ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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ようやく主人公を楽に喋らせることができる
無理矢理感が強いかもしれませんがどうかご了承を


第1章 奈落の底で
自己紹介


 

  ザァーと水の流れる音がする。冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触に「うっ」と呻き声を上げてハジメは目を覚ました。ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

「痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

 ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。

 ハジメと光輝が奈落に落ちていながら助かったのは全くの幸運だった。落下途中の崖の壁に穴があいており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していたのだ。ちょっとした滝である。そのような滝が無数にあり、ハジメと光輝は何度もその滝に吹き飛ばされながら次第に壁際に押しやられ、最終的に壁からせり出ていた横穴からウォータースライダーの如く流されたのである。

 とてつもない奇跡だ。隣には自分を引っ張り上げようとしていた天之河光輝がうつぶせで倒れていた、慌てて体を揺すり起こす

 

「ねえ!大丈夫!しっかりして」

 

 その声に反応したのか頭を振りながら呆然とした様子で周りを見渡す光輝。心なしか顔が青ざめている

 

「…ここは、…あぁそっか、落ちたのか…」

 

「怪我はない?平気?」

 

「…南雲?ああ、大丈夫みたいだ。…すまん。大層なことを言いながらお前を助けることができなかった」

 

 こちらを見て謝罪をする光輝。声に張りがなく沈んだ表情だった。なんだかこちらも暗くなってくる。ハジメは気にしないように明るく声を出した

 

「ううん。気にしないで。落ちちゃったけど2人とも大丈夫みたいだから…何とかなるよ」

 

「そっか そういってくれると助かる…ああこのままじゃ寒いよな。ちょっと待ってろ、今火を出すからな」

 

 2人の体は濡れていて寒さで体が震えてきたためすぐに服を脱ぎ火を用意する。ハジメも同じように服を脱ぎ光輝が用意してくれた火で暖をとる。冷たい体に暖かい火はありがたく体の奥まであったかくなってくるようだった。

 

 

 

 

「ここどこなんだろう? ……だいぶ落ちたんだと思うけど……帰れるかな……?」

 

「…ここはオルクス迷宮というのは分かるが…なんだろうな、ひたすらやばいってことぐらいしかわかんねぇ」

 

「うん、なんかそんな感じだね………ずっと前から気になってたんだけど聞いてもいい?」

 

「あーなんとなく想像できるけど…いいよ」

 

 ハジメはずっと違和感に思っていたことを話す決心をした。先日もそしてさっきもあまりにもおかしいのだ

 

「…君は一体誰なの?天之河くんじゃないよね?」

 

 不思議だった。思えばステータスプレートの時からずっと妙に気遣ってくれるのだ。それに先日のあの夜のやり取りを考えれば考えるほど違和感しかない

 

「…うん、俺は、天之河光輝じゃない。…ただのどこにでもいるオタク野郎だ」

 

「…そうだったんだ。でもなんで天之河くんの姿なの?」

 

「わからん。俺が聞きたいよ、目が覚めたら、訳の分からないところにいて、いきなり勇者だとか光輝だとかさっぱり意味不明だったよ。周りはなんか縋るように俺を見ているしさ、わけがわからないよってやつだ。なんとなく夢見心地でそれらしいことを言っていたらうまいこと皆誤解してくれたけど。…たぶん召喚ミスかなんかで俺の魂が天之河って奴の体に上書きされたか、無理やり入れられたかと睨んでいるが、どっちにしろ迷惑な話だ」

 

 はぁーと大きなため息をはき、喋り出すその姿は今まで我慢していたことを吐き出すかのようで、思わず同情したハジメの視線が柔らかくなる

 

「それは…大変だったね。」

 

「ああ、大変だった…本当に疲れたよ…」

 

 息を深々と吐き項垂れている彼の姿に、だんだんと重苦しい雰囲気になってしまったので慌てて話題を探すハジメ。

 

「え~と、そうだ‼名前!君の名前はなんていうの」

 

「名前?あぁそれなら俺は、…俺の名前は…名前…あ、あれ?」

 

「?どうしたの?…まさか」

 

「…名前、名前、えーとまてよ、待ってくれ、家族構成は分かる、小さい時の記憶も大丈夫どんな奴だったのかもOKだ。好きなゲームやアニメ、漫画もわかる。それなのに……オイオイうそだろ!南雲、どうしよう名前がさっぱり思い出せない!」

 

 途端に顔を青くし慌て始める天之河光輝(偽)まるで迷子のようにオロオロし、ハジメに助けを求めてくると言っても、ハジメも困ってしまった。記憶を戻す方法なんて知らないのだ

 

「う、うーんどうしよう?何かほかに思い出せることは?」

 

「…なんか…記憶が虫食いになっている。…はぁ~…仕方ない南雲、俺に名前を付けてくれ」

 

「えっ僕が!?」

 

「あぁ仕方ないだろう、名前決めなんて俺の苦手なことだしさ、ゲームの名前決めなんてほとんどがデフォルトだぞ。絶対変な名前しか出てこない」

 

 人に名前を決めてもらうなんて中々適当だな~と思いつつも考えるハジメ。と言っても性格もあって断りにくいし、こっちを信頼してる目で言われると、期待に応えたいのだそれに助けに来てくれた感謝の気持ちもある。

 

「え~と苗字じゃなくて名前だから…体の持ち主にあやかって…こうき…こう…こうたろうはなんか違うし…コウ…コウスケ! 君の名は今からコウスケでどうだろう?」

 

 急にティんと来た。なんだかこれがあっているような気がする。名前の大本が変人だが今目の前にいる彼は、普通のいい人だし大丈夫だろう

 

「…コウスケ、コウスケか…いいな、うん!今から俺の名はコウスケだ」

 

 しっかりと自分の名を心に刻むように呟き晴れ晴れとした顔で言う光輝改めコウスケは、すっと姿勢を正しハジメを見つめてくる

 

「?どうしたの」

 

「そりゃあ名前が決まったんだならやることは一つ!」

 

 ニヤリと不敵な顔で答えてくるコウスケ、ハジメもなんとなく姿勢を正す

 

「おれのなまえは、コウスケ、コンゴトモヨロシク」

 

「…ああ!そういう事か!…ぼくのなは、南雲ハジメ、これからよろしく」

 

「「……ぷっ、くっははは、あっははは!」」

 

 2人でケラケラと笑う。奈落の底に落ちてしまったが、かけがえのない友達を見つけることができたようでハジメは嬉しかった。きっとコウスケと一緒ならここから脱出できると思ったのだ。

 

「さてそれじゃあ服も体も乾いたし、慎重に大胆に行こう」

 

「うん、…大丈夫かな、絶対僕達が来る場所じゃないよねここ…」

 

「あぁまったくだ…前衛は俺がする。安心しろステータスはお前の20倍だ、何とかなる」

 

「悲しくなるから、そういうことあんまり言わないでよ…」

 

 2人は静かにこっそりと移動を始めるのだった。これからのことに不安を抱きながら…

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公の名前ですが原作キャラである遠藤浩介君と被っています
これは作者のミスなのですが後に引けなくなってしまっているので
どうか気にしないように読んでいただけると嬉しいです


本当にごめん…遠藤君




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