時間軸は結構適当です
試験的な内容が多いし変なところが多いかもです
コミカルをかきたかったのにシリアスになってしまう…
活動報告に一言書きました。時間があったらどうぞ
ハジメとコミュ
錬成師の実力?
「あ~南雲、その作ってもらいたいものがあるんだが…」
「?言いよ、何でも言って。錬成や生成魔法の特訓にもなるし」
「そう?なら、男の子の浪漫武器をいろいろ作ってもらいたいんじゃが…」
「浪漫?いいねそれ、何々?」
「パイルバンカーとかビームソードとかドリルとかギミック入りの武器とかトンファーとかファンネルとかロマン砲とか…ほか色々…できるの?」
「うーん難しいのもあるしできないものをあるけど…いや待てよ、あれなら鉱石を合わせて…うーん、どうせならあれとあれを組み合わせて…ふふっなんか面白くなってきた!」
(なんかスイッチはいっちゃった…つーかできるのかよ!なーにが『錬成師はありふれた職業だ』だ。メルド団長、非戦闘職業の方がよっぽどチートじゃねぇか!)
実はやってみたかった
「……コウスケもユエもいないよね?」
「よしっ…『僕のリロードは、レボリューションだ!』…フフッ決まった!」
「「……」」
「……コウスケ、ハジメは何をしているの?」
「あ~気にしないでやってくれ…」
「?わかった」
「…リロードタイムが…こんなにも息吹を…」
(それがやりたかったからリボルバー拳銃にしたのか?)
寒気?
「…コウスケ少し聞いてもいい?」
「?どうした。そんな変な顔して?」
「ユエに吸血されているときなんだけど…」
「…まさか南雲もみさくら語を!?」
「違うってば…なんかユエに吸血されているときたまに背筋がゾクッとするんだ。なんでだろう?」
「?なんだそりゃ…ん?んん?…あ!?」
「何か気付いたの?」
「…くたばれこのリア充!」
「!?」
普通はできません
「なぁ南雲ー前から思っていたんだけどさ」
「んー」
「一介の高校生が何で銃の構造を知っているの?あの時はあんまり考えていなかったけどさ、普通に考えたら、どういう銃かは分かるとしても、流石に一から組み立てができるというのは…」
「あ~確かにそうだよね。僕は父さんがゲームクリエイターで資料が家にあったりしたからね。それに父さんの会社でバイトをしていたから、色々銃のことについて触れ合う機会が多かっただけだから、人よりも多少の知識があっただけだよ。」
「…そういうものか」
(だからと言ってできるかどうかと言えば…南雲ハジメにとって錬成師はなるべくしてなったというべきなのか?)
ハジメの銃火器
「南雲!ちょっとドンナーを撃たせてほしいんだけどいいか?」
「良いよ、ただし、僕の専用な感じだから扱いづらいかも」
「そりゃ構わんさ、やってみたいシチュエーションがあるし…」
「?はいどうぞ」
「なら遠慮なく!撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ!」
ポフン…
「「………」」
「どう撃つのコレ?」
「練習あるのみ」
ユエって……
「なぁ南雲ー」
「んー」
「ユエってさ滅茶苦茶、綺麗じゃないか?」
「どうしたの急に…」
「だってよー綺麗なんだもん、肌はきめ細かいっていうの?だし、髪はさらさらでシルク?のようだし目は綺麗な赤い色でよー顔の造形なんかもうやばすぎるでしょ。初めて見たときあまりにも美人で思考がストップしちゃったよ。」
「そうだね。ユエはすごく美人だ。身内びいきになるけどはっきり言ってこの世界で一番美人じゃないかな?」
「おー分かってくれるか。だよなぁ。あの無表情もいいけどたまに見せる笑顔なんか、並みの男ならノックアウトだぞありゃおまけに性格も良い。悪戯好きだが、なんだかかんだで気を使ってくれるし……あれ?非の打ち所がないんじゃ…」
