ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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途中までできたので投稿します

会話内容が変?気にするないつもの事さ




面倒事はいつだって突然に

 

 ハジメがコウスケと別れての翌日、コウスケは昼になってもまだ起きてこなかったのでイルワには全員が揃ってから行くとだけハジメは伝えることにした。その日はティオがコウスケの様子を見ると言い残った3人で買い物など簡単な用事を済ませた。

 

 コウスケがいまだに起きないとティオから連絡を受けたのは夕方頃だった。流石にいくらなんでも眠りすぎではないかと疑ったティオが何度か起こそうとしていたのだがどうやってもコウスケは起きなかったのだ。

 

 万が一を考えイルワから医者を呼んでもらい容体を見てもらった。ハジメとしては神水で無理やり起こすという手段もあったのだが、ユエに止められてしまった。コウスケの容体を見てもらった医者が言うには命に別状はないが魔力を使いすぎた疲労と精神的なストレスが同時に来て体が無理矢理休息にはいったのではないかという事だった。

 

 そのままコウスケが起きるのを待ってハジメはコウスケのそばにいた。自分がそばにいたところで何かが変わるわけではないと理解しつつも、自分がコウスケに余計な負担を与えたのではないかと考えてしまうと罪悪感でとても街に出ようという気分にならなかったのだ。

 

「ハジメさんそんなに気を病む必要はないですよ。きっとコウスケさんもそう思っています」

 

「シア…うん。そうかもしれないけど、心配なんだ。もしこのまま目を覚まさ無かったらと…」

 

「…ん、ハジメは考えすぎ。コウスケは大丈夫」

 

「ありがとうユエ。でも僕はもう少しだけそばにいることにするよ。…2人とも折角の商業都市なんだから町を見てきたら?何か面白いものがあるかもしれないよ」

 

「…ハジメさん」

 

 シアとユエの2人が心配してくれているのは嬉しかったがどうしてもそばを離れたくなかった。そのまま此処にいることを話すと2人は気落ちしたように部屋から出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなりの重症ですね」

 

「…どっちが?」

 

「ハジメさんの方です。コウスケさんは…なんとなく大丈夫でしょう。何故かって?女のカンです」

 

「…シア。流石にそれは酷い」

 

 コウスケの部屋から出た2人はどうやったらハジメをコウスケから離すことができるか話し合っていた。今のままではその内ハジメも倒れてしまいそうだった。どうすればいいのかウンウン考える

 

「うーん私もコウスケさんが話していたことを聞いているんですけど、そこまで思い悩む必要はないんだと思います。『人を殺さないでー分かったよー』で終わる話だと思うんですよね」

 

「?なにを聞いていたの」

 

「コウスケさんの愚痴?です。私のうさ耳は飾りじゃないんですよ?ユエさんだけが知らないというのも嫌ですから教えますね」

 

 そのまま夜何があったのかをシアから聞くユエ。話を聞いたユエはたった一言

 

「…そこまで考えてなかった」

 

「ユエさん!?」

 

「嘘、ハジメもコウスケもお互い大切に思うから話がややこしくなる」

 

 バッサリと切り捨てるユエにシアは苦笑しながら自分も思いっきり当たってみるかと誓う事にする。いい加減暗い雰囲気が漂いすぎてめんどくさくなってきたのだ。

 シアはもっと明るく楽しく旅をしていたい。仲間が暗く思い悩むようなら自分が振り回せばいい。

 

「ふふ。そうですね。私の恩人たちは本当にめんどくさくて仕方のない人たちです。ユエさん私決めました!もっとシンプルにバッサリと行きます!ユエさんも協力してくれますか」

 

「んっ!私に任せて」

 

「ありがとうございます。後でティオさんも巻き込んでしまいましょう。私たちは仲間なんですから」

 

 この次にどう行動するべきか話し合いながら2人はにこやかに笑いあうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 コウスケが眠りについて目を覚まさなくなってから数日後。その日もハジメは朝からコウスケのそばにいたのだがドゴンッ!と音を立て勢いよく扉が開かれた。何事かと扉を見るとそこにいたのはシアだった。大きな音を出さないようにと注意しようとしたところでハジメは気が付いた

 

 シアはなぜかドヤ顔で胸を張っている。それはまだいい。しかし服装が問題だった。

 

