ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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今更な話ですが内容が不十分な所があるかもです。
そんな心配をしながらも投稿です

一応補足です。アンカジ公国とグリューエン火山はさっさと片づけます
メインは次の大迷宮になるので…


アンカジ公国で

 

 

 

 倒れていた青年は助けてくれた礼を言い自己紹介を始めた。青年は砂漠の町アンカジ公国の領主の息子のビィズと名乗った。

 ビィズ曰く、こういうことらしい。

 

 四日前、アンカジにおいて原因不明の高熱を発し倒れる人が続出した。それは本当に突然のことで、初日だけで人口二十七万人のうち三千人近くが意識不明に陥り、症状を訴える人が二万人に上ったという。直ぐに医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが、香織と同じく進行を遅らせることは何とか出来ても完治させる事は出来なかった。

 

 そうこうしているうちにも、次々と患者は増えていく。にもかかわらず、医療関係者の中にも倒れるものが現れ始めた。進行を遅らせるための魔法の使い手も圧倒的に数が足りず、なんの手立ても打てずに混乱する中で、遂に、処置を受けられなかった人々の中から死者が出始めた。発症してから僅か二日で死亡するという事実に絶望が立ち込める。

 

 そんな中、一人の薬師が、ひょんなことから飲み水に“液体鑑定”をかけた。その結果、その水には魔力の暴走を促す毒素が含まれていることがわかったのだ。直ちに調査チームが組まれ、最悪の事態を想定しながらアンカジのオアシスが調べられたのだが、案の定、オアシスそのものが汚染されていた。

 

 当然、アンカジのような砂漠のど真ん中にある国において、オアシスは生命線であるから、その警備、維持、管理は厳重に厳重を重ねてある。普通に考えれば、アンカジの警備を抜いて、オアシスに毒素を流し込むなど不可能に近いと言っても過言ではないほどに、あらゆる対策が施されているのだ。

 

 一体どこから、どうやって、誰が……首を捻る調査チームだったが、それより重要なのは、二日以上前からストックしてある分以外、使える水がなくなってしまったということだ。そして、結局、既に汚染された水を飲んで感染してしまった患者を救う手立てがないということである。

 

 ただ、全く方法がないというわけではない。一つ、患者達を救える方法が存在している。それは、“静因石”と呼ばれる鉱石を必要とする方法だ。この“静因石”は、魔力の活性を鎮める効果を持っている特殊な鉱石で、砂漠のずっと北方にある岩石地帯か【グリューエン大火山】で少量採取できる貴重な鉱石だ。魔法の研究に従事する者が、魔力調整や暴走の予防に求めることが多い。この“静因石”を粉末状にしたものを服用すれば体内の魔力を鎮めることが出来るだろうというわけだ。

 

 しかし、北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも一ヶ月以上はかかってしまう。また、アンカジの冒険者、特に【グリューエン大火山】の迷宮に入って“静因石”を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっている。生半可な冒険者では、【グリューエン大火山】を包み込む砂嵐すら突破できないのだ。それに、仮にそれだけの実力者がいても、どちらにしろ安全な水のストックが圧倒的に足りない以上、王国への救援要請は必要だった。

 

 その救援要請にしても、総人口二十七万人を抱えるアンカジ公国を一時的にでも潤すだけの水の運搬や【グリューエン大火山】という大迷宮に行って、戻ってこられる実力者の手配など容易く出来る内容ではない。公国から要請と言われれば無視することは出来ずとも、内容が内容だけに一度アンカジの現状を調査しようとするのが普通だ。しかし、そんな悠長な手続きを経てからでは遅いのだ。

 

 

 なので、強権を発動出来るアンカジ公国領主ランズィか、その代理たるビィズが直接救援要請をする必要があった。

 

 

「……君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい」

 

 そう言って、ビィズは深く頭を下げた。車内にしばし静寂が降りる。窓に当たる風に煽られた砂の当たる音がやけに大きく響いた。領主代理が、そう簡単に頭を下げるべきでないことはビィズ自身が一番分かっているのだろうが、降って湧いたような僥倖を逃してなるものかと必死なのだろう。

 

 ハジメはチラリとコウスケを見ると、案の定コウスケはニヤニヤしている。溜息一つ。それで方針は決まった。

 

