ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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お待たせです

それではごゆっくりどうぞー


作戦会議

 覚えているのは、光により阻まれ脱出できなかった事。不快な声、そして、体から排出される自分。眠っていたところを無理矢理叩き起されたような

感触を受け周りを見渡せば驚く顔が一杯だった。周囲の状況に混乱しているとなぜか香織を抱きしめたままハジメが苦笑して声を掛けてきた

 

「魂だけになっちゃった気分はどうかな、コウスケ」

 

「魂魄しています…て何なんだこりゃ!?」

 

 自身の姿を確認し改めて絶叫するコウスケ。何せ自身の身体が妙に透けているのだ。オマケに淡く光りまるで魂だけの様だった

 

(デモンズソウルのソウル体になった気分…いやいやいや、マジであの時何が起こったんだ!?)

 

 知らぬ間に起きたことに頭を抱えるコウスケ。だが、ハジメから念話で『状況と今からの説明で何となく察して』と伝えられてしまい、渋々大人しくする。

 

「取りあえず混乱している馬鹿は置いておくとして、コウスケの身体が乗っ取られる瞬間、魂はノインが確保する手筈だったんだ」

 

「ですが堂々と『吸魂』しては妨害される。なので早々に戦線を離脱させてもらい、後は機を窺うだけの簡単なお仕事をさせてもらいました」

 

「それなら確かにハジメさんが落ち着いているのも納得ですぅ。…あの、エヒトが撤退するのも計算の内でしたか」

 

「無論です。『エヒトルジェ』如きではマスターの身体を完全に使いこなすことは無理です。そもそもマスター自身が使いこなせていないのに他人が乗っ取った所で無理です。せいぜいできて六十%ぐらいでしょうか」

 

「いやいや、俺の身体どんだけなんだよ…」

 

 自身の身体の話題になったので思わず突っ込むコウスケ。話の内容から今の身体が魂魄になっていることは察したがそれにしたって奇想天外だった。

 

「ん。ならアレが逃げだした後の事は?具体的に言うとアルヴ(かませ犬)

 

「それなら皆がどうにかしてくれると思っていた。勿論ある程度の備えはあったよ。でもユエとシアがずっと訓練をしていたのを僕は知っていたから、

だから頼ることにしたんだ。他人任せとも言うけどね」

  

 ハジメは知っている。ユエとシアが訓練をしていた事を。殻を破ろうと模索し必死だったことをちゃんと知っているのだ。勿論もう一人の事も。

 

「とまぁここまでが僕とノインの計画であり作戦だった。本当ならすぐにでも帰れるけどエヒトの馬鹿が居る以上地球に帰っても安心はできない。だからここでケリをつける。その為の作戦の第一歩ってところかな」

 

 ふぅと息を吐いたハジメは仲間たちも見渡す。納得した者、不服そうでも取りあえずはと了承した者、全く持って理解できていないもの。様々だったが今度はこれからの話をしなければいけない。話を切り替える為にパンパンと手を打つ

 

「それじゃ情報を整理しよう。まずエヒトは五日間時間がかかると言った。その間は恐らく何も起きないと思う」

 

「あの馬鹿がいきなり攻めてくるとは。もしくはイシュタルとかが」

 

「無いね。あのプライドの高さなら自分の言葉を破ってでも襲い掛かってくるなんてありえないよ。破った瞬間自身のおつむの無さを自分で露呈させることになるんだから」

 

「次ですね。エヒトの神域に向かうにはあの黄金のゲートを通る必要があります。ですがアレを乗り越えるのは」

 

「クリスタルキー?でも確かクリスタルキーはハジメが」

 

「……そういう事。だから無理矢理突破するのは無理だろうね」

 

 嘘だ。本当はノインに渡しているのだ。この中で唯一宝物庫が無事だったノインの物にはそれなりのものが保管されている。あと、シュネーの居城にも色々と重要な物は残してあるのだ。

 

 聞きなれない単語であるクリスタルキーと言う言葉に愛子たちが首をかしげているのをハジメは仲間たちに説明しない様に念話で忠告した。今ここで故郷に帰れるための鍵があったという事、ハジメとユエならば作れるという事を彼らが知ったら面倒なことになると思ったのだ。故郷に返す気はあるがそれはすべてが終わってからでいい。ハジメはそう考えていた。

 

「だから、進行してくるその時を狙って神門を通り神域へ踏み込む。あとはまぁエヒトを直接叩くだけのシンプルで簡単な話だよ」

 

