ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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ひっそり投稿します
後々修正するかもです


思いと戦闘

 

 

 思えばいつも危険が迫ると庇われていた気がした。

 

 蹴り飛ばされ何故と問う暇もなく極光に飲み込まれているコウスケを見ながらハジメはそんな事を考えていた。力尽き落ちていくコウスケをユエが両腕で抱きかかえ近くの足場へと着地する。ハジメもすぐに駆け寄りたくなるがぐっと我慢した。

 

 コウスケは光に飲み込まれる寸前守護を使い防御をしたのがわずかに見えたため恐らく無事であろうという確信とあれだけの攻撃でも倒れないだろうという信頼もあった。

 

 それに今しがた攻撃してきた存在のこともある。案の定ハジメが上を見上げるとそこにはおびただしい灰色の竜がハジメ達を攻撃しようと口を開いていたからだ。

 

 

ドドドドドドドドドドッ!!!

 

 当たれば致命傷な無数の閃光が豪雨の如く降り注そぐ中、ハジメは何も言わずなにも表情を変えず、ひらりひらりと雨を避けるような動作で回避する。仲間たちのことが少しだけ心配になったがユエとティオがうまく防御してくれるだろう。

 どこか他人事のような気持ちで上から降り注ぐ閃光を回避しながらも思い浮かべるのは親友の事だった。

 

(最初に庇われたのは…確か蹴りウサギの時だっけ)

 

 初めて庇われた時を思い出す。爪熊から逃げる時も情けない自分の前に立って時間を稼いでくれた。ドンナ―を錬成で作り出してからは庇われる回数は少なくなったがサソリモドキとの戦闘の時もまた針から自分とユエを守ってくれた。

 そしてヒュドラとの戦闘、ユエをかばい白頭の極光の中に消えていくコウスケ。その後復活し守護と言う防御能力を得たコウスケ。

 

(次は…ミレディ・ライセンとの時とティオの時)

 

 ミレディが出してきた奥の手の落盤攻撃はコウスケの強化された守護により全員無事だった。次は操られたティオのブレス。黒龍として立ちはだかったティオにあの時愛子たちは誰も逃げることができずにいた。そんな愛子たちを助けたのもやはりコウスケだった。

 

(いつも誰かを助けようとして前に出るんだね)

 

 今ハジメの目に映るすべての物がスローになる。無意識で瞬光を使い知覚領域を大幅に上昇させる。しかしその事にハジメは気付かない。

 迫りくる死の雨に難なく回避していることさえもハジメは気付いてすらいない。どこかゆったりとした世界の中で考えることはやはり親友の事だけだった。

 

(…ねぇコウスケ。どうしてこの攻撃を予測することができたの)

 

 この試練が始まる前にコウスケはどこか確信した様子で規定数を倒せば試練は突破できるのではないかと提案した。全員がその認識で戦っていたし、事実その通りなのだろう。しかしこの上からの何物かによる攻撃は試練とは関係ないはずだ。

 それなのにコウスケはすぐさま気が付いた。魔力の扱いに関しては誰よりも得意なはずのユエとティオを差し置いて、ハジメが最後の2匹のとどめを刺そうとした誰もが勝利を確信したあの時、コウスケだけが別の行動をしていた。

 

(…きっと聞いたらファンタジーだから、テンプレのような世界だから、だから何か来ると思って備えていたんだって言うんだろうね)

 

 ファンタジーだから、確かにその通りだ。テンプレのような世界だから、確かにその通りだ。ゲームの様な、ご都合主義の様な、確かにコウスケが言いそうでその通りだとハジメも頷くようなことを言うのだろう。

 

 ()()()()()()()()()()。いくらなんでも想像できるからと言ってすぐに行動できるはずはない。それこそシアのように未来視がない限り、何かが起こると思って行動などできないのだ()()()。特に先ほどの自分のところにわき目も降らずに真っ直ぐに来るなんておかしいのだ。自分のところに極光が降り注ぐなんて事を知らなければ。

 

(……コウスケ。君は…)

 

 脳裏に浮かぶは屈託なく笑いかけてくるコウスケで、ずっと何かに苦悩している姿でもあった。ハジメはコウスケが何に苦悩しているのかが少しわかった気がした。

 

 

