ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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いつも誤字脱字報告ありがとうございます
ひっそりと投稿します
ちょっと物足りなかったので一文追加しました


解放者の住居

 

 コウスケは、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と懐かしい感触だ。これは、そうベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、コウスケの微睡む意識は覚醒しつつある。

 

(暖かい…ん?俺は確か…ヒュドラと戦っていて…)

 

寝ぼけた頭で体を起こそうとすると、右手が何か暖かいものに包まれている感じがした。非常に手触りがよくずっと触っていたくなるそんな感触だ。

 

(柔らかい…なんだろうこれ?…!?)

 

右手にあったのはユエの手だ。ユエは、ベッドに持たれながらコウスケの右手をしっかりと自分の両手で抱きしめて寝ていた。すやすやと眠る寝顔は非常にほほえましくとても穏やかな気持ちになる。……だから残念に思う気持ちはない。原作のように全裸ではなくてハジメの服をしっかりと着ているユエを見て残念に思う気持ちはないのである。一人むんむんとしてると、ユエが目を覚ました。

 

「……コウスケ?」

 

「よう、おはようユエ。…えーと、南雲は…」

 

「コウスケ!」

 

「!?」

 

目を覚ましたユエは茫洋とした目でコウスケを見ると、次の瞬間にはカッと目を見開きコウスケに飛びついた。寝起きに美少女に抱き着かれ驚きうれしくなり、なんだか幸せになるコウスケ。しかし、ユエが、コウスケの首筋に顔埋めながらぐすっと鼻を鳴らしていることに気が付くと、途端に申し訳なくなりユエの頭をなでながら謝る。

 

「ごめん、心配をさせたな」

 

「んっ……心配した……」

 

しばらくユエの気が済むまでこのまま撫で続けようとしたところで妙な視線を感じた。ハッとして視線の先の方を見る。

 

「やあ、おはようこのロリコン野郎、美少女に抱き着かれていい目覚めだね、このロリコン」

 

「南雲!?いやちがう!俺は断じてロリコンなどでは!」

 

「……はぁ、それにしては随分と幸せそうだったけど?」

 

「ぬっ…そ、それは、その…」

 

「あははっ冗談だよ…無事で良かった」

 

視線の正体はハジメだった。いきなりコウスケに毒舌をを吐きながらも優しくコウスケとユエを見ていた。先ほどのやり取りを見られていたことに顔を赤くしながらもハジメに話しかける。

 

「あ~すまん迷惑をかけたな」

 

「迷惑はかけていないよ。心配をかけたけどね。…大丈夫だと信じていた…それでも本当に心配だったんだ」

 

気のせいかハジメの目にはうっすらと涙の跡があるような気がする。

 

「う、うん、今後気を付ける…そ、それよりっここはどこで、今まで何してたんだ?」

 

慌てて話題を変えるコウスケ。このままでは自分がいたたまれなくなる。慌て始めたコウスケに、この場所はヒュドラを倒した先の場所であり先にこの場所を調査をしていたとハジメは語り案内してもらうことになった。身支度を整えベッドから出たコウスケは、周囲の光景に圧倒され呆然とした。

 

 まず、目に入ったのは太陽だ。もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず“太陽”と称したのである。

 

「……夜になると月みたいになるんだ」

 

「マジかよ……」

 

 次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

 

 川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

コウスケは、ハジメとユエに連れられ川や畑とは逆方向、ベッドルームに隣接した建築物の方へ歩を勧めた。建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

 

「少し調べたけど、開かない部屋も多かったんだ」

 

「ふむ、何か仕掛けがあるのかもな」

 

「ん……」

 

 石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいたハジメ達には少し眩しいくらいだ。どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。

 

 取り敢えず一階から見て回る。暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレを発見した。どれも長年放置されていたような気配はない。人の気配は感じないのだが……言ってみれば旅行から帰った時の家の様と言えばわかるだろうか。しばらく人が使っていなかったんだなとわかる、あの空気だ。まるで、人は住んでいないが管理維持だけはしているみたいな……

 

更に奥へ行くと再び外に出た。其処には大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注いでみると、ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。どこの世界でも水を吐くのはライオンというのがお約束らしい。

 

「風呂!いいなこれ!あ~今すぐ飛び込みたい」

 

「……んっお風呂…楽しみ」

 

「流石にここの調査が済んでからにしようよ…」

 

 

