かつて怪獣ランドにいた、オルガの物語。
海辺で、2人のフレンズが話している。
「ねぇ、ギラッさん。暑い。オルガ、もっと寒い所に引っ越したい」
「REALLY!? でもオルガ、その格好で言われてもね……」
オルガ、と呼ばれた、そして自分をそう呼んだ彼女は、全身をぴっちりとしたスーツで覆っていた。近未来感が漂う帽子、半透明の髪。謎があふれている。
「でも……格好関係ないって、ギラッさん。暑いったら」
アンギラスは考えた。そして、1つの結論にたどり着いた。
「じゃあ、研究所に、LET`S GO!」
2人は研究所の戸をたたく。出掛けていない限りいるはずだが、一向に返事はない。
「HI、アンギラス。オルガも。開けて」
「頼みがあって。開けてよ、新入りクン」
しばらくして、ドアが軋んだ音を立てて開いた。芹沢の目の下にはクマが出来ている。寝不足なのだろう。
「ごめん、集中してて。入っていいぞ」
「OH……何があったの? これ」
机の上は散らかっている。植物の破片らしきもの、顕微鏡……研究中だったに違いない。
「ちょっとな……島じゅうの草、調べてたんだけど。もうちょっとで見つかりそうだったんだけどなー……あ、違うぞ!? 別に出てけってわけじゃ……」
自分の発言を取り繕う芹沢。アンギラスが本題に入る。
「……ふーん。ちょっと待てよ……」
芹沢が本棚から1冊の本を取り出し、読み進めていく。「怪獣~その脅威と歴史~」というタイトルだ。
そこから彼は「オルガ」のページを見つけた。
「まあ、確かにな。オルガが生まれたのは南極、か……。そこと似たようなとこに行きたくなるのもうなずけるな。だが――」
芹沢はオルガを見つめる。
「怪獣であるお前が外に出てって、世間はどうなる? 追っ払われるのがオチだ。やめといた方がいいんじゃないか?」
「MEも賛成。YOUにはたくさんFRIENDSがいるじゃない。わざわざ行かなくていいと思うけどな……」
オルガは頬をふくらませ、2人から目をそらした。
「でも……オルガ、もっと寒い所に行きたいの! 何言われたって、オルガ、曲げないからね!」
芹沢があきれたようにため息をつく。彼は腕を組んでうなっていたが、しばらくして立ち上がった。
「……分かった。パークで寒いとこと言えば、ホッカイエリアだろうな。どうしても、って言うなら、俺は止めない。だが、自分で言ったことだ。責任はとれよ」
オルガの表情がぐっと柔らかくなった。表に出やすいとはいえ、相当な喜びぶりだ。それを芹沢が抑える。
「あぁ、だがな、パークに許可を取らなきゃ。怪獣のフレンズがパークに引っ越すなんて多分初めてだろ。ってわけで、今からそっち行ってくる」
オルガはまだ飛び跳ねていた。自分の引っ越しが完全に決まったわけではないのに。
「じゃあな。決まったらすぐ戻ってくる。研究所の鍵はガイガンが持ってるから」
芹沢の乗った船は、水平線の向こうへ消えていった。
見送ったのち、オルガが駆け出す。
「みんなに知らせなきゃ」
「WAIT! まだ決まったわけじゃ……しょうがない、MEもついてく!」
突っ走るオルガを、アンギラスがあわてて追いかけた。
「ねぇ、ジラース。オルガがここを出てく、って言ったらどうする?」
「オルガ、いきなり何言いだすの? 出てく、なんて」
最初に向かったのはゴジラのもと。オルガと特に親しいフレンズ、その1人目だ。
「えっとね、えっとね……」
「オルガ、WAIT。MEが代わりに説明するけど……」
話を聞いたゴジラの様子からは、分かったか分かっていないかも判断できない。
「じゃあ、みんなに知らせてくるねー!」
まだ正式ではないのに、下手に騒ぎを広げてはいけない。アンギラスがあわてて止める。彼女も大変だ。
「NO! まだやめて! いろいろあって……」
ゴジラは残念そうに首を振り、森の奥に走っていった。さっぱりしたタイプで良かった。
「さてと、次は……」
「ねぇ、ドラット、ハチロク。オルガがいなくなったら、どうする?」
「そりゃ、悲しいに決まってるだろ。でも、いきなり何なんだ? 何か重いぞ」
次は、キングギドラとラドン。オルガと仲の良いフレンズだ。といっても、ラドンは半ば無理やりな感じだが。
「MEが説明する。あのね……」
キングギドラの方が、ゴジラより冷静にとらえてくれたようだ。ラドンも、何となく分かったような顔をしている。多分、派手に島じゅうに広めるようなことはないだろう。
「なるほどな……で、ホッカイエリア、ってのはどこなんだ?」
「OOPS! それが、詳しいところはまだ……」
5日たった。芹沢が帰って来た。
彼の表情は複雑で、一目で感情が読み取れない。
「オルガ、よかったな。OK、だって。明日、迎えが来るらしい」
オルガの顔がぱあっと明るくなった。喜びのあまりアンギラスに抱きつく。
「じゃあ、知らせなくちゃいけないな。島のみんなに」
翌日。ジャパリパークから、オルガを迎える船が来た。着岸した船から、屈強な男が5人ほど現れる。
「オルガ、ですね。あとは、我々にお任せ下さい」
オルガを連れ、男たちが船に乗り込む。芹沢が、彼らを呼び止めた。
「すいません。ソイツ、いわゆる不思議ちゃん、ってヤツなんで。何か変なこと言っても、普通に接して頂ければ。あ、あと、背負ってるバズーカですけど、護身用らしいんで。本人も気をつける、って言ってました。……では、よろしくお願いします」
芹沢は最後に、オルガにこう言い放った。
「オルガ、楽しかった。自分で決めたことなんだ。泣いて帰って来たって入れてやらない。覚悟しとけよ。……じゃあ、な」
彼は、目に涙を浮かべていた。その表情を、アンギラスは今でも忘れない。
たくさんのフレンズに見送られ、オルガは怪獣ランドを去った。
・オルガ
不思議ちゃん。仲の良いフレンズに、独特なあだ名をつける。
メカゴジラ襲撃時、必死で戦ったが、敗れ去った。
・アンギラス
オルガと仲良し。あだ名は「ギラッさん」。
・ゴジラ
オルガと仲良し。あだ名は「ジラース」。
・キングギドラ
オルガと仲良し。あだ名は「ドラット」
・ラドン
オルガと仲良し。あだ名は「ハチロク」。
・芹沢
交渉を頑張った。あだ名は「新入りクン」。
オルガの幸せを願うが、悲しかったに違いない。