服装は何時も着ている丈夫な冒険者風の服と異なり、可愛らしい乳白色のワンピースだ。肩紐は細めで胸元が大きく開いており、シアが豊かな胸を張るとぷるんっ!  と震えている。腰には細めの黒いベルトが付いていて引き絞られており、シアのくびれの美しさを強調していた。豊かなヒップラインと合わせて何とも魅惑的な曲線を描いている。膝上十五センチの裾からスラリと伸びる細く引き締まった脚線美は、弾む双丘と同じくらい魅惑的だった。

 余りにもいつもと違いすぎてハジメがあっけにとられていると堂々と近づいてくるシア。

 

「さぁハジメさん!私と一緒にデートに行きましょう!」

 

「……は?」

 

「聞こえませんでしたか?ならわかり安く言いましょう。デ!エ!ト!です!」

 

「いきなり何を言っているの?」

 

 余りにも突然のことで混乱するハジメにシアは問答無用で腕を絡んでくる。増々困惑するハジメにシアは何故か悪戯の相談をするような表情を向けてくる

 

「ふふん。私は気付いたのです。コウスケさんが起きないのならそのまま寝かせておいて、私と一緒にハジメさんはデートに行けばいいのですぅ!そうしたらコウスケさん羨ましくなってすぐにガバリと飛び上がりますよ!『俺が寝ている間に何やってんのお前は!』って感じで」

 

 そのままドヤ顔を決めるシアにしばしあっけにとられ、理解すると同時にハジメは思わず吹き出してしまった。確かに美少女とデートをしていたらコウスケは飛び上がって羨むだろう。なぜかその姿が明確に浮かんでくる。

 

「確かにコウスケなら飛び上がりそうだね。でもいいのかな。遊んできても。何かあったらどうしよう」

 

「そこら辺はユエさんとティオさんにちゃんとお願いしてきましたから大丈夫ですぅ。さぁ行きましょうハジメさん!寝坊助なコウスケさんは放っておいて遊びに行くのですぅ。目が覚めたら何をしていたかを自慢するように話をして思いっきり笑ってあげましょう!」

 

 なんとも無茶苦茶なことを言うシアだが自分に対して気遣っているのが丸わかりだ。そんなシアとおそらくシアに入れ知恵したユエと留守番を頼まれたティオに感謝するハジメ。

 

「ありがとう…みんな」

 

「んん??何か言いましたか?」

 

「ううん何でもないよ。それじゃあ後のことは2人に任せてどこに行こうか」

 

 そのまま笑いあいながら2人は町へと繰り出していったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメがシアと一緒に町へ繰り出している間、ユエはコウスケのそばにいた。念のため起きたときにそばに誰かがいた方が良いのと単純に暇だったのだ。

 

「……ん、柔らかい」

 

 することもないのでベットにいるコウスケに近寄りムニムニと頬っぺたを触るユエ。からかった反撃としてコウスケがよくユエにしていることを今度は自分がやり返しているのだ。しかし反応がないので味気なくすぐに飽きてしまった。やはりコウスケが何かしらリアクションを取ってくれないと実に面白くない。

 

「んーーーー暇」 

 

 あまりにも暇だったので気晴らしに魔法の訓練でもしようかと考えていると、扉を開きティオがやってきた。片手にはなにやら飲み物を持っている

 

「ユエ、飲み物を持ってきたのじゃ」

 

「ん、ありがとう」

 

 どうやらティオも暇を持て余したのだろうか。手渡された飲み物を口につけているとティオは何やら深刻な顔つきで眠りにつくコウスケを見ている。

 

「…どうしたの」

 

「なぁユエよ。お主はコウスケが清水を助けているとき疑問には思わなかったのか」

 

 真剣な顔つきで尋ねてくるティオに目で話の続きを促す。最も言いたいことは何となく理解はしているが

 

「あの異常な魔力量の多さじゃ。あの場にいた皆は気付いてはおらなかったようじゃが、清水は間違いなく死ぬ一歩手前だったのじゃ。

それを自分の技能だけでたった一人で完治させたなんて普通はありえないのじゃ。確認するがコウスケは治癒魔法が得意ではないのじゃろう?」

 

「ん、コウスケは防御寄り、回復や治癒はあくまでおまけに近い」

 

 ティオの言いたいことはユエもわかっていた。清水の傷は苦手な治癒魔法で完治できるほど浅くはなかった。しかしコウスケはただ助けたいという思いだけで、莫大な魔力を使い清水を完治させてしまったのだ。あの場にいた誰もが、おそらくハジメもシアも気づいていないが普通はあんな莫大な魔力を持つ人間はいない。

 