「すまぬが、少し待ってくれぬか南雲ハジメ」

 

 要点を抑えたハジメの説明に待ったの声を出した人物がいた。それはハイリヒ王となる予定のランデルだった。いつの間にか負っていた怪我は治っており、妙に覇気がある一方で冷静に物事を判断するかのように目は涼やかだった。

 

「どうしたのかな、ランデル君」

 

「恥を忍んで頼みがある。お前たちがエヒトを倒すまでの間、民たちを守るための結界を作って欲しいのだ」

 

 言葉と同時に頭を下げるランデル。先ほどまでの会話内容を聞き頭の中で戦力などを考えていた時、どうしてもハイリヒ王国の 兵や騎士団、それ以上に全国の人を集めても敵わないという結論に達してしまったのだ。

 

 本来なら自分たちでどうにかする。何時までも頼るつもりはない。そう啖呵をきりたかったのだが連れ去られたときの絶対的な力の差、助けようと

足掻いて何もできなかったハイリヒ王国最高戦力であるメルドの負傷を考えるにどうしても敵わないと理解させられてしまった苦い思いがあったのだ。

 

「本来ならお主たちとは全く縁のない戦争だった。それが今となっては全てお前たちの力頼みだ。全てを守れるようなものを作ってくれとは言わん。

だが、戦えない者達を守るための物でも作っては」

 

「勿論作るよ。っていうか、そのための話もしようと思ってたんだ」

 

「なにっ!?それは本当か!?」

 

 ハジメからの言葉に驚くランデルと、その顔を見てニヤリと笑うハジメ。傍で静観していたコウスケはどうしてかハジメから『その言葉が聞きたかった!』と言う幻聴が聞こえてきそうだった

 

「全部を僕に頼り切るつもりだったのなら、まぁ適当な物でも作る予定だったけど、ちゃんと出来ることできないことが分かってあくまでも自分たちでどうにかしようってのは只の他人任せの人達よりも好感が持てるからね」

 

 ほんのチラリとクラスメイト達を見るハジメ。その視線に気付いた者は数名だったが何を言いたいのかわかってしまい俯いてしまった。

 

「だから、問題はないとだけ伝えておくよ。後で細かいところを決めるからその時はいろいろ手伝ってもらうからお願いね」

 

「うむ!余ができる事ならなんだってやるぞ!」

 

「ガタッ」

「座りましょうマスター」

 

 ランデルが力強い返事を返した後、ハジメはクラスメイト達を改めて見直した。ボロボロだった傷は治っており比較的問題はなさそうに見える。しかし誰もが心折れているのが丸わかりだった。項垂れるもの顔を伏せるもの。声は聞こえているだろうが話を聞いているのは愛子と雫、それに鈴ぐらいだろうか。

 

「さて、皆はどうする?」

 

「どうするって…」

 

「このまま日本、故郷が攻められるかもしれない状況で何もしないつもりでいる気なのかなって」

 

 ハジメの言葉には出さない辛辣な言い方がクラスメイト達の心に突き刺さる。動揺が広がったその姿を見ているとコウスケから念話が飛んできた

 

『やめとこう南雲、可哀想だけどこの子達エヒト達のせいで心がぽっきり折れてるからさ、話すだけ時間の無駄だよ。無駄無駄』

 

『そうかもね、でも、何かできることはあるはずだよ』

 

『うーん やる気のない奴が居ても物凄く邪魔なんだけどなぁ 知ってっか?人数が足りてても何もしない奴がいるのいないのとでは作業効率や士気が全然違うんだぞ?』

 

『随分と為になる忠告ありがとう。でも何だかんだで僕のクラスメイトなんだ。立ち上がれるさ』

 

 コウスケの念話を切り上げ、改めてクラスメイト達…自身と同じように召喚されてしまった人たちを見る。 そして目を深く瞑り口を開く。もしこれでも駄目なのなら今後一切関わる気はないのだろうなと頭の片隅で考えながら

 

「…ねぇ皆覚えている?僕が授業中良く寝ていて、学校生活にまったくやる気を出さなかった事」

 

 ハジメの静かな喋りはクラスメイト達の関心を引き寄せた。その声、口調に責めるような響きは無い、どこか淡々とした物言いだった。何名かハジメの授業態度が悪かったのを思い出したのか顔を上げた。

 