思わず頬を緩めるコウスケ。ユエも同じように目を輝かせる。そんな2人にハジメは苦笑する。最もハジメも同じ気持ちだ。お風呂は大好きだ。迷宮にいた時はコウスケの複合魔法で温水を使って体を洗っていたがさすがに目の前にあるお風呂にかなわない。時間をかけてゆっくり入りたいものだ。

 

「んじゃあ、後でだな。…南雲一緒に入って体のお付き合いをしようじゃないか…」

 

「……お邪魔虫はクールに去る」

 

「ちょっと待って!変なことを言わないでコウスケ!ユエも離れていかないで、なにその『私は分かっている』と言いたさそうな目は!誤解しないでよ!」

 

ゆっくりと入れるかどうかは分からないが…

 

 それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。仕方なく諦め、探索を続ける。

 

 二人は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

 

 しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。

 

 その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか……コウスケはそんな事を考えながら白骨化した遺体に近づく。

 

(これが解放者オスカー・オルクスか…せめてベッドにいてくれよ…こんな所にいたらなんだか寂しそうじゃねえか。まったく…)

 

ここに一人でいたオスカーのことを考えていたら涙が出そうである。というか出た。

 

「…うっ…グスッ…」

 

「!?コウスケいきなりどうしたの?」

 

「…なんか、ヒックッ一人此処で寂し…ぅうっ死ぬなんて…悲しいなと思ったら…あぐっ…出た」

 

「それにしては…なんか出すぎじゃない?涙と鼻水で顔がひどいことになっているよ」

 

そう言われてもコウスケはどうすることもできない。確かに悲しくなったからと言ってここまで出てくるのはおかしい気がするが…

 

「うおぉぉぉぉっ!!! がおぉぉぉぉっ!!! あおっ!! あおっ!! あおぉぉっ!!!」

 

「だから泣きすぎだってば…」

 

この後コウスケの涙が止まるまで呆れた様子のハジメと、妙に生暖かい視線を送るユエだった。

 

「さてと、気を取り直して、僕が調べたのはここまでなんだ」

 

「……怪しい……どうする?」

 

「うーん、ここまで来て危険があるとは思えないし…南雲、調べてみるぞ。ユエ、なんかあったら頼む。」

 

「ん……気を付けて」

 

そう言うとコウスケは、魔法陣に向かって進んでいく。ハジメもそのあとに続くそして2人が、魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

 まぶしさに目を閉じる2人。直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのことが駆け巡った。やがて光が収まり、目を開けたハジメの目の前には、黒衣の青年が立っていた。魔法陣が淡く輝き、部屋を神秘的な光で満たす。青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。

 

 

「ああ、質問は許して欲しい。これは唯の記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話しとは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

要約すると

 

1、神代の少し後の時代、宗教戦争をしていた

 

2、解放者と呼ばれる強者集団がいた

 

3、解放者、神々が人を駒にして戦争をして遊んでいたことが判明

 

4、解放者、激おこぷんぷん丸

 

5、神をぶっ殺そうにもはめられ人々の敵に仕立てられる

 

6、解放者、最後に残った先祖返りの7人が迷宮を作り試練を用意し、突破した強者に後を託す

 

大体こんな感じだった。長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

 そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、ハジメの脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいるためと理解できたので大人しく耐えた。

 

しかしコウスケは違った。何か温かいものがあふれてくるように感じたのだ。隣では顰め面をしているハジメが居る。どうしてか考えてみるが…さっぱり思いつかない。分からないことを考えてみてもしょうがないので溜息を吐き、ハジメとユエの会話に加わる。

 

「……アーティファクト作れる?」

 

「うん、そういうことだね」

 

「アーティファクトを作れるようになるか…まるで南雲のための魔法だな」

 

「僕のためというより錬成師のための様な気がするけどね…」

 

ハジメとコウスケが習得した神代魔法の一つ“生成魔法”とは平たく言うと鉱物に魔法を付加できるという錬成師のための様な魔法だった。この後ユエも魔法陣に乗り生成魔法を習得した。またオスカーが出てきてぺらぺらと同じことをしゃべり始めたが…

 

「あ~、取り敢えず、ここはもう僕達のものだし、あの死体片付けよう」

 

 ハジメに慈悲はなかった。

 

「ん……畑の肥料……」

 

 ユエにも慈悲はなかった。

 

「えぇー無慈悲な2人にコウスケさんドン引きですわー…オスカー安心しろ、取るもん取ったらちゃんと墓を作ってやるからな」

 

コウスケは多分…やさしかった。 

 