「うん。間違いなくパーフェクトと言うやつだ。オタクの夢の結晶というか…あ」
「ああそうだな。パーフェクトすぎる恐ろしい娘だ…?なんで南雲驚いた顔してんの?なんで少しずつ離れていくの?え?後ろを見ろって……あ、あひぃぃぃいいい!ユエしゃんなんでいるのぉぉぉぉ!やめてぇえぇ!」
「……照れさせた罰…」
ユエとコミュ
吸血鬼って…
「なあユエちょっと話があるんだけど」
「…ん」
「ユエって吸血鬼だろ太陽の光を浴びても大丈夫なの?」
「…ん、平気」
「そっか…なら、にんにくは?」
「…ん、平気」
「…なら流水は?十字架は?銀製品は?」
「?…全部大丈夫」
「吸血鬼要素ってただ血を吸うだけでそれ以外は普通の女の子…流石ファンタジー…割と適当ってかそれでいいのか吸血鬼?」
「?」
ユエの好み
「ハァ…ハァ…なあユエさん、ちと聞きたいんだが…」
「……ん、何。…今なら、何でも聞いてもいい…」
「上機嫌のとこ悪いんだけどさぁ…毎回俺やハジメの血を吸うのはいいんだ。ユエの食糧的なこともあるし…だけどよぉ、直接血を吸うじゃなくて
なんか試験管に入れておくとかして保存した血のを飲むとかできない?毎回、快感に耐えるのはきついし血を吸われるのが病み付きになりそうなんで怖いんだ…」
「無理」
「即答!?なんで!?」
「…新鮮な方が美味しい。…滋養満点…保存したのは…マズイ…魔力も…体力も…回復しない…」
「マジかよ…」
「……でも、一番おいしいのは…」
「?」
「…血を吸われているところをハジメに見られているコウスケの血が一番美味………きっと見られていて興奮している」
「!?」
(…聞こえない聞こえない、親友が見られて喜ぶ変態なんて知らない、ユエがコウスケをいじめて喜ぶ、ドSなんて僕は知らない、だから、顔を赤くしてこっちを見ないでコウスケ、ユエ…)
ユエの服
「なぁーユエ」
「…ん?」
「下世話な話かもしれないけどさユエの服ってどうしてるの?オスカーが流石に少女物の服を持っているとは思えないけど…」
「…タンスの中にあった」
「マジで!?」
「…嘘。シーツを使って…自分で作った…」
「嘘かよ!、あ~それにしても良かったーオスカーが変態じゃなくて。しっかしユエはすごいな。元王女様なのに服を作るなんて」
「…女の子のたしなみ」
「はぁ~女の子ってすげぇ」
(……一部、嘘、下着類はなぜかタンスにあった…オスカーはきっと変態…)
「…っ!?」
夜、ユエは飛び上がるように目が覚めた。自分の手足が自由に動くことを確認し安堵の息を漏らす。自分が封印されていた時の事を夢で見たのだ。周りはいつもの部屋だが、きょろきょろと辺りを見回す。一人でいることが怖くなり、ハジメとコウスケを探し出す。ハジメは見捨てはしないと言ったが今は少しでも2人のそばにいたかった。
ところが2人は部屋にはいなかった。不安に押しつぶされそうになりながらも2人を探すと工房の方で明かりと音が聞こえた。ホッと安堵の息を漏らして中をのぞくとそこにはハジメが真剣な顔をして錬成をしていた。今作っているのは、防具だろうか、何やらいろんなパーツが分かれて分散している。そんなハジメに邪魔をしないようそっと声をかける。
「……ハジメ」
「ん?ユエ、どうしたの?もしかして起こしちゃった?」
「…違う、少し眠れなかっただけ………一緒にいていい?…」
「良いよ、ちょっと錬成をしているけど…」
「…ん、ありがとう…」
「……」
ユエはそっとハジメに寄り添うように隣に座る。ハジメが少し驚いたような顔をしたが構わなかった。それだけで、不安が消えて行くのを感じた。ハジメの暖かい雰囲気がユエの心に安心感を与える。ハジメはなんとなく察したのか苦笑しながらユエの頭を優しく撫でる。しばらく撫で続けた後また錬成に意識を戻していく。
