ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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色々と賛否両論でしょうが取りあえずこんな感じになりました。

やりたいことして好きなように書くためにこの物語を書いているので好きなようにやらせてもらいます(言い訳)


ああもう、分かったよ!

 

 

 

 

 

「いったい何者なんですかお前は!!」

 

  裏オークション会場の司会の男は激怒していた。商品として出されていた海人族の子供が水槽の中で一つも身じろぎもしないので商品としての価値が下がるのを恐れ棒でつつこうとしたときに天井から派手な音出しながら舞い降りた男が商品である海人族の子供を水槽をたたき割りさらってしまったのだ。いきなりの事でうろたえるのもつかの間すぐに怒声をあげる。

 

 

「大丈夫ミュウ?どこか怪我をしたところはない?」

 

 

 天井から降ってきた男…ハジメは腕に抱きかかえたミュウを手早く毛布にくるみ優しく声をかける。ミュウは初めてあった時のように

ジッーとハジメを見つめると自分を助けてくれたのが誰かわかった瞬間目を潤ませ、

 

「お兄ちゃん!!」

 

 ハジメの首元にギュッウ~と抱きついてひっぐひっぐと嗚咽を漏らし始めた。そんなミュウをハジメは苦笑し背中をポンポンと叩く。 

 このオークション会場にたどり着くまでにどこかの裏組織の人間を威圧で黙らせながら探し続けた結果どうにかしてたどり着いたのである。ミュウが怪我がなくひとまず無事であることに安堵するハジメ。

 

 

 と、再会した二人に水を差すように、ドタドタと黒服を着た男達がハジメとミュウを取り囲んだ。客席は、どうせ逃げられるはずがないとでも思っているのか、ざわついてはいるものの、未だ逃げ出す様子はない。

 

「クソガキ、フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪いようですね。その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してあげますよ?」

 

 総勢五十人近くのの屈強そうな男に囲まれて、ミュウは、首元から顔を離し不安そうにハジメを見上げた。ハジメはミュウの頭を優しくなでると自分の胸元に顔を埋めるように言う。言われたミュウは素直に顔を埋めると両手で耳をふさいだ。

 

 完全に無視された形の黒服は額に青筋を浮かべて、商品に傷をつけるな! ガキは殺せ! と大声で命じた。その瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙れよ」

 

 

 

 その声と共に威圧を解放する。中々に腹が立ってイラついていたので、加減をする気がなかった。その本気の殺意がその場のすべての人間に降り注ぎ、一瞬で意識を刈り取られたのかバタバタと人が崩れ落ちる。

 特にハジメの周りを囲んでいた男たちは感じる圧がすさまじかったのか全員が泡を吐き白目になっている。意識を取り戻しても何らかの後遺症になってもあり得そうな気絶の仕方だった。

 

「全くこう何度も実力差が分からない人間がいるとこの世界の人間って馬鹿ばっかりなのかと疑っちゃうよねコウスケ」

 

 溜息を吐きながら文句を言うも隣で同意してくれる親友はいない。その事に寂しさを感じるハジメ。やはりいつもそばにいた人がいないのは中々クルものがある。いつから自分はこんなに弱くなったのだろうかとドンナ―を構え倒れていた男たちに照準を合わせる。

 

 

 

 

 

「………ッチ」

 

 だが、ドンナ―から弾は出てこない。

 

 ハジメが引き金を引くのをためらってしまったからだ。見せしめのつもりだった。自分たちに連れに手を出せば死が待っている、と凄惨な光景を出し手を出せないようにするつもりだった。

 

 だができなかった。ハジメはここに来るまでに一度もドンナ―を撃っていない。すなわち一度も人を殺していない。早くミュウを保護しなければと、ドンナ―を撃っている暇なんかない、とも考えていたが実際は

 

「何で人を殺すなっていうんだよ…コウスケ」

 

 引き金を引こうとするたびに悲しそうな親友の顔がちらつくのだ。懇願するように、でもどこか諦めたような、何とも言えない顔だった。そんな顔をしないでほしかった。いつものように明るくふざけて笑っていてほしかった。

 

 

 

 

