本当にそうなるのか?
2分たった。次にやって来たのは、スペースゴジラたちだ。
「サンドスター探してたらモゲラに会って……何? 緊急事態って」
「――とまあ、こういう訳でね」
「なるほどね……今の状況は?」
ガイガンは、さっきからずっと海を見ている。そろそろ敵影がはっきり見えてくる頃か。
「距離およそ2000。後だいたい7分か……そういやお前、銀色だったとかって……」
モスラがはい、と答える。メカゴジラの情報は、今のところあまり分かっていない。知っている者はいても、話す時間がないのだ。
「今見てるんだが、全体的に黒っぽくなってるみたいでな……セルリアン化が進んでるらしい」
「なるほど。でも今はとりあえず、全員集めないと」
「私、呼んでこようか?」
巨大セルリアンとの戦いを経験したサーバルが名乗りを上げた。あのときも、キョウシュウ中のフレンズが集まり、ようやく倒せたのだ。人数が多いほど、倒せる確率は上がる。
「ああ……頼む。早いとこ集めなきゃな……移動速度が上がってる」
セルリアン、ここではメカゴジラと呼ぶべきか。予定より早くここに来そうだ。メカゴジラによる、怪獣ランド蹂躙だけは防がねばならない。サーバルが深い森に駆け出して行った。
「……さてと。今のうちに話しとかなきゃね。メカゴジラについて」
デストロイアが知っている情報は数多い。ガイガンを除き、その場にいる全員が聞き入った。
「メカゴジラ……あのときは確か、口から光線、目からもビーム、お腹からは……威力はヤバかった。ミサイルもたくさん装備してたらしいけど、使い切ったらしくってね……途中から撃ってこなくなった。あと、重いくせして飛べるから、あれ。あとはあれかな……電流流してくるやつ。まあ、こんなとこだろうね、あたしが見たあれの武器。サイズ的にはあたしたちが圧倒的に不利だけど、その分有利かも、ちょこまかして攪乱出来るしね」
全員に意味が伝わったかどうか。そこに、キングギドラ達が駆け付けた。サーバルも一緒だ。
「サーバルから聞いてる。説明はいい」
「距離およそ850。上陸予想、残り2分」
迫っている。さっきより速い。
サーバルが再び、森の中に走って行った。
2分半後。ついにメカゴジラが上陸した。フレンズはある程度揃っていたが、まだ数人来ていない。
「作戦は説明した通り。始めるよ……メカゴジラ撃滅作戦、開始!」
デストロイアの掛け声とともに、それぞれが行動を開始する。
「よっと。私の名前かたって、許しちゃおけない、ね」
「今はいいだろ。それより、反撃されたら……」
「それは、俺が。それなりの策はある」
「よーし、行くよ?」
ゴジラ、キングギドラ、スペースゴジラ。光線を放てるフレンズが、一斉に野生開放、得意の光線をメカゴジラにぶつけた。狙いは腹部、もしくは脚部。
「下が始めましたよ。私たちもやりましょう、バトラ」
バトラは何も言わない。だが、はっきりと、まっすぐな瞳でモスラを見つめる。
上空の2人も、光線を頭部に浴びせる。光線を発射させるのを防ぐ狙いがあるうえ、2人の光線は口から放つものではない。他のフレンズとの連絡係も兼ねる。
「MEが攻撃ねぇ……ガイガン、言ってくれちゃって」
「行くよ、アンギラス」
「YES。いつでもどうぞ、ラドン」
アンギラスが、あれ以降に身に付けた攻撃技、
「じゃ、行くよ」
「OK。GO!」
ゴーサインと同時に落とされたアンギラスは、一瞬で体を丸める。体中のとげが、メカゴジラに刺さるかは分からない。でも、出来る限りのことをする。
「これ、ほんとに効くの?」
「知らん。でもな、今はこうするしかねえんだよ」
「でも、ほんとにできるかな……」
「出来るか、じゃねえ。やるんだよ!」
地上で、メカゴジラの足に攻撃を加える部隊。ガイガンとバランだけしかいない。だが、懸命にくないを振るうガイガン。バランにも何かが目覚めた。
「ごめんなさい、遅れた」
ヘドラがサーバルに連れられてやってきた。
「ヘドラ……どこにつけばいいかな……」
ヘドラが黙って指を指す。ゴジラたちの方だ。デストロイアはそれを認めた。
「友達、だから。力、貸す。協力、する……!」
ヘドラが眼帯を外した。右目からは赤い稲妻状の光線。
彼女はゴジラたちと並び、攻撃に参加した。
「あと来てないのは、チタノザウルス、マンダくらいか……」
そこに、チタノザウルスが海から顔を出す。だが、すぐに引っ込んでしまった。かばんが訳を聞く。
「えっと……私ね……超音波が苦手で、ね。ほら、モスラが出してるあれ。私、弱いくせに敏感だから」