「くくっ本当に災難が絶えないなぁ南雲」

 

「ことあるごとに何かしら厄介ごとが起きるっていうのは何なんだろうね…はぁどうせグリューエン大火山にはいくことになるんだしまぁ宝物庫にありったけぶち込んでおけばいいか。その依頼、受けるよ」

 

「まことでしょうか!?」

 

「おう。だからひとまずはアンカジ公国に行こうか。水の確保ならユエが居れば問題ないしな」

 

「…任せて」

 

 その後ビィズは王都で水の確保をしなければと言ったがユエの水魔法を使えば数十万人分の水を確保することができる。訝しげなビィズを香織が説明と説得しながらコウスケの提案により一行はアンカジ公国に向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

 赤銅色の砂が舞う中、たどり着いたアンカジは、中立商業都市フューレンを超える外壁に囲まれた乳白色の都だった。外壁も建築物も軒並みミルク色で、外界の赤銅色とのコントラストが美しい。

 

 ただ、フューレンと異なるのは、不規則な形で都を囲む外壁の各所から光の柱が天へと登っており、上空で他の柱と合流してアンカジ全体を覆う強大なドームを形成していることだ。時折、何かがぶつかったのか波紋のようなものが広がり、まるで水中から揺れる水面を眺めているような、不思議で美しい光景が広がっていた。

 

 どうやら、このドームが砂の侵入を防いでいるようだ。月に何度か大規模な砂嵐に見舞われるそうだが、このドームのおかげで曇天のような様相になるだけでアンカジ内に砂が侵入することはないという。

 

 

 ハジメ達は、これまた光り輝く巨大な門からアンカジへと入都した。砂の侵入を防ぐ目的から門まで魔法によるバリア式になっているようだ。門番は、魔力駆動四輪を見ても、驚きはしたがアンカジの現状が影響しているのか暗い雰囲気で覇気もなく、どこか投げやり気味であった。もっとも、四輪の後部座席に次期領主が座っていることに気がついた途端、直立不動となり、兵士らしい覇気を取り戻したが。

 

 アンカジの入場門は高台にあった。ここに訪れた者が、アンカジの美しさを最初に一望出来るようにという心遣いらしい。

 

 確かに、美しい都だとハジメ達は感嘆した。太陽の光を反射してキラキラときらめくオアシスが東側にあり、その周辺には多くの木々が生えていてい非常に緑豊かだった。オアシスの水は、幾筋もの川となって町中に流れ込み、砂漠のど真ん中だというのに小船があちこちに停泊している。町のいたるところに緑豊かな広場が設置されていて、広大な土地を広々と利用していることがよくわかる。

 

 北側は農業地帯のようだ。アンカジは果物の産出量が豊富という話を証明するように、ハジメが“遠見”で見る限り多種多様な果物が育てられているのがわかった。西側には、一際大きな宮殿らしき建造物があり、他の乳白色の建物と異なって純白と言っていい白さだった。他とは一線を画す荘厳さと規模なので、あれが領主の住む場所なのだろう。その宮殿の周辺に無骨な建物が区画に沿って規則正しく並んでいるので、行政区にでもなっているのかもしれない。

 

 砂漠の国でありながら、まるで水の都と表現したくなる……アンカジ公国はそんなところだった。

 

 だが、普段は、エリセンとの中継地であることや果物の取引で交易が盛んであり、また、観光地としても人気のあることから活気と喧騒に満ちた都であるはずが、今は、暗く陰気な雰囲気に覆われていた。通りに出ている者は極めて少なく、ほとんどの店も営業していないようだ。誰もが戸口をしっかり締め切って、まるで嵐が過ぎ去るのをジッと蹲って待っているかのような、そんな静けさが支配していた。

 

「……使徒様やハジメ殿にも、活気に満ちた我が国をお見せしたかった。すまないが、今は、時間がない。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせていただこう。一先ずは、父上のもとへ。あの宮殿だ」

 

 一行は、ビィズの言葉に頷き、原因のオアシスを背にして進みだした。

 

 

 その後話はさっくりと進んでいく。領主であるランズィ公と出会い水の確保と患者の治療の2手に分かれることになった。オアシスへはハジメ、コウスケ、ユエとティオおまけにミュウだ。患者がいるところへはシアと香織が行くことになった。

 

 

