ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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これにて第六章終了です!お疲れ様です!

それではごゆっくりどうぞ~


最後の神代魔法と…

 

 

「天之河光輝じゃない…天之河?うーんそりゃ変人になった覚えはないけど…何なんでしょうかねー」

 

 一人ウンウン悩みながら通路を歩くコウスケ。先ほど自分から言われた言葉を反復しているがやはり分からない。どういう意味なのか、直にとは解るとは。

 

「まぁいいや。それよりこの先は…」

 

 通路の最奥には氷壁があり、この先は仲間のうちの誰かがいる部屋につながっているのをコウスケは知っている。

 

「…自分との対決なのになんで他人が侵入できるように作られてんすかねぇシューさんよぉ。他人が虚像を倒しちまったら試練の意味なくね?

何でそこら辺ガバってるの?それともあれか?都合のいい展開のために作ってあるだけで…やめよう愚痴ってもしょうがない」

 

 自分自身との対決であるはずなのに他人が介入できてしまうという妙に手抜き感を感じられる試練に愚痴りながら部屋に入る。

 その部屋では銀の少女…ノインががいた。無傷で壁の一角を見つめており、その視線の先には銀の美女が下半身を亡くしながら短槍で壁にはりつけにされていた

 

「残念ながら私は貴女はではありません。マスターに救われたあの瞬間から私は貴女とは別の生き物になった」

 

 涼やかに淡々と話すノインに何かを言おうとしているのか銀の美女が口を動かす。しかしその口から音は出なかった。

 

「そして付け足すのなら私がマスターに同行しているのはマスターの感情がとても面白いからです。この世界の人間では出せない本当の『人間』だけが見せることのできる色とりどりの感情。妬みと羨望、愛情と憎悪。見ていてとても飽きません。だから私はマスターの傍にいるのです。…人を愉悦の玩具の様に感じている。その辺は癪ですが私とエヒトは似ているかもしれませんね」

 

 珍しく心底嫌そうに顔をゆがめたノインはそのまま銀の美女を貼り付けにしていた短槍を抜き取ると軽く振り回し、何でもないかのように美女の首を切断した。

 

 美女は最後まで何も言えず、宙に溶け込む様にして消えていった。後に残されたのはノインだけだった

 

「さて、のぞき見とは趣味が悪いですよマスター」

 

「あーすまんかった」

 

「いいえ別にいいです。他人が入ってくれるように作った誰かが悪いのですから」

 

 すました顔で開いた通路に歩いていくノイン。部屋の中を見渡し何もない事が分かったコウスケも後に続く。

 

「…自分との会話はどうでしたか」

 

「結構楽しかった。言いたいことを言える相手がやっとで見つかったとでも言うべきか。やっぱ人間溜めこんでばかりじゃダメだな」

 

「それはよかったです。マスターの愚痴なんて他の人には、特に誰よりもカッコつけたい南雲様の前ではとても聞かせられないような内容ばかりですから」

 

「バレテーラ」

 

 ぽつぽつと雑談をしながら歩いていく2人。これで試練は終わりなのだ。そのためコウスケは幾分か気が楽だった

 

「あーそっちは…」

 

「貴方の想像通りです。それだけですよ。それより出口が見えてきました」

 

 視界の先には行き止まりの氷壁があり八角形の頂点に一つを除いた各大迷宮の紋章が刻まれており、近づくと淡く輝き始め、壁全体が光の幕で覆われていく。

 

「……あれ?」

 

「どうかしましたか」

 

「なんでアレ間違えているんだろう」

 

 コウスケの目線は魔法陣に注がれていた。八角形の魔法陣。角の頂点にはそれぞれの迷宮の紋章があるのに一つだけ刻まれていない。

 そもそも本当なら迷宮と解放者の数に合わせた七角形ではなかったのでは無いか。不思議そうに眺めるコウスケだったがノインは指して気にした風でもなかった

 

「さて?気にするだけ無駄でしょう」

 

「そうかなー。なーんか引っかかるだけどなー」

 

 そんな事を言いながらも仲間たちとの合流に急ぐので光の膜へ飛び込むコウスケとノインだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、みんな―」

 

「や、君たちが一番最後だったね」

 

