あやしけものフレンズ~ようこそ怪獣ランドへ~   作:家郎

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「ばすてき」的な……ね?


#10 ききてき

 「私は……?」

 はぐらかされたのが気に入らないビオラが、デストロイアに繰り返し聞く。彼女はついに折れ、口を開いた。

 「君はね……ヒトを襲った怪獣じゃないんだよね。もともとこの島にいたのが、いろいろあって進化してこうなった? っていうか……まあ、説明しづらいんだよね……」

 ビオラは微笑んでいる。嬉しい。自分についてのことが1つでも分かったのだ。

 

 山を下るのは案外大変だ。転がり落ちないように気をつけながら、足の先に力を入れて歩かなければならない。

 20分くらいたっただろうか。まだ研究所の屋根がわずかに見える。

 バラゴンは、穴を掘ってどこかに行ってしまった。穴を通ろうと思っても、とても通れる幅ではなかったので、諦めて律儀に下っていた、というわけだ。

 山の空気は澄みきっている。遠くに人影が見えた。

 近づいてくる。翼を広げた人影が、空を駆けてやってくる。

 

 人影の正体がやってきた。昆虫の、もっと言えば、蛾のような鮮やかな翼だ。ラドンやキングギドラとは違う。

 後ろに、もう一人のフレンズもいた。陰に隠れ、こちらを覗いている。彼女の翼は、黒を基調とした鋭い色をしていた。

 「久しぶりですね、デストロイアさん。この子たちは……?」

 「お、モスラにバトラ、久しぶり。こっちからかばん、ビオラ、サーバルっていって。新しい仲間」

 へえ、と、翼が鮮やかな方のフレンズ。もう1人はまだ隠れている。

 「こんにちは。私はモスラ。こちらの子はバトラです」

 バトラは小さくうなずくが、一向に前に出てくる気配はない。

 「珍しいね、ここに来るの。何か用でもある?」

 するとモスラはうつむき、小声で言った。声にさっきまでの明るさはなく、悲しみにあふれている。

 「……ホッカイエリアが、壊滅したそうです」

 ホッカイエリア、という言葉に、デストロイアが敏感に反応する。

 「ホッカイ……って、オルガがいるところじゃ!? まさか……」

 「詳しいことはなんとも……風のうわさなもので。でも私たちは見ましたよ、確かに」

 モスラの白っぽい髪色は、今の空気と合わずに浮いてしまう。どちらかと言えば、バトラの黒が合っているように感じる。

 「レッチ島から来た時、通ったんです。その時、あそこは炎に包まれていました……。大きな銀色の何かが中心に見えていましたよ」

 デストロイアは動揺を隠しきれない。「オルガ」がホッカイにいるのは、かばんたちにも分かった。何かあったのかもしれない。

 「……他には何か……わかる……?」

 「……私たちは、銀色のものに攻撃されたんです。一応近づいて、情報を手に入れたい、と……そしたら、あれが虹色の光線を……!」

 一体何が起きているのか。間近で体験してきたモスラの言葉からは、一刻を争う状況であることがよく分かった。

 「虹色の光線、か……!!」

 デストロイアが何かに気付いた。彼女の顔からどっと汗が噴き出す。

 「『メカゴジラ』だ……!」

 

 とりあえず急いで山を下りた。まずは、状況を整理せねばならない。

 「どうしてメカゴジラは、ホッカイエリアに上陸したんでしょう……?」

 「多分、オルガがいるからだろうね。メカゴジラのプログラムがまだ生きてるなら、怪獣を殲滅するようになってるはずだから。でも確か、あたしと戦って海に沈んだ気が……」

 「せるりあんダネ。時々ダケド、元ニナッタ物ガソノママニナッテイルせるりあんガ見ツカルミタイダヨ」

 ラッキービーストの意外な一言。メカゴジラが仮に当てはまるならば……。

 「じゃあ、次の目的地は……」

 「ここだろうね。怪獣がたくさんいる。あれがここに来た時には、もう……」

 その時、キャタピラの音が近づいてきた。

 「ヤア、デストロイア。ソノ子タチハ?」

 「あぁ、モゲラか。お客さん」

 噂には聞いていたが、モゲラもロボットだったとは。鼻がドリルのようになっていて、ひし形の目が光っている。

 「モゲラ、でーたヲ共有シテモ、イイカナ」

 ラッキービーストとモゲラがデータ送信を始めようとした時、デストロイアが間に割って入った。

 「あ、悪いけどそんな場合じゃないから! そうだモゲラ、他のモゲラと連絡ってとれる?」

 「モチロン。簡単ダケド」

 「じゃあ、今から1つ、頼んでいい?」

 

 モゲラの協力を得られたのは大きかった。彼――どうやらモゲラは男の設定らしい――が島じゅうに散らばっていることから、デストロイアが島のフレンズ全員に集まるよう呼び掛けることになったのだ。

 「えーと……みんな、聞いて。緊急事態。みんな、出来るだけ早く第2登山道出口に集まってほしい。繰り返すよ。緊急事態。すぐ第2登山道出口に集まって、以上……と。よし、これを他のモゲラに送って、繰り返し流させる。頼むよ」

 「ヨシ。送信開始……送信開始……」

 とはいえ、辺りはすっかり暗い。今日は新月らしく、月明かりすらない。本当に来てくれるだろうか。

 

 5分ほどたった。島のそこここから、録音されたデストロイアの声が聞こえてくる。

 1番初めに姿を現したのは、ガイガンだった。

 「緊急事態? 一体何が……」

 説明を聞いたら彼女は納得、戦略を練り始めた。かばんの経験から、セルリアンが水に弱いのは分かっている。しかし、メカゴジラほどの巨体を水に沈めるのは不可能に近い。

 「……と、いうわけで、海岸で総力戦を展開。攻撃に注意しつつ、石を狙い撃つ、と。これでいいな?」

 全員がうなずいた。ガイガンが、ホッカイエリアの方向を見つめる。彼女の棒サングラスが、遠く離れた何かをとらえたらしく、報告する。

 「正面に敵影を確認。距離およそ3000……か。あと10分もすれば上陸するだろうな」

 怪獣ランドの未来を決める一戦が、今まさに始まろうとしていた。




《登場怪獣》
・モスラ
ジャパリパーク近海の島、レッチ島に住むフレンズ。バトラと2人で暮らしている。
言葉遣いから何から、慈悲深さが伝わってくるかのようだが、作者の表現力が足りていない。
別の島からレッチ島に移住、時々怪獣ランドにやってくる。
・バトラ
モスラの兄弟のような存在。モスラと同居中。
島出身のため、人付き合いに慣れておらず、ほとんど口を開かない。
・モゲラ
怪獣ランドにおける、ラッキービースト的存在。フレンズと普通に会話している。
ヒトの作った対怪獣兵器をモデルにしているらしい。
・ガイガン
再登場。棒サングラスはかなり万能なディスプレイになっている。
《予告》
次回、運命の一戦。「この戦いで、すべてが終わる。(『ゴジラVSメカゴジラ』より)」
次回、「めかごじら」
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