「「……」」
お互い沈黙だった。だがそれは気まずいものではなく暖かく柔らかな雰囲気だった。
「…ハジメ。何を作っているの?」
「ん?これはね、コウスケの防具を作っているんだ。ほら、あの盾に頼りすぎはいけないって思ってさ、ちょっと僕の方でも何かできないかなと思って」
「…ん、コレかっこいい。」
「そう?ありがとうユエ」
「んっ」
会話は終わりまた沈黙が続く。ふとハジメは呟くように、静かに話し始める
「…ねぇ、ユエ?コウスケってさ、いつも僕たちのことを守ってくれるよね」
「…ん、いつも私たちを守ってくれる」
「うん、そうだよね。いつも前に出て魔物の攻撃を受けている…本人はそれしかできないなんて言うけどそんなことはない。痛みに臆病なのにさ、
それでも前に出るんだ…いつも傷ついても大丈夫、ただのかすり傷だなんて言ってさ、そんな事はないんだ。それなのに…」
ハジメの心の奥の本音が漏れ出す。今まで貯めていたものを言おうとしているのだろう。ユエは黙って聞いていた。誰かに聞いてほしいと理解しているから優しくうなずく。
「僕は甘えてばかりだ…奈落に落ちてきたあの時からずっと…臆病で泣いて震えていた僕を元気づけてあの時はすごくうれしかった。だから僕は立ち上がることができたんだ…僕は強くなって証明したい。コウスケが守ってくれたからここまでこれたんだって。だから…」
「……ん。大丈夫…私も手伝う…」
気が付くとユエはハジメの頭をなでていた。ハジメはコウスケが庇うたびに傷つくのを見て辛くなっていくのだろう。それはユエも同じだった。
「うん…ありがとうユエ」
「んっ」
元気づけられたのか顔がほころぶハジメ。気恥ずかしくなったのか話を変え始める。最も話題はコウスケのことなのだが…
「そういえば、ユエ知ってる?コウスケって僕やユエのことを複雑そうに見ている事」
「…ん、知ってる」
ユエにも経験があった。コウスケはたまに自分とハジメが一緒にいるとき難しい顔をするのだ。コウスケに自覚はなさそうだが…ハジメの方は思い当たることがあるのか考え込んでいる。
「…思い返すと、ユエと出会う前から、僕のことを見てそんな顔をしていたような…」
「…自分のせいでハジメが奈落に落ちたと思ったから?」
「どうなんだろ?…なんかもっと深刻な事だと思うんだけど…」
「…何か隠している?」
「それは…どうかな?結構コウスケって顔に出やすいと思うんだけど」
考え込むハジメだが、思いつかなかったのか首を横に振った。
「……ユエ」
「…ん」
「きっとコウスケが話してくれる。そんな気がするんだ。それまで待ってみよう」
「んっ」
あの優しい彼のことだ。きっと何かあるのだろう。それでも信じて話してくれるのを待つ。2人は静かに笑いあいながらハジメとユエは約束した。
あの後、ハジメは錬成を続けるというので無理をしないように言いユエは別れた。ユエは、安心したように寝室まで歩いていた。ハジメと話をして気分が晴れたのだ。その途中風を切る音が聞こえた。コウスケかと思い音のなる方へ行くと予感通り小川の近くでコウスケは上半身裸で座り込んでいた。今まで武器を振るっていたのか周りには剣や槍、斧、槌、棍棒に鞭、なぜか丸太まであった。
休憩しているコウスケに話しかける。さっきのハジメの話を聞いた後でコウスケにも会いたくなったのだ。
「…コウスケ」
「ん?ユエか…すまん起こした?」
「ふふ…違う…眠れなくなっただけ」
「?そっか、あんまり近づくなよ、さっきまで武器を振るっていたからな。ちょっとどころじゃないぐらい汗臭いぞ」
「…私は、気にしない…」