 転移された光の先の広い空間ではハジメ達が休息をして居るところだった。見たところ全員無事なようだったのでひとまず安心するコウスケ。改めて周囲を見回すと中々の光景だった。

 幾本もの太い円柱形の氷柱に支えられた綺麗な四角形の空間で、やはり氷で出来ている。今までの氷壁のように鏡かと見紛うような反射率の高い氷ではなく、どこまでも透き通った純氷で出来ているかのような氷壁だ。

 

 そして、何より目を引くのが地面だ。ここに来るまで、ついぞ見なかった水で溢れていたのである。どうやら、この空間はそれほど低温ではないらしい。大量の湧水が流れ込んでいるようで、広い湖面のあちこちに小さな噴水が出来ている。おそらく、どこかに流れ出ていく穴もあるのだろう。

 

 そして、そんな湖面には氷で出来た飛び石状の床が浮いており、それが向かう先には、巨大な氷の神殿があった。

 

「あっちにある神殿。あそこがが解放者の住居になってるんだと思う。皆後もうちょっとだけ頑張ろう」

「へーい」

 

 ハジメを先頭に、氷の足場を使って神殿へと進む。特に何事もなく対岸へと渡ることが出来た。対岸の淵には、魔法陣が描かれている。踏んだところで何も起こらなかったので、位置的なことを考えれば、ショートカット用の魔法陣なのかもしれない。

 

 神殿の入口は両開きの大きな扉になっており、そこには雪の結晶を模した紋章が描かれていた。解放者“ヴァンドゥル・シュネー”の紋章だ。特に封印などがされている気配はなく、ハジメが力を込めて押せば、すんなりと開いた。

 

「神殿が住居か…こんな豪邸に住みたいもんだ」

 

「オレはやだな。広すぎて落ち着かない」

 

「僕も住むのならオスカーの所のような場所が良いかな」

  

 扉を開いた先には、教会のようなステンドグラスや祭壇など一切なく、代わりに氷で出来たシャンデリアが吊るされた邸宅のエントランスがあった。奥へ続く廊下と、両サイドから二階へと上がる階段がある。

 

 ハジメは、羅針盤を使って魔法陣の場所を探った。それによると、一階の正面通路の奥のようだ。ハジメの先導に従って奥へと進む。途中、いくつか部屋があったので扉を開けてみると、普通に家具が置いてあった。氷壁も、触ってみると氷なのにひんやりしているだけで冷たいという程ではない。ハジメの防寒用アーティファクトのように、何らかの防寒措置が施されているのだろう。

 

 

 そうして、屋敷の中を感心しながら進んでいると、遂に重厚な扉に行きあたった

 

「ここだね」

 

  ハジメはそう呟き、躊躇いなく扉を開ける。そこには、確かにお目当ての魔法陣があった。

 

 早速、その魔法陣に入るメンバー。いつもの如く、脳内を精査されて、攻略が認められた者の頭に、直接、神代の魔法が刻まれる。

 

(……あ…れ?)

 

 最後の神代魔法『変成魔法』が手に入る。そのはずだった。少なくともコウスケはそれを知っていた。そしてそのあとに全部の迷宮を攻略したものとして神代魔法を超える魔法の知識を刻まれるのだろうと言う事も知っていた。それが多少ばかり苦痛を負う事も知っていた。

 

 …その筈だった

 

(なんで…意識が?)

 

 目の前ではハジメとユエが苦痛に頭を抱え膝から崩れ落ちるのが視界に入った。なのに自分だけが落ちていくような眠気が来たのだ。何とか起きようともがこうとするが強い眠気には抗えない。

 

(ああ…駄目だ…)

 

 誰かに異常を伝えることも何をすることもできずコウスケはその睡魔に意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

『おい、起きろ』

 

 低い男の声だった。聞いたことはないが懐かしい声。乱雑ながらもこちらをいたわる優しさがにじみ出てしまう声。その声に反応し瞼を上げるコウスケ。

 

『どうだ体の具合は。何かおかしい事は無いか』

 

 こちらをいたわるその声の主は魔人族の男だった。顔は冷ややかなものだが伺うような目は彼の内面の性格をよく表している。

 

(えーっと大丈夫ですけど貴方は?)

