ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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一つの話を作るのに一日かかります。楽しい反面ゲームが全くできなくて悲しい。
でも小説を書くのは楽しい。矛盾した気持ちを抱えながら投稿します

感想ありがとうございます。テンションが上がって筆がとても進みます。
一人で書いているわけではないというのがよくわかります。


山脈登山

 夜明け、ハジメたちは、東の空がしらみ始めた頃、捜索の準備をして北門に向かっていた。依頼のウィル・クデタ達の生きている可能性を考えれば、早くいくことに越したことはない。

 幾つかの建物から人が活動し始める音が響く中、表通りを北に進み、やがて北門が見えてきた。と、ハジメはその北門の傍に複数の人の気配を感じ目を細める。特に動くわけでもなくたむろしているようだ。

 

 朝靄をかきわけ見えたその姿は……愛子とリリアーナ、生徒六人の姿だった。

 

「……何となく想像つくから一応聞くけど……何してんの?」

 

 ハジメが半眼になって愛子に視線を向ける。一瞬、気圧されたようにビクッとする愛子だったが、毅然とした態度を取るとハジメと正面から向き合い話し始めた。コウスケはその様子を横目で見ながら、リリアーナに視線を移す。なぜここにいるのかという疑問は抱かなかった。

 なんとなく、この人もついてくるんだろうなと予感めいたものがあったのだ。後の展開を考えても邪魔にはならなさそうだと結論付け、ハジメと愛子の会話を見守る。どうやら愛子が胸を張っているところを見ると捜索に連れていくことになったようだ。

 

「んで、南雲連れていくのか?」

 

「この人はどこまでも教師だからね。生徒のことで妥協はしないそんな人だ。それに放置していく方が後で絶対面倒になる」

 

「へぇ~生徒思いのいい先生だ。こんな人希少価値にもほどがある」

 

「まぁね…そっちの人とは知り合い?さっきからコウスケのことをガン見しているけど?」

 

「どうかな?…多分あの娘…王女様がいるのは巡り巡って俺のせいだろうな。…すまん色々面倒をかける」

 

「ふーん王女様ね…それよりも何を今更って話だよ」

 

苦笑し肩をすくめるハジメに気持ちが楽になるコウスケ。そんな2人をジトーと見た後ユエとシアは疑問を口にする

 

「…定員オーバー」

 

「人数が多すぎですぅ。どうするんですかハジメさん?」

 

「ちゃんと対策は取ってあるよ。さて…僕達の行動に邪魔をしないって約束できるならお前たちは荷台に行け」

 

 話しながら宝物庫から魔力駆動四輪を出すハジメ。ポンポンと大型の物体を消したり出現させたりするハジメに、おそらくアーティファクトを使っているのだろうとは察しつつも、やはり驚かずにはいられない愛子達。今のハジメを見て、一体誰が、かつて“無能”と呼ばれていたなどと想像できるのか。

 園部達は、吐き捨てるように言い残しさっさと運転席に行くハジメに複雑な眼差しを向けるのだった。

 

 

 

 前方に山脈地帯を見据えて真っ直ぐに伸びた道を、ハマーに似た魔力駆動四輪が爆走する。サスペンションがあるので、街道とは比べるべくもない酷い道ではあるが、大抵の衝撃は殺してくれる上、二輪と同じく錬成による整地機能が付いているので、車内は当然、車体後部についている硬い金属製の荷台に乗り込むことになった生徒達も特に不自由さは感じていないようだった。

 

 ちなみに、“宝物庫”があるのに、わざわざ荷台を取り付けたのは、荷台にガトリングをセットし走行しながらぶっ放すという行為に、ちょっと憧れがあったからだ。ハジメのささやかなこだわりである。

 

 車内はベンチシートになっており、運転席には当然ハジメが乗り、隣の助手席にはコウスケが、そのコウスケの膝の上に愛子が非常に居心地悪そうに座っている。これは助手席に乗るのは自分だとコウスケが頑として譲らなく愛子は愛子で昨夜の生徒に殺されそうになっていたという会話の続きをしたいのと他の生徒には聞かれたくないのでそばで話せる助手席でと考えていたのだ。

 

 結果コウスケの

 

「ふむ。なら俺が助手席に座って先生が俺の膝の上に座ればいいんじゃないか?幸いなことに先生はちっこいから何とかなるし」

 