ハジメと同じように起こしてしまったか心配するコウスケにユエはおかしそうに笑う。そんなユエにコウスケは少し不思議そうな顔をしていた。
「「……」」
ハジメの時と同じように沈黙になる。最もハジメの時とは違ってコウスケは妙にあたふたしているが…そんな様子のコウスケを微笑ましく思いこちらから話しかけることにした。
「…コウスケ…頑張ってる…偉い…」
「偉いって…本当に?」
ユエの言葉に頭を傾げるコウスケ。それが切っ掛けなのかぽつりぽつりと言葉が出てくる。
「なぁユエ」
「…ん」
「南雲って強いよな…」
「ん」
「俺はあの強さについていけるのかな…正直不安に思うときがあるんだ」
「?…コウスケは…いつも守ってくれている、ハジメも私も…感謝している…」
「そう言ってくれると助かるけど…身体的な強さもあるけど精神的な強さ…つまり心がアイツは強いんだ、知ってるか?奈落に落ちる前、南雲がベヒーモスを足止めしたこと」
確かにその話は聞いている、圧倒的な強さを誇るベヒーモスの前に立ちはだかって足止めをしたこと、本人は必死だったと聞くが…
「南雲も俺も争いとは一切無縁の生活をしていたんだ。それなのに南雲は、足止めするって立ち向かっていったんだ。普通は圧倒的な暴力の前にいたら腰が竦むかパニックになって逃げ惑うのが普通なのに…なぁわかるかユエ。怖くて仕方ないのにそれでも前に進んだんだ、無能と言われていた普通の学生が!あんな圧倒的な化け物を前にして!!」
どんどん熱が入ってきたかのようにしゃべり始めるコウスケ。気のせいか目が少し澱んでいる。
「すごかったよ。羨ましかった。恐怖を乗り越えて進むアイツの背中は誰よりもカッコよかった。だから、だから助けたかったのに…俺はダメだった…魔物に不覚を取って心配をかけさせて…今もそうだ。本当にアイツの役に立ってるのか、時々不安になる。このままどんどん引き離されそうで…」
そのまま落ち込むコウスケ。急に興奮したかと思えば落ち込み始める。明らかにおかしくなっている。とりあえずユエは小川の水を容赦なくぶっかける事にした。
「ぶはっ冷たっ何すんだよ、ユエ」
「……コウスケ、あの蒼い盾を出して」
「?ああ、分かった」
言われたとおりに蒼い盾を出すコウスケ。鍛錬の結果かヒュドラの時に出した時よりも少し大きくなっている。
「…この盾は…ハジメを守ってくれた…私も…勇気づけられた…コウスケが立ち上がってくれたから」
「……」
「…だから…ありがとう…私たちを守ってくれて」
そっと淡く光る盾に触りながら礼を言うユエ。この盾がなければ、いや…コウスケが居なければ自分たちはここにいなかった。
「…うん、どういたしまして」
照れたように頭をかきながらそっぽを向くコウスケ、もう目に澱みはなくなっている。ユエはそんなコウスケにくすくすと笑うのだった。その後コウスケと分かれユエは自分のベットで横になった。もう、不安はなかった。自分を助け出した2人はこれから強くなっていく。なら自分も負けないようにしようと微睡みながら決意するユエ。その表情は、とても安らかだった。
「という訳で、ユエ先生、本日はよろしくお願いします」
「んっ任せて」
コウスケの言葉に眼鏡をクイッと上げ満足げな顔をするユエ。今までは独自で魔法の練習をしていたのだが、折角魔法の天才であるユエが居るので教えを受けようとコウスケ思いついたのだ。ユエは初めての生徒?に非常に満足そうである。…ちなみにメガネはハジメが「先生ならこれが必要でしょ」と言い作った伊達メガネである。
「んで、先生今日は何をすれば?」
「ん、適性を見るから…攻撃魔法をやってみて」
「了解」
ユエの言葉通り思いつくままにやってみた結果…
「…へっぽこ」
「うぐっ」