 

 現在、領主のランズィと護衛や付き人多数、そしてハジメ、コウスケ、ユエ、ティオ、ミュウはアンカジ北部にある農業地帯の一角に来ていた。二百メートル四方どころかその三倍はありそうな平地が広がっている。普段は、とある作物を育てている場所らしいのだが、時期的なものから今は休耕地になっているそうだ。

 

「“壊劫”」

 

そのままユエは神代魔法を使い農地に二百メートル四方、深さ五メートルの巨大な貯水所を作る。周りのランズィやそのおつきのものは驚愕で目を飛び出さんばかりに驚いていた。衝撃が強すぎて声が出ていないようだが、全員が内心で「なにぃーー!?」と叫んでいるのは明白だ。

 

 

 神代魔法を半分程の出力で放ったユエは、「ふぅ」と息を吐く。魔力枯渇というほどではないが、少しだけ疲労感を感じた。まだまだ魔法を使えるだけの余力は残してはあるのだが、この後グリューエン大火山に挑むことを考えれば魔晶石は使わずにおいておきたい…という大義名分を得たユエはコウスケに視線を定める。

 

「…ふふ」

 

「!?ユエさんなんでそんな獲物を狙う目で俺を見るの!?」

 

「魔力補給のために吸わせて?」

 

 実はブルックの町でハジメにコウスケの吸血を止められてからずっとハジメの血で我慢してきたのだ。ユエがコウスケの血をねだってもずっとハジメが駄目と言っていたので仕方なく我慢してきたが今は水を作るという大義名分がある。

 ユエは内心ほくそ笑んだ。そのまま獲物を狙う目つき…若干涎が出そうになるのをこらえながら、コウスケににじり寄っていくとハジメがユエを止めるように前へ進んできた。

 

「こらユエ。駄目だって言ったでしょ。僕の血で魔力は補給できるんだから、コウスケをそんな目で見ないの…正直なんか目つきが怖いよ」

 

「むぅ…」

 

 ハジメが駄目と言えば仕方がないと諦めるしかないユエ。しかしその時ユエの頭に悪魔的なひらめき…電流が走った。

 

「…香織」

 

「え?」

 

「…ハジメは香織の思い人。思い人に吸血をしてはいけない…私は香織を裏切れない…」

 

 香織はハジメが好きだ。その好きな人が仲間とはいえほかの女の子にキスの様な吸血をされていたらどう思うだろうか。

 仕方ない、しょうがないと香織は吸血を受け入れるだろう。しかし今まで思い続けてきた香織のことを考えるとそれはやってはいけないとユエは考えたのだ。

 

「それは…でもユエもう何度も吸血しているんだから流石に今更の話じゃないかな」

 

「チッ女の気持ちが分からないこの鈍感」

 

「あれ!?今なんか舌打ちされた!?」

 

 今更ではなく香織の気持ちを知ったからやってはいけないというのにハジメは気付かないようだ。ユエは呆れたように溜息を吐くと凍柩を唱えハジメの首から下を氷に閉じ込める。ついでとばかりに重力魔法でコウスケを動けなくする。

 

「ちょっ!?ユエいきなり何すんの!?」

 

「ほわっ!?か、体が…動けない!」

 

「むふふ」

 

 邪魔者…もといハジメを封じ込めたユエはスキップしそうなほど軽い足取りでコウスケに飛びかかる。

 

「ひゃっ!」

 

「ふふ…久しぶりのご馳走…いただきます」

 

 コウスケに飛びかかったユエはそのまま首筋に思いっきり歯を立てた。コウスケの痛がるような呻き声が聞こえ内心謝るが止める気はなく、そもそも止まる気もせず一気に血を吸う。瞬間あの独特の苦みとえぐみがユエの味覚を刺激した。

 

(!…もっと味わい深くなっている…だと…)

 

「ひぁぁ……あぐっ…ぁぁぁぁあああ」

 

(なんて美味…コウスケ恐ろしい子!)