風もないのにオスカーの骸がカタリと項垂れた。

 

オスカーの骸を畑の端に埋め、墓石も立てた。念のためしっかりと供養もする。

 

「何妙法連…後なんだったかな?まぁいいや、オスカーここに眠る。成仏せいよ。南無!……さて、探索タイムとしゃれこみますか!」

 

「ワクワクするね」

 

「んっ」

 

 埋葬が終わると、3人は封印されていた場所へ向かった。次いでにオスカーが嵌めていたと思われる指輪も頂いておいた。墓荒らしとか言ってはいけない。その指輪には十字に円が重なった文様が刻まれており、それが書斎や工房にあった封印の文様と同じだったのだ。

 

 まずは書斎だ。

 

 一番の目的である地上への道を探らなければならない。3人は書棚にかけられた封印を解き、めぼしいものを調べていく。すると、この住居の施設設計図らしきものを発見した。通常の青写真ほどしっかりしたものではないが、どこに何を作るのか、どのような構造にするのかということがメモのように綴られたものだ。設計図によれば、どうやら先ほどの三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだ。盗ん……貰っておいてよかった。

 

「エロ本ねえのかよ…見損なったぞオスカー」

 

「あるわけないだろ……」

 

「男の一人暮らしなのにもっていないだと…」

 

 更に設計図を調べていると、どうやら一定期間ごとに清掃をする自立型ゴーレムが工房の小部屋の一つにあったり、天上の球体が太陽光と同じ性質を持ち作物の育成が可能などということもわかった。人の気配がないのに清潔感があったのは清掃ゴーレムのおかげだったようだ。

 

 工房には、生前オスカーが作成したアーティファクトや素材類が保管されているらしい。これは盗ん……譲ってもらうべきだろう。道具は使ってなんぼである。

 

「ハジメ、コウスケ……これ」

 

「うん?」

 

 ハジメが設計図をチェックしていると他の資料を探っていたユエが一冊の本を持ってきた。どうやらオスカーの手記のようだ。かつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常について書いたもののようである。その内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。

 

「……ふーん? 他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか」

 

「……なんだか、ゲームじみてきたね……」

 

「ファンタジー世界に来た時点でゲームっぽいよな…」

 

 手記によれば、オスカーと同様に六人の“解放者”達も迷宮の最新部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが……

 

「……帰る方法見つかるかも」

 

 ユエの言う通り、その可能性は十分にあるだろう。実際、召喚魔法という世界を超える転移魔法は神代魔法なのだから。

 

「だね。これで今後の指針ができた。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」

 

「んっ」

 

 明確な指針ができて頬が緩むハジメ。思わずユエの頭を撫でるとユエも嬉しそうに目を細めた。それから暫く探したが、正確な迷宮の場所を示すような資料は発見できなかった。現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】辺りから調べていくしかないだろう。

 

 暫くして書斎あさりに満足した3人は、工房へと移動した。

 

工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオルクスの指輪で開くことができた。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛うほどである。

 

コウスケは、胸を躍らせて探索していた。秘密基地の探索みたいでワクワクするのだ。童心に帰りつつ漁っていると、無造作に放置されていた剣を発見した。いや、剣というより鉈といった所だろうか。片刃で刃が幅広くかなりの肉厚である。年月がたったのだろう、錆びてボロボロになっているが、なぜか目が離せなかった。手に持ってみても、ごく普通の武器といった所なのだが…何故かとても手に馴染む気がする。

 

「馴染むぅ…実に馴染むぅぞぉぉぉおおおおお!!」

 

悪のカリスマのまねをしながらぶんぶん振り回してみる。特に何か変わった感じはしないが、手放す気は全くしなかった。

 

「うーん?何だろうコレ?オスカーの失敗作?…んーとりあえず、南雲に直してもらおうかな」

 

手に持ち持って帰る事にする。2人に近寄るとハジメが何か考え込んでいた。そんな様子にコウスケとユエは顔を見合わせ首を傾げた。

 

「どうかしたか?」

 

「……どうしたの?」

 

 ハジメは暫く考え込んだ後、ユエに提案した。

 

「う~ん、2人とも。暫くここに留まらない? さっさと地上に出たいのは僕も山々なんだけど……せっかく学べるものも多いし、ここは拠点としては最高なんだ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。どうかな?」

 

「俺は賛成なんだが…ユエはどうだ?」

 