「コウスケが神の使徒の一人だとかそういう話もシアから聞いてはおるのじゃが…いくらなんでも規格外すぎる。あの場にいた生徒達が同じ召喚された人間だとしても差がありすぎる。まるで水たまりと底なし沼ぐらいじゃもしや…里の者が感知した異常なものとはコウスケだったのかもしれぬ」

 

 ティオはコウスケの顔を見つめうむむと唸っているがユエにはそこまで深刻に考える事かと思っていた。

 

「ティオ」

 

「む?なんじゃユエ」

 

「コウスケはコウスケ。何も問題はない」

 

 そうたとえコウスケが異常な魔力の量を持っていたとしても、それが魔法の専門の自分やティオを超えるほどの魔力量だとしても

あの優しくおどけて、でも変なめんどくささを持ったコウスケであることに変わりはないのである。

 

「そうかコウスケはコウスケか…そうじゃな妾は異常なことを目の前にして少々取り乱しておったのかもしれぬ」

 

「ん」

 

 

 納得をするティオを見て微笑むユエ。色々疑問に思う事もあるかもしれないが結局はなんだかんだで大丈夫なのだ。未だに眠っているコウスケを見ながらユエはそう信じているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユエとティオがコウスケの部屋で話し込んでいるとき、ハジメは少々困っていた。

 

 最初にシアの要望で水族館へ行った時は純粋に楽しかったし良い気晴らしにも慣れた。途中で何故か水族館に展示されていたシー○ン風の中年魚とも知り合いになれた(ちなみに外に出たがっていたので少々乱暴なやり方で外に出してしまった。一時のノリとはいえ水族館のスタッフには申し訳ないことをしてしまった)

 

 その後昼食を食べ露店のお菓子を食べ歩きをしたときハジメの気配感知に小さな気配を感知したのだ。そこまでならよくある事かもしれなかったが、感知した場所が下水でしかも弱っている子供だと感知したのだ。そこまでの事をシアに説明するとすぐに助けることになった。

 

 多分に面倒ごとの気配がするものの仕方ないと思いつつさっくりと救助するハジメ。人目に付かない袋小路で救助して毛布に包み込んだ子供を確認すると6~7歳ぐらいだろうかエメラルドグリーンの長い髪と幼い上に汚れているにも関わずわかるくらい整った可愛らしい顔立ちをしていた女の子だ。

 だが何より特徴的なのは、その耳だ。通常の人間の耳の代わりに扇状のヒレが付いているのである。しかも、毛布からちょこんと覗く紅葉のような小さな手には、指の股に折りたたまれるようにして薄い膜がついている。

 

 明らかに海人族だった。本来は西大陸の果、【グリューエン大砂漠】を超えた先の海、その沖合にある【海上の町エリセン】で生活しているはずの海神族の子供が何故下水道にいたのか、物凄い犯罪の匂いがする中でその海人族の子供が目を覚ましたのだ。

 

 目と目が合い両者硬直するもさっさと清潔にするためにシアに宝物庫で取り出した錬成で作ったお風呂に入らせるように頼み込むハジメ。自分はその間に子供用の服を買いに行っているところだったのだ。

 

「はぁなんでこの年で子供用の服と下着を買わなくちゃいけないんだろう。…別にいいけどさ。なんかコウスケが見ていたら絶対に煽ってくるよね。『マジか…お前ロリコンだったのか!』って。ロリコンはコウスケの方だろ。先生を見てハイエースって言っていたし。…ん?合法的なロリコンの方なのかな?」

 

 文句と阿保なことを言いながらも手早く服と下着を買うハジメ。店員の目が気にはなったが素知らぬ顔をして何とかしのいだのだ。戻ってくると子供は既に湯船から上がっており、新しい毛布にくるまれてシアに抱っこされているところだった。抱っこされながら、シアが「あ~ん」する串焼きをはぐはぐと小さな口を一生懸命動かして食べている。薄汚れていた髪は、本来のエメラルドグリーンの輝きを取り戻し、光を反射して天使の輪を作っていた。

 

 シアに服の着せ替えを頼みながらこの時になって自己紹介をするハジメ。子供の名前はミュウで事情を聴くに海岸線の近くを母親と泳いでいたらはぐれてしまい、人間族の男に捕らえられたらしいということだ。

 

 後はハジメの想像通り牢屋に入れられオークションの順番待ちをしている間に何とか抜け出したが下水道で力尽きてしまった。と言う話だった。やはり明らかな面倒ごとで溜息を吐くハジメ。さっさと保安署に預けようとしたがシアに拒否されてしまった。

