世紀末になった現実世界でオリ主が邪ンヌを召喚したようです。 作:鹿頭
「先程の件につきましては、誠に申し訳無く思っております」
「…………で?」
「ごめんなさい」
「ハァ…………」
先程、と言えば。
意識を失っていたので、全く記憶も無いし、身に覚えも無い、と言えば無いのだが……
なにやら俺の吐瀉物を被ったそうで、意識が目覚めたと同時に土下座の態勢を取らされ……自発的に取ることになった。
「この国には、それはそれは便利な言葉があるそうですね。ブッダの顔も三度まで、だとか。ま、私はそんな大層な存在ではありませんけど?」
「ごめんなさい」
「ま、幸いにも水道が生きてましたし、服は変えの物を持ってましたから?」
「ごめんなさい」
「次は殺す」
「申し訳もございませんでした」
「………フン」
何とか赦しを得る事が出来たようだ。
それはそれとして。
此処は一体何処なのだろうか。
廃屋の中……にしては随分と生活感があるが……いやでも、このご時世、何処も空き家か。
「新宿よ」
疑問に答えるようにジャンヌが唐突に口を開いた。
「新宿ぅ?何でまた」
「……私が土地勘あるの、此処くらいだし?ま、そんなに著しく景観は変わってないようね」
窓から外を見つめながら、過去を想起するかの様に言った。
「……待って、ここは人は居ないのに水道は生きてたの?」
「市ヶ谷だっけ?そこに詰めてる兵士がちょこちょこ外に出てはウヨウヨしてる食屍鬼だのデーモンだの狩ってるわけ」
「自衛隊バリバリ健在なのかよ……」
「ま、それにしては出来すぎてるから、大方、教会の連中でも噛んでるでしょうけど。それと、渋谷の方は経済圏を維持してる見たいだけど……私としては行くのはイヤね。他は知らないわ」
近くのソファーに座って、その髪を右手で乱雑に上げながら吐き捨てる様に言った。
いや待て。
そんな訳がない。
俺の知る限り、魔術協会も聖堂教会も存在しない。
と、するとジャンヌの見当違い、と言うことになるが……
「そうだ……令呪…そう、令呪!」
「ハァ?何よ突然大声出して。びっくりするじゃない」
サーヴァントと契約するからには、令呪が必ずある筈。
と言うことは……ある、のか?
令呪も。
とすると。FGOが消えていた事も、転移、と言う事で説明がついてしまうが……
「大体何よ、今更令呪!なんて言って……」
「イヤ、俺に令呪って有るのかな?って思ってさ」
「バッカじゃないの?有るに決まってるじゃ……アレ?」
ジャンヌが俺の手を取ってまじまじと見るが、突然の如く、両手、何方の甲にも令呪は浮かんでるはずも無く。
そんな事よりも、急に手を取られた事によって心臓の運動量が跳ね上がった事が問題で有る。
「可笑しいわね……あ、ひょっとしてアレかしら。胸元とか背中とかに浮かんでるってヤツ?………風呂場の前に鏡有ったから、ちょっと見てきなさいよ」
「お、おう……」
何やら胸の鼓動が勝手に高鳴っている。
それもそうだ。だって…ねえ?
兎も角、鏡の前に着く。
当然、そこに映るのは当然の如く自分の顔や体。
一つ挙げるなら、疲労が露わになっているのか、少し不健康そうだ。
顔に出ているのだろうね。多分。
上着を脱いで、確認する。
「胸元には無し……背中……背中見辛いな……無……し…」
最早無いと思うが、脚なども見てみるが、矢張り無い。
「なんと」
上着を着て、思わず出た言葉。
しかし、令呪無しで契約って……
一体全体どう言う事なのか。
わからない。
増えた疑問を抱えて戻る事になってしまった。
「ん、有ったでしょ?」
「無かった」
「ハイ?」
「そんなもんねえよ、何処にも」
「ハイハイ、あー面白い面白い。つまらないわよ」
「嘘なんて言ってないぞ」
「……本気で言ってんの?あんま言ってると焼き殺すわよ?」
「本気で言ってるよ……」
事実、何処にも見当たらないので、堂々と言う。
「…………ちょっと見せなさいよ」
と言うや否や、ジャンヌは近づいて来て……片手で俺の上着を掴んで脱がせようしてくる。
「ちょっ「鬱陶しい、良く見え………無い」
胸にも背中にもない事を認めたのか、ジャンヌが凍りついた様に動かなくなった。
「嘘よ……そんな筈…パスだって……ちゃんと…」
「どう言う事なのか、俺にもさっぱりわからないんだけど、どう言う事なの?」
互いに混乱の様相を見せている。
「これじゃあタダの使い魔じゃ無いの!何よそれ!…………ちょっと詳しく見せなさいよ」
「ジャ、ジャンヌ、何して、ちょっ、お前っベルトに手をかけるな!!気付け!お前が今何しようとしているか気付け!!!」
「何よもう!うる……さ…い…………」
再び固まり、動かなくなったジャンヌ。
数秒も立たないうちに、ぷるぷると震え始める。
「な……」
「な?」
「何させてくれるのよ、この変態ッ!!!」