結果としてコウスケは攻撃の魔法が全然使えなくなっていた。一応初級ならギリギリ何とかなるが、今後役に立てるかと言うと…非常に微妙だ。その事に肩を落とすコウスケ。
「他には…何ができるの?」
「うーん…あ!『種火』」
指先から小さな火を出してみる。これのおかげで迷宮にいたときは、火に困ることはなかった。しかしユエは非常に微妙そうな顔をする。なんとなく気まずくなりながらも続けて自分が得意な魔法を出してみる。
「『冷水』に『温水』、『冷風』に『温風』、『光明』に…そんなものか」
どれもがあると便利なものばっかりだった。なぜかどんどんユエの機嫌が落下していく。どうやら自分の得意な攻撃型の魔法にコウスケの適性がないのが不満らしい。
「他には~えっと…『快活』!」
ヒュドラと戦ったときに生まれた技能である『快活』をユエにかけてみるコウスケ。しかし、ユエに纏っている青く光る色が若干薄い気がした。首をひねると、ユエがどこか納得したようにうなずいている。
「うーん?もっと色が濃かったような?」
「あの時より…効果が薄い…魔力も、体力もあんまり回復しない」
「何で!?」
「おそらく…コウスケの気分の問題」
ユエが言うにはヒュドラと戦っていた時は気分が高揚し全力で使えていたのだろうという事らしい。今は普通な状態のため効果が薄いのではないかというのだ。
「なるほどね…要は俺がテンションが上がると効果が上がるような技能なのか」
「ん」
こうしてユエに魔法を教わるはずが、結局は魔法よりもできることをより得意にするという結論になった。
現在コウスケはユエとヒュドラのいたところに立っていた
「さてと、ユエ頼みがある」
「…ん」
「前置きを省いてすっぱり言うと俺に魔法をぶち当てて欲しいんだ。それも本気で」
「!?」
コウスケは知っている。これからの旅路が苛酷になるのを。雑魚はどうにでもなる、しかし、強敵となると話が違う。そんな時、何もできずハジメとユエに頼りっぱなしは嫌なのだ。だからこそ自分の唯一の力である守りの力を鍛え上げたいのだ。ユエは魔法の天才的な力を持っている。これから先の強敵と比べると見劣りはしない、だから頼んだのだ。もちろん後でハジメにも協力を要請するつもりである。
「……ん、分かった…コウスケ」
「おう!」
「…死なないで『緋槍』」
「え」
とっさに蒼の盾を展開するコウスケ。ノ―モーションで魔法をぶっぱするユエ。蒼の盾にはじかれコウスケの頭を狙った火の槍は霧散した。
「あのーユエさん確かに撃って欲しいとは言ったけど急所狙いは…せめて、心の準備位はさせてほしいなんて…」
「…ん。敵は…待ってくれない…急所を狙うのも当然…世界の常識『凍雨』」
「そりゃそうですよね!うぉぉおおおお!!」
この後フラフラになるまで特訓が続いたコウスケは少しだけ後悔しながらも蒼の盾が成長していく手ごたえを感じていたユエも魔力の限界量が上がった気がするらしい…
「なぁオスカー俺は一体どう行動するべきなんだろうな」
早朝オスカーの墓石の前でコウスケはポツリと呟いた。これからの旅のことを考えると不安になってしまうのだ。ハジメとユエには話すことができないことを誰かに聞いてもらいたかったのだ。気配感知で2人は自室にいることは確認済みである。
「このまま原作通り進むべきなのはわかっているけど…俺は助言をしない方が良いのかな?」
コウスケは大体原作で何が起きるのかある程度は知っている。しかしその事をさりげなく言ったところで果たしてハジメたちにとって最良の結果になるのだろうか?もしかすると成長の妨げになるのではないか?天之河光輝の自分がここにいることで何が起きるのか?疑問は尽きることはない。