話を聞いたデストロイア。早速、3人に指示を出す。
「よし。3人とも、マンダを連れてきて。あたしは戦いに参加する」
3人はチタノザウルスを先頭に、海沿いを走っていった。
「うぅ……やっぱりきついよ、ずっと出してろ、なんて」
「サンドスター、たくさん、使う。だから」
作戦開始から10分。メカゴジラが倒れる気配はない。光線を撃ち続け、サンドスターの消費が激しい怪獣側が押されつつある。
光線の発射を担当する4人も、交代しながらの攻撃に切り替えた。長時間持つ代わりに、威力が落ちてきている。疲労も相まって、攻撃は通用しなくなってきていた。
デストロイアも加わったが、彼女の「オキシジェン・デストロイヤー・レイ」は効き目がない。再び指令に戻る。
不意に、モスラが地上に落下した。飛行、光線、情報伝達……。一度に多くのことをしすぎたのだろう。バトラも上空で目をこすっている。
ラドンたちにも疲れがたまってきているようだ。落とされたアンギラスは丸まれず、落としたラドンは回収に行けない。戦線は崩壊しつつあった。
メカゴジラの表面が光り始めた。腹部に光が集まる。
「危ない! 逃げてっ!」
デストロイアの叫びが届く前に、砲口からビームが放たれた。逃げ遅れた彼女たちを守っていたのは、結晶のごとき半透明のバリアであった。
「ぐっ……うぅぅ……」
スペースゴジラだ。彼女の能力である「フォトン・リアクティブ・シールド」が、メカゴジラ最強の兵装を防いでいた。
「『プラズマ・グレネイド』……メカゴジラ最大の武器……か」
バリアの中で呟くガイガン。外では、デストロイアが叫んでいた。
「今だよ、バラゴン!」
その数十秒後、突然メカゴジラの足元が崩れ、メカゴジラは転倒した。
その横から飛び出すバラゴン。デストロイアの思惑通り、といったところだろうか。
「いきなり何かと思ったよ、あれの足元を掘れ~、なんてさ」
「まずチャンスを作る。あれが油断してる時こそ、ってね」
彼女の言う通り、メカゴジラの動きは止まっている。プラズマ・グレネイドも止まり、バリアは消滅した。
「セルリアン化が進んでいる。まだ威力が弱かった分よかった」
スペースゴジラの持つ結晶が小さくなってきている。その時、大きなエンジン音。メカゴジラだ。
「まさか……飛ぼうと……!?」
飛ばれては何もかも台無し。振り出しに戻ってしまう。重い機体が浮き上がり始めた。
「……させない……!」
スペースゴジラの肩の結晶から、緑色のエネルギーが出ている。それがメカゴジラを包みこんだかと思うと、上昇が抑えられ、静止したような状態になった。
目から緑の「キラキラ」が出ている。なお上昇しようとするメカゴジラ。止めんとするスペースゴジラ。ふたつの「ゴジラ」、両方の全力がぶつかり合う。
「うっ……うぅああぁあ!!!!!!」
額の結晶にひびが入った。同時に、メカゴジラの燃料が切れたらしく、エンジンが停止する。巨体が地面にたたきつけられ、大地が大きく揺れた。
スペースゴジラが倒れる。その体はわずかな光に包まれていた。
「スペース! しっかり、……!!」
ふと横に目をやったバラン。視界に結晶はなかった。
「ちょっと……スペース……」
涙目のバラン。彼女の頬を、スペースゴジラはそっとなでた。
「チャンス、作っておいた。これでいい」
「そんなわけないでしょ!? そこまでしなくてよかったのに……!」
駆け寄って来たデストロイアが言うが、本人はあくまでやりきった顔だ。その瞳に未練はなく、悔しさはなく、悲しみもなかった。
「作ったチャンス……無駄にしてはいけない。有効に使ってほしい」
後ろではメカゴジラが動き出していた。上半身が完全にセルリアンと化している。スペースゴジラは言った。
「俺は……宇宙でひとりだった。でも今は違う」
足先が消滅し、「キラキラ」が散っていく。
「これほどの仲間に恵まれて……ありがとう」
そう彼女は笑った。そして、サンドスターとなり、周囲に放出された。
「うそ……うそって言ってよ……スペース……!」
バランは大粒の涙をこぼし、単身メカゴジラに向かっていく。それをデストロイアが引き止めた。珍しく、彼女はバランをにらみ付けている。
「どうして……どうして止めるの……!」
デストロイアは大声を上げた。まっすぐにバランを見つめる。
「あの子の……スペースの行動を、あんたは無にするつもりなの!? チャンス、せっかく作ってくれたのに、あんたはそれ、無駄にするつもりなの!?」
止められる側、止める側、2人とも涙を流している。
