ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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この話から2章になります。
色々と無理矢理感の強くなる章になる予定ですがご了承ください
いつも誤字脱字ありがとうございます


第2章 衝動
うさ耳と出会う


「あぁー太陽がこんなに気持ち良いなんて…浄化される―」

 

「ぽかぽかの日差しと真っ青な青空…良いものだね」

 

「んっーー!!」

 

ハジメ、コウスケ、ユエの3人はオルクス大迷宮を抜けた先である【ライセン大峡谷】の谷底にいた。暖かい日差しと穏やかな風が地上に出たという事を実感しながら3人は青空を見上げていた。途中魔物に囲まれたが、ハジメがドンナー・シュラークをつかい、空中リロードをしながらあっさりと殲滅した。

 

「まったく無粋な奴らだね。…たしかここって魔法が使えないんだったけ?」

 

「……分解される。でも力づくならいける」

 

ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからである。もちろん、ユエの魔法も例外ではない。しかし、ユエはかつての吸血姫であり、内包魔力は相当なものであるうえ、今は外付け魔力タンクである魔晶石シリーズを所持している。

 

「素直に南雲の銃に頼った方が良いと思うが……ちなみに効率は?」

 

「……十倍くらい」

 

「ふむ確かに使えないな…あれ?俺の”守護”はちょっと疲れるだけで問題ないぞ?」

 

ユエの言葉通りコウスケの初級魔法は確かに使えなかったが、なぜか技能の守護は特に問題ない。

 

「…例外はあるってことだね」

 

「…コウスケはヘン」

 

「お前ら…人を何だと思っているんだ」

 

ユエとハジメに聞こうとしたが2人の『コウスケならシカタナイヨネ』という視線にがっくりとうなだれる。そんなコウスケにかまわずハジメとユエは今後について話し合う。

 

「さてと、ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だから…せっかくだし樹海側に向けて探索でもしながら進もう」

 

「……なぜ、樹海側?」

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌でしょ? 樹海側なら、町にも近そうだし。」

 

「……確かに」

 

という事で魔力駆動二輪走らせることにするハジメ。 ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖だ。そのため脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着する。迷う心配が無いので、迷宮への入口らしき場所がないか注意しつつ、軽快に魔力駆動二輪を走らせていく。車体底部の錬成機構が谷底の悪路を整地しながら進むので実に快適だ。もっとも、その間もハジメの手だけは忙しなく動き続け、一発も外すことなく襲い来る魔物の群れを蹴散らせているのだが。

 

暫く魔力駆動二輪を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。魔力駆動二輪を走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。だが、真に注目すべきは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。ハジメは魔力駆動二輪を止めて無関心な眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。

 

「何だろあれ?」

 

「……兎人族?」

 

「なんでこんなとこに? 兎人族って確か樹海に住んでいるんじゃ?」

 

「…そのはず」

 

「うさ耳少女…ん?…ぅぉ!?」

 

ハジメとユエは首を傾げながら、逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りに興じる。赤の他人である以上、単純に面倒だし興味がなかっただけである。ウサミミ少女にシンパシーなど感じていないし、メリットが見当たらない以上ハジメの心には届かない。助けを求める声に毎度反応などしていたらキリがないのである。ハジメは既に、この世界自体見捨てているのだから今更だ。

 

コウスケはうさ耳少女を見つめ硬直している。知ってはいる。ここにいる以上出てくるというのは知ってはいたのだが、遠目から見えるあまりにも少女の肌色の面積が多いことに思わず硬直してしまったのだ。

 

しかし、そんな呑気なハジメとユエとコウスケをウサミミ少女の方が発見したらしい。双頭ティラノに吹き飛ばされ岩陰に落ちたあと、四つん這いになりながらほうほうのていで逃げ出し、その格好のままハジメ達を凝視している。そして、再び双頭ティラノが爪を振い隠れた岩ごと吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がると、その勢いを殺さず猛然と逃げ出した。……ハジメ達の方へ。

 

 それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊しハジメ達に届く。

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

 滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。このままでは、ハジメ達の下にたどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。

