ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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やっとで投稿です。短いです、でも時間がかかってしょうがないです。
エリセン編は大事なイベントがあるからまったリと進めたいです。



漂流し囲まれる

 

 

 

 見渡す限りは穏やかな波の音を響かせる辺り一面黒に染まった海

 

空は雲一つのない夜空で月がぼんやりと光っており、海は荒れることもなくただ静かだった

 

「……」

 

 マグマの激流にのまれた後、都合よく、又は原作通りハジメ達は海の上に何とか到達することができたのだ。しかしそのせいで潜水艇はボロボロになっており、今は広い海を漂流中といった所だろうか。

 

 今は何もすることがなくコウスケは船上の上でぼんやりと夜空と月を眺めている。昼間自分も何か出来ることはないかとハジメに聞いたところ『フリードの戦いのときに極光を受けてボロボロになったんだからおとなしく寝ていろ』とお小言を言われてしまったので体を休めることにしたのだ。

 

 

 波の音が耳に心地よくそのまま眠ってしまいたくなる中、ただ何も考えずコウスケは座っていた。寒くはなくまた暑くもない気温。ただ独りと言うのがどこか寂しく、だが気が楽にもなるという矛盾した気持ちだった。 

 

 「……コウスケ起きてる?」

 

 後ろからハジメの声が聞こえてくる。どうやらハッチを開け船上に出てきたようだ。確かさっきまでは船の修復をすると言って潜水艇の中でいろいろ作業をしていたはずだが、どうやら終わったらしい

 

「んー、起きているよ」

 

「隣良いかな」

 

 返事をせず首だけを動かすとハジメはコウスケの横に座る。

 

「ユエとシアは?」

 

「寝てる」

 

「そっか」

 

 お互い言葉は少なくただ2人でぼんやりと海を眺める。騒動が続いていたからだろうか、いつになくゆったりとした時間だった。

 

「あの時さ、」

 

「ん?」

 

「助けてくれてありがとう」

 

「んーーー???」

 

 隣にいるハジメが海を眺めながらいきなり礼を言ってくるのでコウスケは疑問で首をかしげる。しばし考えてからやっとで気付いた。ハジメは白竜からのレーザーから庇ったことに礼を言っているのだ。

 

「ああ!あの時か!別に礼を言うもんじゃあねえよ。真面目な奴だなぁ~」

 

 手をひらひらさせこともなげに言うコウスケ。自分はできることをやったのだ。改めて礼を言う事ではないし言われるようなことでもない。だがその言葉に何を感じたのか隣のハジメの空気が少し変わった気がした。

 

「…そう。ところで僕が攻撃されるなんてよく気が付いたね。」

 

「そりゃあのままマグマ蛇を倒して終わりだなんて思わなかったからな。おまけに南雲の上あたりで何やら不穏な気配がしていたし」

 

「…コウスケは凄いね。あの時おそらくユエやティオ、未来予測持ちのシアさえも気づかなかったのに予測できたなんて」

 

「はっはっは。そんなに褒めるなよ。何も出ねえぞ?」

 

 ハジメは視線を前に向けたまま外さない。少々気になるコウスケだが、そんな日もあるかと特に気にしない

 

「これから僕たちはどうなるんだろうね。一応次の目的地であるエリセンにたどり着けるようにはしてあるんだけど」

 

「問題ないな。今まで何とかなってたんだ。だから町にたどり着けるさ」

 

「そっか。…ティオはちゃんとアンカジ公国にたどり着けたかな。一応グリューエン火山を抜けたところまでは把握しているけど」

 

「それも大丈夫だな。今頃香織と合流して待ってるんじゃないかな。又はしびれを切らしてミュウをエリセンまで届けようとしているとか」

 

 ハジメの言葉を問題ないと言い切るコウスケ。いきなり海で漂流することになって色々不安に思っているんだろうとコウスケは考えていた。

 

「…そうだね海に出てきたからちょっと考えすぎていたのかも。明日からまたいろいろ動くだろうからコウスケはもう寝たら?後は僕が警戒やら

何やらしておくよ」

 

 ハジメはしばらく考えていたようだが、ふっと息を吐くと苦笑した。顔を見る限り問題はなさそうだ。そろそろ眠たくなってきたコウスケはハジメの言葉に甘えることにした。

 

「ふぁ~なら後はお願いしようかな。お休み南雲」

 

「うん。お休みコウスケ」

 

 コウスケはそのままハッチを開け潜水艇の中へ入っていく。

 

「…随分とこれからのことを確信を持っていうんだね…」

 

 それを見届けたハジメはひとり呟くのだった

 

 

 

 

 朝になった一行は魔力を潜水艇に流し込みながら発進させる。道中の水棲の魔物はユエが魔法で蹴散らしていき時たま休憩と修復をしながら陸地をとらえた。今自分たちがいる場所は大体エリセンの北であると仮定して進んでいく。

 

「んーーーまた魚の丸焼きか」

 

「仕方ないですよぅ。周りが海なんだから自然と材料が決まっちゃいますぅ」

 

「ごめんごめん。シアの料理に文句を言ってるんじゃないからな」

 

「宝物庫があったらね。ほかの食材や調味料があるからいろいろできるんだけど」

 

「…今はティオが持っている。我慢」

 

 昼頃になり、昼食のため潜水艇を止め4人で簡易的な焚火を囲みながら魚を食べる。調理方法はいたってシンプルで串に刺した魚を焚火でじっくり焼き上げるというものだった。串はハジメが錬成で作り、火はコウスケが簡単に用意する。

 

「焼くだけじゃなくて、もっと別の喰い方もしたい」

 

「ん~ならエリセンに付いたら何か色々考えてみるですぅ」

 