 

 ハジメの言う保安署とは、地球で言うところの警察機関のことだ。そこに預けるというのは、ミュウを公的機関に預けるということで、完全に自分達の手を離れるということでもある。なので、見捨てるというわけではなく迷子を見つけた時の正規の手順ではあるのだが、事が事だけにシアとしては見捨てたくないと思ってしまったのだろう。

 

 増々溜息が大きくなるハジメ。しかしこちらも子供連れで旅をする訳にはいかない。おまけにこれはフューレンの問題である。自分たちが勝手なことをするわけにもいかない。ミュウに対して情が出てきたシアを何とか説得し、ついでにミュウも説得するハジメ。

 

「や!一緒にいるの!」

 

「や!じゃないってば…」

 

 助けてくれた人達と一緒にいたいと駄々をこねるミュウだったが、強制的にハジメに連れられ、保安署の職員に預けられるミュウ。事情を聞いた保安員は、表情を険しくすると、今後の捜査やミュウの送還手続きに本人が必要との事で、ミュウを手厚く保護する事を約束しつつ署で預かる旨を申し出た。

 

 ハジメの予想通り、やはり大きな問題らしく、直ぐに本部からも応援が来るそうで、自分達はお役目御免だろうと涙目になるミュウに後ろ髪を引かれる様な気持ちを抱きながらも引き下がった。

 

 

 やがて保安署も見えなくなり、かなり離れた場所に来たころ大きな音が響き渡ってきた

 

 

 

 ドォガァアアアン!!!!

 

 どうやら背後で爆発が起き、黒煙が上がっているのが見えた。その場所は、

 

「ハ、ハジメさん。あそこって……」

「保安署か!」

 

 そう、黒煙の上がっている場所は、さっきまでハジメ達がいた保安署があった場所だった。二人は、互いに頷くと保安署へと駆け戻る。タイミング的に最悪の事態が脳裏をよぎった。すなわち、ミュウを誘拐していた組織が、情報漏えいを防ぐためにミュウごと保安署を爆破した等だ。

 

 焦る気持ちを抑えつけて保安署にたどり着くと、表通りに署の窓ガラスや扉が吹き飛んで散らばっている光景が目に入った。しかし、建物自体はさほどダメージを受けていないようで、倒壊の心配はなさそうだった。ハジメ達が、中に踏み込むと、対応してくれたおっちゃんの保安員がうつ伏せに倒れているのを発見する。

 

 両腕が折れて、気を失っているようだ。他の職員も同じような感じだ。幸い、命に関わる怪我をしている者は見た感じではいなさそうである。ハジメが、職員達を見ている間、ほかの場所を調べに行ったシアが、焦った表情で戻ってきた。

 

「ハジメさん! ミュウちゃんがいません! それにこんなものが!」

 

 シアが手渡してきたのは、一枚の紙。そこにはこう書かれていた。

 

“海人族の子を死なせたくなければ、白髪の兎人族を連れて○○に来い”

 

「ハジメさん、これって……」

「本当に面倒事っていうのは舞い込んでくるんだね…」

 

 ハジメは、メモ用紙をグシャと握り潰すと大きなため息を吐いた。おそらく、連中は保安署でのミュウとハジメ達のやり取りを何らかの方法で聞いていたのだろう。そして、ミュウが人質として役に立つと判断し、口封じに殺すよりも、どうせならレアな兎人族も手に入れてしまおうとでも考えたようだ。

 

 そんなハジメの横で、シアは、決然とした表情をする。

 

「ハジメさん」

 

「はぁ……うん。シアを狙うっていうのならこいつらは僕たちの敵だ。さっさとミュウを取り返そう」

 

「はいです!」

 

 

 正直、危険な旅に同行させる気がない以上、さっさと別れるのがベターだとハジメは考えていた。精神的に追い詰められた幼子に、下手に情を抱かせると逆に辛い思いをさせることになるからだ。

 

 とはいえ、再度拐われたとなれば放っておくわけにはいかない。余裕があり出来るのに、窮地にある幼子を放置するのはあり得ない選択だ。それに今回はシアをも狙っている。ハジメに対して明確に敵だと宣言しているという事だ。

 

 ハジメとシアは武器を携え、化け物を呼び起こした愚か者達の指定場所へと一気に駆け出した。

 

 

 

 

 

 




取りあえずここまでです

追記

次回は展開があまりにも思いつかず悩み始めてしまったので無理矢理になります。
ごめんなさい

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