世紀末になった現実世界でオリ主が邪ンヌを召喚したようです。 作:鹿頭
「東京に核でも降るのかな?」
朝起きて、テレビつけて、テレビ見て、映し出されたのは、全世界に怪物が出て大混乱……
政府機能は破綻。各自治体の対応に任せ……いや、無理だろ。
「見た事有るなぁ、この怪物……あ、切れた」
どうやらテレビ局か発電所が吹っ飛んだらしい。いや、映像切れただけだから、詳しい事は何とも言えないけど。
「お外は…どれどれ……うん、地獄」
そっとカーテンを開け、その隙間から盗み見たのは、近くの街か何かが燃え盛る光景。
上にはワイバーン、だろうか。
空飛ぶトカゲが空を忙しなく飛び回っていた。
ついでに頬をつねってみる。痛い。
「特別参考人招致で菌糸類呼ばないと……いや、国会なんてもうねえか。ねえだろうな」
ほんの僅かだけども知る事の出来た光景と、どっかのソシャゲで見たような、空を跋扈しているトカゲ。
目には見えているが、これらが現実である事を理解し難い。
「ネットは繋がって……無いな。こりゃ電波局も消えたかな?」
そうだ、ネットがあるじゃない。と思って開いたが、無情か有情か。圏外の表示が出ていた。
最早何の役にも立たなくなった端末を放り……
「あれ、FGOがない……まいっか、どうせ圏外だから繋がんねえよ」
投げる。
「寝るか。せめて楽に死にたいもんだねぇ」
何故、ゲームに良く似た化け物が空を跋扈して、世界を襲い回っているのかは想像もつかない。
警察は、消防は、自衛隊は生きているのか。
思考の渦に沈むが、一つだけ、どうしようもなくわかるのは、どうしようもない、という事だけだ。
暇だ暇だと常々嘆いていたが、こんな形で非日常が訪れたとしても、嬉しくないし、何もできない。
「あ、ここまで来たか」
近くから地鳴りのような雄叫び。
それに混じる人の悲鳴。子供が親を呼ぶ声がする。その逆も然り。
正に、阿鼻叫喚の地獄の様な様相を醸し出している
その上、物が激しく燃え盛る音や、建物が崩れ落ちる音。金属が軽くひしゃげるような音も聞こえてくる。
どうも、この街もワイバーンの餌食になるらしい。
興味本位で窓の外を見てみようか、とも思ったが、死ぬ前に余計なモノを見るのはよろしく無い。
いっそ炎で焼き死ぬくらいなら、包丁で首を斬った方がマシじゃ無いか。
焼死は一番キツイだとかなんとか色んな話聞くし。
知らない、いや、もうすぐ味わうんですけどね。
どうやら、見つかったらしく、窓の外で佇んでいるワイバーン。
大きな口を開けながら、吐いた火がすぐそこまで来ている。
肌を切るような熱と痛みを感じる。
窓枠は熱で歪み、ガラスが吹き飛んで行く。
「流石に、焼け死ぬのは、嫌……かな」
人は、死ぬ寸前には世界が遅く見えると言うのは本当だったか、などと随分場違いな感想をもって、意識を閉ざした。
「ーーなら立ちなさい。焼け死にたく無いんでしょう?」
「はい?」
筈だった。
轟音が鳴る勢いで旗が背後から振り翳され、炎が搔き消え、否。吹き飛ぶ。
そして勢いそのままに、振り抜いた旗布を巻き上げ、ワイバーンの喉に突き刺す。
隙間風が吹くような音を鳴らし、大きな物が落ちたような音がする、のではなく、事実落ちたのだろう。
そんな芸当をこなした
「邪ンヌ……!」
「ちょっと!何よそのふざけた発音!焼き殺すわよ!?」
全く、助けたのは間違いだったかしら……などとぶつくさ言う彼女は、間違いなく。
どう見ても。
ジャンヌ・ダルク・オルタだ。
「ま、良いわ。時間も無いですし。……ハイ、コレ。契約書」
彼女は、何処からか丁寧にインクで書かれた契約書、とやらを目の前に差し出してくる。
余りの事態の展開っぷりに、脳が混乱したのか、見惚れているのか。
身体を動かそうにも動かない。
「何?魔女と契約なんか結べないって?ま、そうよね」
呆気にとられてる自分に対して、何ともニヒルな嘲笑を浮かべる。
少し落ち着いたのか、現実に追いついたのか何なのか。
思わず奪い取るように紙を取り、ペンを探そうと辺りを見回し、グチャグチャになった部屋の惨状を確認する。
そこら辺のガラス片で指を切った方が早かった。
「ちょっ」
ご丁寧に記名欄まで設けられた紙面に、血で名前を書き上げ、もうなんだって良い、ついでに血判も押しておく。
「……そ、そう。そうですか。貴方は魔女と契約したのです。もう逃げ場は有りませんよ?」