「そりゃもちろん言うべきなのかもしれないけどよ…言ったせいで何が起きるかわからないからなーまったく…『君は小説のキャラクターです。原作名ありふれた職業で世界最強と言う名のなろう小説の主人公です』なーんてことを南雲には言いたくはない…と言うより言ったことで信じてくれるのか?…もしくはなぜ言わなかったのかと恨まれるのか?…言いたくねぇなこんな事」
ハジメ達に隠し事をしているというのがコウスケには辛かった。本当は言ってさっさと楽になりたい。しかし…頭の中でどうしても迷いが出てくる。
「つーか、なんで俺がここにいるんだ?と言うよりなんで天之河光輝の身体なんだ?オスカー…オー君、答えてくれよ。どうして俺はこの世界に来ちまったんだ?」
半ば八つ当たりのようにオスカーに愚痴る。コウスケには召喚された直前の記憶がない。いつの間にか目が覚めたらあの広間の間にいたのだ。
「はぁー本っ当にめんどくさい。天之河光輝が”天翔閃”を撃たなければ問題ないと思っていたけど、まさか坂上龍太郎が天之河の代わりをするなんて誰が想像できるかよ…あれか?運命は変わらないってか?ケッ阿呆くせぇ…思い出した。クラスメイト達どうなっているんだ?天之河…リーダーが居なかったらあいつらはどう動くんだ?原作通りに行動するのか?…あーそういえばあのメンヘラもどうなっているんだ?…こんな所に召喚されなかったら痛い女で済んでいただろうに。どーしてあそこまで暴走するのかね?なんで南雲のクラスメイトは問題児が多いんだ?エヒトか?すべてはあの究極のボッチをこじらせた奴が悪いのか?…あああああぁ考えたくねぇー未来の自分に全部丸投げしようかな…」
自分の事とハジメ達の事で手一杯なのに余りにも考えることが多すぎる。このままでは頭がパンクするので仕方なくオスカーの墓石に『冷水』を浴びせる。気のせいか成仏しているはずのオスカーが苦笑したような気がした。
「ほーれほれほれ。んん?気持ち良いかオー君?なーに遠慮はいらん。たんと浴びるがいいさ…何?お湯の方が良いだと?この卑しんぼめ!」
結局今はできることをするべきだとオスカーの墓石に八つ当たりをかましながら無理矢理納得するコウスケだった。
「万翔羽ばたき、天へと至れ、“天翔閃”!」
コウスケはその詠唱と共にハジメに作ってもらった錬成剣を振り下ろす。が剣は光ることもなく何も放たれることはなかった。
(やっぱり出ないか…)
現在コウスケはヒュドラのいた大広間で一人、魔法や剣技の練習をしている。迷宮を攻略していた時は違い余裕のある今色々試していたいことがあったのだ。その一つとして原作における天之河光輝が使っていた技の一つを真似してみたのだが…結果は先ほどの通り、何もできなかった。仕方ないとは思いつつももう一度試してみる。
「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ…ああもう!さっきから神神うるせぇんだよ!そんなに髪が大事なんかボケェ!禿げ散らせ糞エヒト!“神威”!」
途中から本音が出てしまったがやはりうんともすんとも剣は反応しない。
「…当たり前か、俺は『天之河光輝』じゃないからな」
体が天之河光輝なら少しは反応するかもと思ったがそう、うまいことはいかないようだ。最も使えたところであの様な恥ずかしい詠唱を真顔で言うつもりなんてさらさらないが。気を取り直して次に錬成で出来た錬成刀を適当に構える。ハジメが中二病を煩わせながら作った物の一振りだ。
「八重樫流……?」
続く言葉は何だっただろうか。確か技名を叫ぶ流派ではないだろうがどう行動するのかがコウスケにはわからない。取りあえず適当にそれらしく突きや袈裟切りなどを試してみるが…やはり体にピンと来るものは全然ない。
