あやしけものフレンズ~ようこそ怪獣ランドへ~   作:家郎

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注:構想は「怪獣黙示録」より前に練ったものですが、この文章はそれをオマージュしたものです


怪獣~その脅威と歴史~
エビラ


 2218/1/1 日本・三重県

 吉村 良太(よしむら りょうた) 赤竹工業・経理部部長(当時)

 

 私は一民間人なんだが、話せる事なんてあるかな? 君たちは怪獣の本を作ろうとしているんだろう。こんなおっさんの話、意味ないんじゃないか?

 ……まあいい。話を始めよう。

 私の職場は海沿いにあった。潮風が気持ちよかったなあ。あの頃は私も、働く事に生きがいを感じていたよ。

 金庫やら何やらを作る会社だったからね、わたしはその辺の技術に関しては人一倍あると自覚していたね。

 あの年の正月も、普通の、いつもと同じ正月だった。正月休みはいつものように家でのんびり寝正月。テレビのリモコン片手に、こたつでね。

 職場の近くに、私たち一家は前の年に引っ越したばかりだった。休日には釣りをして楽しんでいたな。あの日も、私は外を気ままに歩いていたんだ。

 そこで、私はあれに遭遇した。

 海面が盛り上がったかと思えば、巨大なザリガニのような何かが現れた。

 不揃いなはさみを乱暴に振り回し、あれは陸に上がってきた。

 私は一目散に走ったよ。家までは100mくらい。あれがのんびりしていたのが幸いし、私は家までたどり着くことが出来た。

 妻と娘に話したよ、でかいザリガニが来た、って。私もまだ信じていなかったけどね。

 見た本人が信じていないものを、当然2人は信じてくれなかったさ。諦めた私は防災用のリュックを引っ張り出し、家を飛び出した。

 ラジオをつけながら走っていたけど、速報が入ったのはそこそこ走ってからだったかな。防災無線の無機質なサイレンが響き、家々から飛び出してくる人、人、人。

 地震や火事なら、避難所に行けばどうにかなる。でもあんな化け物なら、避難所にやってきてもおかしくはないだろ? いくつも避難所はあったけど、目もくれずに走り続けた。途中でレンタカーを借りて、出来るだけ遠くを目指したよ。

 ラジオの声を通して、現実がひしひしと伝わってきた。何しろ、巨大な生物が現れました、なんて前代未聞だからね。アナウンサーもカミカミだった。

 あそこの沖から上陸した化け物は、私が逃げた瀬戸方面ではなく、琵琶湖を目指して進行しているらしい。ひとまず私は助かった、と思った。

 でも、すぐに罪悪感が私を襲ったよ。どうして妻と娘を置いて、自分だけ逃げてきてしまったのか、ってね。

 大阪までやってきた私は、テレビをじっと見つめていた。

 被害状況が鮮明に映し出されていたっけ。画面の隅には進行ルート。左下を覆う窓には、「死者・行方不明者数不明」とか、「1時間後、自衛隊による攻撃が開始」とか、「巨大生物を『エビラ』と命名」とか、たくさんの情報が絶え間なく現れていた。

 私は映画はあまり好きじゃなかったけどね、これだけははっきり分かったよ。

 「エビラ」と名付けられたあの化け物が、「怪獣」と呼ぶに相応しいものだ、ってこと。

 フィクションで語られた怪獣の脅威が、今現実となって現れているんだ。

 

 ニュースをずっと見ていたら、エビラが進路を京都方面に変えた、と出た。自衛隊の攻撃が効いているんだろうか。私はひっそりと喜んだよ。

 でも、自衛隊の攻撃はまだ開始されていなかったうえに、画面に映し出されたのは豆腐のように切り取られたビル達。あれのはさみを受けたビルには、血が付いていた。

 人を食らい、切り刻む怪獣。単純に怖かった。いきなり進路を変えてこっちに来たりなんかしたら。

 しばらくして、自衛隊の攻撃が開始される、とのニュースが入った。

 ただ、私が見た限り、エビラは硬い装甲を持っていた。自衛隊の兵器が通用するかどうか。

 私には、ただ画面を見ていることしかできなかった。

 

 15分くらいたった頃だったかな。

 「エビラが倒された」。

 このニュースが入りこんできた途端、わっと歓声が上がった。怪獣という脅威に、人は打ち勝ったんだ。

 その時は、私も混じって喜んだよ。

 

 だが3日後、霊安所に向かった私の前には、1人の遺体もなかった。

 全てエビラが食らったのだという。私の妻も、娘も……!

 悲しみを押し殺し、私は願ったよ。この恐怖を、もう2度と誰も感じませんように、とね。

 ただ、そんな願い、聞き入れられるはずがない。それが現実だと、私は悟った。

 

 出現怪獣:エビラ

 体長:100m

 原種:不明

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