「拾われた命だ。構わないよ」
契約書を返す。
「ふ、ふーん……結構です。…では改めて」
コホン、と咳払い。
「竜の魔女、ジャンヌ・ダルク・オルタ。求めに応じ参上しました。ま、短い間でしょうけどーーちょっと?ちょっーー」
話の最中ではあるが、突如として倦怠感に襲われ、そのまま意識を失った。
「ーーあら、気がついたの?思わず、死んだかと思いました」
「……ここ、は?」
見慣れぬ景色。
浮上した意識が知覚したのはそうだった。
身体を起こす。勢い余って三徹した次の日の様な疲労感に襲われるが、無理にでも身体を起こす。
「ちょっ、まだ横になってなさい!」
案外優しい。
言動がまるでチグハグだ。けれど、これが彼女の素なのだろう。
お言葉に甘えて横になる事にする。
「……ここ、は…いや、今、何が起きてるのか、知ってる?」
「さあ?知りません。ただ、どこもかしこも愉快な事になってるのは確かね」
成る程。聖杯からの記憶付与的な奴は無いのね。そうなのね。
「……所で、契約についてなんだけど……」
「なに?今更後悔してるの?」
「いや、そうじゃなくて、魔力とかそこら辺の話ね」
また自嘲するような笑みを浮かべたので、間髪入れずに返す。
ムッとしたように、表情が変わる。
「……何が聞きたいの」
「俺の魔力量とかって……「ゴミね」
「あっそうでございますか」
薄々感じてたとは言え、こうも断言されると心にクル。
「そう、そうよ!もっと申し訳無さそうな態度を取りなさい!契約する前より弱くなっているんですもの。これじゃあ宝具一発分にもならないわよ?」
「そんなに酷いの!?」
「ええ、そう。ホント、酷いったらありゃしないわ。ハァ……どうして契約なんかしちゃったのかしら」
露骨に溜息を吐くジャンヌ。
その口角は僅かに上がっている。
「………じゃあ、べ、別の質問を……」
「ええ、良いわよ?このままだと、貴方、ええ、バツが悪いですものね」
何かと口を開けばそのまま煽られる。
と、兎に角、気を取り直さないと。
「…………ここは?廃墟っぽいけど……」
「移動はしてないわよ?」
「はい?」
「アンタが倒れてから?ハッ、それはそれはもう大変!次から次へとワイバーンが……」
「竜、操れなかったっけ?」
「………あーハイハイ、帰ってもらいました」
何で知っているのよ……などと小声で呟くジャンヌ。
それはともかく。
こんな惨状になった理由はなんだ?
「ああ?なんか緑色の鉄の塊…ヘリ?でしたっけ?それが色々飛ばしてきたもんですから、撃ち落としてやった時……ね」
「ん"ん"!?」
「何よ、その豚みたいな声。ちょっと面白かったわ、もう一回やってちょうだ「ジャンヌ!」
思わず勢いよく身体を起こす。
その勢いで思ったよりも大きな声が出てしまった。
「な、何よ」
少したじろぐジャンヌ。
「多分今、俺らこの国の敵扱いされてる」
「………嘘よね?」
「ホントホント」
自衛隊機を撃墜した、と言うより、未だに抵抗が出来ている、ってのがマズイ。 駐屯地が健在の可能性がある。
その上、ワイバーンを操った、って事で役満。晴れて敵認定された、という事。
「ア、アレって倒しちゃダメ系の奴だったの!?なんかいきなり飛ばしてきたから全部燃やしてやったんだけど……」
「全部って……どんくらい居たのさ……」
「……た、沢山」
バツが悪そうに目を背けるジャンヌ。
この分だと、自衛隊は団レベルで生きてるか?
「……撃ち漏らしは?」
「え?う、撃ち漏らし?無い、けど…」
……いける、か?
「だったら、俺を抱えて兎に角此処から遠くへ移動できるか?」
「!そうね。その方がマシね」
流石は……辞めとこう。
腕を掴まれ、ジャンヌは自分の首に掛けたかと思うと、足を上げられ瞬時に持ち上げられーー凄まじい浮遊感に襲われる。
「ちょっいきなっーー「黙ってなさい!舌噛むわよ!」
超人的身体能力に任せて目まぐるしく動く視界。抱え方は消防夫搬送と、効率は恐ろしく良いのだが、抱えられる方は堪ったもんじゃない。吐きそう。
「……吐いたら殺すわよ!?」
こっちの吐き気を察知したのか、事前に警告して来る。そうだよね。空気の流れ的にいい感じにーーーーごめん無理。
「ハァ!?ちょっーーーー」
前途多難。無事に生き残れるのか。
ジャンヌのなにやら、叫ぶやら、喚くような声をbgmにしながら、再びその意識を閉ざした。