 

んっ あむっ ぴちゃぴちゃ あふぅ ふっーふっー じゅずずずずず

 

「にゃっ!……あはぁぁぁ…ひぅ…」

 

 周囲にはユエの吸血する声とコウスケが必死で歯を食いしばるも漏れ出してしまう喘ぎ声が響き渡る。周りの領主やそのお付達は何やら前かがみになっており、いつの間にか状況を察知したティオはミュウを連れて居なくなっていた。そのまま魔力を回復させたユエはハジメの氷を溶かした。どうやら十分に堪能した様で肌がこれ以上なくつやつやしている。

 

「はぁ…気はすんだの」

 

「…まだ足りない…でも、ちょっと我慢する」

 

 ユエに開放されビクンッビクンッと痙攣しているコウスケを見てハジメは溜息を出す。そのままユエと協力し、ほどなくして、二百メートル四方の貯水池は、汚染されていない新鮮な水でなみなみと満たされた。

 

 

「……こんなことが……」

 

 ランズィは、あり得べからざる事態に呆然としながら眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じように光り輝く池を見つめた。言葉もないようだ。

 

「取り敢えず、これで当分は保つだろう。あとは、オアシスを調べてみて……何も分からなければ、稼いだ時間で水については救援要請すればいい」

「あ、ああ。いや、聞きたい事は色々あるが……ありがとう。心から感謝する。これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう」

 

 ランズィはまだ衝撃から立ち直りきれずにいるようだが、それでもすべきことは弁えている様で、ハジメ達への態度をガラリと変えると誠意を込めて礼をした。

 

 ハジメ達は、そのままオアシスへと移動する。

 

 オアシスは、相変わらずキラキラと光を反射して美しく輝いており、とても毒素を含んでいるようには見えなかった。

 

 しかし……

 

「……ん?」

「……ハジメ?」

 

 ハジメが、眉をしかめてオアシスの一点を凝視する。様子の変化に気がついたユエがハジメに首を傾げて疑問顔を見せた。

 

「いや、何か今魔眼に反応があったような…」

 

「なるほどな、ならオアシスの底に何か原因がいるってことだろ」

 

「…随分と断定するんだね」

 

「そりゃそうだろ?オアシスに毒があるって言ったら。大抵は上流か又は底に何かが仕組まれているとしか思いつかん」

 

「ふぅん。ならちょっと試してみるか」

 

 いつの間にか復活し疑問に答えるコウスケに納得したハジメは無造作に、魚雷…この先向かう事になる七大迷宮の一つ【メルジーネ海底遺跡】は海の底にあるらしいので海用の兵器と言えば魚雷だろうと試作品をいくつか作っておいた…を投げ込んでみた。

 

 

ドゴォオオオ!!!

 

 

凄まじい爆発音と共にオアシスの中央で巨大な水柱が噴き上がった。再び顎がカクンと落ちて目を剥くランズィ達。

 

 

「おいおいおい! ハジメ殿! 一体何をやったんだ! あぁ! 桟橋が吹き飛んだぞ! 魚達の肉片がぁ! オアシスが赤く染まっていくぅ!」

「ちっ、まだ捕まらないか。よし、あと五十個追加で……」

 

 オアシスの景観が徐々に悲惨な感じで変わっていく様にランズィが悲鳴を上げるが、ハジメはお構いなしに不穏なことを呟いて、進み出ようとする。ランズィは部下と共にハジメにしがみついて、必死に阻止しようとした。その時、

 

 

シュバ!

 

 風を切り裂く勢いで無数の水が触手となってハジメ達に襲いかかった。コウスケがとっさに守護を使いはじかれた触手はハジメがドンナー・シュラークで迎撃する。

 

 何事かと、オアシスの方を見たランズィ達の目に、今日何度目かわからない驚愕の光景が飛び込んできた。ハジメの度重なる爆撃に怒りをあらわにするように水面が突如盛り上がったかと思うと、重力に逆らってそのまませり上がり、十メートル近い高さの小山になったのである。

 

 オアシスより現れたそれは、体長十メートル、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っていた。スライム……そう表現するのが一番わかりやすいだろう。

 

「うわー出たよ、ファンタジーおなじみの触手スライム…モーファを思い出すな」

 

「モーファ?」

 

「マジか…時のオカリナやったことないのか?やれよ名作だぞ」

 

 カルチャーショックを受けながら誘光と守護でハジメ達を守っているコウスケ。ぶよぶよと動くスライムを見ていると色々考えてしまう。

 