「おかしいな?確か天之河光輝は小さい頃から八重樫流を学んでいるはずじゃ…うーん、やっぱり中身が違うと出来ないもんか」
小学生のころから八重樫流の剣道を学んでいるはずの天之河光輝の肉体なら刀を持ったら勝手に八重樫流の動きが出ると思ったが、そんな事はなかった。憑依という初めての体験なのだ。可能性を模索してみるため、ほんの少し期待していただけなのであんまり残念でもないが。
「しょうがねえか、俺にはこれがあるしな」
左腕を前に出し守護を出す。蒼い盾は難なく前に展開された。その状態を維持しながらもいろいろ考えるコウスケ。
(しっかし八重樫流が使えないとは…うーん、俺は剣道なんてやっとことはないしなーどうしても見様見真似というか…ん?あれ?俺、天之河だった時よく八重樫雫から気付かれなかったな?)
まだ天之河光輝を演じていた時たびたび訓練で八重樫雫と一緒にいたのだが、不審な目を向けられることはなかったのである。明らかに剣を持った訓練がおぼつかなかったであろうに、特に気付かれた様子はなかった。
(まぁ仕方ないよな異世界に召喚されてただでさえ大変なのに、幼馴染の変化に気づけなんて無理があるからな…つーか普通、目の前にいる人間が中身が別人だなんて気づくわけないよな…もしくは俺に役者の才能があったりして!)
バチィッ!
「うぉ!?」
阿呆なことを考えていたら守護が掻き消えてしまった。やれやれと息を吐きまた守護を展開する。今はただできることに集中するしかないのだった。
「人は数字で測れる生き物じゃないんだ」
「…」
「おかしいとは思わないか南雲?人にはそれぞれ個性があるはずなんだ。それを数字で表すなんて俺はおかしいと思うんだ。そりゃ日本にいたときはさ、自分の能力を数字で見れたら良いなーなんて考えてはいたさ。けどよ、実際見たらおかしくないか?」
「……」
「なんなんだよ、人のステータスを10とか100で表して格差を作るなんてさ。おかしいじゃねえか。何?100の奴は10の奴より10倍も身体能力が高いって訳か?違うだろうが!そもそも100の奴が寝ているときに10の奴に首筋をぷすりとされたら死んじまうだろうが!ステータスプレートを作ったやつはもしかしたら善意で作ったのかもしれない。自分のことが分かるようにってさ、でも俺はこう思う「余計なもんを作るな」って」
「…コウスケ」
「ん?」
「何があったの?」
「俺のステータスがまたバグってた。…もう信じない」
「見せて」
「へーい」
==================================
コウスケ
称号 異界の護り手
天職:勇者 ——
筋力 B⁺ 耐久 AA
敏捷 C 魔力 A
幸運 D
技能:我流闘技・魔力操作・全属性適正・悪食・守護・快活・誘光・—魔法
他多数
状態:守護対象「南雲ハジメ・ユエ」
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(……Fate?…僕のステータスプレートはっと)
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???
天職:錬成師
筋力:10950 +(B)
体力:13190 +(C)
耐性:10670 +(C)
敏捷:13450 +(A)
魔力:14780 +(B)
魔耐:14780 +(C)
技能:錬成能力・銃技・他多数
状態:勇者の加護
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(明らかにコウスケの影響を受けているよね…コレ)
「えーい!こんなもん作ったのはどこのどいつだぁあああ!」
「あんまり気にしない方が良いよね…」
詰め込みすぎたかな?所々変な気がします