「シアは料理ができて羨ましい」

 

「ユエさんもちゃんと上達してますよ?もっと自信をもってください」

 

「ん、頑張る」

 

「女の子同士の友情は尊い。それにしたって景色も変わらないし、何か面白いことも起きない、正直暇でしょうがない。」

 

「まぁまぁ、不満を漏らしたからって何かが起こる事でもないよ」

 

「…フラグ?なんかうさ耳にピーンと来たんですけど」

 

 シアのうさ耳が突如、ピコンッ! と跳ねたかと思うと、忙しなく動き始めた。次いで、ハジメも「ん?」と何かの気配を感じたようだ

 直後、潜水艇を囲むようにして、先が三股になっている槍を突き出した複数の人が、ザバッ! と音を立てて海の中から一斉に現れた。数は、二十人ほど。その誰もが、エメラルドグリーンの髪と扇状のヒレのような耳を付けていた。どう見ても、海人族の集団だ。彼らの目はいずれも、警戒心に溢れ剣呑に細められている。

 

 そのうちの一人が槍を構え問いかけてくる。

 

「お前達は何者だ? なぜ、ここにいる? その乗っているものは何だ?」

 

 コウスケはその質問に答えようとしたが少々困ってしまった。なにせ今、魚を頬張っていたのだ。質問には答えたい、しかし今口に物を含んだ状態でしゃべるのは流石にマナー違反だと思う。しかし喋らなければ剣呑な雰囲気になり怪我をさせてしまうかもしれない。

 

 目の前の状況にすぐに対応しようとした結果、出した結論はさっさと食べて平和的に話をしようと言う考えに至った。

 

「ムグォ!?」

 

「「「!?」」」」

 

 話そうとするコウスケ。しかしここで予想だにしないことが起こった。慌ててしまったのか魚肉がコウスケの喉で詰まってしまったのだ。涙目になり顔をがみるみる青くなるコウスケ。異変に察知したのかシアが容赦なくコウスケの背中をたたく。

 

「コウスケさん!しっかりしてください!」

 

ドン!ドンドン!ドドドドドド!!!!

 

「オグッ!エグッ!ま、待ってくれシア…オロロロロロロロロ!!」

 

 シアに背中をたたかれ食べていたものを海に垂れ流し魚に餌をまくコウスケ。目の前で起こる男が美少女に叩かれているという状況に困惑し、また海を漂う吐しゃ物にドン引きする魚人族。ドンナ―に手を伸ばしつつも呆れた目を向けるハジメ。コップに水をもってスタンバイするユエ。

 

 非常にカオスな状況だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~酷い目に遭った」

 

 口元をぬぐいながらやっとで食べたものを吐き出したコウスケ。まだ口の中が酸っぱい感じがするが不満は言ってられないだろう。辺りを見回すと質問してきた魚人族の男以外は少し離れていた。

 

「それでお前たちは何なのだ」

 

 目の前で吐き続けたコウスケに完全に毒気を抜けたのか先ほどから比べて投げやり気味に聞いてくる魚人族。剣呑な空気にはならずに済みそうだとコウスケはホッとし、自分たちのことを説明する。ちなみにハジメは対応をコウスケに任せるようで呑気に魚を食べていた。

 

「かくがくしかじか、という訳なんですよ」

 

「にわかには信じられんな」

 

「ですよねーうーんミュウが居れば話は早いんですけど」

 

 コウスケの説明に疑惑の目を浮かべる魚人族に苦笑いを浮かべるコウスケ。確かに得体の知れないものに乗りながら魚人族の領域にいるのは怪しいだろう。しかしこのままではらちが明かない。

 

「ともかく俺たちの言ってることが本当かどうかも証明するためにも取りあえずエリセンまで案内してくれませんか」

 

「…良いだろう。ただし妙な真似はするな」

 

「了解です」

 

 結果、魚人族に囲まれながらもエリセンまで移動することになったハジメ達。一応警戒されているが先ほどのコウスケのファインプレー?によってミュウをさらった犯人ではなさそうだと思われているようだ。

 

 そうして海の上を走ること数時間、

 

「あっ 見えてきましたよ! 町ですぅ! やっと人のいる場所ですよぉ!」

 

「すげぇ、海に浮かぶ街が本当にあるなんて」

 

「本当だ、なんか海の上に浮かぶってロマンがあって良いよね」

 

 エリセンに感動するコウスケに苦笑しながらハジメは開いてる場所に潜水艇を停泊させる。とここで完全武装した海人族と人間の兵士が詰めかけてきた。魚人族の男が事情を説明するためになにやら会話をしているのですることもなく待っているハジメ達。

 

「暇だな」

 

「暇だね」

 

「お二人とも緊張感がないですねー…ん?今何か」

 

 やることもなくぼんやりしていた2人にシアが苦笑していると一瞬影が差した。なんだろうと上を見てシアが焦った声を出す。

 

「2人とも上も見てください!」

 

「ん?上?」

 

 シアにつられて上を見ればそこにいたのは黒い色をした大きな竜が町の上を通過したところだった。黒い竜は町から離れたところにザッパンッッ!!と大きな音を立て着水する。周りのエリセンの住人たちは大きくどよめきうろたえるがハジメ達は驚かなかった。

 

「意外と再会は早かったね」

 

「そんなもんだ。取りあえずこれからちょっと忙しくなるかもな」

 

 こちらに向かって進んでくる黒龍…ティオと遠くからハジメたちの姿が見えたのか大きく手を振るミュウにはしゃぐミュウを落ちないように支えている香織を見ながらそんな事を呟くハジメとコウスケだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




特に必要ないところはどんどん省いていきます

この頃気晴らしの短編が楽しいです。マズいです

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