コウスケとしては諸手を挙げて賛成したいところだ。これからのことを考えると強くなりすぎて困ることはない。ハジメに作ってもらいたい物もあるし、イレギュラーの自分のこともある。いろいろ備えたいところだが…ユエは三百年も地下深くに封印されていたのだから一秒でも早く外に出たいだろうと思ったのだが、ハジメの提案にキョトンとした後、直ぐに了承した。不思議に思った2人だが……

 

「……2人と一緒なら何処でもいい」

 

との事らしい。ユエのこの不意打ちはどうにかできないものかと照れ臭そうにハジメは頬をかきコウスケは身悶えていた。結局、3人はここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

おまけ

 

 その日の晩天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、ハジメとコウスケは風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。奈落に落ちてから、ここまで緩んだのは初めてである。風呂は心の洗濯とはよく言ったものだ。

 

「はふぅ~、最高だぁ~」

 

「あ~体が解けていくぅ~風呂はやっぱりええのう~先にユエを入らせたから存分に浸かれるぞ~」

 

「そ~だね~ユエ先に入れて喜んでいたね~それにしてもなんだか爺臭いよ~コウスケ~」

 

ここまで気持ち良いのは中々ないだろう。それぐらいお湯加減もよく景色もいい。先に風呂に入っていた元王女のユエも絶賛していた。それぐらい豪勢な風呂だった。

 

「ところで、南雲君やい」

 

「ん~な~に~?」

 

「……先から気付いていたけど何でタオルつけてんの?」

 

「え!普通つけるでしょ!というか、コウスケなんでつけてないの!?」

 

「ばっかオメー、男の前で恥ずかしがってどうすんだよ。ああ…そっか自信がないんだな」

 

うんうんと頷くコウスケ、その体には股間を隠すタオルがなく惜しげもなく自分の体をさらしている。その体は、バランスよく鍛えこまれておりまた無数の傷があり、歴戦の強者という風貌をさらしていた。その傷を見て少し憂鬱になるハジメ。傷の何割かは自分をかばってつけられたものだ。いくら神水があるといっても、節約のために治癒魔法や自然回復で放っておいたものがある。その時の傷だろう。

 

「…すごい体だね…」

 

「ん?ああ……確かにこの体は天之河光輝の体だしなー…やっぱり、自分の体じゃないっていうのは中々来るものがあるな…」

 

どうやら少し誤解をしてるコウスケ。複雑そうな表情を浮かべ自分の体を見回す。地雷を踏んでしまったかと慌ててフォローを言おうとしていたハジメにコウスケはいきなり不敵な笑みを浮かべる。

 

「……まぁそんなことはどうでもいい、重要なことじゃない。今見るべきなのは……お前の息子だぁ!!」

 

「うわ!ちょ、ちょっと!やめてよコウスケ!」

 

「ふははははは、よいではないかよいではないか。見たって減るもんじゃないし、お前の漢を見せてもらわんとなぁ!」

 

ハジメに飛びかかり時代錯誤な事を言いながら股間を隠すタオルをはごうとするコウスケ。その目は明らかにハジメをからかって遊んでいる。別の意味で恐怖を覚えながら必死にタオルを隠すが、ステータスの差かあるいは執念の差かついにタオルをはぎ取られてしまう。

 

「獲ったどーーー!!さて現物はっと…………え??え!?なにこれ!エロ漫画でもこんなのはねぇぞ!……嘘だろ、マジかよ」

 

ハジメの物をみて思わず呆然とするコウスケ。ハジメの物は明らかにデカかった。数々のエロ漫画やエロゲーをやってきたと自負するコウスケだが、それにしたって目の前の物はデカい。自分のと見比べて落ち込んでしまう。

 

「うわぁこんなものがあるのかよ……マジでか…はは、それに比べて俺の一物は…ポークビッツか…自信なくしそう……あ、そっか見せる女もいねえし使う機会もないだろうし別にいいのか…あっはははは……もうだめだぁ、おしまいだぁ」

 

「だから見ないでって言ったのに…」

 

ハジメとしては自分の物を見て勝手に落ち込むコウスケに文句を言いたいのだが、だんだんとコウスケが壊れてきたので放置にする事にした。深いため息が出てしまうハジメ。こうして、最初の風呂は散々なものになってしまった。

 

余談だが、先に風呂に入って髪を乾かしていたユエは風呂からあがってきて顔を赤くして複雑そうにするハジメと明らかに落ち込んでブツブツ呟くコウスケをみて何となく察しながらもくすくす笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の話はコミカルで行く予定です
やっとで自分の書きたい話をかけます

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