(しっかし本当に期待を裏切らないっていうかお約束通りと言うか…触手かー俺の範囲じゃないな。触手姦はなぁーなんか見ていて気持ち悪くなるんだよなぁ吐き気がするっていうか…ん?このメンツだとユエが危ない?ユエの艶姿…なんか想像湧かないけど、どうせなら金髪の可愛い女の子が乱れる姿は見てみたいな)

 

 そんな阿保な事を考えていたせいだろうか、足元に静かによってきた触手にコウスケは気付かず、足首を掴まれてしまう

 

「「あ」」

 

 その声は誰の物だっただろうか。理解することもなく、そのまま一気にコウスケは引きずり込まれ空中でブランブランと戦利品のように振り回される。

 

「おわっ!うひょっ!な、南雲~助けてくれ~」

 

「あーあー油断するからこうなるんだよ。大方触手でエロい事でも考えていたんだろ」

 

 呆れて溜息を吐くハジメに慌てたランズィが詰め寄る。

 

「ハ、ハジメ殿!?早く助けなければお仲間が危険ですぞ!」

 

「んー大丈夫じゃないかな。コウスケってあれでも頑丈だし…暫く頭を冷やすってことで放置しても「おおい!さっさと助けてくれよ!なにアイツならほっといても大丈夫だろって顔しているんだよ!このまま放置するんなら言うぞ!言っちまうぞ!実は夜な夜な皆に隠れてお前が錬成魔法で大人の玩」ちょっ!何でそのこと知って…口を閉じて黙ってろ!」

 

ドパンッ!!

 

ベチャッ!

 

 コウスケの爆弾発言を触手魔物の核を撃ち抜くことで無理矢理黙らせる。妙に変な空気が流れる中ハジメは一つ咳ばらいをすると触手魔物の心当たりをランズィと話し始めた。無事?救出されたコウスケは杜撰な自分の扱いに遠い目をしユエに慰められていた。

 

 その後何やかんやでグリューエン大火山にある病気の特効薬、静因石を物のついでに取りに行くことになるハジメ達。医療院で獅子奮迅の活躍をする香織と合流する。

 

「ハジメくん。私は、ここに残って患者さん達の治療をするね。静因石をお願い。貴重な鉱物らしいけど……大量に必要だからハジメくんじゃなきゃだめなの。私はここの人たちの治療を行うから…ごめんね、迷宮攻略にはついて行けない」

 

「問題ないよ。すぐに攻略すればいい話だし、それよりもミュウのことをお願い。一応ここの領主には手厚く扱ってくれとは話してあるけど念のためそばにいてほしいんだ」

 

「うん分かった。ミュウちゃんは私がしっかり見ているから」

 

 香織は真っ直ぐハジメに向き合うと、信頼と愛情をたっぷり含めた眼差しを向けた。

 

「私も頑張るから……無事に帰ってきてね。待ってるから……」

「……あ、ああ」

 

 香織の、愛しげに細められた眼差しと、まるで戦地に夫を送り出す妻のような雰囲気に、思わず、どもるハジメ。

 

 元から、香織の言動はストレートなところがある。日本にいたときも、光輝の勘違いをばっさり切り捨てたり、ハジメに爆弾を落として教室が嫉妬の嵐に見舞われたり……そういった事は日常と化していた。それが、あの告白の日から、さらに露骨になっている。

 何となく目を逸らしたハジメだったが、逸らした先には……ニヤついた笑みでサムズアップするコウスケがいた。思わずイラッとしたので蹴りを放つハジメ。

 

「なんだなんだ~俺に八つ当たりするなんて照れているのか~」

 

「う・る・さ・い!」

 

「あっはっは全く青春しているなぁ」

 

 蹴りを難なく受け止めるコウスケに真剣な顔でしかしどこか不安げな表情をした香織が近づいてくる。妙に緊張してしまうコウスケ。何故だか香織には苦手意識を持ちそうになってしまうのだ。

 

「コウスケさん…ハジメ君のことをよろしくお願いします」

 

「おう!任せとけって!」

 

 深々と頭を下げてくる香織に一瞬顔を竦めてしまうも、コウスケは明るく香織の不安を消し飛ばすように言い放つ。グリューエン火山で起きる事を考えれば多少の不安はあるが、それでもコウスケはハジメ達を守ろうと思うのだった。

 

 

 

 




次はどうなる事やら…

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