 と言う言葉に対してハジメが「どうでもいいからさっさと急ごう」という事でこうなってしまったのだ。自分から同行を願い出たとはいえまさか自分の生徒の膝の上に座るとは思いもしなかった愛子は只々気まずそうにしていた。おまけにハジメが昨夜の最後に言った『中身が別人』と言う言葉が引っかかっている。見たところは顔とかは以前の天之河光輝ではあるが性格がかなりはじけているような印象を受けるが…

 

 後部座席にはユエ、シア、リリアーナが座っている。リリアーナは街から離れるのでフードを外しているのだがユエからじろじろ見つめられておりこちらもまた居心地悪そうだ。

 

「……誰?」

 

「えっと私は…リリアーナと言いまして…」

 

「ユエさん、いろいろ事情があるから聞かない方が良いかもしれません。リリアーナさん同行するのは構いませんが自分の事は自分で守ってくださいね。一応フォローはしますけど…」

 

「はい。…ご迷惑をお掛けします」

 

「ん。足手まといが居ても全く問題ない」

 

「もぅユエさん。朝からハジメさんとコウスケさんが構ってくれないからってそういう事は言っては駄目ですよ!」

 

「ち、違うっ!」

 

「ふふ、皆さん仲がいいんですね」

 

「…うぅ」

 

 最もシアがうまくとりなしているので雰囲気は和気藹々としている。一方で ハジメと愛子の話も佳境を迎えていた。

 

 ハジメから当時の状況を詳しく聞く限り、やはり故意に魔法が撃ち込まれた可能性は高そうだとは思いつつ、やはり信じたくない愛子は頭を悩ませる。

 

「一体誰がそんな事を…」

 

「さぁ?もしかしたら全員かもね?僕は無能で通っていたから邪魔だから排除しようとか考えていたのかも?もしくはくだらない嫉妬かな?」

 

(ビンゴだ南雲。最もアイツが魔法を撃たなければ物語は始まらないわけで…)

 

「もし、そうだとしたら私は一体どんな言葉を掛ければいいんでしょうか…」

 

 愛子は悩む。仮に犯人を特定出来たとしても、人殺しで歪んでしまったであろう心をどうすれば元に戻せるのか、どうやって償いをさせるのかということに、また頭を悩ませた。

 そんなウンウン悩む愛子にコウスケは慰めるようにしかしどこか真剣さを感じる声でアドバイスを送る。

 

「言葉よりもあなたの正直な気持ちを伝えればいいんではないでしょうか?」

 

「え?」

 

「いえ、貴方の生徒を思う気持ちがあれば割と何とかなるんじゃないかって…まぁいいや、あんまり根を詰めるのはよくないですよ。気楽に行きましょう」

 

 なんとも雑で適当なアドバイスだったがその言葉に少しは気持ちが軽くなったのか頭を唸って悩むうちに、走行による揺れとコウスケの硬い膝が眠りを誘い、愛子はいつの間にか夢の世界に旅立った。コウスケはそんな愛子を優しく見守りハジメの宝物庫から毛布を要求し愛子に優しく掛ける。

 

「あーあ南雲が困らせるから先生さん寝ちゃったじゃないか。ほらタオルケットの一つでもさっさと出さんかい」

 

「やれやれ」

 

「全く。こんな生徒思いのいい先生を困らせるなんて、もう少し優しく接することはできないのか?」

 

「…それはそうだけど」

 

「お前のことを心配して、今も行方不明になっている清水を心配して、人殺しをしでかそうとしたアホのことも心配して…こんないい人、負担を掛けさせない方が良いぞ」

 

「それ僕の責任じゃないよね?」

 

「それでもだ。少しは協力的になるとか口調を優しくするとか、…本当にこんないい先生…いや大人か、そんな人がそばにいるって貴重なんだから。…正直お前がかなり羨ましいよ」

 

 それっきり外の景色を眺めて黙ってしまうコウスケ。ハジメはどこか寂しげにつぶやいたコウスケの言葉に何も言えずただ運転に集中していった。

 

 

 

 

 そんなこんなで北の山脈についた一行。

 

 標高千メートルから八千メートル級の山々が連なるそこは、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。日本の秋の山のような色彩が見られたかと思ったら、次のエリアでは真夏の木のように青々とした葉を広げていたり、逆に枯れ木ばかりという場所もある。

 