 気が付けば永遠に続くかと思われていた極光の嵐はようやく終わりを告げた。周囲は、見るも無残な状態になっており、あちこちから白煙が上がっている。

 ハジメが仲間たちの様子を伺うとユエもティオも魔力を使いきり、肩で息をしながらも無事の様だ。見ればコウスケはユエが神水を使ったのか怪我が少しずつ治っておりそろそろ目覚めそうな気配を感じる。

 

 ハジメが仲間たちの状態を確認すると上空から感嘆半分呆れ半分の男の声が降ってきた。

 

「…カトレアから聞いてはいたが、まさしく看過できない実力だ。やはり、ここで待ち伏せていて正解だった。お前達は異質で危険過ぎる」

 

 天井付近に目を向けるとそこにいたのは大量の灰竜とそれを従えるような巨体を誇る純白の竜とその白竜の背に赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男がいた。

 

 

「まさか私の白竜が、ブレスを直撃させても殺しきれんとは…想像以上の耐久力か。貴様は未知の武器を使い総勢五十体の灰竜共の極光を回避するか…カトレアが言っていた男はどっちかは分からぬがまさしく化け物。それに女どもだ、貴様らには劣るとはいえ考えられん。貴様等、一体何者だ? いくつの神代魔法を修得している?」

 

 魔人族の男は警戒しながらもハジメに問いかけてくる。いや問いかけるというよりは独り言のようにも感じられた。それほどまでに極光を防ぎ切ったのが驚いたのだろう

 

「いきなり出てきて質問して名乗ることもできないなんて…魔人族ってのは思ったよりも礼儀知らずなんだね」

 

 肩をすくめて挑発をしてみれば魔人族の男は眉を顰める。その姿にハジメはこの男の性格などを分析する。

 

「……これから死にゆく者に名乗りが必要とは思えんな」

 

「そう?冥土の土産にって言葉知ってる?知らないのかな。随分と教養がなさそうだし、ああ無理して言わなくてもいいよ。僕はお前の事(道端の石ころ)なんてどうでもいいから。それとさっきの質問を返すなら僕の名前は南雲ハジメ、ただの高校生だよ。あとどうやら僕達の力が神代魔法の力だと誤解しているみたいだから訂正させてもらうけど、お前と違ってただの訓練と修練の結果だよ。そんな事もわからないの?魔人族の底が知れるね」

 

 畳みかけるように皮肉って言えば魔人族の男は額から血管が浮き出てくるほど怒りの表情を浮かべる。この時点で魔人族の男の性格が大体つかめた

 

(かなりプライドが高いな、自分のことは正しいって顔もしている…うーんどっかの馬鹿(天之河光輝)を見ているみたいでなんか癪に障るな) 

 

「気が変わった。貴様は、私の名を骨身に刻め。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である」

 

「神の使徒?ふーんなんだ結局は神様のお人形…つまりただの駒って所か。なんともドヤ顔でそんな事を誇る様に言うなんて…魔人族って皆こうなのかな?」

 

 自分は堂々と操り人形です!と答えている魔人族…フリードにハジメは呆れを多分に含んだ視線を向ける。本来なら親友を傷つけたものとして半殺しは確定なのだがあまりにも馬鹿さそうなので全身の骨をへし折ってやろうと決意するハジメ

 

「貴様…神代魔法を手に入れた私に…“アルヴ様”に直々に“我が使徒”と任命された私を愚弄するか!私は、己の全てを賭けて主の望みを叶える!その障碍と成りうる貴様等の存在を、私は全力で否定する!」

 

「本当の敵が誰かすらわかりもしない操り人形風情が人間を否定するなよ」

 

 ハジメが皮肉って言いながらドンナ―をフリードに向け引き金を引く。コウスケから殺すなと言われた。だから殺す気はないしこれぐらいで死ぬような阿保でもなさそうだと考えたからだ。案の定灰竜が射線上に割り込み正三角形が無数に組み合わさった赤黒い障壁が出現させ、ハジメ達の攻撃を全て受け止めてしまった。

 

「ふーん。防御も完備済みかぁ」

 

 よく見れば、竜の背中には亀型の魔物が張り付いているようだ。甲羅が赤黒く発光しているので、おそらく、障壁は亀型の魔物の固有魔法なのだろう。

 

「私の連れている魔物が竜だけだと思ったか? この守りはそう簡単には抜けん…なに!?」

 

ドドドドドドパンッ!