「あの時の僕は『趣味の合間に人生』って座右の銘を決め込んで直す気なんてこれっポッチもなかったんだ。…馬鹿だよね、この世界でいろいろ経験して、ようやく気付いたんだ。そもそも高校生活を送れているのは父さんと母さんがお金を出していてくれているから学校に行けているってことにやっとで気付けたんだ」

 

 高校生活は義務教育ではない。両親がお金を出しているから高校生になれていることにハジメは気が付いていなかった。怠慢な自身を恥じながらも両親の顔を思い出す。ハジメの原初の気持ち、日本に帰りたいという願いを思い返しながら。

 

「日本に帰ったら、父さんと母さんに謝りたい。今までずっと当然だと勘違いしながら学生として何もしていなかった事を謝りたいんだ」

 

 両親。その言葉自分たちの家族を思い出したのか全員の顔が上がりハジメを見る。だんだんと意思が備わってきたその視線を感じながらハジメは言葉を続ける。何かしら伝わってほしいと考えながら。

 

「そして今度こそごく普通の高校生活を送るんだ。勉強して、遊んで、部活に入って見るのもいいかな、これでも両親の手伝い、プロのゲームクリエイターと漫画家の手伝いをしていたんだよ。漫画部とかに入ればもしかたら一線級の活躍ができるかも?…何だろう日本でやりたいことが一杯出てきちゃった」

 

 ハジメの日本を懐かしむ様な温かさの宿る声、それは日本にいたときと変わらない様で少し変わった苦笑が良く似合う少年の笑みだった。空気が解れたのかクラスメイト達から「漫画家…?」「アイツの親そんな職業だったのか?」などちょっとしたざわめきが聞こえ始める。

 

「でも、そんな生活を、家族を。アイツは壊そうとしている」

 

 優しげな声から一転、冷ややかながら怒りに満ちた声が場を一瞬で引き締める。それはハジメの怒りだった。

 

「許せない、僕の日常、趣味を壊そうだなんて。許せない、僕の家族を壊そうだなんて。アイツがやろうとしていることは僕の日常への宣戦布告であり最も大切で尊いものを壊そうとする侵略行為だ」

 

 怒りとは激情だけではない、沸点を超えると逆に冷静となるというのをクラスメイト達はハジメの言動で理解することとなった。圧力がにじみ出ており敵ではないというのにその怒りは背筋に冷や汗をかかせるものだった。それほどまでにハジメの怒りは深い。

 

「力がある。仲間がいる。だから僕は戦う。僕は僕ができることをする。君たちはどうする?何もしない、したくないというのなら目を閉じて耳を塞いで口を噤んでいてそのまま蹲って終わるのを待ってろ。後は僕がどうにかする」

 

 気遣いと侮蔑のまじりあう視線がクラスメイト達を貫く。言外に邪魔をするのなら何もせずどけと言うのだ。そして今後一切自分とは関わるなと言う無言の言葉でもある。だがもしそうでないのなら…

 

「私は…私は自分のできる事をするよ。南雲君」

 

 しばしの静寂の中最初に声を出したのは八重樫雫だった。ハジメの視線がすっと向けられ多少は怯みながらも決意のこもった言葉をハジメに向けた

 

「あなた達の様に戦えはしないかもしれない。でもそんな私にだってできる事はあるはず。だから手伝う。私も家族を守るために」

 

「また苦労を背負い込むかもしれないよ?」

 

「へっちゃらよ。慣れているもの。それに、親友がやっとで想いを成し遂げることができたんだから見守ってあげないとね」

 

 苦笑しながらまだハジメにくっついている香織に柔らかな視線を送る雫。その姿に感化されたのか次々とクラスメイト達が声をあげ戦意を表明していく。

 

(どっかで見たことがある様な…ああ、そうだ天之河光輝と一緒だ)

 

 妙な既視感を感じたコウスケ。それは天之河光輝としての最初の仕事である戦争参加の決意表明と一緒だった。あの時は天之河光輝に流されて声を上げたものが今度は南雲ハジメに感化され声を上げる。皮肉で失笑が出てきそうだった。違いは今度はちゃんと考えての行動だろうか。

 

(まぁどうでも良いか。別にこいつらが……やめよう嫉妬はよくない)

 

 頭を振り滲み出たものに蓋をする。クラスメイト達に対する諸々は後で手を加えればいい。今は目の前の事だった。

 