 また、普段見えている山脈を超えても、その向こう側には更に山脈が広がっており、北へ北へと幾重にも重なっている。現在確認されているのは四つ目の山脈までで、その向こうは完全に未知の領域である。何処まで続いているのかと、とある冒険者が五つ目の山脈越えを狙ったことがあるそうだが、山を一つ超えるたびに生息する魔物が強力になっていくので、結局、成功はしなかった。

 

 ちなみに、第一の山脈で最も標高が高いのは、かの【神山】である。今回、ハジメ達が訪れた場所は、神山から東に千六百キロメートルほど離れた場所だ。紅や黄といった色鮮やかな葉をつけた木々が目を楽しませ、知識あるものが目を凝らせば、そこかしこに香辛料の素材や山菜を発見することができる。ウルの町が潤うはずで、実に実りの多い山である。

 

 

 ハジメ達は、その麓に四輪を止めると、暫く見事な色彩を見せる自然の芸術に見蕩れた。女性陣の誰かが「ほぅ」と溜息を吐く。先程まで、生徒の膝で爆睡するという失態を犯し、真っ赤になって謝罪していた愛子も、鮮やかな景色を前に、彼女的黒歴史を頭の奥へ追いやることに成功したようである。

 

 ハジメは、もっとゆっくり鑑賞したい気持ちを押さえて、小型の無人偵察機、四機を出しながらあたりの捜索を開始した。魔物の目撃情報があったのは、山道の中腹より少し上、六合目から七号目の辺りだ。そこを目指しハイペースで進むハジメ達。

 

 おおよそ一時間と少しくらいで六合目に到着したハジメ達は、一度そこで立ち止まった。理由は、そろそろ辺りに痕跡がないか調べる必要があったのと……

 

 

「はぁはぁ、きゅ、休憩ですか……けほっ、はぁはぁ」

「ぜぇー、ぜぇー、大丈夫ですか……愛ちゃん先生、ぜぇーぜぇー」

「うぇっぷ、もう休んでいいのか? はぁはぁ、いいよな? 休むぞ?」

「……ひゅぅーひゅぅー」

「ゲホゲホ、南雲や天之河達は化け物か……」

 

 予想以上に愛子達の体力がなく、休む必要があったからである。もちろん、本来、愛子達のステータスは、この世界の一般人の数倍を誇るので、六合目までの登山ごときでここまで疲弊することはない。ただ、ハジメ達の移動速度が早すぎて、殆ど全力疾走しながらの登山となり、気がつけば体力を消耗しきってフラフラになっていたのである。

 だが一番悲惨なのは

 

「おーい姫さーん大丈夫ですかー?」

 

「…が…かはっ…」

 

「ダメだこりゃ」

 

 コウスケに背負われているリリアーナだった。あくまで一般人より上のステータスをしているのであって愛子たちと違いチートではない。そのため早々に体力がなくなり顔が青白くなったのだ。あまりにも顔色が悲惨だったのでコウスケが背負っていくことにした。コウスケとしても、おそらく自分のせいでここにきてしまったリリアーナに罪悪感があるのだ。

 

 四つん這いになり必死に息を整える愛子達にをその場において休憩がてら近くの川に行くことにするハジメ達。そうしてハジメたちがたどり着いた川は小川と呼ぶには少し大きい規模のものだった。索敵能力が一番高いシアが周囲を探り、ハジメも念のため無人偵察機で周囲を探るが魔物の気配はしない。取り敢えず息を抜いて、ハジメ達は川岸の岩に腰掛けつつ、今後の捜索方針を話し合った。

 

「さてと、ウィル・クデタ達はどこに行ったのかな?」

 

「もっと開けた場所か…あるいは負傷してどこかで隠れているとか?」

 

「…コウスケ、今後のことについての会話に参加するのはいいけど後ろの姫さんが死にそうなんだけど」

 

「ひゅぅー…ひゅぅー…けほっ……ぅ」

 

「ん?…うぉ!ヤバイ死にそう!すまん南雲ちょっとこの人の面倒を見ているから後の方針は頼んだ!」

 

ハジメに断りを入れすぐに背負っていたリリアーナを下ろし”快活”をかけ生成魔法産の水を飲ませることにする

 

「ほらリリアーナさんこれを飲んでください…たぶんかなり楽になるから」

 

「んぐっんぐっ…ふぅ…すごく美味しいですねこのお水」

 

「そりゃあ良かったです。その水筒に入っているの全部飲んでいいですからゆっくり休んでください」

 

