それは、とある早朝の一幕。
「オレ、この食事が終わったらもう一眠りするんだ…………」
食卓に並んでいる朝食を目の前にして、突然少年はそんな事を言い出した。まるでこの食事が大きな戦いであるかのように……。
「何バカな事言ってるの、兄さん」
それに対して至極当然の反応を返す少女。多分の呆れと、僅かな怒りを含んだ声色をしているが、それすらもどこか心地良く聞こえる清涼な声だ。
「オレ、学院を辞めようと思うんだ」
「え? に、兄さん……?」
「1年間お前と一緒に通ったけど、
「それは、……確かに怪しいけど」
「ほら!? 妹にすら卒業を見込まれてないし!? ええ、分かってましたよ!? 2年次生に進級出来たのも奇跡というか権力によるゴリ押しだったという事はね!?」
「いや、でも座学は私よりもいいんだから、そんな事は……」
「その分実技は壊滅的だけどな!? その座学だって、お前と
「その台詞の所為で威厳も無くなったと思う…………」
少女は呆れながらも朝食に手を付け始めた。パンと目玉焼きとサラダというごくごく一般的な朝食だ。作ったのは少女自身で、少年が作る時もあるが、その時は肉料理が中心になる。
両親は帝都で働いていて、ここフェジテにある小さな一軒家は2人が学院に通う為だけに両親が買ったモノであり、故に現在は兄妹2人きりで暮らしている。
「…………とにかく、お前よりもオレの方が
「それは、……確かにそうかもしれないけど」
「お? その反応……もしかしてソフィアちゃんは寂しいのかな?」
「そんな当たり前の事言わないで!」
「ひぃっ!? すいませんでしたぁっ!」
茶化そうとしたら真顔でキレられて平謝りする情けない兄の姿がそこにはあった。しかし兄が頭を下げた途端、ソフィアの頬が僅かながら紅潮し、兄が頭を上げた途端に頬の朱みが消えた。とても器用なモノである。
「──この1年大丈夫だったんだし、一緒に卒業まで頑張ろう? その
「今出来てないんだから、そんなたらればは意味無いよ。だからソフィア。学院を卒業したら立派な魔術師になって兄を養って下さい!」
「…………は?」
「やっぱりこんな
「──ヴァルドさん?」
いつの間にか、席を立ったソフィアの手には
「ソフィアちゃんそれだけは止めて下さいお願いしますそれ以上そんな瞳で見下されると何かに目覚めてしまいそうにな──」
「黙ってさっさと食べて下さいお兄様。学院に遅刻してしまいますわ。今日から新しい講師の方がお見えになるんですから、しっかり致しませんと…………ね?」
「は、はい…………」
ソフィアの言葉遣いが普段より丁寧になった時はヤバい。そう、今までの経験からよく分かっているヴァルドはイエスマンになるしかなかったのであった。
そして、今日からやって来るという講師。その者との出会いが、兄妹の運命を大きく変えていく事になる。
人物の描写は追々やっていきます。
どこに描写を挟むのが自然か考えてたら全く思い付かなかったのでスルーしたなんて事はありませんよ、ホントだよ!?←