 

 流石に、ここまで直接助けを求められたらハジメも……

 

「え、やだよ。自分でどうにかしてくれ」

 

「…ん」

 

やはり助ける気はないらしい。必死の叫びにもまるで動じていなかった。むしろ、物凄く迷惑そうだった。だがコウスケは違った。少女が助けを求めてきた時点で、否うさ耳を発見した時点で、助けるつもりだったのだ。…少女の柔肌に少しばかり目を奪われていたというのがあって動けなかったが…すぐにサイドカーからひらりと飛び降り風伯を構える。

 

「南雲あれを見ろ」

 

「あれ?…生物の捕食活動?」

 

「後ろのはどうでもいい。問題は前の方だ」

 

「前…うさ耳少女?」

 

「そうだ!うさ耳だ!ならば俺がすることは一つ!」

 

「え…もしかして面倒ごとに首を突っ込むつもりじゃ…」

 

すぅと息を深く吸い込み風伯に魔力を注ぎ込む。貯め込んだ魔力を解き放ちながら大きく風伯を振りかぶる。

 

「そのうさ耳もらったぁあああああ!!切り飛ばせ!風伯!」

 

振りかぶった風伯から風の刃が飛び出す。今まさにうさ耳少女を食らわんとしていた双頭ティラノは真っ二つに両断されていき地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。双頭ティラノはバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返った。

 

一歩先の自分の運命を悲観していた少女は、後ろで何が起きたかを理解できず衝撃で再び吹き飛ぶ。狙いすましたようにハジメ達の下へ。

 

「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」

 

 眼下のハジメに向かって手を伸ばすウサミミ少女。その格好はボロボロで女の子としては見えてはいけない場所が盛大に見えてしまっている。例え酷い泣き顔でも男なら迷いなく受け止める場面だ。

 

「だから、自分でどうにかしてくれって」

 

「えぇー!?」

 

しかし、そこはハジメクオリティー。一瞬で魔力駆動二輪を後退させると華麗にウサミミ少女を避けた。地面に立っているコウスケは受け止めようと身構えたが、少女のボロボロの格好を見てふと思い戸惑ってしまう。

 

(流石に、年頃の女の子の柔肌を無遠慮に触るのは不味いか…)

 

その一瞬の迷いが手遅れだった。哀れうさ耳少女は驚愕の悲鳴を上げながらハジメの眼前の地面にベシャと音を立てながら落ちた。両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。気は失っていないが痛みを堪えて動けないようだ。

 

「……コウスケ、助けたら…最後まで面倒見る」

 

「むっ…否でも流石に女の子の肌に触るのは勇気がいるというか何と言うか…セクハラで訴えられないかな?」

 

ユエのジトっとした目にコウスケの反論は尻すぼみになってしまう。そんなやり取りを呆れた目で見ているハジメは深い溜息をついてしまう。

 

(なんだか…面倒ごとに巻き込まれそうな気がする)

 

そんな呑気な雰囲気にガバリと起き上がったうさ耳少女は自分を追ってきた双頭ティラノの両断された姿をみて唖然とする。

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」

 

 ウサミミ少女は驚愕も表に目を見開いている。どうやらあの双頭ティラノは“ダイヘドア”というらしい。そんな驚愕しているうさ耳少女には目もくれずハジメはコウスケを呼びながらなに事もなかったように魔力駆動二輪に魔力を注ぎ先へ進もうとする。

 

「助かって良かったね。それじゃ僕たちはこれで、コウスケ変顔していないで行くよ」

 

その気配を察したのか、驚愕していた顔を引っ込めてものすごい勢いでハジメの腰にしがみつくうさみみ少女。

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

助けてもらいながら物凄い図太いことをお願いしてくるうさ耳少女にハジメはしがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




取りあえず短いですが今回はここまで
書籍版や漫画を見て思ったのですがいくらなんでもシアの服装マズい様な…
最初見たとき痴女かよ!と突っ込んでしまいました
感想お待ちしています
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