コウスケがリリアーナを介抱している最中ユエとシアは素足になり足を川の水につけ涼んでいる。

 

「ありがとうございます…お水美味しかったです」

 

 さっきまで死にそうなほど消耗していたのに青い光に包まれ、美味しい水を飲んだだけですぐに体力が回復したことに驚愕しながらリリアーナが感謝の声を出す。

 

「この青い光は?…とても体が楽になるんですが…貴方の魔法ですか?」

 

「そーですよ。俺のオリジナル魔法…いや、技能かな?掛かると体力やら魔力が回復するんだ。その水も俺の魔法の産物で南雲達曰くかなり美味いというけど…俺にはさっぱりです」

 

「何から何までありがとうございます、でも…どうして私にここまで世話を焼いてくれるんですか」

 

俯いていた顔をあげ、コウスケの目を見ながら疑問を口にするリリアーナ。自分が捜索の足を引っ張っているのは理解しているし申し訳なさも感じていたがどうにも致せりつくせりのように感じてしまうのだ。

 

「ん?そりゃあ…下心がありますからね。ここで恩を売っておけば、後々役に立つかなってそう思ったんですよ」

 

(半分嘘。きっとここで恩を売っておけば色々便宜を図ってくれるとは思うけど本当は…きっと君はここに来なかったはずなのに俺のせいで来てしまったから)

 

「…そうなのですか」

 

最もそうな理由を口に出しながら肩をすくめるコウスケ。その理由を聞いて複雑そうなリリアーナ。そのやり取りを、興味深そうに眺める視線が3つ。

 

「コウスケさん、あのお姫様のお世話をずっとしていますね…もしかして、好みなんでしょうか!」

 

「……」

 

「…どうかな?そこまで考えてるようには見えないけど?」

 

「…ハジメあの人は?」

 

「ん?リリアーナ姫の事?この国の王女様。何でも人気があって聡明な人らしいよ。僕はあんまり接点がなかったから良くは知らないけど」

 

「……王女…」

 

もしかしてと興奮するシアに王女と言う立場の何か思う事があるのか考え事をするユエ、依頼のことを考えながらも親友の行動を観察するハジメ、とその時ハジメの顔が一瞬で険しくなった

 

「…ハジメ?」

 

「どうやら上流の方に何か暴れた跡があるみたいだ。…コウスケ、ユエ、シア行こう」

 

「ん……」

 

「私はもうちょっと見ていたいんですが…はいですぅ!」

 

「あいよ!…というわけでリリア―ナさん。ほらおいで?背中を貸すから」

 

 ハジメの号令を聞きリリアーナの前でしゃがむコウスケ。その背中に戸惑うリリアーナ。流石に体力が回復しているのにまた乗るのは気が引けてしまう。その様子に気付いたコウスケは茶化す様に笑った。

 

「乗らないんですか?…ははーん。お姫様抱っこがイイと申しますか。無理でござる。あれは緊急の時にとても困るのでござる」

 

「違います!なんですかござるって…その迷惑じゃないでしょうか?」

 

「問題ないですよ。というより、俺達の速さに付いてこれないでしょう?」

 

「…はい」

 

「ほほぉ~ん~中々いい感じですよ~コウスケさ~ん」

 

「……ふむ」

 

「やれやれだ」

 

 渋々という感じでコウスケの背中におぶさるリリアーナ。その様子にシアは鼻息荒く目を輝かせ、ユエは何かを閃いた表情を見せ、ハジメはやれやれと首を振る

 

 疲れ果てて休憩していた愛子たちと合流し先へ進むと争いの形跡が見えてきた。半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には、折れた剣や血が飛び散った後もあった。それらを発見する度に、特に愛子達の表情が強ばっていく。しばらく、争いの形跡を追っていき身元特定になりそうなものを回収していく。

 

 さらに調査をした結果ウィルたち冒険者は魔物から逃走し川へ逃げ込んだのではないかとハジメは推測した。コウスケも賛同し川を重点的に捜索した結果、立派な滝つぼを発見した。そこでハジメの気配感知に反応があり滝つぼの奥に人の気配があったのだ。ユエの魔法で滝の中に入り進んでいくとそれなりの広さの空洞に出た。

 

 その空間の一番奥に横倒しになっている男を発見した。傍に寄って確認すると、二十歳くらいの青年とわかった。端正で育ちが良さそうな顔立ちだが、今は青ざめて死人のような顔色をしている。だが、大きな怪我はないし、鞄の中には未だ少量の食料も残っているので、単純に眠っているだけのようだ。顔色が悪いのは、彼がここに一人でいることと関係があるのだろう。