 

「ギュオオオォ!?」

 

 自慢げに灰竜と亀の魔物の連携を誇るフリードだがあっさりと障壁が突破され灰竜が沈んでいくことに驚愕の表情を浮かべる

 

「確かに厄介だけど…コウスケの守護に比べたらお遊戯、いやそれ以下だね」

 

 ドンナ―に弾丸を装填しながら呆れた溜息を吐くハジメ。特別なことをした覚えはない。ただハジメは弾丸をすべて同じ軌道同じ直線上に連続で撃っただけだった。続けて同じところに攻撃されてしまっては自慢の障壁も役には立たなかった。

 

「くっ!」

 

 驚愕から復帰したフリードはすぐさま極度の集中状態に入り、微動だにせずにブツブツと詠唱を唱え始めた。ハジメが妨害をしようとドンナ―で銃撃しようにも灰竜たちが極光を放ってきておりうまく銃撃できない状況になってきている。

 

(面倒な状況になってきたな…ユエやティオも攻めあぐねているみたいだし…一匹ずつ確実に仕留めていくべきかな。でもアイツがそんな時間をくれるとは思えないし…長い詠唱…手には大きな布…何をする、何を仕掛けようとする。…新しい魔法でも使ってくる?このグリューエン火山で習得した神代魔法を?やたらとプライドの高い男…なら新しい力試さずにはいられない…力、何もいないところからの攻撃…もしかして)

 

 思考は何時になく早くフリードが何をしてくるのか想像する。思いついたのと同時に空中で足に力を籠める。と同時に声が聞こえた

 

「ハジメ!そいつは瞬間移動するぞ!避けろ!」

 

「ッ! 後ろです! ハジメさん!」

 

 その声が聞こえたと同時に垂直にジャンプするハジメ。と同時にさっきまで自分がいたところに大口を開け極光を放つ白竜とその背に乗っているフリードがいた。

 

「っははは!何で空間を移動する奴ってのは相手の真後ろをとる事ばかり考えるんだろうねコウスケ!」

 

 まさしくタイミングがばっちりだった。そのままドンナ―・シェラ―クを構え逆立ちの要領でつづけさまにフリードに向かって発砲する。

 

「ぐおおおお!?」

 

 白竜が標的がいないことに気付いたのかすぐさま離脱を開始するが弾の何発かは当たったようでフリードの苦悶の声が聞こえてくる

 

「なんて…なんて化け物どもだ!」

 

「うるせぇ!人に向かってレーザーぶっ放しておきながら化け物言うな阿保!その白竜が居なければ何もできないアホンダラが!降りてかかって来いよ!負けるのが怖いのか!白竜なんて捨ててかかって来い!」

 

 ハジメが視線を下に向けるとそこにいたのは元気よく悪態をつくコウスケがそこにはいた。所々極光の影響があるのか装備が溶解していたり出血などもありユエに支えられてはいるがいたって元気そうだった。

 

「やれやれ何をやっているのか」

 

 肩をすくめるハジメ。復活しておいていきなりコマンドーのようなことを言うとはずいぶんと余裕がありそうだ。その証拠にさっきまでハジメを攻撃していた灰竜達がコウスケを狙って極光を放つがコウスケの守護に阻まれている。

 

 その隙に一匹一匹確実に仕留めていくハジメ。コウスケが復活した以上勝機はハジメ達によりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

(ぐ…侮っていたのか私は…カトレアの忠告を受けたはずなのにどこかで慢心していたというのか!)

 

 フリードはハジメ達から距離を取りつつ余りにも怒涛予想外の展開に戦慄していた。最初はうまくいくはずだった。カトレアから言われていた男…仮面の男がどちらかは分からなかったが、未知の武器を使う男を優先して仕留めようとした。そこまでは間違いではなかった。それなのに別の男に庇われ、白竜…相棒であるウラノスの極光は当たったとはいえ仕留めることはできなかった。その後は数に合わせた灰竜の攻撃も回避に防御され、挑発され頭に血が上っている間にこのグリューエン火山で取得した神代魔法は読み取られてしまい酷い手傷を受けてしまった。

 

(私はまだ戦える…しかし、なんという実力の差か…)

 

 体力的にも魔力的にもまだまだ戦える。しかし今勝機は確実に向こうの方が有利になっている。先ほどから灰竜たちは何故か無駄だと理解しているはずなのに倒れていた男…コウスケに向かって一方的に極光をはなち防がれてしまっている。その間にもハジメと言う男が虫を潰すかのように一匹一匹確実に仕留めていく。正に悪夢であり想定外の状況だった。

 

(カトレア…確かお前は言っていたな。『あの男達とは敵対するべきではない』と…確かにそうかもしれんしかし私は負けるわけには!?)

