ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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やっと出できたー
シリアスしていますが会話内容が変な可能性がガガガg

急遽仕上げたので例にもれず短めです


目覚める

 

 

 

 いつだって朝目を開けるのは億劫だった。ずっと引きこもっていたかった。だはそれは世間の目が許さない。社会が許さない。何より自分が許さなかった。このまま目を覚まさないのは社会から逃げ出してしまうという事を自分はよく知っているからである。

 

 …たとえそれがどんなに辛くても、悲しくても、反吐が出そうでも、病みそうになっても…死にたくなっても………自分は社会人だから、大人だから、仕方がないのである。

 

(あぁせめてこの暖かいのをもっと堪能してから……ん?)

 

 ベットの中で非常に暖かく手触りが良いものを抱きしめてから気付いた。自分の枕はこんなに手触りが良くない。なら今抱きしめている物は?うっすらと目を開け視界に入ってきたのは、サラサラと手触りがよさそうで綺麗に手入れがされている現実にはあり得なそうな金色の髪の毛だった。

 

(あぁ?なんだこれ?)

 

 未だに眠気が残る思考の中で視線を下に持っていくとそこにいたのは金髪の髪の持ち主の非常に顔の整った女の子だ。見かけは12から14歳だろうか。非常に安心しきった顔で眠りこけてる。

 

(オイオイ誰だコイツ…邪魔くせぇな…)

 

 自分の絶対安全領域の寝床に知らない誰かがいて途方もなくイラつくも手はどうしてだか優しく女の子の頭をなでている。

 

「…ん…コウスケ?」

 

「……ぁ」

 

「?」

 

 

 自分の(知らない)名前を呼ばれ濁り切った思考と記憶が消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっと、おはようユエ」

 

「ん」

 

 そしてようやくコウスケは何日かぶりに起きることができたのだ。

 

 

 

 

 

 

「なーんでユエさんは俺のベットに潜り込んでいたんですかねぇ」

 

「ん、暖かくて気持ち良かった」

 

「だからと言って嫁入り前の女の子が男のベットの中に入ってくるなよな」

 

「コウスケはヘタレだから問題ない」

 

「うごっ」

 

 朝と言うには遅すぎる昼手前。ユエに文句を言うコウスケ。最も目覚めはとても良かったので苦笑し窘めるようなものだ。コウスケが起きた後一度部屋から出たユエはそのまま帰ってきて備え付けの椅子に座ったので、いろいろ事情を聴き自分が数日間眠っていることに気付き驚愕するコウスケ

 

「ええ!?俺そんなに寝ていたの!?」

 

「ん、ずっと起きなかった」

 

「うぅマジか…すまん迷惑を掛けたな」

 

「…迷惑はかけてない、心配しただけ」

 

「おおぅ尚更申し訳ない…やっぱり酒は控えめにしないとな」

 

 コウスケの最後の記憶と言ったらティオと一緒に酒を飲んでいたころだ。途中で記憶がなかったのだが変なことを言ってはないだろうか、心配はするも、何日も寝ていて心配を掛けさせてしまったのが心に響く。目を彷徨わせていたコウスケは、ほかの仲間達がどこに行ったのかユエに聞く

 

「シアは今コウスケの身体に優しいものを作っている。ハジメとティオは事件の後始末中」

 

「事件?」

 

「ん、ハジメとシアがデートの途中で海人族の女の子に遭遇して…色々あった」

 

「説明が面倒で一気に端折ったな…まぁいいか。んでデート?アイツ俺が寝ている間になんてことを…じゃなくって海人族?ってことは、あーそっか終わってしまったのか」

 

「終わった?」

 

「ごめんユエ。こっちの話」

 

 不思議そうに見てくるユエに謝り、少し原作の整理をするコウスケ。自分が寝ている間に海人族の幼女ミュウを助けるイベントは終わってしまったようである。確かあの話は助けたミュウをさらわれてしまい助けるために裏組織(笑)の人間たちを根こそぎ殺戮する話だった。見ていてなんだかなぁーと思った話だ。

 

(ってことは…南雲はやっぱり人を殺してしまったのかな)

 

 原作通りならそうしているはずだ。自分の介入によって変わったかも知れないが結局何も変わらなかったと思うと無力感に悩まされる。結局自分は本当の意味で南雲ハジメを救うことができなかったという事になる。とその時ユエがそっと呟いた声が気になった

 

