あやしけものフレンズ~ようこそ怪獣ランドへ~   作:家郎

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なぜ「彼」はいなくなったのか?





芹沢本人が語る、彼女との出会い、そして別れ。


外伝その3 しんいり

 俺がこの島のフレンズ達の信用を勝ち得た時、まずこの島を住みよいものにしたいと思った。

 そうしなければ、せっかくこの島にいるヤツらが安心できない。

 まず、俺は登山道を造ることにした。研究所がある火山は岩がごろごろしていて、登りにくさなら天下一品だろう。おまけに、斜面にはかつて使われていた機械の残骸が放置されている。

 力の強いフレンズ――ゴジラや、時々来るバトラなど――の力を借り、5日ほどで道が完成した。おかげで、前よりも研究所に来るヤツが増えた気がする。

 

 次に、島にはびこる植物。触手の先が口のようで、俺やフレンズの身の安全を脅かすものであることは明らかだ。

 そこで、触手の先をナイフで切り取って持ち帰り、入念に調べた。

 すると、この植物はとんでもないものだと分かった。

 島に元々生えていた食虫植物を原種としながら、G細胞がわずかに確認できる。つまり、G細胞のおかげで変異した新種だったのだ。

 俺はこれを「ビオランテ」と名付け、みんなには注意するよう促した。本体らしきものも山際に発見したが、フレンズ化した怪獣たちの攻撃ではどうにもできなさそうな代物だったため、近づかないよう伝えた。触手に遭遇したら、自分で何とかできるのがみんなの強みだ。

 

 オルガを見送ってしばらくして、俺は研究所の掃除中だった。

 部屋の隅っこで何かが光っている。俺が寄って見ると、髪の毛――おそらくゴジラの――だった。サンドスターを放出している。

 俺は直感で、調べねばならない、と感じた。髪の毛が消える前に。

 調べてみたところ、サンドスターと似ているが異なる、未知の物質、とでも言うべきものだった。

 俺は念のため、ガイガンに協力を頼み、くないを1本借り、詳しく観察した。予想通り、くないもその物質でできていた。フレンズを形作る、新たな物質を、俺は見つけ出したのだ。

 一応パークから持ってきた文献を読みあさったが、どこにもそれらしい記述はなかった。俺は当然喜んだが、まずパークに向かうことにした。大発見だとすれば、知らせなければ。

 パークセントラルに報告書を持っていくと、世紀の大発見だとか言われ、俺は歓迎された。正直そういうのは苦手だが。

 結局、パークの方で研究が続けられることになり、俺は報告書のコピーを持って島に帰った。聞いたところでは、フレンズが動物本来の能力を解き放つ――「野生開放」と呼ばれているらしい――際、似たような物質が現れるという。

 

 パークから持ち帰ったラッキービーストの基盤を用い、俺は、「この島版のラッキービースト」を作ることにした。怪獣についての知識は、俺の持つ本から。本家ラッキービーストにはない、日常的なフレンズとの会話。形は、軍の対怪獣兵器をもとにさせてもらった。

 そうしてできたロボット、「モゲラ」。6体のモゲラが島に散っていった。見た目からトラウマのあるヤツもいるかと思ったが、案外大丈夫だったようで、すぐにモゲラは島になじんだ。

 

 そして、今まで名前もなかったこの島。俺がみんなと考え、名前の案をまとめた。

 「怪獣ランド」。

 怪獣が住む島であることをはっきりさせつつ、楽しささえ感じさせるネーミング。ゴジラとバラゴン、バランが出してくれた案だ。

 おかげで、この島は怪獣のフレンズ達の楽園として、生まれ変わることが出来た。

 

 「怪獣ランド」という名前もなじんできたころ。

 ゴジラに呼ばれ、俺は海岸に向かった。フレンズが浜で倒れている、という。

 向かった先にいたのは、まるでモデルのようないでたちのフレンズだった。慎重に、俺は声をかけてみる。

 「おーい、大丈夫か?」

 返事はない。ゴジラに呼ばれたらしく、島じゅうのみんなが集まって来た。野次馬、野次フレンズとでも言った方がいいか。辺りが騒がしくなってきた。

 すると、そのフレンズの目がゆっくりと開いた。よろよろと起き上がろうとする。すかさず、俺は尋ねた。

 「おーい、どうしたんだ? 自分の名前、分かるか?」

 彼女は立ち上がると、少しおびえたように言った。

 「あたし? ……デストロイア」

 デストロイア。オキシジェン・デストロイヤーによって生まれた怪獣。俺はその時はっとした。

 オキシジェン・デストロイヤーをつくり出したのは、俺の親父なのだ。

 俺は、思わず彼女を抱き寄せていた。周りの目など気にせず。デストロイアの心拍数が上がっていくのが分かった。

 「ごめんな……苦しかっただろ……」

 俺はただ、そう声をかけてやることしかできなかった。

 

 まず、彼女は怪獣である。怪獣であるならば、この島に住まわせた方がいいだろう。幸い、怪獣ランドの住人達はみんな寛大で、心が広いヤツばかりだ。俺がちょっと説明しただけで、すぐ了承はとれた。なんとなく、ガイガンににらまれている気がしたが。

 彼女とここで出会ったことは、運命的だと思った。自分の親父が関わっている怪獣だ。彼女――当時は怪獣だが――を苦しませてしまったことへの罪滅ぼしをしなければならない。俺が何とかするしかない。

 デストロイアを研究所に招き、話をした。

 言いたいことはすぐに理解してもらえた。彼女はなんとも思っておらず、別に責任を感じる必要はない、と言う。

 それでも、とは思ったが、彼女の意見を尊重し、全てを水に流し、もともとこの島にいたように扱う、ということにした。

 

 それから1年くらいたっただろうか。俺はいつものように気ままに研究をしつつ、島の散策を日課とする生活を続けていた。

 そこに、パークから連絡が入った。文面を見た俺は、その場にへたり込んだ。いつもより強い波の音が、研究所まで聞こえていた。

 

 「怪獣ランドからの退去命令」。

 

 書かれていた内容を要約すればこうなる。

 パークじゅうの火山の活動が活発化、超大型セルリアンが各地に出現した。それを受け、ジャパリパーク及び関連施設からヒトが退去することが決定されたという。

 俺は床に拳を打ちつけた。フレンズは置いていくのか。そんなこと、できるわけがない。

 俺はすぐにパークに向かった。事実確認のため。結果は変わらなかった。

 フレンズや施設は放置し、ヒトだけが安全であろうなんて馬鹿げてる。そんなこと、許せるはずもなかった。

 だが、俺1人の力でどうにかなる問題ではなかった。従うしかなかった。

 

 怪獣ランドに帰った俺は、みんなを集めた。

 「うそ……?」

 「なんで? いきなりなんで?」

 驚くのも無理はない。一番驚いているのは俺自身なのだから。語彙力が無くなっているヤツも多い。

 「……ごめんな……ほんとならもっといたいとこだが、俺1人じゃどうしようもなくってな……」

 俺の頬を熱いものが流れていった。みんなの表情は見えなかったが、鼻をすする音が聞こえてきたから俺と同じ状況にあっただろう。

 

 そして翌日、俺は怪獣ランドを後にした。島のフレンズが総出で俺を見送ってくれた。

 アイツらに何かなければいいが……。

 俺はそれしか考えられなかった。




・芹沢
怪獣ランドにやって来たヒト。
怪獣のフレンズ達と一緒にいたかったが、不可抗力に屈した。
・デストロイア
オキシジェン・デストロイヤーが生み出した怪獣。
怪獣ランドにはるばる流れ着いた。
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