「それじゃ色々皆に割り振っていくよ。さっきの話の通りランデル君には」

「騎士団や兵たちの動員だな。ふむ、余が直接出向いて他の町への呼びかけなどもできるが、ちと時間が足りぬな」

「そこら辺は問題ないよ。ゲートキーがあれば町から町への時間は大幅に短縮できる」

「移動は問題ないな。しかし余の言葉だけで果たして世界が終わると信じ神の敵となってくれるかどうかは…余の説得力が物を言うな」

「なら、再生魔法を使おう。エヒトの言葉アルブの言動等々を再生魔法とアーティファクトを使って録画したものを見れば信じるしかない。後、僕が出会った有力者たちに言えば疑う事はもっと少なくなるはずだ」

「手際が良いな南雲ハジメ」

「そっちこそ話が速くて助かるよランデル陛下」

 

 

「愛子先生、先生にも頼んでいいですか」

「も、勿論です南雲君!でも何をすれば」

「集めた人々の扇動…じゃなくて旗頭になってください」

「何か不穏な発言が、ともかく私が旗頭ですか。大丈夫でしょうか」

「豊穣の女神の発言力は高いぞ畑山先生。余が保証する」

「あ、ありがとうございます?ランデル陛下」

 

 

「リリアーナ姫は集まった人たちの調整と避難民の誘導とかもろもろを頼もうかな」

「………」

「姉上?」

「あ、はい!分かりました。ランデルや愛子さんと話し合って決めていきますね」

(……あんまり元気ないな。どうしたんだろ?)

『あーコウスケさんそれ素で言ってるのなら結構マズいですよ?』

『漏れてた?』

『うさ耳で聞きました。リリアーナさんコウスケさんが居なくなったと思って心が折れてましたから。そしてすぐに帰ってくるんだから心の処理が追いついていないんですよ』

『…そりゃ悪いことしたな』

『コウスケ、後でアフターケアをしておく。これは命令』

『了解。…ほんと面倒な男に惚れたもんだ』

 

 

「あー後、野村君」

「お、おれ!?」

「確か君土術師だったよね。王都の錬成師職人たちと一緒に平原に要塞を作って」

「要塞ってそんな簡単に作れんのか?」

「職人たちにこう言えばいい、師からの頼み事『錬成師としての全てが試される時が来た』と言えば命を懸けてやってくれるさ」

(いったいどんなやりとりが…)

 

 

 

「次、まずはシア」

「はいですぅ!」

「樹海に行ってフェアベルゲンの連中とカムさんたちを王都まで連れてきてくれ。アルフレッドには借りを返せと伝えれば文句を封殺してくるだろう」

「了解ですぅ。ようやく父様たちの悲願が果たせそうですね」

「悲願?」

「ハジメさんとコウスケさんに対する恩返しです。きっと嬉しがってくれますよ」

「そこまでの事をした覚えはないんだけど」

 

 

「ティオは」

「里帰りじゃな。里の皆を連れてくるのに異論はない。と言うよりここで動かなければいったい何のための守護者か」

「時間がかかりそうならアーティファクトを作るけど」

「問題ない。寧ろ『()()()()』を試せる絶好の機会じゃ。すぐに帰ってくる」

「頼んだよ」

 

 

「清水は、帝国に向かってもらおうかな」

「あの皇帝さんか」

「そうガラ…なんだったっけ。まぁいいや説得と言う名の交渉力ともしものための戦闘能力は君が居た方が一番早い」

「怨みがある連中がいるかもしれないからな。そん時は手足の一本は腐らせてもらうさ」

「手間と迷惑を掛けるよ」

「良いって事さ」

 

 

「私はどうする?」

「ユエは…」

「ちょい待った。ユエはオルクス迷宮に向かってくれ」

「コウスケ?」

「あーユエの叔父さんの残した物があってな。ユエが封印されたところにあるんだ。シュネーの証が無いと取れないっていうギミック付きで」

「何かメタ臭いねそれ」

「叔父様の…残した物」

「ユエが見ないといけないものだから、回収をお願いします」

「………ん。わかった」

(何か機嫌が悪い?)