「敵は殺さないと…そうじゃなければ僕たちは…死んでしまうかもしれないんだよ」

 

 無意識に出た言葉がハジメの偽らざる本音だった。あの奈落の中、爪熊に襲われたとき初めて自らの死を意識した。コウスケが必死になって庇ってくれて、逃げだした時、自分の腕の中で静かにコウスケの息が弱くなっているときは自分のかけがえのないものが死んでしまうと感じた。感じてしまった。理解してしまった。

 

「強くなければ死んでしまう…ここはそんな世界なんだ」

 

 だから強くなろうとした。死にたくない。死なせたくない。ただそれだけを原動力にして。だが、コウスケは殺さないでくれと人を殺してしまったら不幸になってしまうと。

 

「今死んでしまったら不幸も糞もないんだよ?そこら辺ちゃんとわかっているの?大体なんなのさ人の事ばっかり言ってさそんなに心配するほど僕は貧弱な心を持っている様に見えるわけ?冗談キツイよ」

 

 悪態をつきながらも引き金に掛かる指の力がどんどん弱くなり、ついには腕を下ろしてしまった。その時タイミングよく奥から更に十人ほどやってきたがホールの惨状をみて狼狽している。

 

「なん、なんだってんだこりゃっ!」

 

 すぐさま威圧を放つハジメ。本気の殺気を浴びた男たちはまたもや泡を吹き白目になりながら崩れていく。その光景を見てようやくハジメは気付く

 

「………はは、そっか僕は…強くなっているんだ」

 

 一瞬で屈強な男たちを刈り取った自分の強さなら、人を殺さなくてはいいのではないかと、親友を悲しませることもないのではないかと考えれば考えるほど徐々にハジメは気付いていく。自分は強い。そう簡単にやられることもなければ死ぬことなんてないのではないか。

 

「はぁ~~~~~~~~~」

 

 長い長い溜息だった。心の奥底から吐き出すような溜息だった。やはりコウスケのせいで溜息が格段に増えたとどこかで考える自分がいる。そんな風に考え口角が上がるとガバリと顔を天井に向ける

 

「ああもう!!分かったよ!分かった分かった!!やめるよ!やめればいいんでしょ!僕は人を殺さない!それでいいんでしょ!聞いているのコウスケ!まったくもう!人に制限プレイをしろっていうの!?良いよやってやろうじゃないか!制限がかかった状態でどうにかするのがプロゲーマーだからね!僕をなめるなよチクショウ!」

 

 魂の叫びだった。決意でもあった。自分は強くなった。もう死ぬことの恐怖におびえることもなければ自分の無力さに嘆くこともない。だから人を殺そうとするのはやめるとしよう。もし、それでも強力な敵が来たらコウスケに頑張ってもらえばいい。自分の殺人を止めたのだ。それぐらいの責任はもってほしい。

 

「…お兄ちゃん?」

 

「ゴメンねミュウ。さぁ帰ろう」

 

 ひとしきり叫びすっきりしたところで不思議そうに眺めてくるミュウをあやしながらシアに念話を届け出口に向かっていくハジメ。その足取りは本人は気付いているのかいないのかとても軽かった。

 

 

 

 

 

 

”シア。ミュウを発見して保護したよ。そっちは?”

 

”よかったですぅ。こっちは売りに出されそうになっていた子供たちを発見し全員避難させたところです。”

 

”そっかそれはよかった”

 

”ですぅ!それはそれとしてなんか機嫌がよさそうですね?何かありました”

 

”…人を殺さないって覚悟を決めただけ…それだけだよ”

 

”んっふっふ~そうでしたか~”

 

”なに笑っているのさ”

 

”なんでもないですぅ”

 

”…はぁ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”あ、ちなみに報告です。私を捕まえようとした愚かな人たちはもれなく全員乙女にしましたので”

 

”うわぁ”

 

 

 

 

 

 

 






 真エンディングの条件の一つ『南雲ハジメは人を殺さない』のロックが解除されました

 南雲ハジメの強化フラグが立ちました





ちなみに↑の文字はフレーバーです。お気になさらず…
かなり短いですが取り合ずここまでです。できたら今日の夜にはもう一つ上げたいですが…
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