「大丈夫。コウスケの気持ちはちゃんとハジメに届いた」

 

「…ユエ?」

 

 いつの間にか俯いてしまっていた顔をあげるとそこには微笑みながら部屋から出ようとするユエの姿があり入れ替わるようにやってきたハジメの姿があった。

 

 

「…南雲」

 

「…体の調子はどう?大丈夫」

 

 最後に顔を見合わせたのはいつだったか。随分と久しぶりに感じるもハジメはいつもと変わらずに接してくる。その事に嬉しく思いつつ、どうしても人殺しをしてしまったのか気になって仕方がないコウスケ。

 

「あぁ平気だ。多少体がだるいけど、すぐによくなるだろう。それより…あー事件に巻き込まれたって聞いたけど」

 

「事件というか面倒ごとなんだけどね、後で紹介するミュウっていう女の子なんだけど…」

 

 そのままハジメから事件の全貌を聞くコウスケだがなぜかハジメはずっと苦笑したままだ。訝しそうにするコウスケにハジメはひらひらと手を振る。

 

「…コウスケ。もしかして僕がミュウをさらった暴漢たちを殺したと思っているの?」

 

「…あぁそうだと思っていたんだが…」

 

「残念。僕は、誰一人として、殺さなかったよ」

 

「!」

 

 多少は痛い目を見てもらったけどと付け足し何でもないことかのように話すハジメにコウスケは驚愕する。ハジメは自分が直前で邪魔をしない限りなんだかんだで意見を変えないと思っていたのだ。それがいったい何を思ったのか考えるコウスケにハジメは静かに自分の心情を話し始める

 

「…あの奈落での時のことを覚えている?…僕は死にたくなんてなかったんだ。それにコウスケを死なせたくなんてなかった。だから敵はすべて殺すそう思っていたんだ。今でもその思いを完全には消すことはできない。だけどあの時と比べて少しだけ強くなったんだ。だから…だからさ、ちょっとだけでも力を緩めても大丈夫かなって思ったんだ」

 

「…南雲」

 

 静かに話すハジメの姿にしんみりとするコウスケ。ハジメも色々と考えていたのだと今更になって痛感する。

 

「それに強い敵が来てもコウスケが…皆がいてくれるんなら何とかなるんでしょ?」

 

「ああ、その通りだ。俺たちが一緒にいる」

 

「なら…うん。僕は人を殺さない」

 

 決意したその目は真剣で、その事がとてもうれしく、何故だか報われたような気がした。目じりの端に涙を貯めるコウスケに少々面食らいながらも気恥ずかしそうに頬をかくハジメ。いつもの明るく騒がしい雰囲気とは違い穏やかで優しい空間がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウスケさん起きましたか!この私特製のお粥を食らいやがれですぅ!!」

 

「食らうの!」

 

 しかしそんな雰囲気も崩れ去るのは一瞬だった。突如ドアを蹴破りながら乱入してきたのはふりふりエプロンを着たシアとシアにくっついてきた見知らぬ幼女、ミュウによって一気に場の雰囲気が変わってしまった。

 

「うぉ!シア!?」

 

「コウスケさんおはようございます!さぁ色々皆に心配をかけた罰としてこの熱々お粥を一気に食らうのですぅ!」

 

「さっさと口を開けてあーんなの!」

 

「おい待てシアお前俺を無理矢理抑えるって力強くね!?そしてさっきからそこの幼女はなんで熱々レンゲを俺の口に運ぼうとしているの!?」

 

 いきなり部屋に乱入してきたかと思えばすぐさまコウスケに飛びかかり押さえつけるシア。ミュウは器用にシアから渡されたお盆を手に取り熱々お粥の入ったレンゲをコウスケの口へ運んでいく。出会って数日のはずなのに大変息の合ったプレーだった。ちなみにハジメはすぐさま邪魔にならないようにコウスケから離れている。

 

「南雲止めてくれ!こいつら善意で俺を殺そうとって熱!熱いんだよ!美味いんだけど熱!げっほげっほ。これじゃあただの拷問じゃねえか!南雲笑っていないで止め、だから熱いんだってば!聞けよ幼女!」

 

 目の前で熱々お粥を浴びせられているコウスケを見て微笑みながらやっとで日常が帰ってきたなと感じるハジメだった。

 

 

 

 

 

 

 




これにてシリアスは終了かな

ステータスとイルワとの会話は次の話に載せておきますかね

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