『色々叔父さんに対して思う事があるみたいですぅ』

 

 

「後回しになっちゃたけど白崎さんはオルクス迷宮で待機をお願いしていいかな」

「うん分かったけど、どうすればいいの?」

「僕の錬成をしている間の身の回りの世話をお願いしたい、後は諸々」

「分かった。任せてハジメ君」

『あのーずっと気になってたんだけど、何で香織ちゃん南雲にぴったりくっついているの?』

『香織はハジメと恋人関係になった。ただ今絶賛彼氏に甘えている最中』

『なんとっ!?マジか。一体何があったんだ?』

『後で諸々を教えるから今はじゃべらぬ方が良いぞコウスケ』

『……ハジメ君の胸板気持ち良い』

 

 

 

「まぁこんな所かな」

 

 細かいところなどを話し合って決めて、全員に視線を巡らせるハジメ。一泊の間を取ってからゆっくり口を開く

 

「僕達がすることは…別にこの世界を救うためって訳じゃない。今からする事はそれぞれの為だ。それは自分のためかもしれないし人のためかもしれない。家族のため、国のため故郷のため、何だっていい」

 

「皆で乗り越えて、家に帰ろう。自分たちのありふれた日常に帰る為に…勝とう」

 

 ハジメの一言に全員が大きな頷きを返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?俺とノインは?後南雲は?」

 

「当初の目的をお忘れですかマスター」

  

「???」

 

「君の真実を聞きに行くんだ。僕とノインと一緒に」

 

「…そうだ、ミレディに会いに行かなくちゃ」

 

「そう、君のすべてを知る最後の解放者のいる住居『ライセン迷宮』へ行くんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿なの?元々知ってはいたけどさ。え、何?体を取られたって本当に馬鹿なんじゃないの、ごめん馬鹿だったそれも重度の」

 

「辛辣ぅ!」

 

「仕方ないと思う」

 

 ミレディに会うなり罵倒が響き渡る。場所はミレディのいるライセン迷宮最奥だった。攻略の証が無事に起動し最初の部屋が乱回転しながら最奥まで届けてくれたのである。ちなみにこの場にノインはいない。

 

 曰く

 

『流石に使徒とそっくりの私が現れたらいらぬ誤解と手間が生じるでしょう。少し遊んできますのでどうぞごゆっくり』

 

 と言って正規ルートに入ってしまったのである。ノインと別れてふわふわとした魂のコウスケを連れ入って向かい出てきてコウスケの状態に驚くミレディに説明するなりミレディの罵倒が始まった。

 

「何で魔王城で油断なんかするの?一応敵地だって理解はしていたでしょ?何でエヒトを弾かないの?君なら大抵のことができるんだよ?ねぇ聞いてる?」

 

「あい、真にすみませんでした」

 

「そうやっていつも正座して土下座して謝るけど繰り返していたら何の意味もないんだよ?巻き添え喰らっていたオーくんなんかいつもげっそりしていたんだよ?」

 

「へへぇ」

 

 呆れを多分に含んだ口調で怒るミレディに土下座をして平伏するコウスケ。ハジメには何故だがその光景がとても自然なものに見えた。うざキャラをしているミレディがコウスケ相手では常識人にならざるを得ない。ハジメの中でミレディの評価が上がった。

 

「まぁまぁ其処までにしておいて」

 

「む、まだ言い足りないことが一杯あるんだけど…しょうが無いか」

 

 やっとのことで解放されるコウスケ。魂だけの状態とは言え感覚的に肉体があった時とさほど違いはないのだ。ちなみにノインが装着していた鬼の籠手は宝物庫の中で保管されることとなった。一度限りの一品扱いらしい。

 

「あーここに来た目的なんだけど」

 

「まって皆には会いに行った?」

 

「勿論」

 

 今まで大迷宮で集めてきた攻略の証を取り出す。ずらりと並べられたそれを見てミレディが大きな息を吐く。その姿はコウスケの胸を強く掻き立てる。

 

「そう…皆と会えたんだね」

 

「解放者たちと会ってきたんだ。それぞれ只の映像かもしれないけど皆、どこか懐かしくて俺を見ると悲しそうな表情を浮かべていたんだ。君の様に」

 

 ニコちゃん仮面の奥の表情は見えないが、コウスケは同じ魂の状態になってるからかミレディが鳴いているような気配を感じ取ったのだ。

 

「教えてくれ。俺は一体誰で、この気持ちは何なんだ」

 

 コウスケの問いにミレディは大きな息を吸って、吐き出し、コウスケのずっと抱えていた疑問に答えるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は私達と同じ解放者、正確に言えば『()()()()()()()』。そして…私達七人がこの世界を救うために召喚してしまった『()()』それが貴方の正体なの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次は説明会です。大体の疑問が解けるかも?

残り二週間。無理っぽいけど頑張ります

この頃感想が欲しくなってきました。気が向いたらで良いので感想待ってます~

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