 

「なに戦闘中にボーっとしてんの?舐めプ?そういうの良くないよ」

 

 いつの間にか後ろにいたハジメに対応が一歩遅れるフリード。そんなフリードにハジメは容赦なく“魔力変換”による“魔衝波”を発動させながら後ろ回し蹴りをたたき込む

 

ドォガ!!

 

「がぁああ!!」

 

 かろうじて左腕でガードするも、粉砕されて内臓にもダメージを受ける。体勢を立て直そうかとしたところに今度はいつの間にか現れた黒龍がブレスを撃ってくる

 

「なに!?黒龍だと!?くっウラノス頼む!」

 

“若いのぉ! 覚えておくのじゃな! これが“竜”のブレスよぉ!”

 

「ルァアアアアン!!」

 

 相棒であるウラノスはフリードの頼みに即座に答えブレスを使い黒龍のブレスを押しとどめる。しかし戦闘による疲労とダメージによるものか

又は実力によるものか次第にウラノスのブレスが押されつつあった。

 

「…やむを得ん」

 

 次第に押される極光を見てフリードすぐに判断した。すなわち撤退するべきだと。ウラノスに合図をしハジメ達と距離をとる

 

「…恐るべき戦闘力だ。周りにいる女連中も尋常ではない。絶滅したと思われていた竜人族に、無詠唱無陣の魔法の使い手、未来予知らしき力と人外の膂力をもつ兎人族…だが脅威なのはそこではない。貴様たち2人だ。」

 

 フリードが指し示すのはいつの間にか仲間と合流して銃を構えるハジメと魔力が切れつつあるのかふらつくコウスケだった。

 

「未知の兵器を使いこの数をものともしない戦闘力を持つ男とウラノスの極光を耐えきり灰竜共の攻撃全てを防ぐ男…異質だ異様だ。貴様たちは一体何なのだ」

 

 フリードの問いにハジメは肩をすくめる。どうやらコウスケに返答を任せるようだ。コウスケはわずかに考えると応え始める

 

「さぁただの一般人だよ。それよりフリードとやら」

 

「なんだ」

 

「お前今のままだと魔人族全滅するぞ」

 

「何?」

 

 フリードが眉をしかめたところにコウスケが畳みかける。効果は薄いかもしれないが洗脳魔法も添える

 

「今のまま神とやらに縋って妄信していると魔人族はおもちゃのように使い潰されるって言ってるわけだよ。あんた中間管理職何だろ。なら『考えろフリード・バグアー、真の敵は別にいる。このままだとお前たちは全滅する』」

 

「ふん。何を言うのかと思えば…まぁいい世迷言はそのままマグマの中で言うがよい」

 

 そのままフリードはいつの間にか肩に止まっていた小鳥の魔物に何かを伝えた。

 

 その直後、

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!! ズドォン!!

 

 空間全体、いや、【グリューエン大火山】全体に激震が走り、凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めた。

 

 

「ちっ」

「うわっ!?」

「んぁ!?」

「きゃあ!?」

“ぬおっ!?”

 

 ハジメ達がいったい何をしたんだと目で訴えてくる。その様子に冷たく見下ろすと何が起こっているかを説明する

 

「ふん、冥土の土産に教えてやろう、このグリューエン火山の要石を破壊しただけだ、間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが……貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい」

 

 

 フリードはそのまま首に下げたペンダントを天井に捧げ円形に開かれた扉を一気に上昇し潜り抜けグリューエン火山から

脱出する。

 

 

『考えろフリード・バグアー。真の敵は別にいる。このままだとお前たち魔人族は全滅する』

 

 そんな言葉が胸に頭にわずかに刺さりながら異様な敵からの撤退を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 




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