラーとも言える基礎動作。
言葉にすると簡単だが奥の深い技術、それを行った。
瞬動によって上空の結界ギリギリまで上げられた体で森全体を見る、自然と前のめりになり前転の形となるが構わない。
──来た!
それを好機と見たのか地上から色鮮やかな様々な光が打ち上げられる。
一見すると矢に見えるそれはある物は直線軌道を、またある物は複雑な軌道とタカミチ一人を狙って空中を突き進む。
数にして千近く。
魔法使いの戦闘では基本的な魔法。
故にそれだけで相手方の
いくら障壁にある程度の魔法遮断効果があるとは言えこれだけの『
だが、
「数にして16。よくもまぁ、これだけの精鋭を簡単に投入できるもんだ……!」
呆れ混じりの声。
矢の数などでは無くそれを撃つ
家を基点に三方向。
攻撃は正面を除く全てからだった。
なら必然、
「──正面か!」
魔術師は基本的に魔法を使わない。
理念的に使うことはあるが、そもそも魔術師自体が魔法を見切った者達だ。
だから魔術師は基本的に魔法を使わない。
そしてこの中に魔術師がいることは確定していて、三方には魔法使い。
必然いるのは正面となる。
無論、罠かもしれない可能性はある。
だがタカミチには確信があった。正面にいる、と言う確信が。
勘だ。
しかしその非合理的なものにタカミチは従った。
虚空瞬動。
大地を蹴ったそれよりも一つ二つ難易度の上がる技。
その名の通り虚空を蹴って跳ぶそれを、空中で体勢を整え正面の下を目指し、
──再び跳んだ。
迫り来る光の数々をすり抜け、跳ぶ。
伸びた髪が風によって後方に流れた。
時間にして1秒に満たないそれで、タカミチは地上付近に到達した。
空中で目標を見失い結界に炸裂して、中空に散った
しかしそれには目もくれず、目の前に
ローブを被った男を見つける。
「来たか……!」
「吹き飛べぇぇえー!!」
こいつが魔術師なのだろう。
方向の誤差からか後少し男には届かない、故に。
男の正面約十メートルにそのまま前転するような軌道で、加速された落下の重力を乗せた踵落としを放った。
ズガアァァァァア!!! と言う凄まじい音と衝撃が発生した。
開幕一番の先制攻撃。
魔術でも魔法でもなく、強化された脚力による蹴撃。
魔術師の予想を越えたそれは大地を抉り、衝撃波が次いでいくように炸裂して、
──直撃した。
次回は!
『タカミチ君本気では無いです宣言』
『タカミチ君一級フラグ建築士』
『クレアちゃん幼女と戯れる』
の3つだよ!別にオリ主の影薄くないからね!?タカミチ主人公でいいやとか思ってないからね!?
追記・頑張って大体6000字って10000とか書くやつらは化物か……!?