 

 問いに答えるように声を出そうとするが、何故か口が動かない。驚くコウスケを尻目に言葉が出てきた

 

『大丈夫だ。問題ない』

 

『そうか。なら上手く行ったようだな』

 

『…だよなぁ。やっぱこのネタわかんないよなー』

 

『???』

 

(あれ?あれれ?)

 

 思ったような声が出ず、代わりに出たのは魔人族の男に対して随分と気さくな声が出た。訳が分からず幾度か声を出そうとするがやっぱり出ない。なんだこりゃと喉に手を当てようとするが手も動かなかった。

 

(…これ誰かの映像?)

 

 声も出ず、体も上手く動かせない。ならばと混乱する頭を使い出た答えは、誰かの目線で見た映像ではないかと考えだした。そう考え出来るだけ平静を保ちながら限られた視界の中から部屋を観察する

 

(清潔な部屋…研究所?違うな、もっと最近見たような…もしかして解放者ヴァンドゥル・シュネーの居城?)

 

 チラリと見た壁の内装が先ほどまでいた氷の城とよく似ている。移動した訳では無い事にホッとしたながら今の現状を考えると混乱するばかりのコウスケ。そんなコウスケを構わずこの体の持ち主は先ほどから何やら魔人族の男と会話を続けている

 

『…すまん。結局私たちはお前を巻き込んで』

 

『それ以上何も言うな。これはお前たちがやった事じゃない、俺が勝手に考え行動しお前達に強引に納得させ無理矢理手伝わせただけだ。だから…それ以上気に病まないでくれ』

 

『…ああ、わかった』

 

(うーん?なんだか深刻そう)

 

 声の主からは真摯な感情が読み取れ、目の前の男は罪悪感に詰まってる。思ったよりも深刻そうな男たちの会話に他人事ながら何だか悲しくなってくるコウスケ。そんな意思が伝わったのか、はたまた偶然か体の持ち主は空気を変えるようにおどけてみた

 

『さて、この体になって一度やってみたかった事があるんだ。聞いてくれる?』

 

『?ああ、いいとも』

 

『では…コホンッ 俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!……どうだ。カッコよかった?』

 

(ん?どこかで聞いたことがある様な…ッッ!?それ()()()()()()()()()!)

 

 体の持ち主が言った言葉、それは原作で天之河光輝が戦争に参加することを決意した場面で言ったセリフだった。コウスケが読者だった時、なんて頭のまわらない奴だとドン引きした覚えがあった為、記憶に残っていたのだ。

 

 驚くコウスケにをよそに会話は進んでいく。

 

『率直に言って殺したくなった』

 

『ひどっ!?殺意高すぎません!?』

 

『なんとなくだが何も考えずに言ったような気がしてな。許せ、お前が悪いのではない()()()()()が悪いのだ』

 

『皆天之河君には殺意高いっすねぇ。ま、そのためにだけに生まれた男だもんな。哀れだ。所で鏡はどこー』

 

 魔人族の男から手鏡を渡され、コウスケは目を見張った。

 

『サンキュ。お、中々イケメン君!これは殺意が湧くのも仕方ありませんな』

 

(天之河の顔が写ってる…)

 

 渡された手鏡にはコウスケが朝、毎日鏡で見る整った顔の少年、()()()()()()()()()()()()()()()。そして続く会話で今度こそコウスケは絶句した

 

『しかしそれでよかったのか。顔と体格、声など外見は近づけさせたが内面は変えられんぞ』

 

『それについては何とかなるだろ。細かいところは魂魄魔法を使えば誤魔化せるしさ。つーか、一緒に召喚されたはずの天之河光輝がまさか()()()()()()だって気づかないだろ』

 

『それは、そうかもしれんが…』

 

『人間、外見で判断するから案外気づかないもんさ。せいぜい八重樫かメンヘラちゃんが性格変わった?と思うぐらいだろ。クックク、まさか召喚されたはずの勇者が俺だって誰にも自称神(エヒト)にさえわかりゃしないさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、誰にもわかりはしない』

 

 




ふぃーようやくここまで来ました。後で活動報告も更新しておきます。

残るは最終章です。やりたかったことを存分にできる章です。

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