 

 ハジメがその男…ウィル・クデタに話しかけている間コウスケは装備の点検と荷物のチェックをする。その様子にリリアーナが不思議そうにする。

 

「あの…天之河さん…ではなくて、コウスケさんどうして戦闘の準備を?」

 

「んーそりゃ見つかったんならあとは無事で送り届けないとなーどうせ面倒ごとがやってくるし」

 

「面倒ごとって…」

 

「ああ、あんまり気にしなくていいよ。俺たちがいる以上どうにでもなるし」

 

 要人が見つかったなら後はお約束の展開が待っているのだ。ハジメの方を見ると自分だけが生き残ったことに罪悪感を抱いているウィルに向かって諭すような、しかし自分に向かって話すような声で語りかけているのが見える。

 

 その声に罪悪感がわくも無言でたたずむコウスケ。あの時助けられなかったのは事実だが、そのおかげで自分はハジメと旅をすることができる。…しかし、本当なら無理矢理でも助けるべきだったのではないかと思うのだ。原作を知っているという罪悪感がじわじわとコウスケの心を蝕むもその事を顔には出さない。

 

 その後一行は早速下山することにした。日の入りまで、まだ一時間以上は残っているので、急げば、日が暮れるまでに麓に着けるだろう。救助対象を見つけた以上ここに留まる意味はハジメ達にはない。他の生徒達は、ここら一帯の魔物のせいで町の人達も困っているから調べるべきではと微妙な正義感からの主張をしたが、コウスケの

 

「じゃあ、お前らチート集団でやってくれよ?俺達は関与しないから」

 

の、一声と愛子の危険な目には合わせたくないと頑として調査を認めなかったため、結局、下山することになった。

 

 準備をして滝壺の外へ行こうとするコウスケにハジメの待ったが掛かる。

 

「どうした南雲?さっさと下山しよう」

 

「そうなんだけど…念のためこれを持って行って」

 

 ハジメが宝物庫からあるものをコウスケに手渡す。

 

「ん?これって『地卿』か懐かしいな~ってなんか形変わっていないか?随分とスマートになったというか。一回り小さくなった?」

 

 ハジメから手渡された物。それはオルクス迷宮で世話になった大槌『地卿』だった。今は風伯を主に使っているためあんまり活躍の機会がなかったのだ。懐かしさを感じていたが形が違っていた。前は形が大きくメイスの様な大きな鉄塊が先端に付いていたのに対して、今手元にある『地卿』は随分と小さくなって形が変わっている。鉄塊はなくなり握りは持ちやすいように細くなっている。形として一番近いのは鉄棍だろうか。

 

「色々試してみたくてね。コウスケも力の入れ具合がうまくなったみたいだし、これならいろいろ役に立てるかと思ってさシアのドリュッケンのようにギミックは何にもないけど頑丈さと扱いやすさは格別だよ。どうかな?」

 

 ハジメの説明を聞きながら『地卿』を振るい動作の確認をする。手触りは中々で重さもまたちょうどいい。ハジメの巧みな錬成技術に感心しながら少々調子に乗るコウスケ

 

「ぬぅ~受けてみよ!烈闘破鋼棍!……うんこれかなりいい感じだ。ありがとう南雲」

 

「どういたしまして。それより注意しよう。お約束な出来事がよく起きる世界だ。要人を救出したらボスが出てきそうだからね」

 

 かなり気に入ったようで嬉しそうに笑うコウスケ。そばで見ていた女子生徒達はその笑顔を見て頬を赤らめ男子生徒達は専用武器を羨ましそうに、ユエとシアは苦笑し愛子は仲の良い2人を微笑みながら見守り、リリアーナは只々ボーっとコウスケを見つめていた。

 和やかな雰囲気で意気揚々と進む一行。だが、事はそう簡単には進まない。再度、ユエの魔法で滝壺から出てきた一行を熱烈に歓迎するものがいたからだ。

 

「グゥルルルル」

 

 低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく“竜”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応補足説明です。新調された地卿の形はきりたんぽやクインケ・ドウジマの小さい感じがイメージに近いです。
前までは大槌でダークソウルのグラントがモデルになっています。

…使う機会は少ないですけどね
という訳で限られた時間を使って北斗かサヴァイブでも楽しんできます
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