「言ったよね……チャンスを有効に使え、って。あたしたちがそれ、守らなくちゃいけないんじゃないの!?」
バランがゆっくりと戻ってきた。メカゴジラは、全身がセルリアン化し、大きな単眼で見下ろしていた。悲しみに暮れながらも、少しずつ立ち上がるフレンズ達を。
「くそっ……まだなのか……?」
そこに、バスのエンジン音が聞こえてきた。
かばんたちが、デストロイアに送り出されるところまでさかのぼろう。
走って行った3人は、チタノザウルスの先導のもと、マンダがいる、という所へ向かっていた。
2分ほど走って、戦場からだいぶ離れても、まだ爆発音が聞こえてくる。しかし、だんだんと減ってきているようだ。
「だいたいこの辺だったかな……私が呼んでくるから。ここにいて」
「あっ、僕、取ってこなくちゃいけないものがあるんです。ビオラちゃん、ここで待っててもらえない?」
こくりと首を縦に振るビオラ。チタノザウルスは海の深くへと潜って行った。
それを確認したかばんは、ラッキービーストに語りかける。
「バス、どっちでしたっけ?」
「真ッスグ3分。僕ガ案内スルカラ」
かばんはバスのある方へと駆けていった。
ラッキービーストの言った通り、3分足らずで、かばんは自身の上陸地点に着いた。
バスには特に異常はなさそうだ。桶とジャパリまんもしっかりある。
かばんは運転席に乗り込んだ。腕輪の上のレンズが青く光り、ハンドルにも「の」の文字が浮かぶ。
「じゃあ、さっきのところまで」
「マカセテ」
それなりにスピードを出し、バスは海沿いを進む。
「お待たせ。チタノザウルスさんは?」
ビオラが首を振る。バスに興味を示す彼女を、かばんは助手席に招き入れた。
そこに、チタノザウルスがやって来た。水着に身を包んだフレンズが一緒だ。
「この子がマンダ。っていうか、それ何? それ使えるなら、乗ってこっか」
運転席部分だけのバスには2人しか乗れない。ぎゅうぎゅうになりながらも4人が乗り込み、バスが発車した。
「マンダさん、メカゴジラに水をかけてほしいんです。僕たちも手伝いますから」
「――うん。僕に任せて」
マンダ、何だかキタキツネに似ている。かばんはそう思った。
バスは飛ばしているが、いまだ戦場には着かない。その時、地面が大きく縦に揺れ、バスが大きく跳ねて宙を舞った。
ラッキービーストのテクニックのおかげで、何とか倒れなかったが、車内はさらに混沌とした。
その場にいた全員が、戦場で何かがあったことを即座に理解したようだ。一斉に、スピードを上げるよう迫った。
もっとも、ラッキービーストはそれ以前にフルスピードを出していたようだ。衝撃から1分ほどで、バスは戦場にたどり着いた。
「お待たせしました。あれ、スペースさんは……」
事実を知らないかばん。知らせまいと、デストロイアがとっさに言った。
「スペース? あの子ならね、疲れすぎたみたいで。森の方で休ませてある」
仲間を1人失ったフレンズ達。セルリアン化が完了したメカゴジラ。状況が変わりつつある中、戦っている事実だけが、この場にあった。
《登場怪獣》
・ゴジラ
光線による攻撃を担当。
自分の名を持つメカゴジラに対し、敵意をあらわにしていた。
・アンギラス
上空からの攻撃を担当。
暴龍怪球烈弾の威力はかなりのもの。
・キングギドラ
光線による攻撃を担当。
引力光線がなかなか強い。
・ラドン
上空からの攻撃を担当。
飛行スピードはフレンズ1だと思う。
・ヘドラ
光線による攻撃を担当。
眼帯の奥では、ヘドリューム光線が常時発射されている。
・ガイガン
地上での攻撃を担当。
単純にかっこいい。
・チタノザウルス
マンダの呼び出しを担当。
超音波が苦手。マンダとは仲がいい。
・ビオランテ(ビオラ)
マンダの呼び出しを担当。
かばんを信じて待っていた。
・スペースゴジラ
光線による攻撃を担当。
2度の危機からフレンズ達を守ったのち、消滅。サンドスターとなって空気中に散った。
・バラン
地上での攻撃を担当。
かけがえのない友人を失った。
・デストロイア
指令を担当。一時的に光線による攻撃に参加。
悲しみと憎悪に任せて暴走するバランを叱責した。
・バラゴン
メカゴジラ直下の掘削を担当。
デストロイアいわく「切り札」。
・モスラ
上空での光線攻撃を担当。
光線は超音波である。
・バトラ
上空での光線攻撃を担当。
目からの「プリズム光線」が強力。
・マンダ
怪獣ランド近海に暮らすフレンズ。チタノザウルスと仲がいい。
スク水にビーチサンダルという夏真っ盛りな服装。
《予告》
次回、「きぼう」