ジャンヌが叫ぶや否や、俺は突き飛ばされ、壁に勢いよく叩きつけられる。
その口からは、醜く空気が漏れる様な声が絞り出るが如く発せられる。
「ッあ……っ……あ」
「!あ……わ、ワザとじゃ…」
何か目の前の人影が呻く様な気がするが、何分、全神経が意識を繋ぎとめ、痛みに耐えるのに研ぎ澄まされている。
マズイ。
頭の中の何処かが、警鐘を鳴らす。
「ちょっ……これ、どうするのよ!ああっ、クソ!」
保て。
死ぬな、死ぬな。
頼むから生きててくれ。
出ないと、ワザワザ似合わない事をした意味がなくなる。
「私じゃあの聖女サマみたいに癒す事なんて出来っこない……」
「どうすれば良いんだろうね……」
「そう、どうすれ……ば?」
目の前には、何事も無かったかのようにヘラヘラと笑う男。
ええ。だから、そう。
これは正当な怒り。騙された事への正当な報復。
ゆっくり剣を抜く。
「いや、驚かれましたかな。いやはや、つい魔が差しまして……すみません!本当にすみません!ごめんなさい!」
私の憤怒を感じるや否や、不敵な態度が段々と恐縮したそれになり、遂には土下座の姿勢を取った。
次は無い、と言った手前、この場で殺しても構わないのだが……
ここで殺すのはなんだか負けた気がして釈然としない。寧ろ癪に触る。
「……
「!……はい」
「一先ず、令呪が無いのは確認できました。どう言う理屈で現界、契約出来ているのか。詳しい事は不明ですが、私自身の霊基が使い魔、良くて幻霊レベルまで落ちているのは確かです。宝具が撃てない理由も恐らくはそれでしょう」
「な、なるほど」
「加えて、貴方には令呪の絶対命令権の行使が出来ません」
「………」
「ですので、貴方の命令には私は従う義務は有りません。その事を絶対に忘れない様に。わかりましたか?」
そう言うジャンヌの眼は、凍てつく氷の様に冷ややかで、熱を感じさせないモノだった。
そうだ。
いきなり好きだったゲームの、それもジャンヌ・オルタが居る、という、言ってしまえばイカレた状況に感覚が麻痺していたのだろう。
「勿論でございます」
だから俺は畏まって言う事にした。
弱体化した、とは言え、俺なんか殺すのに片手間でできる存在、だと言う事を忘れてはいけない。いけなかったのだ。
「では結構。……ホント、心配させちゃって……ハァ」
敬意を忘るるべからず。
それが俺の得た教訓だった。
「あの、ジャンヌ。気になったんだけど、聖杯、って有るのかな」
とは言え、気になる事が有る。
自分の蒔いた種で散々な目には有ったし、口を開くのには抵抗が有るが、それでも空気を無視してでも話す必要がある。
「……現状としてはわからないですし、一体誰が黒幕なのか、なんて検討もつきません。そもそも聖杯によって私が呼ばれたかどうかも疑問ですし……それに……」
「それに?」
「……いえ、なんでもありません。今は憶測は避けるべきね、マスター」
「わかったけど……ジャンヌ」
「はい?」
核心に触れる。一番、この点が気になっていた。
さて、どう来るか。
「ジャンヌは、もしも黒幕がいたとして、この状況を解決しようとは思ってる?」
鬼が出るか蛇が出るか?どちらにせよ、聞かねばならない。
しかし、帰ってきた答えは、やはり、と言うべきか。意外と言うべきか。
「…………さて、どうでしょうね?」
ハッ、と声が聞こえてきそうな呆れた様な、蔑むような笑みで彼女はそう答えた。
「どう……って」
「だってアレよ?聖杯があるかもわからない、誰が黒幕なのかもわからない、でない事尽くめよ?どうしようもこうしようもないでしょう?」
「ま、まあ、そうだけども……」
至極同然の事を返される、と言うよりも先程出た事実を鸚鵡返しされる形になった。
「ひょっとしたら、聖杯も黒幕も無くて、こんな状況が永遠に続くのかもしれないのよ?」
「それは……」
「ま、そんな時はアンタが死ぬまでは付き合ってやるわよ」
「ジャ「勘違いしないでよ?私は貴方の【焼かれて死ぬのは嫌だ】と言う願いに応じて来ただけ。それ以外の死因に関しては関与しないわよ」……そうですか」
少なくとも、焼かれ死ぬ事は無いようだ。
「ま、それとも気の迷いでしたー、やっぱり焼かれて死にたいですジャンヌ・オルタさまーって泣きつくんだったら焼き殺してあげないこともないけど?」
「は、ハハハ……」
反応に困る。
一体どういう意図なんだ?
どう返すのが正解なんだ、これは。
「ですから生きるのが嫌になったらいつでも言いなさい、マスター。その時はちゃんと殺してあげます」
「………ああ、その時は頼むよ、ジャンヌ」
どうやら、彼女なりの優しさ?だったらしい。
さてどうしよう。シリアスさせても良いけど……メガテンになっちゃいそうなんだよなぁ……ってかメガテンの方がやりやすいって言うかこの世紀末。
世紀末の中イチャイチャさせて終わらせようかしら